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自己負担増、保険料アップ必須の介護職員処遇改善は、確実に賃上げに結びつくか

最近の日経介護関連記事から読み解く、2022年以降の介護政策課題-3

 最近の日経紙から検索した、以下の25の介護関連記事。

 1.介護テック、現場を支える 人手・施設不足の懸念緩和(2022/1/24)
 2.SOMPOケア、介護施設事業者を買収、数十億円規模(2022/1/21)
 3.おひとり様、老後資金の目安は1000万円(2022/1/20)
 4.学研HD、介護施設1000拠点に倍増 IT化で大手先行(2022/1/17)
 5.介護報酬1.13%引き上げ 10月以降、保険料増も(2022/1/12)
 6.介護現場「人手不足」80%(2022/1/11)
 7.ジンジャー、黒部市社協と福祉DX研究(2021/12/27)
 8.介護職賃上げ、補助額3分の2はベアに 厚労省(2021/12/24)
 9.要介護者の排せつ感知 秋田の官民がシステム開発(2021/12/24)
10.介護職など賃上げ、経験・技能評価を 政府委が中間整理(2021/12/22)
11.1人で4人介護可能に 政府、生産性向上へ規制緩和検討(2021/12/20)
12.人手不足の介護、規制緩和でどう変わる?(2021/12/20)
13.人口減とAI・ロボ活用「自動化進んでも人の役割大きい」(2021/12/16)
14.介護・保育の賃上げ目標、3年ごとに見直し 中間整理案:(2021/12/16)
15.介護データベースは助走中 遠いケア最適化(2021/12/13)
16.茨城県「ケアラー条例」可決 介護の子供らを支援(2021/12/10)
17.ロボットに冷たい介護報酬 賃上げ政策が問う生産性 (2021/12/8)
18.認知症の兆候、血液検査で発見 シスメックスが23年にも(2021/12/6)
19.認知症、家族が資産管理 預金引き出しや株売却容易に(2021/12/5)
20介護現場、外国人材いつ来日? オミクロン型で再び制限(2021/12/2)
21.損保ジャパンと川崎重工が実験、配送ロボを在宅介護に(2021/12/2)
22.ハウステンボスで自立支援介護 兵庫・宝塚のポラリス(2021/11/30)
23.保育・介護職員の待遇改善 公費助成と企業努力の両輪で(2021/11/29)
24.介護現場、DX競う 「日本モデル」を磨く好機に(2021/11/25)
25.保育・介護で強まる公務員色 サービス向上、民の創意で(2021/11/24)


 この中から同一テーマ毎にグループ化して最近の動向と介護制度・介護現場等をめぐる問題を確認す<最近の日経介護関連記事から読み解く、2022年以降の介護政策課題>シリーズを進めています。

第1回は、<介護IT、介護DX、介護テック関連記事グループ>をテーマに。
IT、DX、介護テック。呼び名が変わって介護現場の生産性は上がったか、省人化は実現したか(2022/1/27)
第2回は、<介護人員配置基準規制緩和と介護人材不足との関連>を括ってテーマに。
介護職配置基準規制緩和が介護士不足解消、賃金引上げに結びつくか(2022/1/29)


 そして今回第3回は、前回を受けて、介護職員の賃金引上げに関する、以下の記事を取り上げて考えてみます。

 5.介護報酬1.13%引き上げ 10月以降、保険料増も(2022/1/12)
 8.介護職賃上げ、補助額3分の2はベアに 厚労省(2021/12/24)
10.介護職など賃上げ、経験・技能評価を 政府委が中間整理(2021/12/22)
23.保育・介護職員の待遇改善 公費助成と企業努力の両輪で(2021/11/29)

 初めに、昨年11月下旬に掲載された、やや長めの以下の記事から。
保育・介護職員の待遇改善 公費助成と企業努力の両輪で(2021/12/22)
 既に岸田首相から打ち出されていた、保育職・介護職の待遇改善・賃金引上げに政府が資金を投入する方針について、日経が主張を掲載したものです。

