明治安田生命、契約社員の7割女性1900人を正社員に。その背景と目的

現役世代ライフ

今日2021年4月2日付日経で
「女性管理職、5年後14% 政府目標の半分どまり 女性社長「10年以内」2割」
と題した記事を見かけた。
同記事の書き出しは、「女性が活躍する場をいかに広げるか、経営者が悩んでいる。」というもの。

その内容とそこから感じることについては、後日取り上げることにして、それより先、3月29日同紙で
働き方innovation 多様性、生かせてますか>というシリーズの一環で、
「AIで事務が消える… 明治安田生命、女性1900人を転換」
と題した記事があった。
先述の女性管理職問題とも重なるので、今回はそのポイントを紹介しつつ、考えるところを述べたい。

明治安田生命、全国の営業職以外の女性契約社員2600人中、1900人が正社員に

明治安田生命保険では全国の約2600人の契約社員全員が女性。
そのほぼ7割1900人が、今月4月に正社員に転換する。

子育てや介護など家庭の事情で転換を望まない場合、入社後間もない場合等を除き、希望者全員が自動的に総合職地域型正社員となる。
転居が伴う転勤はなく、役割は総合職となり、年収は平均10%アップし、退職金も支給。

これまで契約社員が主に担っていた定型事務がITに切り替えられる中、能力や意欲に応じて中核業務を担うことになるとしているが、今後予想されている労働力人口減少対策としての側面もあることは言うまでもない。

契約社員やパートタイム職など、金融・証券等の業種企業の非正規雇用社員の多くは、高学歴や他業種などの経験が豊富な女性であることは周知であろう。

女性管理職比率と女性正社員構成比との関連を示したデータは実はない


女性の管理職の比率の低さは、元をたどれば、女性正社員の少なさにあると私は考えている。
正社員における女性比率が高くなるとともに就労年数が長くなれば、自ずと女性管理職は増え、比率も高まるだろう。
しかし、女性社員構成比を示した上で、女性管理職比率を示したデータは、これまで見たことがない。

女性活用でよく引き合いに出され、表彰もされる資生堂。
同社などは、元々女性社員比率が高いのだから、活用するのは当たり前で、何も表彰されるものでもあるまい、と私は以前から思っている。
むしろ表彰されるべきは、女性正社員比率が低いが、管理職比率が高い企業であろう。

明治安田生命などの生損保は、これまで正社員数比率が低いが、契約社員・非正規社員数が多く、管理職任用は、転勤を必須とする男性にほぼ限られていたといってよいだろう。
労働力人口の減少への対策という面は否定できないが、そろそろ非正規社員の能力の高さを活用しなければまずい、という状況に気づいたと言えるのではないだろうか。

こうした管理職としての潜在能力を持つ女性の任用政策は、今後顕在化すると考えている。

働き方改革、本質は、それぞれの職種の仕事の内容に応じて異なる


タイミング的に、コロナ禍もあって、各企業は働き方改革の途上にもある。
こうした生損保の場合、どうしても間接職の営業職への転換が真っ先に思い浮かぶ。
しかし、その営業の在り方自体が転換・返還をAI社会、IoT社会で強いられている。
従い、正社員に転換した女性の能力の発揮の場は、営業に求められるわけではない。
これもフォローの風だろう。

働き方改革は業種・職種、そして企業規模などによって大きく異なることを認識すべきだ。
今回の事例は、そのほんの一つの例に過ぎない。

事務サービス・コンシェルジュ職設置の目的と狙い

そこで同社が企画したのが、「事務サービス・コンシェルジュ」という職種。
その業務内容は、営業職に同行して顧客先を訪問。
保険金が速やかに支払われるよう必要書類に不備がないかを確認するほか、遺産整理に関する助言や成年後見制度の紹介など高齢期の暮らしもサポートする。
やはり営業職の一種ではないかと思われるが、正直なところ否定はできまい。
ただ、断定もできまい。
顧客の種類の数だけ、営業現場での対応は異なるだろう。
営業支援業務ではあるが、営業補完業務でもあり、時に営業の決め手になる仕事にもなりうるだろう。
線引は曖昧だと思うが、逆に営業現場が向いていると感じる人、営業が面白いと感じ、潜在的な能力を発揮する機会にもなりうる。
企業サイドも、多少はその期待もあるだろう。
しかし、第三者的に考えれば、営業の在り方が変革されることへの期待の方に関心がある。
オペレーション・ラインスタッフ的な役割を果たしつつ、営業業務改善・改革のプランナーになれば企業の思惑が果たされるのではないかと思われる。

地域限定、勤務時間限定の中からの改善そしてイノベーションが生まれないか。
少し先走りすると、こうした取り組みを進化させることで、地域事業部制、地域事業会社化が進み、女性管理職・女性役員の任用に結びつけるところまで、経営陣が考えているならば、より好ましいと思うのだが、果たしてどうだろうか。
1700 人中、約700人が、この事務サービス・コンシェルジュに就くという。

