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5歳児幼児義務教育化と0~2歳乳幼児への幼児教育化を:「子ども庁、何を優先すべきか」より-2 

 日経<経済教室>で6月1日から3回にわたって「子ども庁、何を優先すべきか」というテーマで、3人の研究者に拠る小論が掲載されました。

 このところ少子化対策に焦点を当てて、継続して投稿してきていることもあり、そのシリーズを一つずつ取り上げ、その内容について考えることにしました。
(記事の最後に、最近の少子化対策関連での投稿記事リストを掲載しています。)

 前回第1回は、中室牧子・慶応義塾大学教授による
子ども庁、何を優先すべきか(上) 縦割りの排除、自治体でも」を基に
貧困世帯の子どもたちへの教育投資をどう優先させるか:「こども庁、何を優先すべきか」より-1
を投稿。

今回第2回は、山口慎太郎・東京大学教授の小論
子ども庁、何を優先すべきか(中) 未就学児への支援、重点的に」を参考に、
同様に、要点を紹介しつつ、感じたところを書き添えることにします。

 なお実は、この山口慎太郎氏については、ほぼ1年前昨年2020年5月に、やはり日経<経済教室>に、「幼保無償化半年」というテーマでの同氏執筆の小論が掲載され、その内容について
幼保無償化後の現実的課題:抜本的な保育行政システム改革への途(2020/5/29)
という記事を投稿しています。
 可能でしたら、そちらも合わせてチェック頂けると嬉しく思います。



こども庁、縦割り行政弊害除去の組織論偏重は誤り

 子どもに関わる政策を一元的に扱う子ども庁の創設に向けた議論が進んでいる。
 子どもを支援する施策は厚生労働省、文部科学省、内閣府など複数の機関にまたがり、その縦割り行政の弊害を取り除くことが子ども庁創設の利点であり目的とされる。
 しかし、組織論が話題となりがちで、組織再編や詳細な制度設計が必要なのは間違いないが、子ども支援全体を貫く理念や目的を明確化し、それらを広く社会で共有することが先にあるべきという。
 政策や制度はその理念実現に資するものであるわけだ。
 
 その理念や重視すべき政策について、筆者が提案する内容を見ていこう。

 

重視すべき子どもと子育て支援策、2つの重点

 子どもと子育ての支援政策はどうあるべきか。
 次の2つの重点を掲げる。
1)すべての子どもたちが教育、保育、医療などの必要なサービスを受けるとともに、一定の衣食住が保障される。
2)胎児から未就学児までを特に手厚く、社会全体で支援する。

社会的公正に反する、子どもにとっての不平等社会ニッポン

 そして、こう繋ぎます。
 日本は他の先進国と変わらず不平等な社会だ。
 親の所得や社会階層により、受けられる教育が大きく異なり、格差は幼児期から始まる

 それを示すものとして、日本の子どもの貧困率は約14%とOECD加盟国平均を上回り、ひとり親世帯の貧困率は50%超という格差社会の実態があり、こうした格差を放置すること自体が社会的公正に反すると筆者は考える。

胎児期から幼児期・未就学期の教育の有効性を示す研究調査結果

 前回の中室氏小論でもあったように、乳幼児期の教育・保育が子どもと親に及ぼす有意義な影響に関する以下の研究事例をここでも挙げています。

1)ジェームズ・ヘックマン米シカゴ大教授らによる研究、米国の貧困家庭の子どもたちに幼児教育を受けさせた「ペリー幼児教育プロジェクト」の分析
・高校卒業率が上がり、40歳時点での就業率と所得が向上し、重犯罪による逮捕や生活保護利用が減少。
 結果、税収増と社会保障支出などの削減につながり、社会全体にも有益であった。
2)厚生労働省「21世紀出生児縦断調査」による約8万人の子どものデータ解析
・2歳時点での保育所通いは言語発達を促した。
・社会経済的に恵まれない子どもの多動性と攻撃性を減少させた。

未就学児への教育政策転換の財政難理由への反論

 しかし、こうした事例があるにもかかわらず乳幼児教育政策に反映されない理由として財政難が挙げられることに対して、2つの面から筆者は反論します。

1)日本の子ども・子育て支援は、経済規模に比して貧弱なため
 児童手当や幼児教育に対する補助金など、子どものいる家族を支えるための公的な支出を含む家族関係社会支出の国内総生産(GDP)に占める割合は、2017年のOECD平均2.3%、充実している北欧や英仏は3%超に対して、日本は1.8%にとどまっている。

