私たちの無為や怠惰は次世代に引き継がれる:シルバー・デモクラシーを担う者が傾聴すべき22歳米国女性詩人の声

国政政策

今日2021年2月22日日経1面を飾るメインの記事。
特集シリーズ化されている「パクスなき世界」の再開で、「夜明け前」という表題での第1回目。
その冒頭を以下に転載させて頂きます。


世界は転機にある。
20世紀の繁栄の礎となった民主主義と資本主義という価値の両輪は深く傷つき、古代ローマで「パクス」と呼ばれた平和と秩序の女神は消えた。
新型コロナウイルスの危機は超大国・米国の衰えに拍車をかけ、世界の重心は力を増す中国に傾く。
あなたは歴史の転換を傍観するだけですか――。

随分格調の高いプロローグです。

米国バイデン新大統領の厳しい船出。
この記事では、
トランプで異常に拡大された分断とコロナ禍で大きな痛手を蒙った国民生活と経済の修復と回復を同時に行わざるを得ない新政権のリスクを、「民主主義」と「資本主義」の危機と重ね合わせて、論述がなされています。

(参考)
パクスなき世界:夜明け前(1)世界裂く「K字」の傷 民主・資本主義 修復へ挑む

永遠の実験としての民主主義のリスクは想定内のこと

私は、当然のことですが「民主主義」を支持する者です。
しかし、簡単に言うと「民主主義とは多数決制のこと」と子どもの頃から理解していました。
その考えは今も変わりません。

そして今、「完全なる民主主義を実現した国や社会は未だ嘗てなく、それは永遠の実験的テーマである」という認識を抱いています。

この5年間で入手した民主主義本は
・『シルバー・デモクラシー 戦後世代の覚悟と責任』(寺島実郎氏著・2017/1/20刊)
・『女性のいない民主主義』(前田健太郎氏著・2019/9/20刊)
・『民主主義は終わるのか――瀬戸際に立つ日本』(山口二郎氏著・2019/10/18刊)
・『リベラル・デモクラシーの現在: 「ネオリベラル」と「イリベラル」のはざまで(樋口陽一氏著・2019/12/20刊)
そして、昨日ほぼ1年振りの民主主義本
・『劣化する民主主義』(宮家邦彦氏著・2021/2/17刊)
を発注し、手元に着くのを待っています。

現状の自公政権は、連立としての機能はほとんど働いておらず、実質的に自民党独裁に近い政治シーンが続いていることは、周知のとおりです。
当然、苦々しく思い続けているのですが、野党の酷さは、ある意味、対抗としての適性さを欠くだけに、一層目に付き、期待感は遠のくばかりです。
今日もネットでチラッと、E代表の不人気ぶりが自民党を助けている、的な記事を見ました。

女性新党は夢想か?

昨年から提起しているのが、人口の半数、選挙権を持つ人の半数という、民主主義における絶対的マジョリティに近い優位性を持つ女性が女性だけの政党があれば良い、ということ。
いきなり女性政党、というわけにもいかないでしょうから、例えば「平和と社会保障と民主主義を守る会(または、考える会)」のような組織基盤をネット上に創り、拡大していくこと。

そんな提案を、高齢男子が言い出すことの不自然さ、というか、不気味さというか、やってきてはいますが、当然のことながら、ほとんど反応はありません。
Facebookレベルで、20人近い学者・ジャーナリスト・政治家にアプローチを試みたのですが、何かしらの返事・返答があったのはお二人だけ。

昨日のニュースでは、現状国会議員が衆参1名ずつの社民党が、次の衆議員選挙では、女性候補者を半数にすると言っていましたが、掲げる社会民主主義とはどういうものか、ほとんどの有権者は知らないでしょうし、ここまで縮小してしまっていては、何を語っても非現実的、と思いつつ聞いていました。

まさに「女性がいない民主主義」を前提としなければいけない、寒く、痛い、わが国の政治状況。
少しクールダウンしつつ、次の方法を考えているところです。

(参考)
<女性にしか社会は変えられない>シリーズ:「女性が社会を変える10年計画」「女性国会議員4割実現10年計画」私案

◆ 男性社会改造への途(2020/9/21)
◆ 女性活躍推進政策を女性自身はどう感じてきたか(2020/9/22)
◆ 常態化した女性高学歴社会への期待と主体的な社会経済活動参加の先(2020/9/23)
「平和と社会保障と民主主義を守る女性会議」(仮称)創設のご提案(2020/9/24)
女性主体政党創設の夢:2030年自民党女性国会議員30%、20年後女性総理誕生に先駆けて(2020/9/30)

今、民主主義は闇の時代か?


かの日経記事では、バイデン新大統領は「民主主義はもろい」と語ったとし、こうつないでいます。

古代ギリシャ以来、2500年以上の歴史を持つ民主主義は長く衆愚政治に陥ると忌避された。それがこの2世紀ほどで自由や法の支配という価値と結びつき、経済成長に伴って普遍的価値に高まった。
そして今。豊かさが行き渡らず、人の声に耳を傾けない不寛容が広がる。英歴史家エリック・ホブズボームは民主主義を実現する条件の一つに「富と繁栄」を挙げた。民主主義と資本主義を磨き直し、闇の中で未来を探る挑戦が始まった。

昨日「「普遍的」という言葉に気をつけて」という記事を書きましたが、果たして本当に「普遍的」な価値を持つものにまで到達していたのか。
甚だ疑問を持ちます。
(参考)
「普遍的」には気をつけて – 2050 SOCIETY

果たして、民主主義の実現には「冨と繁栄」が不可欠なのか。
磨き直すことで、望ましい「民主主義」と「資本主義」は新しい姿を現すのか。
また今が、「闇」とでも形容すべき時代なのか?

どうも、具体的・現実的なイメージが浮かばないのですが、いずれにしてもその鍵の一つとなるのが、先述した「女性」であり、2025年には、全員が後期高齢者世代入りしている「団塊の世代」ではないかと考えています。

団塊の世代は、シルバー・デモクラシーの一大勢力として、国政選挙に大きな影響を及ぼすことができる、ゴールドならぬシルバーの輝きを保つ可能性をもつ勢力。
年金を受け取って逃げ切る世代ではなく、次世代への責任を未だ果たしていない世代として、残す人生を活かすことを考えてもよいのではないか。
そう思います。

注文した新刊、『劣化する民主主義』を読み終えたのち、これからの民主主義について考えるべきことなど、また書き始めたいと思っています。

なお、資本主義についても当然関心はありますが、当分は、種々の社会問題と関連付けて今後焦点を当てて考察するレベルに留まるかと思います。

「私たちの無為や怠惰は次世代に引き継がれる」ことを恥とすべく

日経紙同記事最後に、2021年1月20日のバイデン大統領就任式で、22歳の女性詩人アマンダ・ゴーマンさんが「新たな夜明け」へ行動を呼びかけ、
私たちの無為や怠惰は次世代に引き継がれる
と朗読したことを紹介していました。

まさに、「私たちの無為や怠惰は次世代に引き継がれる」ことを、団塊の世代は、強く認識し、そうしない、そうならないための日々、時間を少しでも送るべきと考えます。
アマンダさんの詩のその部分を、今回の最後に紹介します。

We will not be turned around
or interrupted by intimidation
because we know our inaction and inertia
will be the inheritance of the next generation
Our blunders become their burdens

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