脱原発を宣言できないエネルギー国家戦略、その政治と行政:新エネルギーシステム改革-6

電力・エネルギー

ウィズコロナの2020年に再定義・再構築すべき2050年エネルギー国家戦略(再掲)

先月7月21日から、以下の視点をテーマとして、<新エネルギーシステム改革>シリーズを展開している。

◆ 電力自由化行政の誤りとエネルギー産業構造
◆ 電力料金競争の中身とこれから:公平・公正な競争基盤の確立を
◆ 再生可能エネルギー事業の最近の動向
◆ グローバル社会でリーダーシップを取れない脱炭素・脱CO2
◆ 脱原発を宣言できないエネルギー国家戦略、その政治と行政
◆ EV・燃料電池車の自動車産業は新エネルギー社会を牽引できるか
◆ 企業・自治体の注目すべき新エネルギー対策・エネルギー新技術
◆ 水素社会実現計画の合意形成を何故できないか
◆ 2050年エネルギーシステム国家戦略構築:自給自足&エネルギーフリー社会の実現へ

当面の環境エネルギー問題への取り組みを、課題項目として再定義し、一つ一つ、目標・政策・方向性などとして検討・提起していくシリーズ。

第1回:ウィズコロナの2020年に再定義・再構築すべき2050年エネルギー国家戦略
第2回:不自由化と一体だった電力自由化、本来の道筋
第3回:電力料金の公正な競争基盤確立の条件
第4回:2050年再生可能エネルギー100%達成を目標に
第5回:非効率石炭火力発電段階的休廃止と脱炭素への道、表と裏

6回目の今回は、前回の<脱炭素>問題に引き続き、<脱原発>をめぐる状況を確認したい。

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福島第1原発事故から来年で10年


来年で、東日本大震災で発生した福島第1原発事故から10年を迎える。
10年目を迎えようとしている現在でも、多くの問題は未解決のままである。
その事自体が、原発の安全性を保証できないことと、使用済み核燃料の処理問題にベストの解を提示できないことを示している。
未だに、というか、未来永劫の可能性さえある立入禁止区域。
住む場所を奪われた多くの人々がいる。
除染が行われている地域も、その速度を早め、一気に安全性を確保することは困難なままだ。
そして、汚染水処理。
結局行き着く所、人体に影響がないレベルに希釈して海に戻そうか、という地元の人々の神経を逆なでするような議論がぶり返される。

この事故以降、各地の原発の一時停止と安全性確認の作業が継続されているが、やはり、地域住民の安全性を希求する思いにしっかり応えることができないまま、時間は経過していく。
ムリなことはだれもが分かっていることのはずだが。

当然、この間、コロナウイルスの影響も受けつつ、地球温暖化・脱炭素などの潮流が留まることはないのだが、わが国の煮え切らない環境・エネルギー戦略・政策は放置されて来たに等しい。
再生エネルギー比率の向上に威を借りた似非電力自由化行政が日常に浸透している。
また原発の安全性のみならず、エネルギーの自給自足に対する危機感に対する低い意識が、大手電力と財界と政府・官庁、政治・行政との癒着構造により、堅固に常態化しているのだ。



現在の原発稼働・非稼働状況

現在国内にある原子力発電所は、下図の一覧にある33基だ。
この内、今日現在稼働しているのは4基のみ。
他に、今年に入って安全性の定期点検中のものが5基。
この9基が稼働中とされている


下の所在地地図と<新規制基準適合性審査等の対応状況>一覧で、審査未申請、審査中、許可済みだが未稼働、稼働中(定期点検中含む)の4つの状況区分を知ることができる。

出典:原子力安全推進協会

簡単に言うならば、33基ある原発中、4~9基に、他の火力・水力・再生エネ発電を加えたもので、わが国の電力エネルギー需要を満たしていることになる。

今後の電力構成・エネルギーミックスを考える上で、参考になる。


20年以上遅れる使用済核燃料再利用施設建設と稼働

原発の使用済み核燃料を再利用する青森県六ケ所村にある日本原燃の再処理工場施設は、国策で進める核燃料サイクルの要になる(はずだった)。
再処理工場は各地の原発で使い終わった核燃料から、原子炉内で燃えやすいプルトニウムとウランを取り出して再利用する施設。
再利用により、原子力を準国産エネルギーにすべく、1993年着工、1997年完成という計画が未実現のまま今日に至っている。
福島第一原発事故を受け、審査基準は一層厳しくなっている。
原子力規制委員会の安全審査の手続きも1年以上かかる見通しで実際の稼働は2021年度以降いつになるかも不透明という。
当然この間に投じられ、今後も続くコストは膨大なものである。

一応ようやく稼働の見通しがつきつつあるということだが、まだまだ気が遠くなるような問題が残っている。
そもそもその再処理燃料の使いみちがあまりない、処理しきれない高濃度放射性物質がありその処理に技術的目処が立っていない、試験操業でのトラブル続発で地元民の反対が大きい、再処理で得るものを含め保有するプルトニウムの量の削減を米国が求めている、プルトニウムを減らすための、MOX燃料を消費するプルサーマル発電ができる原発は現在4基のみでこれも目処がたたない、etc,.