保育・介護職員の待遇改善 公費助成と企業努力の両輪で」から

 2021年11月19日にまとめた経済対策の中に盛り込んだ賃金アップ。
 これで人手不足懸念の解消を目指すというものだが・・・。
 いい加減に、もうこんな妄想にちかい希望的観測はやめにすべきです。
 そして私は未だに、こうしたエッセンシャル・ワーカーの賃上げ支援のための政府支出を、経済対策としていることに疑問をもっています。

 賃金構造基本統計調査による2020年の平月収は、介護職員29.3万円(保育士30.3万円)で全産業平均35.2万円という現状を踏まえて待遇改善を目指すその先が問題としてこう述べます。
 介護事業が安定的に運営できるよう公費助成する一方、提供価格は公的に設定されている。
 そのため待遇改善には、公定価格を見直して、人件費の財源を確保する必要がある。
 そして公定価格の引き上げで利用者負担が引き上げられる可能性が高い。
 公費の増額は、その財源も元々税金で国民負担も増えることで、世帯の可処分所得が減る可能性も。      
 賃上げによる経済的効果は不明だが、可処分所得が増えたとしても消費喚起効果は軽微であまり期待できないとみる。

11月19日閣議決定により確保の原資に基づく賃上げ計画

2022年2月から介護職員や保育士は現行月収の3%程度にあたる月額9000円をそれぞれ引き上げる。

現状の介護士の賃金決定要素及び賃金構造

1)介護サービスの提供体制や利用者の状況など応じ、介護事業者が、基本的に出来高払いの報酬を受け取り
2)その中から事業者は介護職員らの賃金を支払い
3)その財源は原則10%がサービス利用者の負担、残る90%は国民が負担の介護保険料及び公費
4)賃上げの原資となる報酬を引き上げる時、サービス利用者負担、介護保険料、公費の引き上げも不可避
5)介護保険料は介護保険制度導入2000年時、3000円程度、現在6000円前後(65歳以上)

 ここまでは、従来と違わないロジックですが、少し気になった部分が。
 それは、
「基本的に賃金は需要と供給のバランスで決まるもの。
人手不足でありながら、賃金が増えないのは、いびつであり、政府設定の公定価格が制約になっているなら、見直すべき。」
というもの。
 暗に、公定価格制をやめて、市場価格に委ねるべき、とでも言いたそうな感じの表現。
 とんでもない話で、これでは、利用者負担が増えることは間違いないです。

 そして、公費投入への疑問を呈するのと同時に、民間企業自体の主体的な、自助努力による賃上げを求めることで、「両輪で」とした意図を確認できます。
 しかし問題は、あの介護最大手の一つ、SOMPOブループの賃上げ実績を引き合いに出していること。
 基本的には、同社のような介護大手を何かしらにつけて、良いモデルとして引き合いに出すことは、不適格極まりないことです。

 いずれにしても、超高齢化の急速進展で、介護を必要とする高齢者の増加は著しいものとなるため、これだけでも介護士不足が、慢性化・長期化することは目に見えていること。
 総じて、ここでの日経の問題提起と主張は、ほぼ意味をなさないものとされても已む無し、でしょう。


次は、以下の記事です。
介護職など賃上げ、経験・技能評価を 政府委が中間整理

介護職など賃上げ、経験・技能評価を 政府委が中間整理」から


 2021年11月9日に開催された、第1回<公的価格評価検討委員会>の後を受けて開催されていた同会の中間整理として首相に報告された概要のレポート。
 看護や介護、保育分野で働く人の処遇改善策を議論するこの委員会については、以前、以下の記事で紹介。
第1回全世代型社会保障構築会議・公的価格評価検討委員会合同会議から(2021/11/29)

次は、
介護職賃上げ、補助額3分の2はベアに 厚労省」(2021/12/24)
ですが、この記事も短文なので、確認で済ませます。

介護職賃上げ、補助額3分の2はベアに 厚労省

 この厚労省の意向と関連した記事が、年明け掲載された。
看護・介護・保育向け補助金、賃上げ実績報告が条件」(2022/1/6)
 この記事が、冒頭のリストから漏れていたので、ここで追加して見ておきたい。

