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イノベーション

2050年グリーン水素社会創造に向け、原発を水素生産専用電力に:21世紀第2四半期の安保政策シリーズー2=エネルギー安保ー3

20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ

「エネルギー安保」シリーズの序論的位置付けで投稿した以下の記事。
2022年12月のエネルギー動向から考える、グリーン水素エネ自給自足理想社会構築:21世紀第2四半期の安保政策シリーズ-2=エネルギー安保ー1(2022/12/7)

そこで示した、<「エネルギー自国自給自足最高度化」合意形成と長期実現政策・戦略構築合意形成>を<究極のエネルギー安保政策基本方針>として設定し、具体的な政策課題として、次の5項目を掲げています。

1.大手電力各社カルテル課徴金問題及び新電力企業の事業廃止にみる電力自由化政策失敗と再構築戦略化
2.再生エネルギー構成比推移から考慮すべき電源構成見直し及び原発政策再構築
3.グリーン水素エネルギー社会、エネルギー自国自給自足社会創造への戦略合意形成
4.エネルギー関連技術開発戦略及び研究開発投資政策構築
5.送電網国有化政策検討合意形成

そして、その5番目の課題の具体策として同月下旬投稿したのが、次の記事。

エネルギー自給自足国家創りの基盤として、送電網国有化を:21世紀第2四半期の安保政策シリーズー2=エネルギー安保ー2(2022/12/22)

今回は、水素社会構築課題に戻りますが、3番目の課題との関係での提案です。
但し、その内容は、2番目の課題とも重なっています。

21世紀第2四半期の安保政策シリーズ2=エネルギー安保ー3

このシリーズの発端は、昨年12月第1週に日経に掲載されたエネルギー関連記事の収集・分析。
その中で、水素エネルギー関連記事は、次でした。

<水素エネルギー関係記事>
1) 水素生成装置を事業化 パナソニックHD楠見社長 「省エネ技術で競争力発揮」(2022/12/3)
2) 関電と川重、姫路に水素の輸入拠点を検討 安定調達へ供給網構築(2022/12/3)
3) 福島にグリーン水素拠点 山梨県と巴商会など連携(2022/12/3)
4) 水素戦略、気付けば周回遅れ 普及阻む調達コスト 米国の2倍超えも(2022/12/5)
5) (Review 記者から)政府の関与強化 急げ(2022/12/5)
6) 三菱商事中西社長、グリーン水素 欧州で拡大 洋上風力、来年4件めざす(2022/12/7)

水素エネルギー活用最前線のリアル:水素拠点が瀬戸内に集中・集約

その中で注目したのが、2)で、次の文で始まるものでした。

瀬戸内海に新しい産業連関が生まれようとしている。
つながる対象は脱炭素時代のエネルギーと期待される水素。
「造る」「運ぶ」「貯める」「使う」ための拠点が、一企業の枠を超えて集積をつくりつつある。

その内容を整理すると、以下のように。

1)「造る」石炭火力発電の高度化を目指す実証設備「大崎クールジェン」(Jパワーと中国電力出資の実証事業会社:広島県大崎上島町)
・円筒状のガス化炉を用いて粉末状に砕いた石炭を反応させ、一酸化炭素と水素が主成分のガスを製造。その水素を35%含むガスを使って発電
・このガスを別のCO2の分離回収設備を通すと水素の濃度は85%に高まり、回収設備を大型化すれば年間5万トンの水素生産も可能に
・CO2を地中に貯留する技術などと組み合わせることで、石炭火力をブルー水素の製造工場に転換することが可能に
2)「使う」水素の製造から燃焼まで一貫で検証する「高砂水素パーク」(三菱重工業高砂製作所)
水素は燃焼させても温暖化の原因となるCO2を出さない特性を持つが、天然ガスなどに比べて燃えやすく発電用のガスタービンで使うにはコントロールが難しい。
水の電気分解装置など3種類の水素製造設備を整備し、最新鋭ガスタービンで燃やす。
・燃料に水素を50%混ぜて使う技術はめどが立ちつつあり、水素100%での燃焼も2030年には可能に
3)「貯める」水素の製造から受け入れ、発電まで供給網全体に関与する設備を建設(姫路市・関西電力ガス火力発電所)
・2030年までに水素の受け入れ基地を建設し、発電所での水素混焼を開始
・下記液化水素貯蔵タンクを20倍に大型化し受け入れ
4)「運ぶ」:世界初の液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」(川崎重工業製造)
・2030年時点で必要グリーン水素は年10万トン。その安定確保のために海外からの輸入搬送が必要。
・2020年2月、オーストラリアの褐炭で製造の水素を液化し、神戸まで運ぶ実証航海に成功
積載量がその約130倍、6万立方メートル級の大型船を建造