2)子ども・子育て支援は次世代への投資
 そのための財政支出は、一部は将来の税収増と社会保障費用の削減で賄える。
 子どもの貧困解消により、大学進学者の増加や就業形態の改善を通じ生涯所得が増え、1学年あたりの総額は推計で2.9兆円。
 加えて、所得増に伴い税・社会保険料の納付が増え、1学年あたり1.1兆円の財政負担削減も見込まれる。

 こうした提案・提言もこれまで何度となく行なわれているのですが、政府及び関係官庁に、みずから変革する意志・意欲は見られません。
 根本的には、財政難が理由などではなく、端から必要ないと思っているためではないかと勘ぐっています。
 いずれにしても、絶対に打破すべき課題の一つです。

出生率引き上げにつながる子育て支援の充実

 そして、ようやくここで出てきました、この表現。

子育て支援の充実は出生率引き上げにもつながる。
家族関係社会支出のGDP比が高い国ほど出生率も高い傾向にある。
として、児童手当や保育所の整備が出生率引き上げにつながったことや、待機児童が多く女性就業率が高い地域では、保育所整備が出生率を引き上げたことを示す研究を紹介し、こう断定します。
 子ども・子育て支援は子どもの人生をより良くする手助けとなることに加え、少子化対策としても有効という2つの意味で、次世代への投資となる。

 要するに、少子化対策の一助になりうるとしているのです。
 

子育て支援は、低所得層に支援絞らず、累進課税強化を図り、一律給付を

 そして、その支援において留意すべきことを上げます。

 支援策が特に有効なのは、社会経済的に恵まれない家庭に生まれた子どもたちだが、その支援を低所得層に絞ると、手厚い支援を受けられない世帯との間に不公平感が広がり、社会階層間で断絶が深まり、子育て支援自体に社会全体の支持が得られなくなる可能性がある、と。
 そのため、支援対象を絞り込むのではなく、累進課税を強化しながら、一律に、平等に給付するのが望ましいと提起するのです。

 この考え方には、私も賛成で、私が提案する、日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金における児童基礎年金の給付における考え方と通じています。

2つの幼児教育の充実政策を

 筆者は数ある支援策の中で、保育も含めた広義の幼児教育の充実、具体的には次の2点の実現を期待している。

1)5歳児幼児教育の義務化

 2017年度に保育所にも幼稚園にも通っていない子ども(無園児)は5歳児の約2%。
 生活保護世帯は保育・幼児教育が無償化されているが、それだけで必要な幼児教育は届けられていない。
 幼児教育は社会経済的に不利な家庭の子どもに大きな効果が見込め、平等性や費用対効果の観点からも義務化が有効かつ必要である。

(参考)『保育園に通えない子どもたち ──「無園児」という闇 (ちくま新書)』(可知悠子氏著・2020/4/10刊)

2)0~2歳乳幼児への(広義の)幼児教育の導入

 いまの保育は福祉として行われているため、両親が働いていて自ら保育できないような「保育に欠ける」状態であることが利用の前提条件となっている
 しかし、保育が持つ幼児教育機能に注目し、共働きではない家庭の子どもでも短時間ならば利用できるようにするなど、0~2歳児に対する保育を、福祉だけでなく幼児教育としてもその役割を再定義する。

 こう山口氏は問題提起しました。
 私なりにその考え方について言い換えれば、児童に対する「福祉」としての「保育」という括りをやめて、児童に対する「社会保障」及び「基本的人権」に基づく「保育及び教育」に転換するわけです。
 こうした私の考えについては、以下の記事を参考にして頂ければと思います。
⇒ 福祉国家論とベーシックインカム:福祉国家から基本的人権社会保障国家へ(2021/2/27)

幼児教育改革に必須の組織改革、行政改革

 山口氏提案のこの幼児教育改革には、全面的に賛成です。
 加えて、その改革には、保育の質の維持の重要性を強調しています。
 また、上記の2つの幼児教育改革には、当然、幼保一元化や保育・教育主管官庁と同行政統合などの課題が含まれることになります。

 果たして「子ども庁」発案の首相は、どこまで、こうした課題について考えているのでしょうか。
 あるいは、内閣府も、自民党も。
 私には、政策よりも、縦割り組織に基づく縄張りを守ることでしか、自らの存在意義・価値を見いだせない、情けない官僚社会とそれに対して強いリーダーシップを発揮すべき内閣の、幼稚で、狭い視野でしか考えることができない姿しかイメージできないのです。

