通所介護事業変革を:リハビリ特化型デイサービス拡大に思う

介護制度、高齢化社会


先日、日刊紙に、リハビリ専門デイサービス事業所の折込チラシが入っていた。
<見学・無料体験 予約受付中!>とある。
内容も分かりやすくて、感じが良いチラシだった。


4年ほど前に、大腿骨を骨折して入院時に、随分リハビリで理学療法士さんに世話になった経験がある。
彼の奥さんが管理栄養士で、介護施設に勤務しているとも聞き、いずれ夫婦で独立して、介護施設の事業ができるといいね、と話したことがあった。

このチラシの事業所は、愛知県内にすでにほぼ20か所のリハビリ専門デイサービスを展開していることも今回知った。
リハビリ専門は、事業的にも持続性・安定性・成長性があると思える。
医療に近い分野でもある。


通所介護=デイサービス介護事業の現状と今後

一般的なデイサービスのニーズは高く、在宅介護・家族介護の多くの人たちが利用し、このシステムは、訪問介護事業と並んで、なくてはならないものとなっている。

しかし、双方とも、事業規模が小さく、介護士の確保が困難であり、事業の継続性には常にリスクが伴っている。

デイサービスの多くは、自宅と施設間の送迎付きで、1日の内の数時間、施設で時間を過ごすことで、家族介護を側面から支援する機能を持っている。
入所型介護サービスは、期間限定でのショートステイはあるが、実質公的には、要介護3以上という条件がある特養と、リハビリ専門で復帰をめざすための老健に限定されている。
そうでなければ、民間経営の高額な老人ホームやサービス付き高齢者住宅などを利用しなければいけない。
実質、入所型介護サービス施設には、選択肢がないと言える。

その中でのデイサービスは、ある意味、わが国介護制度のニッチ、隙間を埋める形での事業といえるだろう。

自宅で介護を受けたい、自宅で暮らしたい。
ほとんどの人は、異口同音にそう希望する。
気持ちは十分わかるが、その実現・継続には、相当のコストがかかる。
そのコストはだれが負担するのか、負担すべきか?

団塊の世代の後期高齢者化で、今後介護を必要とする高齢者が急増する。
そこでデイサービスのニーズも、同様のスピードで高まるが、果たして供給が追いつくかどうか。
施設・介護職、両面での危惧である。
加えて、介護保険財政面からの自己負担率の高まりも不可避となっており、デイサービスや訪問介護による手厚い支援を、介護を望む人すべてが受けることができるかどうか。
先行きが不安である。


特化型デイサービス事業だけが生き残る?

リハビリ特化型デイサービスは、身体的機能のリハビリテーションにより、まさに生活局面における自立を支援する。
身体的な自立は、精神面での自立にも貢献する。
在宅で必要とする可能性がある訪問介護への依存を低下させることも期待できる。

一方、時間を過ごすことが主目的かのようなデイサービス利用には、私は少々疑問を持っている。
これは、生活介助の領域には入らないのではないか。
とすると、今後介護保険が適用されるサービスから排除される可能性があると考えるべきではないか。

とすると、送迎付き介護デイサービスは、特定の目的を持った、いわゆる特化型デイサービスのみ事業として残り、成り立ちうるものと考えるべきではないか。

その筆頭が、リハビリ特化型デイサービス事業である。
それ以外では、保険適用は難しいが、理美容サービスを受けるための送迎付きデイサービスも特化型としてニーズがありそうだ。
特養など入所型施設には、別料金で出張理美容を利用するサービスが用意されている。
そのデイサービス版だ。
全額自己負担制だが、もし、特化型デイサービス以外がなくなれば、理美容費用の一部を保険給付し、一部を自己負担としてもよいのではと考える。


特化型デイサービス以外のデイサービス事業の進むべき方向と介護業界の改革


これによりデイサービス事業所が削減されれば、介護スタッフの一部は訪問介護事業に、一部は入所型介護事業に、就労先を変えることになり、ごく僅かだが、介護士不足の改善に繋がる可能性もある。

ただ、加えて、私は、可能な限り入所型介護サービスをより多くの人が利用できるように改革し、訪問介護サービスも、縮小すべきと考えている。
一戸一戸、一人ひとりを訪問し、介護サービスを提供するための人的資源には限りがある。
またそのサービス業務に、他業種・他職種を上回る給与を支給することも、現実的には相当の困難が伴う。

一対一対応の介護サービスでは、事業規模は小さいままであり、働くスタッフに安心・将来への夢を与えることができないだろう。

介護事業規模の拡大の主な狙いは、介護職の就労条件・就労環境の改善にある。
今後も、他業種・多職種に比べて低い介護職の賃金が、簡単には上がることはないと考えられるからだ。
だが、一定規模以上の入所型介護サービス事業の方が、安定した労働条件・環境を提供してくれる可能性が高いゆえだ。

もちろん、介護職の賃金が、低いままであってよい、ということではない。
最も推奨したいのが、ベーシック・インカム制度の導入による、介護職者の収入の引き上げである。

あるいは、介護職を社会保障職体系における専門職者として、準公務員化し、特別介護業務手当を給付する方法も提起してきている。

だが、どちらも、簡単に実現できるものではない。

今、介護業界にある方々が主体的に取り組むことが可能なことはなにか。

もちろん、以前紹介したように、介護保険制度の改悪に反対の声を上げ、意見・要望を結集して政治を動かす努力をすることも必要だろう。
危ない介護保険をどうすべきか:上野さん、樋口さん、女性で政治を変えましょう!

それも大切なことだが、介護サービス事業の将来、望ましい姿を描き、自ら業界を変革していく努力も加える必要があると考えている。


先週、義母がサ高住から、5月1日に引っ越した特養からの初めての5月分の請求書が届いた。
また、ちょっとモメていたサ高住退去に伴う諸費用などの精算内容も確定した。

そこで、次回は、サ高住・特養比較をまじえた介護体験をテーマにしたいと思う。

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