ということで、使用済み核燃料の全量再処理政策は既に破綻しており、約3兆円を投じた工場はほぼ完成してはいるが、内部は試験操業で放射性物質に汚染され、解体も簡単ではない。
各地の原発には使用済み核燃料が蓄積。
結論も負担もすべて先送りの無責任行政の歴史だけが存続していくのである。


繰り返しにはなるが、この再処理工場だけで、使用済み核燃料を含む、原発の安全性などすべてを解決できるわけではない。
個々の原発の共通の問題と、当然今も続き、永遠にも続く福島第一原発の処理問題が、将来の社会と生活に関わっている。

この再処理工場問題の対策・結論は、本来出ているのだ。
これ以上の費用投入は一刻も早く中止すべきだ。
過去の投資は、金額が大きすぎるが勉強代とみるしかないだろう。
この失敗で学習したことをなにかに活かして、その費用の一部でも回収する発想に切り替えるべきだ。
その決定責任、方針変更責任を明確にするのが政治・政府の役割であろう。

簡単に捨てられない安定供給可能電源(ベース電源)としての原発

電力システムには、需要カーブに合わせた発電・配電の必要があり、太陽光や風力などの再生エネが、気象条件により出力が不安定であることと関連した技術的課題がある。
そのため、ベース電源すなわち安定供給電源であることも重要となる。
原子力発電は、脱炭素に加え、このベース電源であり得るというメリットがあるわけだ。

それも理解できることだが、ベース電源は、技術開発、イノベーションで、再生エネにその役割が代替されていくことになる。
それを加速させるのも、政治・行政の仕事である。


エネルギー安全保障、電気料金から見る原発を捨てない理由



加えて、現状の原発施設を用いて発電した場合、価格的に他の電源に比べて安価に発電でき、安価に利用できる。
但し、使用済み燃料の処理など、将来にわたって発生するコストは、この場合棚に上げていることを忘れてはならない。

現状化石燃料の輸入にエネルギー需要の多くを頼っている。
だが、コロナ下のような事態に対応できるよう、エネルギーの自国での地産地消体制を一日も早く整備・確立しておくことが、不可欠となった。

こうした場合、現状停止中原発の再稼働などにより、一定自給率を維持できる電源を持つことが重要であることは理解できる。

2017年の自給率は9.6%と際立って低く、OECD加盟35カ国中34位。
因みに、米国93%、英国68%、フランス53%、ドイツ37%。
また2016年の発電コストは米国や東南アジアの2倍、EUの1.5倍。

低い自給率を改善する上で、再生エネ比の向上を目指すのは当然である。
現在電力料金が高いのは理由の一つは、再生エネコストの高さにある。
だが、今後料金は次第に低減されていくだろう。
価格面の不安は、むしろ化石燃料の輸入価格変動にあり、再生エネの比率の向上と電力料金の低下は、相互に影響しあって、好転することが期待できよう。

原発の自給率と電力料金への貢献は、再生エネ比率の高まりと相殺され、ある時点で、その役割を終えることが可能になるだろう。

その流れとその速度を早めるのも、もちろん国の環境エネルギー戦略と行政である。

唯一の被爆国として辿るべき非核化と原発ゼロへの道


原子力発電問題は、本質的に2つの課題を日本に突きつけている。
一つは、原子力発電そのものについて。
もう一つは、無論、唯一の原爆被爆国日本の宿命としての兵器としての核原子力についての課題だ。

非核を最も声高に叫び、グローバル社会にその思想と行動を拡げるリーダーとしての役割を持つべきわが国である。

一方、核の平和利用という表現で、安全な原発、社会経済、社会生活に貢献する原子力発電が、戦後喧伝され、事実貢献してきた点も大きかった。
だが、その安全性には、常にリスクが付きまとい、チェルノブイリや福島第一原発で、現実化してきた。

想定外の事態が、常に想定内のこととして起こりうる。
そのためには、やはり原発は、2050年に向けて、フェードアウトするのが望ましだろう。

以前、私が考えた10年単位での電源構成は、以下である。

◆ 2030年:原発比率25%、化石燃料比率45%、再生エネ比率30%
◆ 2040年:原発比率15%、化石燃料比率25%、再生エネ比率60%
◆ 2050年:原発比率0%、化石燃料比率0%、再生エネ比率100%


その裏付けとなりうる技術開発、イノベーションが、民間ベースで進められている。
それを政府・行政が、明確な方針と資金支援で後押しするわけだ。
脱原発を、今年中に方針としてまとめ、来年2021年に宣言し、脱炭素と統合して、わが国の今後30年間の環境エネルギー戦略・政策を、国民の理解合意のもと形成構築し、1年1年を積み重ね、積み上げていく。

学者・研究者・経営者には、そのための原動力として、その取り組みの核としての責務を自覚し、貢献することを期待したい。


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