この連鎖を含む総合的なプラント、プロジェクトは、水素を液化天然ガスに依存する、いわゆるブルー水素であり、理想とするグリーン水素の循環システムの実現ではありません。
しかし、その理想に近づける上での、技術的・物理的かつサプライチェーン面からの可能性を示すものと考えます。

水素社会実現には、その産業インフラを一時も早く整えることが必要であり、このレポートはそのリアルの現実的事例、日経がいうところの「水素利用のリアリティー」を示すものといえます。

こうした機運と歩調を合わせたわけではないでしょうが、12月下旬、経産省が、水素普及のための企業支援等のための新法策定・導入の検討に入ったことも報じていました。

グリーン水素化を早期化するための原発再稼働と水素生産電力への原発活用へ

上記の水素エネルギー産業拠点化事例では、液化天然ガスを水素製造原料とすること、及び水素生産そのもののために使うエネルギーが、再生可能エネルギーではなく、石炭火力やいずれは火力発電で作られたブルー水素エネルギーというものです。
従い、めざすグリーン水素社会の実現のために、やむなく遠回りするもの。
当然ですが、ウクライナ侵攻によるロシア産液化天然ガスの輸出入の滞りに伴い上昇したコストは、今後も簡単には元には戻らないでしょう。
また再生可能エネルギー比率の向上も、日本の自然環境面の制約やそれ自体の生産効率の不安定性、コスト性を考えれば、一足飛びに実現することを期待することもできません。
とすると、反対も多いでしょうが、極力安全性の確認作業と評価を急ぎ、可能な限り原発再稼働を図るべきと考えます。
但し、再稼働の目的は、その原発エネルギーを、水素生産のためだけに利用することとするのです。
原発は、二酸化炭素排出がゼロ。
ローコストでのグリーン水素生産技術が確立されるまでは、まだまだ時間的な猶予が必要でしょうから、その間、原発利用により水素を生産し、水素産業のインフラ整備と事業活動における活用、市民の日常生活における活用を推進することが望ましいと考えます。

今回、こうして原子力発電に関する政策課題に触れることになりました。
次回、それも含めて、ウクライナ侵攻後グローバル社会で起きているカーボンゼロ対策の見直しにおいて重要課題となっている、原発政策の見直しを含むGXグリーントランスフォーメーションに関する動向をテーマとします。

なお、エネルギー安保政策課題は、以下の「Ⅰ 国土・資源政策 2050年長期ビジョン及び長期重点戦略課題」の<2.電力・エネルギー安全保障・維持開発管理 >と繋がります。
これは、昨年時点での内容ですが、このエネルギー安保シリーズに区切りがつけば、その内容を2023年版に修正する予定です。

(以下、参考)

Ⅰ 国土・資源政策 2050年長期ビジョン及び長期重点戦略課題

2.電力・エネルギー安全保障・維持開発管理

(基本方針)
気候温暖化・自然環境破壊などがもたらす国民生活、各種事業活動上の不安・悪影響を抑止し、将来に向けて持続可能な電力・エネルギー自給自足体制の整備、安心・安全を保障する同システムの構築を推進し、2050年までに※グリーン水素エネルギーを軸とした100%再生可能エネルギー国家と水素社会を実現する。 ※2022/12/22追記
(個別重点政策)
2-1 100%再生可能エネルギー及び水素社会の実現
1)各再生エネルギー別現状及び長期問題点・リスクなど調査及び分析( ~2030年 )
2)個人住宅及び事業所建物再生エネ発電・電源利用義務化及び支援法制化・施行(~2030年)
3)長期電源構成ビジョン及び長期計画策定(~2025年)、エネルギー危機管理システム策定 ( ~2030年)、進捗・評価管理 (2031年~) 、100%エネルギー自給自足国家化(~2050年)
4)水素エネルギー社会化技術開発調査及び長期計画・予算策定( ~2030年) 、プロジェクト進捗・評価管理 (2031年~) 、(100%再生可能エネによる)水素社会実現( ~2050年)

2-2 電力送配電網の国有化と家庭用電力基本料金の無料化
1)現状電力送配電網問題点調査及び方針立案(~2025年)
2)送配電網国有化法制化及び予算化、移行・実行計画立案(~2030年)
3)電力会社等電力事業システム再構築(国・地方自治体・民間企業及び個人・一般企業)
4)家庭用電力基本料金無料化(2050年~)

2-3 GXグリーン・トランスフォーメーション推進、原子力発電の停廃止と完全安全技術転用
1)産業別・企業別GX推進計画策定 (~2030年) 、進捗・評価管理 (2031年~)
2)国家主導・支援GX推進計画・支援計画策定 (~2030年) 、進捗・評価管理 (2031年~)
(1)2)参考)
3)必要原子力発電関連技術活用政策、長期計画策定 (~2030年)
4)原発停止方針確定、福島原発処理他廃棄物処理長期計画策定・予算化 (~2030年)

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