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ECONOMIC POLICY

経済重視の左翼対脱成長のコミュニズム:資本主義をめぐるこれからの政治と経済

前回、最近読んだ以下の3冊の新刊新書を参考にして、多くの問題を抱える日本の政治と経済についてシリーズ化することをこの記事でお伝えしました。
⇒ 「資本主義、資本論、社会主義から考えるコロナ後の日本の政治・経済・社会」(2021/4/19)

・『資本主義から脱却せよ~貨幣を人びとの手に取り戻す~』(松尾匡・井上智洋・高橋真矢氏共著::2021/3/30刊)
・『人新世の「資本論」 』(斉藤幸平氏著:2020/9/22刊)
・『いまこそ「社会主義」 混迷する世界を読み解く補助線 』(池上彰・的場昭弘氏共著:2020/12/30刊)

1回目の今回。
まず、個々の新書をアトランダムに取り上げ、主に資本主義に視点を当てて、これから進める全編の序論的に考えてみることにします。

資本主義から脱却せよ』が主張する、経済重視の左翼対脱経済のコミュニズム:資本主義をめぐるこれからの政治と経済による資本主義からの脱却

資本主義から脱却せよ』では、資本主義のダイナミズムを加速させることで、その極限において資本主義からの脱出を図ろうという思想、「加速主義」を提起しています。
正直なところ、これだけでは、その意味はよく分かりません。
AI社会の進化により「脱労働社会」が出現することを想定し、それに備えるとしてベーシックインカムの導入を、その章で、井上氏は提起します。
これも加速主義の一例としていることで、少しばかり理解できた気がします。
ベーシックインカムも、その加速主義という思想と経済上の取り組み手法の結果と見ればよいわけです。
国債発行でお札を刷り、ヘリコプター・マネーとしてばらまくのです。
自国通貨を発行する国家の財政は、いくらでも金を発行できるという点で、究極の国家資本主義が行うベーシックインカムと言い換えることができるわけです。

そしてこれは、松尾氏が主宰する薔薇マークキャンペーンにおいて軸としている反緊縮すなわち、収縮する経済に対抗する経済活性化によるデフレ脱却と気脈を通じているわけです。
その事情は、
朴勝俊・山森亮・井上智洋氏提案の「99%のためのベーシックインカム構想」ー1(紹介編)(2021/4/8)
朴勝俊・山森亮・井上智洋氏提案の「99%のためのベーシックインカム構想」ー2(評価編)その意義と課題
で批判的にではありますが、評価もし、賛同もしました。

人新世の「資本論」 』による、従来左派批判

一方、『人新世の「資本論」 』では、こうした左派の新自由主義に対抗する形での反緊縮主義を批判・否定します。
ということは、1%の超富裕層を除いた99%のためのベーシックインカムについても、それが経済対策としての意味・目的を強く持つゆえに理論的には反対していることになります。

ただ、人新世(ひとしんせい)資本論は、一般的なマルクス理論を、後年のマルクス自身による膨大な研究記録から、資本主義の帰結としての気候変動・地球危機を絶対化したうえでの資本主義否定がベースです。
そのため、現状の膨張し続ける資本とその経済を終わらせることが絶対条件になります。

ここで、松尾・井上・高橋3氏の経済回復路線は、タイトルが「資本主義からの脱却」を謳いながら、たとえ、国債という公費投入によるものであっても、本質的には国家資本経済主義、経済成長主義であり、それは気候変動・地球危機に加担するものになり、斉藤氏が受け入れることはありえないのです。

しかし、マルクスが生きた時代は、19世紀。
資本主義の行き着く先を想像し、一応理論づけを目指したかもしれませんが、現状のインターネットや化石エネルギー大消費、金融資本の膨張によるグローバル格差社会の実現まで想像・想定できていたとは到底思えません。

ただ、経済の回復すなわち経済成長を前提条件とした議論は、それが反緊縮対新自由主義論であっても、ベーシックインカム主張対反対論であっても、考えてみれば、同根、どっちも本質的には変わらないとみなすことができます。

インフレを望まない生活者、インフレ対策よりも労働政策を必要とする人々


現在年金生活を送っている私は、毎年年金から差し引かれる介護保険料が増えて、手取りが少なくなっていくのは困ります。
しかし、基礎的な食料・食品や日用品などの価格は、スーパーやドラッグストアの激しい競争で、工夫すればより安く購入でき、ネットでの購入もポイントをうまく使えば、相当節約した生活を送ることができます。
言うならば、インフレがない方が、むしろデフレで物価が下がる傾向の方が助かります。