企業サイドでは、翌年2022年度にはコンシェルジュにチーフ職を新設。
そして、チーフ職から総務課長、総務部長への昇進も可能とし、全国型総合職に転換すれば、さらに上を目指せるという。
何も全国型総合職に転換せずとも、職住一致の地域で能力を活かすことができる。
地域事業部制・地域事業会社化すれば済む話だ。
全国型総合職という発想自体、無用の長物と考えるべきだろう。
こうしたヒエラルキーを至上とした考え方も今後は切り替えるべきかもしれない。

(女性)ダイバーシティ推進室長の発言に、「人口減少でやがて人手不足に直面する。社内の女性の力を生かさない手はない。」という下りがある。
人手不足を想定する故に女性と高齢者を活用する。
こうした発想そのものを女性管理職が持っていること自体に違和感を感じるのだ。

初めに管理職ありき、ではなく、リーダーシップ、マネジメントを必要とする仕事があることから始めるべき

女性管理職というポストがあるから女性を任用する。
従来のこうした発想ではなく、仕事の一つの種類としてマネジメントに重点を置いた職務が必要であり、その適性を持つ女性、あるいはその実務を担当している女性が必ず就労している。
そういう職場・組織を拡充していけば自ずと女性管理職は増えていく。

よく女性管理職のロールモデルが必要と言われるが、それもおかしな話と思う。
仕事を進める内にリーダーシップを発揮し、リーダーシップが必要になり、その適性や能力・意欲を持つ女性が増えていく。
そういう職場・組織を構築する企業文化・組織風土を形成することが経営陣及び管理職のこれからの重要な仕事と認識すべきだろう。
但し、それらが長時間勤務を必要とするものであっては絶対にいけないことは、肝に銘じておく必要があるだろう。

従い、チームリーダーが必要な女性主体のプロジェクトチームやタスクフォース的組織業務を構成・組織化すれば自ずと女性の能力を発揮する機会は増える。
そういう仕掛け・機会をいかに増やすかだ。
高度の専門能力を必要とする組織においてもリーダーは生まれ、マネジメント業務がそこ内包される。
そうした業務を、年度計画や中期計画に組み入れていけばよいのだ。

当初そのマネジメントは男性管理職が担うかもしれない。
とすれば、その男性管理職の責任は唯一、女性リーダー、女性マネジャーの選抜・育成にある。

契約社員の正社員転換前に行っていた、営業職の販売奨励金廃止改革

実は、こうした契約社員の多くを「事務サービス・コンシェルジュ」として活用を始める前に、同社はそのための布石を打っていた。

3月26日付同紙で
保険営業員の奨励金廃止 明治安田、生保で初 給与・賞与に実績反映、目先の契約主義から転換
と題した記事があった。

従来の、保険の契約実績などに応じて営業職員に支給していた販売奨励金を、業界に先駆けて廃止する、というもの。
営業職員が目先の契約を追いがちな傾向を改めるため、としているが、実は、先述の間接部門の女性契約社員の「事務サービス・コンシェルジュ職」任用と一体として考えたものと言えるだろう。
要は、馬人参というインセンティブを廃止することで、コストを抑制することも可能になる。
コンシェルジュ職配置で増えるコストの一部を、それで補完できるわけだ。

同社の営業職員数は約3万6千人。
もちろん女性が多数を占めている。
営業職の意欲を高める要因ではあったが、弊害も多いことは知られている。

例えば、過去、経営者向けの生保などの乱売が社会問題となり、金融庁から定期的に販売の軌道修正を迫られてきた事があるが、その背景には、奨励金や各社が定期的設定する保険月があるとされる。

この奨励金の廃止による一部の営業職員のモティベーション低下も予想されるが、その廃止を歓迎する営業職も多いことも想像に堅くない。
むしろ、コンシェルジュ職の活用で、実績の向上・効率化を期待する意図も見える。

同社のこうした政策は、22年度から営業職員の報酬の決め方の見直しに続く。
業績に応じて毎月大幅に上下させていた給与を全額固定給に切り替えるとともに、営業職員の主体的な活動への転換も図り、契約実績に応じた報酬は賞与を年2回から4回に増やすことで報いるとしている。

但し、この記事内では、間接職の契約社員のコンシェルジュ職への転換については触れられていない。
というか、同社主導のブリーフィングであり、日経サイドは、小出しの情報に乗っているだけだろう。

これは、企業としても他社との競争対策もあり、広報そのものも戦略性を持っていることを示したものと言えなくもない。
女性管理職から少し焦点が外れてきた。
このテーマは、継続して取り上げていきます。

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