再生エネ発電のムダ排除、緊急時地域間送電確保等のためにも送配電網の国有化を

国政政策

少しずつ、よくなる社会に・・・


2030年、再生エネ電力供給過多で出力抑制

昨日3月22日日経1面紙面の最上部の「再生エネ発電量、最大4割ムダ」という活字に目が引かれた。
詳しくは、
再生エネ発電量、最大4割ムダ  30年ごろ、供給過多で出力抑制 広域送電網の増強欠かせず :日本経済新聞 (nikkei.com)
という記事で確認できる。


そこから要約すると、
大手電力10社の試算を経済産業省がまとめた結果、「2030年頃に北海道と東北で再生可能エネルギーによる発電の最大4割超が無駄になる恐れがある」というもの。
その要因は、
電力の供給量が需要を超えた際、太陽光や風力などの発電を止める出力制御が生じる」ため。
そして、地域内の電力需給が一致しない場合の停電リスクに結びつくことになる。
要は、電力が作れても、需要がなければ、発電自体をストップし、機会損失が起きるということ。
余るなら、消費量の多い、需要のある他地域に融通すればよいと簡単に考えるが、そうもいかないらしい。
その理由が、送電線基盤が不足しているため。
もう以前からいわれていることだ。

以前、九電が再生エネの新電力からの電力買い上げを断った事件?があった。
再生エネ化を軸として電力自由化を進めた結果が、こうしたバカげた状況を生みだしている。
本来それは想像・想定できたことなのだが、こうした背景の一つである、電力大手が独占していた送配電網事業を、電力本体事業会社から切り離すことが政府主導で進められた。
とは言っても、基本的に大手電力グループ管轄にあるわけだから、送配電線・網の利用が完全に自由化され、電力の融通が柔軟に行われるようになっているわけではない。

出力制御とその抑制策

出力制御とは

電力供給が需要を上回らないように発電を抑えること。
太陽光発電の導入拡大で出力制御が起きやすくなっている
太陽光発電による昼間電力供給量の増加時、水力発電の揚水調整、火力発電の出力引下げ等で調整。
次に必要時、太陽光・風力再生エネルギーの出力を抑えることになる。
原子力や地熱発電は出力抑制時にはすぐに元に戻せないため、需給調整に不可。

出力制御抑制策

そうした出力抑制というもったいないムダをなくすための方策として、以下がある。
1)送電網を強化し、再生エネ電気を需要地に送電
2)火力発電所の出力を抑制
3)蓄電池で太陽光による発電量が多い時間帯に充電
試算ではこの順に効果が大きいとのことだ。


遅れる送電線増強計画

その最も必要とされる送配電線・網自体インフラが整っておらず、送電線増強計画の多くが策定段階にとどまるという。

その問題が露呈したのが昨日3月22日に政府から初めて出された「電力需給逼迫警報」。
関西方面から東京首都圏へ送電し不足分を補う、緊急時必要な広域融通上の脆弱性さが明らかになった。
(詳しくは、3月23日付日経の以下の記事で)
⇒ 送電網整備、先送りのツケ 東電・東北電管内に逼迫警報  融通、地域の垣根なお :日本経済新聞 (nikkei.com)

2番目に効果があるとされている火力発電の出力抑制だが、皮肉なことに、今回の事態は、地震により現在主力となっている火力発電が停止したための電力供給不足が原因である。
ただこれは、ゼロ・カーボン政策を推進する上で、火力発電はいずれゼロとするわけだから、今回はsれを先取り・想定した対策を考えるべきとするのも賢明ではないだろうか。

となると、送配電網基盤強化と高機能・低コスト蓄電池開発が絶対条件となる。
蓄電池開発は、民間企業ベースでの競争の激しい分野であり、政府が直接関与する必要はないだろう。
結局、送配電網基盤強化戦略にどのように取り組むかに絞られる。


経産省と電力広域的運営推進機関(広域機関)による送電網整備計画

こういう計画を策定すべく動いているとのことだが、ほとんど広域機関による試案レベルにとどまり、公式計画策定にはほど遠い状況らしい。
日経の端切れも悪い。

広域機関の2021年中間案では連系線容量誦経計画には、最大4.8兆円の投資が必要だが、整備が順調に進むかどうか。
経産省による、海底ケーブル整備計画づくりでは、1兆円超の大規模事業で、2030年度までの運用開始には、ルート選定問題を含め、数年要する初期投資から費用回収が始まるまでの資金支援問題など山積とする。

日本の電力行政でめざすべき明確な方向・方策

日経の基本認識は、以下の通りである。
日本の電力供給体制を巡っては、各地で独占的に事業を運営する大手電力がそれぞれ整備してきた。
自由化で販売は地域の垣根をこえたが、送電網はなお地域ごとの電力会社が担う。
連系線を活用する供給体制は不十分なままで、連系線の増強は太陽光や風力など再生可能エネルギーによる電気を広域で融通する際にも役立つ。

こうした現状認識をどう活かし、電力という社会的共通資本における最重要課題にどのように取り組むか。
日経は、これまで無数の紙面と文字数を費やしてきても、明確な提案・提言に至っていない。
基本は、原発活用・依存としていることだけは明確だ。
送電網の増強だけでなく発電所の整備も欠かせない。」として、火力発電の閉鎖を睨んで、再生エネの不安定さと比率拡充の可能性への疑問を前提として、「原発の再稼働が進んでいない」ことを憂いているのである。
日経には、情報収集力は評価するが、柔軟な発想力・創造性は期待できない。

2030年電力送配電網の国有化と2050年グリーン水素エネルギー化、エネルギー自給自足国家構築を

送電網基盤は、国内事情限定的であり、いわば、政府のやる気しだいだ。
方法は唯一つ。
社会的共通資本である電力の送配電網事業の国営化である。
現状ある施設は、国が2030年までに買い上げる形とし、不足する設備・システム等は、利用する電力各社の出資と国の出資で5年~20年計画で開発・整備する。
国出資分は、エネルギー国債として調達し、施設利用料を電力各社から徴収する。
収益で、国営企業の必要コストを賄う。

社会的共通資本として、電力発電事業は、民間企業の活力と地域毎の事情にあった政策との融合で、再生可能エネルギー政策の一層の促進を一つの課題とするのは自明だ。
そして国家戦略として、カーボンゼロのクリーン水素による水素エネルギー社会創造を2050年までの目標に据える。
そして国の送配電網事業収益をベースにして、個人世帯の電力基本料金の無料化の実現も目標に加える。
その軸をぶらさずに、長期計画実現をめざす。
先述してきた諸課題には、その方向・方策における現実的な対策で臨むことにするわけだ。
その実現結果は、エネルギーの自給自足国家構築に結びつく。

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