行政システム開発庁の設置を:行政標準業務システム開発による行政システム改革-2

政治・行政政策

【2030年の社会システム改革シリーズ3】

前回から、「2030年の社会システム改革」シリーズの第3弾、<行政システム改革>を始めた。

意欲・能力が高く、現状の職務に生きがい・やりがいを感じられない公務員の転職サイトへの登録者が増えているという。
外資系コンサルティング会社やIT系企業への転身が目立つとも。
これが、その1回目で、以下問題提起した。
⇒ 公務員という仕事の人気・不人気:社会経済の変化が必要とする行政システム改革-1【2030年の社会システム改革シリーズ3】

公務員だれもが、ということではない。
しかし、もともとその方面のスキルを持っていれば、一生公務員でいることなど、逆にあるはずがないと思ってもしまう。

ただそれもやはり、そうしたスキルを持っている人材、その方面の業務を担当すれば大きな戦力になるはずの人材を活用できない方に問題があると考えるべきだ。
採用時に、そうしたスキルや適性を持つことは、ある程度分かった上で採用したはずだから。
そうした業務課題があることを認識できていない官庁・官僚トップであることが問題であり、彼らから自分がやりたい仕事を聞き出し、その機会を与えることをしなかったことにこそ問題がある。

行政改革や働き方改革そのものが、行政・自治体自体、公務員自身の課題なのだが、本家本元にその意識・認識が希薄なのだから、何年経っても、役所に関わる仕事、手続きに大きな変化・改善がない。


労働生産性向上が不可欠、と民間に激を飛ばすが、行政業務の労働生産性を量る基準がなければ、めざすべき指針・基準も当然ない。


各官庁・自治体毎の業務分析と業務システム改革

どうだろう。
それぞれの官庁や地方自治体は、各組織の仕事の分析をしたことがあるだろうか。

着眼点の一つは、定型的業務と非定型的業務の各内容とその比率である。
そして、定型的業務のITシステム化の程度、人からそれへの移行・移管の可能性が次の着眼となる。
その面からの労働生産性向上の可能度の評価、IT化すべき課題の抽出、そして開発が必要だ。

その分析・システム開発部門とスタッフが必要であるが、内部にそうした人材が果たして存在するかどうか。
常に、そうした観点から調査し、システム分析とシステム開発を担当する公務員が必要だ。

各省庁毎にそのスキルを持つ人材がいれば活用すべきであり、専門部署を設置してもよい。
各官庁ごとに配置できなければ、システム開発専門官庁を設置すべきであろう。

地方自治体毎にそのための専任部署と専任担当を配置することが困難な場合が多いだろう。
そのためには、上記の国のシステム開発庁が、全自治体に共通の標準システムを開発し、無償で提供できるようにすべきだ。


企業・住民が利用する行政諸手続きの業務システム改革・開発を

官庁・自治体内部の業務システム改革をまず取り上げた。
しかし、その中の一部は、企業や住民と関係した業務である。
そこには、企業・住民からの諸届・諸手続きが起点になる業務プロセスが必ずある。
最近では、各官庁のホームページから必要な書類をダウンロードできるようになてきてはいるが、直接官庁のシステムにアクセスして、情報の入力・送信できるようになっていないものが大半だ。

企業の決算申告や一部の届出等の業務は、一応電子化・ネット化されてはいるが、ほんの一握りにしか過ぎない。
ダウンロードレベルでは、まったく話にならないのだ。
申請書を利用するため、決算申告をするための事前の手間が非常に分かりづらく、難しい。
何度やってもうまくいかず、何度もあきらめたことがある。
自身の経験からそう思う。

こうした業務は、企業サイドにとってはいわゆる間接業務で、付加価値を産まない。
すなわち労働生産性向上に反する業務だ。

特に、賃金・医療保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険等社員個人個人と企業が負担する費用や諸届け・諸手続き業務は、フォームは定形であり、関係官庁に直接アクセスしてリアルタイムに入力・送信処理可能にすべきだ。
いや、関係官庁個々によりも、専用の集中アクセス処理センターを設定し、集約することの方が望ましいだろう。
電子化され、ペーパーレスとなる。

当然、個人は個人番号、企業は法人番号が基礎番号として用いられる。
その個人ナンバーカードは、健康保険証、年金手帳、運転免許証等の機能も持つ。


介護保険管理運用システムの標準システム開発とソフト無償提供

行政システム開発課題としてぜひやってほしいこと、やるべきことがある。
就労環境・労働条件が悪く人材不足が解消される目処が立たない介護事業のことだ。
労働集約型で、一般的な業種と比較すれば、生産性を上げることなど、現場を理解できない、しようとしない輩の戯言としか思えない。
そういう中で、少しでも直接業務である介護サービスに集中できるように支援することが行政の第一の使命だ。

ならば、シフト管理に始まり、介護サービスの記録、介護給付費請求事務、事業会計管理・決算申告などの介護作業、介護事業に関する管理業務・申請処理等事務手続きなどのすべての業務システムの統合化・標準化を図り、システム開発し、各事業者・事業所にそのソフトを無償提供するのだ。

やや横道にそれるが、介護士さんの低賃金の一部を解消するために、補助金が事業所に投入されている。(保育士さんも同様)
しかし、それらが間違いなく介護士さんの収入になっているかどうかは把握できていないのだ。
こうした不透明な部分も、指定された会計ソフトを利用せざるをえないようにすれば、実態を把握できるようになる。


行政システム開発省(庁)の設置と優秀人材の配置・任用を!


まあ、それが目的ではないが、こうした例を挙げれば、どの官庁も、地方自治体も業務の効率化、労働生産性の向上、直接業務=行政サービスへの集中、行政・民間双方のコスト削減など多面的に成果を期待できる諸課題があるはずだ。
それぞれの行政法において法改正・制度改正が行われるから、それに応じて情報システムの改定・バージョンアップも必須で、当然、行政サイドが担当すべきだ。

もちろん、ネットを含めた行政システムのセキュリティ対策やハッカー対策も根幹業務の一つとなることは言うまでもあるまい。

会計検査院が、国費が有効・有益に使われているかを調査し、改善を提言している。
その業務のあり方を調査・分析・評価し、改善・改革提言と実際のシステム開発を担当する、コンサルティング機能を持った「行政システム開発庁」。
2030年の社会システム改革に必須の機能と思うがどうだろう。
そこに、有能な国家公務員を任用したいものだ。

いずれにしても、改革すべき行政ITシステム、行政情報システムは、あり余るくらいにある。
例えば、選挙投票システムも。
表現は悪いが、飯の種は尽きない。
課題を出し合えば、アイディアを募れば、多数・多岐にわたり出てくるだろう。
しかもやりがいがある、重要な、社会貢献度の高い業務だ。

2030年までに、そして2040年までに、10年20年スパンで、改革すべき優先課題にぜひ取り組んでいきたい。
次世代のために!

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