 山口氏の著に、
「家族の幸せ」の経済学~データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実~ (光文社新書)』(2019/7/30刊)
があります。
 その構成は、
・第1章 結婚の経済学
・第2章 赤ちゃんの経済学
・第3章 育休の経済学
・第4章 イクメンの経済学
・第5章 保育園の経済学
・第6章 離婚の経済学

となっており、データを多用していますが、読みやすく、わかりやすく書かれています。
 いずれ当サイトで取り上げる機会があればと思っています。

5歳児幼児義務教育化は、公立小学校附属幼稚園化で

 この項は、前項を受けて、私が考えるところを述べるものです。
 まず、1年以上前に投稿した、以下の記事をチェック頂ければと思います。

保育園義務教育化と保育グレード設定による保育システム改革-1(2020/3/23)

<社会経済の変化に対応した保育ニーズに応じた保育グレード区分別保育システム改革へ>
<保育園義務教育化のあり方:新・公立幼稚園制の導入>
<1歳・2歳・3歳児の保育園保育制>
<0歳児の乳児保育所保育制(乳児園制)>
という展開で、
◆ 4歳5歳児:未就学児(義務)幼稚園制
◆ 1歳2歳3歳児:幼児保育園制
◆ 0歳児:乳児保育所(または乳児園) ※但し、家庭保育が原則。保護者の申込みで受託する
を提案しています。



社会的共通資本としての教育・保育の拡充へ

 また、前回の記事
貧困世帯の子どもたちへの教育投資をどう優先させるか:「こども庁、何を優先すべきか」より-1
の中でも触れましたが、教育・保育は、宇野弘文氏による社会的共通資本の一区分である<制度資本>の中の一つとして位置づけられるものです。
 <制度資本>ですが、<社会的インフラストラクチャー>として概念化してもよいものとも考えています。
 
 宇野氏のその著の中で、そうした社会的共通資本、制度資本は 
 それぞれの国ないし地域の自然的、歴史的、文化的、社会的、経済的、技術的諸要因に依存して、政治的なプロセスを経て決められる。
とされています。
 果たして、創設される「子ども庁」は、そこまでの問題意識・改革意識、使命感を持ち、新たな理念と長期ビジョン構築と、縦割り行政打破・財政問題打破を自らに課して取り組むことができるでしょうか。
 どうにも心もとないのですが・・・。

 次回は、シリーズ第3回になります。

 なお、以下の関連記事もお時間がありましたら覗いてみてください。

(関連参考記事)
保育の社会保障システム化による保育システム改革-2(2020/3/24)
准公務員制度導入で潜在的労働力の発掘と活躍へ:専門職体系化による行政システム改革-3(2020/3/21)

(参考)少子化対策関連の2021年5月下旬~6月上旬投稿記事リスト

結婚・子育ての経済的側面タブー化が少子化対策失敗理由:『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』で考える絶対不可欠のBI論-1(2021/5/24)
夫婦・親子をめぐる欧米中心主義的発想が失敗の理由?:『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』で考える絶対不可欠のBI論-2(2021/5/26)
少子化の主因、リスク回避と世間体意識変革は可能か:『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』で考える絶対不可欠のBI論-3(2021/5/27)
山田昌弘氏提案の少子化対策とは?:『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』で考える絶対不可欠のBI論-4(2021/5/28)

コロナ感染拡大・長期化で妊娠届数大幅減少、出生数80万人割れ、少子化・人口減少加速(2021/5/29)
『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』シリーズを終え、結婚・非婚・単身をめぐる検討・考察へ(2021/5/30)
日経提案の少子化対策社説と記事から考える(2021/6/1)
結婚不要社会と結婚困難社会の大きな違い:『結婚不要社会』から考える(2021/6/3)
エマニュエル・トッド氏が見る日本の少子化対策問題(2021/6/5)
少子化対策総動員、全力で支え、あらゆる対策を:少子化対策連呼の日経社説の意識は高いのか低いのか(2021/6/7)
少子化を援護する?一人で生きるのが当たり前の独身大国ニッポン(2021/6/9)
2022年施行改正育児・介護休業法は、少子化対策に寄与するか(2021/6/11)

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