LGBTQ、LGBT+アメリカで多様化する性的指向、性自認

生き方・働き方

前回、前々回と、ジェンダー後進国の現状を示す格好の最近の話題から、以下の2つの記事を書きました。

同性婚認めないのは違憲判断から考える結婚と性:「共生婚」法制化提案(2021/3/21)
同性婚と選択的夫婦別姓制:「同性婚を共生婚に」提案のあと考えたこと(2021/3/22)

ようやくLGBTという用語が、ほぼ社会的に理解されるようになり、性的少数者という視点からではなく、人間の生き方の多様性とその選択性を前提とした人権として論じ、認める社会にたどり着いたといえるでしょうか。

その中で、さまざまな課題先進国とある意味自負しつつ、あたかもその対策・政策が効を奏しているかのように自画自賛している日本ですが、その実態は真逆の、課題未解決後進国、課題解決先送りモラトリアム国というのが現実でしょう。

ジェンダー後進国日本の要因と社会的変化を待つ現状


ジェンダー問題もその象徴的課題であり、先述した2つの記事で課題とした、同性婚と選択的夫婦別姓制もその範疇に入るものでした。
しかし、同性愛は、日本においても古代からあったものであり、男性と女性の2つの性の組み合わせや性的指向を考えれば、ある意味、あって当然のこと。
それが、日本においてオフィシャルに認める社会になかなかならなかった要因の一つが、「恥」という文化にあったことはあながち的外れではないと思います。

しかし、欧米社会においては、「恥」の文化・概念自体の希薄性や生来の気質に加え、同性間の性的指向や性自認におけるカミングアウトが、これも歴史と文化としての権利意識に基づいて普通に行われるようになってきました。
それが、日本でもようやく現実のこととして認められ、それに付随する権利の主張が広がってきたわけです。
周回遅れとも言えますが、課題解決後進国が果たして、どの程度のスピード感をもってその解決・克服を果たすことができるか。
少なくとも現状の政治体制では、どうにも一筋ならではいかぬのではと思うのですが。

権利としての欧米社会におけるジェンダー、LGBTQ,LGBT+

この日本の後進性に対して、本来男女の2性しかないにも拘らず、欧米は、その多様性の拡充と適用される多面性の範囲の拡大が、生理学的領域を乗り越えて、精神の領域にマデ広げて進化し続けます。
正直それを進化あるいは成長と呼ぶことがよいのかどうか分かりません。
しかし、善悪の硬直性を考えれば、そういう面ではあっても人間の感性の多様化は、一種の進化と捉え、ある意味喜ぶべきことかもしれません。

米国では、「LGBT」に加え、より多様な性的指向や性自認への認識と理解を促すQ、I、Aや「+(プラス)」といった文字を加える動きがあることが知るところとなってきました。

トランスジェンダーやノンバイナリーといった性自認の多様化を受けて、ジェンダー(社会的性別)を区別しないために、彼(he/him)や彼女(she/her)に加え、従来は複数形として使っていた代名詞「They/them」を単数形として使うといった習慣も生まれているといいます。


LGBTQとは


LGBTとは

・L(レズビアン、女性同性愛者)
・G(ゲイ、男性同性愛者)
・B(バイセクシュアル、両性愛者)
・T(トランスジェンダー、出生時の性と自身が認識する性が異なる人)

の性的少数者を包括的・包摂的に示したものです。

これに「Q」が加えられて、LGBTQと性的マイノリティを包括する表現が一般的になりつつあります。

Qは「クィア」または「クエスチョニング」。
「クィア」は、LGBTの枠組みにとらわれない人や、性的少数者全体を指す言葉
として使われることが多く、
「クエスチョニング」は、性的指向や性自認を見極める過程にある人
を言います。

領域が拡大し、線引そのものが漠然としていく印象さえ抱かせます。


LGBT+とは


これ以外の性的特性を表現する用語として「I」、「A」があります。

「I」は、「インターセックス」で、生殖機能や染色体など身体の性が典型的な男女の定義に当てはまらない人
「A」は「アセクシュアル(エイセクシュアル)」で、他者に性的魅力を感じない人
それとは別に、性的少数者の支援に積極的な「アライ」を指すこともあるといいます。

他にも様々な認識があるため、LGBTQIAと表現したり、最後に+(プラス)を加えLGBT+ と表現することも増えてきていると言います。

ここまで来ると、人それぞれの感じ方の数の分の種類がある、といっても良いような気もします。

米国のある団体の調査で、自分が希望する代名詞を尊重されてきたトランスジェンダーやノンバイナリーの若者が自殺を試みる率は、そうでない人の半分にとどまったという結果が出たそうです。
その理由としては、こうした性の多様性を認めた表現方法・用語が生み出され、日常生活で普通に用いられることで、恥じること、隠すことを必要としなくなったことが挙げられるかと思います。


マイノリティがマイノリティでなくなる日、メジャーになる日


自分が他の人とちょっと違う。
それが、絶対少数でのことだったものが、複数の少数グループが「マイノリティ」という括りで共通性を持つことで、マイノリティでなくなってくる。

これは、例えば、未婚・非婚で単身者であった人が、離婚数の増加、高齢夫婦の死別による単身高齢者の増加により、単身・独り身という括りでは、マイノリティではなくメジャーグループに編成、所属を変えることになる。

それと同様なことが、今後起きてくる可能性があるわけです。
とすると、単に性的指向や性自認の問題としてだけでなく、広く生き方という原初的な課題に戻る感覚です。
そして多様、他と異なることの自由という概念で、マジョリティとマイノリティが統合することになるのでしょうか。
違いはあるが、格差はない、分断もない。
面白い社会観念が、社会を好ましく覆う時代がくるのでしょうか。

バチカン、同性婚「祝福できない」 教会の方針変更せず


しかし、その欧米にも精神の世界に限れば、簡単にジェンダー問題、性的指向・性自認について、簡単に解決することできない根本的な課題が残っています。

そう、宗教界と世俗との課題です。
キリスト教カトリックの総本山バチカン(ローマ教皇庁)は3月15日、同性婚は「祝福できない」との見解を示しました。
ローマ教皇フランシスコは同性愛者に寛容な姿勢を見せてきたにも拘らずです。
この宗教的権威は、いつまで続くのでしょうか。

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