
全世代型社会保障改革のあり方:同社会保障検討会議中間報告から考える政治と行政の貧困(1)
改革と呼べる代物ではない安倍内閣目玉の「全世代社会保障政策」
昨年2019年12月19日に、厚労省の諮問機関である「全世代型社会保障検討会議」の中間報告が公表された。
⇒ https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/jinsei100_5_s.pdf

どう読んでも、社会保障費財政問題からの視点のみから、負担が増すばかりの現役世代の負担の抑制と受益高齢世代の負担の増加をもって、全世代型社会保障改革、などとカッコのいい言葉を発しているとしか思えない安倍政治。
厚労省等関係行政官僚も、この程度のことで「改革」への取り組みとしてくれるのなら、随分気楽な仕事と感じているに違いない。
検討会議のメンバーは、財界や大学等の専門家で構成されており、本来ならば自由な立場で、中長期的視点から改革と呼ぶにふさわしい議論と提言を行うべき。
しかし、この会議は、安倍首相が議長を務め、関係閣僚が主要メンバーの一部で、いわゆる有識者メンバーも経財界代表が多くを占める、ほとんど内閣・与党御用会議。
結局、厚労省の事務方のペースでの、拙い中間のとりまとめにとどまっているこの中間報告を遡上にしつつ、「全世代型社会保障制度」について考えていきたい。

全世代型社会保障検討会議の中間報告の構成
この中間報告の構成は、次のようになっている。
第1章 基本的考え方
1 はじめに
2 経済社会の現状
・人生100年時代とライフスタイルの多様化
・少子高齢化の克服
3 今後の取組の基本的考え方
・一億総活躍社会による「成長と分配の好循環」
・全世代型社会保障への改革
・これまでの取組
4 今後の改革の視点
・生涯現役(エイジフリー)で活躍できる社会
・個人の自由で多様な選択を支える社会保障
・現役世代の負担上昇の抑制
・すべての世代が公平に支える社会保障
・国民の不安への寄り添い
第2章 各分野の具体的方向性
1 年金
(1)受給開始時期の選択肢の拡大
(2)厚生年金(被用者保険)適用範囲の拡大
(3)在職老齢年金制度の見直し等
(4)ねんきん定期便等の見直し
(5)私的年金の見直し
2 労働
(1)70歳までの就業機会の確保
(2)中途採用・経験者採用の促進
(3)兼業・副業の拡大
(4)フリーランスなど、雇用によらない働き方の保護の在り方
3 医療
(1)医療提供体制の改革(2)大きなリスクをしっかり支えられる公的保険制度の在り方
①後期高齢者の自己負担割合の在り方
②大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図る
ための定額負担の拡大
4 予防・介護
(1)保険者努力支援制度の抜本強化
(2)介護インセンティブ交付金の抜本強化
(3)エビデンスに基づく政策の促進
(4)持続性の高い介護提供体制の構築
第3章 来年夏の最終報告に向けた検討の進め方
この構成を見る限りでは、どうも全世代社会保障のイメージがわかない。

政府・与党の全世代社会保障の狭い視野・視点
実のところ、第3章の「来年夏の最終報告に向けた検討の進め方」の冒頭に、
こんな文がある。
「現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、切れ目なくすべての世代を対象とするとともに、すべての世代が公平に支え合う「全世代型社会保障」への改革を進めることは、政府・与党の一貫した方針である。」
ここまではっきりと浅く狭い視点でしか考えていないことを明言していることは、ある意味立派というか、なんというか・・・。
こちらが恥ずかしくなってしまう。
では、改革と呼べる全世代型社会保障制度とは、どういうものか、どうあるべきか・・・。
次回、本中間報告の内容を見ながら、検討していきたいと思う。

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