子どもを抱えている人や、非正規雇用の人、エセンシャルワークで低賃金を強いられている人々にとって、賃金、所得が増えないデフレ経済は、コロナ禍による失業や所得減少もあって、生活を厳しくさせていることは間違いありません。
しかし、その根本的な要因には、雇用政策・雇用制度、賃金制度などの在り方に問題があり、その制度や法律を改正することでかなりの改善は可能です。
例えば、常用雇用を希望する人の正規雇用義務化、派遣労働の一部禁止及び廃止、最低賃金の引き上げ、解雇規制の強化などを法制化することによりです。
それは当然、新自由主義の一部転換を法律で規定することを意味しますが。

話を少し前に戻して。
私の現実的な生活状況をお話しするまでもなく、現状の日本では、基礎的な生活コストは、住宅事情を除けば、インフレよりもデフレ、経済成長よりも安定経済の方が一定レベルに保つことが可能です。

実は、私が提案しているベーシック・ペンション生活基礎年金による月額15万円という金額は、そのレベルの生活を保障する意味を持っています。
もちろん、インフレが起きなければという前提です。
消費税も、消費者からすればインフレ政策です。

それらに人新世が示す脱成長、脱経済の根拠もしくは妥当性のごくごく一端を見ることができると私は考えています。

資本主義から脱却せよ』がこだわるリベラルの経済至上主義と新自由主義経済はどう違うのか


また、『資本主義から脱却せよ』で示す資本主義からの脱却の鍵は、銀行の信用創造機能を廃止もしくは大きく規制し、国家がその権利を取り戻すこととしているのですが、それも見ようによっては、国家資本主義の一つの道、選択でもあると解釈できます。

ことあるごとに、コロナ禍を最大の理由とするベーシックインカム必要・導入論者は、もちろん生活に困窮する人々の救済のためが最大理由ですが、コロナが終息した場合、その根拠が消滅します。
とすると、元のように、デフレ脱却のためにお札を刷ってばらまくことが、財政破綻にならないことを盾にするだけで、社会保障制度全体をどうするかの議論は後回し。
結局形を変えた資本主義を温存・継続させ、多くの社会問題を抱える政治や行政改革や諸制度改革の道筋もはっきり示さずに、既得権は既得権として継続させたままのベーカム主張にとどまるわけです。
これが果たして真のリベラルなのか。

新自由主義の資本家と権力指向政党・政治家偏重主義対国家資本主義傾斜ヒエラルキー温存型旧リベラル。
乱暴に言えば、そんな図式により、形をなんとなく変えたような感じですが、本質的にはそう変わらない社会、政治、経済が続くことになるのでは、と少し気が重くなります。

人新世の「資本論」 』が描くコミュニズムにおける政治と経済のモデルは?

そうは言っても、人新世資本論によるコミュニズムを、私は忌避します。
そこには共同体幻想が厳として存在します。
あるいは新たな共同幻想を生み出そうという意図さえ透けて見えるような気がします。
コミュニズムのベースとして「コモン」という概念を掲げることにその意図が見えます。
「共有」の意味を持つコモン。
その共有の主体あるいは組織単位は、どういうものなのか。
このコミュニズムにおける財政、経済は、どのような形式・形態になるのか。
これまでのソ連・ロシア・中国のようなコモンでは決してありえないはずですが、その望ましいモデルは過去も現状も見ることはできません。

実は私も「コモン」という用語は、使いたいのですが、あくまでも「コモン・センス」のコモンです。
コミュニズムに繋がる、繋げるコモンではなく、コモン・センスを形成し、それが政治行政、社会システム、社会経済システムの基本にならないか、できればそうしたい。
このテーマも本シリーズの中の一つの課題に含んでいます。

いまこそ「社会主義」』で示す経済学未知の領域、過少消費の時代

いまこそ「社会主義」』の中で、的場氏が、コロナ禍における生活の変化を引き合いに出して、過少消費の時代が出現する可能性について述べています。
テレワークが不都合なく行われて、当たり前となり、公私とも自宅時間が増えることで、消費は減少する。
その現実が既に起きているわけです。
これに加えて、人口減少社会、超高齢化社会、少子化社会が、同様の傾向を招き、その進行の速度を早め、可能性を拡大します。
これは、ある意味『人新世の「資本論」 』で斎藤氏が主張する「脱成長」であり「脱経済」でもあるわけです。

基本的には資本主義経済、資本主義社会は、過剰消費を起こすことを目標あるいは前提としている。
そのため、過少消費の傾向や加速化等、経済学が経験しない領域・課題が今後出現するのです。
加速主義は、別の角度、別の要因で、自然発生的に起きる可能性があることになります。
この時、資本主義、資本主義経済は、変わらずデフレ・インフレ政策、反緊縮政策を、新自由主義とタッグを組んでまで、何とか再成長軌道化すべく邁進するのでしょうか。

