トヨタが牽引する、水素社会につながる技術開発と実証・実用化:2050年水素社会実現までの途上記録-2

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2050年までに、グリーン水素エネルギーを主電源とするエネルギーの自給自足国家実現を提案している当サイト。
現状では極めて困難と予想されていますが、種々の領域での水素化及び水素活用技術の開発が進められ、いずれ起きると期待されるイノベーションが、それが決して夢物語ではなかったことを示してくれると思っています。
そうした水素に関する技術開発や実用化の最新情報をピックアップし、その道のりを
<2050年水素社会実現までの途上記録>としてメモしていくことを始めました。
1回目は、先日の農機具最大手クボタの以下の事例
水素利用の燃料電池トラクター、クボタ2025年世界初導入へ(2022/6/2)

今回は、FCV(燃料電池車)や水素自動車で水素関連技術開発と実用化で、日本のトップ企業であるトヨタの最近の情報をピックアップします。

持ち運び可能な水素カートリッジを開発

まず初めは、水素の携帯容器(ポータブル水素カートリッジ)試作品開発について。
6月2日にトヨタが発表したもので、詳しいことは、トヨタの以下のサイト公開情報で知ることができます。
⇒ トヨタ、ウーブン・プラネット、持ち運び可能なポータブル水素カートリッジのプロトタイプを開発 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト (global.toyota)


FCVやドローンなどの動力源に使うことを想定して試作したこの携帯容器。
トヨタと子会社ウーブン・プラネットが共同で開発したもので、直径18cm、全長40cmで重さが5kgの円筒状で、樹脂や炭素繊維を素材としている。
裾野市に建設中の、人がリアルに生活するWoven Cityとその近郊で、水素エネルギーが日常生活で気軽に使用できるよう実用化に向け、水素の「つくる」「運ぶ」「使う」という一連のサプライチェーンの実証実験を、ENEOSを加えて進めるとしています。

ポータブル水素カートリッジ(プロトタイプ)

(画像の容器が、そのプロトタイプ。同社HP https://global.toyota/jp/ から)
この画像から瞬間イメージしたのが、加湿器のタンク。

水素カートリッジの特徴とメリット

この特徴として、以下を上げています。
1)パイプラインなしで生活圏に水素を持ち運ぶことができるコンパクトサイズ(上述)
2)カートリッジ型であり、容易に交換でき、すぐに使用可能
3)汎用性の高い仕様にすることで、幅広い用途への適用が可能に
4)小規模インフラで対応でき、災害時にエネルギーが供給されず孤立する地域や未電化地域などに必要エネルギーの供給が可能に

水素エネルギーの現状と今後

水素は現在、主に化石燃料から生成され、肥料製造や石油精製工程といった工業・産業用として利用されているが、コストや安全性等の面から、日常生活用エネルギーを含む幅広い用途ではまだ利用できない状況にある。
しかし、将来は、水素が非常に少ないCO2排出量で生成され、より多くの用途で使用されることが期待されており、トヨタがその技術開発においてリーダーシップをとることは間違いないですね。

なお、同日、トヨタは、家庭用蓄電池事業への参入も発表しています。
⇒ トヨタが家庭用蓄電池  車の技術応用 HVからも給電 :日本経済新聞 (nikkei.com)
水素カートリッジの実証・実用化よりも先行する形ですが、どちらも、カーボンゼロ社会実現のためのキー・テクノロジーであり、基軸システムとなるもの。
両方あってのものであり、トヨタの存在感は、将来の「つくる」「運ぶ」「使う」サプライチェーン創造において一層高まると考えています。

⇒ https://global.toyota/jp/

「カローラ&カローラクロス」試作車で水素エンジン進化!

続いて、6月4日の配信で、ネット上で
トヨタ「水素エンジン車」市販化を目指す! 「カローラ&カローラクロス」試作車を公開! 液体水素にも挑戦!
と題した記事について。

まず、今年6月3日から5日に行われる「スーパー耐久シリーズ第2戦 富士24時間レース」で使用する水素エンジン搭載車について説明。
昨年同レースで走行した水素エンジン車からの進化・変化ぶりを証明したのが以下の2点。
1)ラップタイムの短縮:2021年の2分4秒059(決勝のファステストラップ)に対して、2022年は1分58秒868(予選)と、6秒近く短縮。
2)給水素時間の短縮:2021年は6分以上に対して、2022年は1分半に大幅短縮

これに加えて、レースでの実装が間に合わなかったが、ほほ目処が立っている「航続距離」の延伸化技術について説明しています。

気体水素から液体水素活用へのチャレンジ

水素エンジン車の市場投入を考える上で避けて通れないのが、航続(走行)距離。
現状、水素エンジンに使う燃料の水素は「気体」のため、搭載量に限界があったが、この問題をクリアする手段のひとつが水素を「液体」のまま搭載すること。
しかし、ずぶの素人が言うのは、無責任も無知もいいところ。

ハードルが高いという表現そのものが不適切というべき、難題が待ち構えているのですが、トヨタは果敢にチャレンジ。
今回のレースの会場に、そのモデルを構想して搭載した、液体水素活用の水素カローラを公開。
加えて、液体水素の搭載のタンクローリーから燃料供給までのシステムも公開。
その目的は、技術開発パートナー企業募集も兼ねているということです。

なお、気体水素、液体水素いずれかとなると、同じ物が使えるように、使うクルマの用途・サイズによって変わるというスタンスとのこと。

そしてトヨタは、この水素エンジン車の実用化・商用化に向けての2つの開発領域課題について、それぞれ登頂までの10合目までステップで設定しています。

<市販化に向けて>の開発ステップ
1合目 燃料開発・要素技術開発
2合目 性能開発・機能信頼性課題出し
3合目 燃費開発
4合目 排気開発
5合目 機能信頼性/対策
6合目 タンク小型化
7合目 実証評価
8合目 ドラビリ作り込み
9合目 NV作り込み

<給水素の道>開発ステップ
1号目 給水素練習およびテスト
2合目 昇圧率アップ
3合目 ツイン充填
4合目 大流量
5合目 液体化助走
6合目 システム小型化
7合目 信頼性作り込み
8合目 実証評価
9合目 市場適合・改善

技術に関してはまったくの門外漢。
ご興味・ご関心をお持ちの方は、ぜひ、先述の記事リンクから、詳細をご確認頂きたいと思います。

いずれにしても、トヨタのゼロカーボン及びエネルギー革命に関する技術開発と実用化に関する情報から目を離せません。

⇒ https://global.toyota/jp/

なお、今回は触れませんが、製鉄業界における水素技術に関する話題として、やはり今月6月3日付日経に以下の記事が掲載されました。
⇒ 日鉄やJFE、水素製鉄の小型実証機  環境配慮、海外勢に対抗 :日本経済新聞 (nikkei.com)
可能でしたら、チェックして頂ければと思います。

なお、本稿で活用した水素エンジン車に関する画像は、以下からダウンロードしたファイルから引用転載したものです。
⇒ トヨタ自動車、スーパー耐久シリーズでの取り組みの進捗を発表 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト (global.toyota)

2050年水素社会実現までの途上記録-2:2022/6/8

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