2021年出生数81万人、出生率1.30。過去最低2005年1.26に迫る:2021年人口動態統計より

社会政策

少しずつ、よくなる社会に・・・

先日、柴田悠氏、山口慎太郎氏、2氏の著述を参考にしての<子育て支援論>を取り上げたシリーズの紹介記事
EBPM書としての評価は?:柴田悠・山口慎太郎両氏の<子育て支援経済論>シリーズを比較・紹介(2022/6/2)
を投稿しました。
その両氏論では不足していた少子化・出生率問題に関わる昨年の統計データ、厚生労働省による<人口動態統計>が、6月3日に発表されました。

これを受ける形で、2022/6/4付け日経に
出生率6年連続低下 昨年1.30、最低に迫る  少子化対策、空回り 出生数最少 :日本経済新聞 (nikkei.com)
同日、中日新聞では
◆ 21年生まれ、最少の81万1千人 厚労省統計:中日新聞Web (chunichi.co.jp)
と題した記事が掲載されました。

今回の発表は、「人口動態統計」の1年間の人口推移調査の集計値(概数)で、翌年6月に公開されるもの。
これとは別に<速報値>というのがあって、月次ごとに発表されており、年明け2月に、前年12月の月次値が出ると、同時に同年1年間の月次合計<速報値>が集計されます。
この速報値ベースで、当サイトで今年3月に
2021年の出生数約84万人、死亡数約145万人、人口減少数初の60万人超:2021年人口動態統計速報値
と題した記事を投稿しています。
この速報値を翌年修正して一昨日6月3日に公開されたのが2021年<人口動態総覧>。
厚労省公開データから、主だった内容をピックアップしました。

まず以下が、全体を一覧できる、前年対比での「人口動態総覧」表です。

2021年人口動態統計、人口と出生数・率のポイント

この統計で示された主だったポイントをピックアップしてみます。

1.年間出生数80万人割れに迫る81万1604人

 速報値の2021年出生数84万2897人が、確定値は 81万1604人で、今年には80万人割れが想定される。
 前年比3.5%減少。
 初めて100万人を下回った2016年から6年連続で過去最少を更新。
 2017年公表の推計では、出生数の81万人台前半まで減るのは2027年と想定しており、6年も早まっている。

2.合計特殊出生率1.30で過去最低1.26に迫る

 2021年の出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)は、1.30。
 前年比0.03ポイント下がり、6年連続の低下。
 1975年に2を下回って以降低下傾向をたどり、2005年に過去最低の1.26を記録
 その後緩やかな上昇に転じ、2015年に1.45まで回復
 新型コロナウイルスの影響もあり、2020年からさらに落ち込み、昨年は過去4番目の低さ。

合計特殊出生率とは 

1人の女性が生涯のうちに産む子どもの数の平均。
15~49歳の女性が産んだ子どもの数を、それぞれの年齢別の人口で割って合算する。
人口維持には2.06~07必要とされ、1.5未満が「超少子化」とされ、1.3未満はさらに深刻な区分となる。

長期化する出生数減少、出生率低下の背景・要因

こうした状況を招いている根本的な背景・要因には
・合計特殊出生率の集計対象である15~49歳の女性の人口が前年比で1.8%減少
・晩婚化・非婚化傾向が継続
・コロナ禍により婚姻数が減少
・年間の婚姻数が前年比で4.6%減
・20代女性の出生率が低下
などがありますが、その実情・実態は、今回の発表でもデータとして示されています。
以下にいくつか紹介します。

1.妻の初婚年齢推移が示す晩婚化

まず、出産年齢が遅くなり、子どもの出生数を少なくさせる要因の一つと考えられる晩婚化の状況です。
これは、以下の<妻の年齢別初婚率>の推移で、分かると思います。
5歳単位での集計値ですが、40歳以上で初婚という女性の(千人当り)比率が増えていると推察できます。


2.非婚化が示す婚姻率の低下推移

次に、未婚で子どもを持つことが非常に少ない日本では、結婚しない人が増えれば、やはり出生数は減少すると思われます。
前掲の<総覧>および下図のように、婚姻数は、前年の525,507組 が、501,116組と、4,6ポイント減少しました。
減り続けている状況も一目瞭然です。

3.年齢別出生率が示す、20歳代女性の出生数減少

もう一つ、出生数の減少を裏付けることになるに違いないデータがあります。
以下の、母の5歳階級別に設定した出生率の推移グラフ。
その中で、<20~24歳>と<25~29歳>それぞれのグループの出生率が、前者が 0.1035、後者が 0.3615 と著しく低くなっています。
それだけ、20代の既婚女性が子どもを持つ率が低下し、少子化に拍車をかけていることを示しているわけです。
当然、その年代の女性の絶対数も減少しているわけですし。

止まらぬ人口減少社会

今回は、先月取り組んだ、2人の学者の<子育て支援論>を考えるシリーズの延長で考察を進めるべく、少子化問題、出生率問題に焦点を当てて、人口動態統計の関連基礎データのみまず拾ってみることを目的としました。
従い、本来、人口減少問題も人口動態統計ベースでは、確認・考察すべきですが、公開されたグラフを以下に引用し、基礎数値の確認にとどめたいと思います。


2021年年間の死亡数は、143万9809人で、前年比約6万人死亡者が増加。
これにより、人口の同年間での自然減少数は62万8205人の過去最大で、同じく9万6285人減少。
人口減少数も、想定された最悪のペースに近づいているとされる。

今回は、公開された基礎的な数字の確認でとどめます。
この発表に基づき、手元にある日経と中日新聞それぞれで、論評されていますが、次回、その概要を紹介し、そこから考えるところを整理したいと思います。
但し、私のこの少子化対策、出生率低下をめぐる認識は、冒頭紹介の<人口動態統計速報値レポート記事>や、2人の研究者の<子育て支援論>シリーズ、そして当サイトで種々設定したテーマ記事で、述べてきていますが。

                       少しずつ、よくなる社会に・・・

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