ポスト資本主義を具体的に提示できていない


斎藤氏は、『人新世の「資本論」 』で、脱成長資本主義はありえない、とします。
では、ポスト資本主義は、どういう経済及び社会を誕生させるのでしょうか。
社会主義社会、コミュニズム社会における財政と経済は、どのような構図を為し、どのように機能するのでしょうか。
一度斜め読みしたレベルでは、まだ私にはそれを読み取ることも、切り取ることもできていません。
その萌芽と評価できる事例を提示してはいますが、国家レベルでの政治と経済の改革の可能性を示唆するレベルではまったくありません。
その事例や構想などについては、必ず別の機会にご紹介します。

また、『資本主義から脱却せよ』で資本主義からの脱却を喧伝する松尾・井上・高橋3氏も、ポスト資本主義の財政と経済について、明確な、実現可能な、あるいは実現すべき形を提示するまでには至っていないと思われます。
政府は必要なお金をどんどん刷って、使うことができる。
乱暴で、稚拙な解釈ですが、加速主義では理解不能の、脱出不能の平等論?にとどまっているように思っています。
もちろん、理解不足と承知していますので、読み直しはするつもりです。

ベーシックインカム実現を望む一部の人々にある、行き過ぎた資本主義の終焉予想・期待とポスト資本主義構想欠落

最近、ベーシックインカムの実現を望みつつも、現実的にはムリとほぼ諦めの状態にある人も相当の割合で存在すると思われます。
実現できないとする理由は、どうしても所得再分配が不可欠だがその実行に悲観的な場合が一つ。
もう一つは、仮に財政規律から解放されて実現した場合のハイパーインフレ発生リスク不安から踏み出せない場合。
行き過ぎた資本主義に対抗するために累進課税の強化や、他の資産課税等への課税強化なども主張されていますが、すべて富裕層が敵、悪とみなすパターナリズムも困ったものです。
天に唾するようなものですから。

そして何割かの人は、富裕層の極大化と格差拡大を増長させる資本主義が、まさに自爆・破綻して初めてベーシックインカムが導入されるしかないのでは、と達観したかのように発言しています。
要するに、それらの善意ある人々に対して希望を抱かせる、これからの資本主義の望ましいあり方、換言すればポスト資本主義、そしてそれと連動する政治と経済のあり方を、学者・研究者も、当然ながら政治家も、イメージでも構わないのですが、描けていないのです。

天才と秀才。
双方の才能を持つ斎藤氏をもってしても、理想社会を描き、人々の活動を促すために、マルクスという名前を用いざるを得ないことそのものに、残念さを感じます。
改革は、過去の何かを頼りとすることでなしうるもの、なすべきことではないと思うのです。
人間の精神構造と言語体系に革新性を求めることは不可能です。
しかし、新しい未来を創造するためには、今という現実をしっかり受け止め、描写し、分析し、これから必要とし、有効と思われる、実現可能な方策を、今の言葉で組み立て、表現する努力を重ねるべきでしょう。
できうるならば、生活者の言葉で。

今回から新しいシリーズが始まると予告したおり、以下のテーマで今後取り組んでいく旨、お伝えしました。
しかし、今日の第1回目から、以下にないテーマ、タイトルでのスタートになってしまいました。
今回もそうですが、各回において、3冊の書を横断的に捉えて、共通のテーマについて考える場合、1冊だけに絞って論じる場合など、取り組み方も変わります。
またシリーズが進めば進むほど、既に論じた内容、取り上げた内容を繰り返すことも出てくると思います。
どうぞその場合はご容赦頂きたく存じます。

1)反緊縮vs新自由主義と政治と経済
2)気候変動・環境危機問題と政治と経済
3)SDGs、ESGと政治と経済
4)民主主義vs社会主義をめぐる政治と経済
5)ウィズコロナ&アフターコロナと政治と経済
6)新しい働き方・生き方と政治と経済
7)新しい時代の共同体と個人と政治と経済
8)新しい社会グループ、ニュー・ニュートラル創造と政治と経済
9)ベーシック・ペンションと社会保障と政治・経済そして社会

次回は、『人新世の「資本論」 』をベースに、「気候変動・環境危機問題と政治と経済」について考えることにします。

<ベーシック・ペンションをご理解頂くために最低限お読み頂きたい3つの記事>

⇒ 日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
⇒ 生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
⇒ ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)

上記3冊の中からベーシックインカムについての論述を取り上げた、以下の記事も参考になれば、と。
高橋真矢氏によるベーシックスペース、ベーシックジョブ、ベーシックインカム、3B政策と課題(2021/4/22)
マルクス・マニア、的場昭弘氏のベーシックインカム認識と限界(2021/4/24)

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