看護・介護・保育向け補助金、賃上げ実績報告が条件」から

 介護の部分だけに絞って、要点を確認しておきます。

 介護職員の処遇改善を目的とした補助金交付について、政府は、運営する介護事業者が自治体に対して具体的な賃上げ・処遇計画と実績の報告を求めるとしたもの。
 理由は明白で、補助金をちゃんと賃上げに使ったかどうかを確認するため。
 これまでの補助金支給において、事業所が別の用途で使い、介護現場の職員に行き渡っていないのではとの疑念が持たれていたことがある。
 この条件を満たさない場合は補助金の返還を求めるとしている。
 ならば、過去の分も遡って報告書を提出されるべきだろう。
 先述の記事にある、公的価格評価検討委員会の中間整理でも、その検証が必要だとの指摘があったとしているのだから。

 しかし、この件について、一昨日2022年1月31日付中日新聞の以下の記事も参考に、問題点を確認しておきたい。
介護3%賃上げ、2月分から 政府補助金」(2022/1/31)

介護3%賃上げ、2月分から 政府補助金」から

1)実際の支払い方法は勤務先が決めるため、職員が受け取る時期が3月以降になる場合や、賃上げの金額が下がる場合がある。 
2)介護事業所は、賃上げ原資となる補助金を都道府県に申請するが、補助金交付は6月から。
 そのため、当初自前で資金を準備することから経営負担となり、賃上げが小幅となる可能性がある。 
3)補助金は、介護職以外の事務職などの賃上げに充てることも認められており、事業所が判断。
4)従い、介護職全員の月給が一律に9,000円増えるとは限らない。 

 中日新聞では、1月6日付日経内容を承知していなかったのか、知っていたとしても、敢えて問題提起したのかわからない。
 要は、政府・厚労省の言っていることが、真に実行されるかどうか、その報告・情報公開を待たなければ、同じことが繰り返されると見ておいたほうがよい。

 こうした大問題を根本から変革する考え方・方法・方針について、当サイトでは既に以下のように提案してきている。
 公的価格評価検討委員会の委員に届かないだろうか。
⇒ 岸田政権による介護士・保育士の賃金引上げをめぐる課題(2021/11/10)
  介護士・保育士賃金に支給の交付金の委託費問題改善の決め手、給与明細への公務手当明記(2021/11/14)


最後の記事は、
介護報酬1.13%引き上げ 10月以降、保険料増も」(2022/1/12)。
こちらも短文で、確認だけで良いかと思います。

介護報酬1.13%引き上げ 10月以降、保険料増も」から

 ここまで紹介・考察してきた一連の介護行政を引き継いできての最新に近い情報の確認というべきもの。
 介護職員の処遇改善における、2022年10月以降の介護報酬の臨時改定について、先に紹介。
 その方針を厚労省が、1月12日に正式に発表したことで、報酬改定により、利用者負担や一部被保険者の保険料が引き上げられることを確認したわけです。
 介護保険制度における利用者の原則1割費用負担。
 介護報酬のプラス改定により、サービス内容に応じてこの負担は増える。
 保険料は40~64歳の被保険者のみ月額70円程度上げ、65歳以上は増額しない方針。
 これまで徴収した保険料の余剰分を積み立てた「介護給付費準備基金」などを財源として活用するという。
 そして、次の指摘が、日経らしいところ。

今後は高齢者人口の一段の増加に伴って必要な介護職員数も増え、政府の補助金や保険料引き上げによる処遇改善は限界が訪れる。賃上げを持続するにはロボットやIT機器導入を通じて生産性を改善し、人件費を効率的に捻出できる産業に変革する必要がある。

 すなわち、どうしても、シリーズで先行して取り上げてきた、介護テック、介護DX、IT化促進による生産性向上と企業努力による賃金アップ大主張に立ち戻るわけです。

 まあ、ここ10年来主張し続けており、発想は、他産業と同じレベル・視点で介護業界・介護現場・介護実務を見ているところに発しています。

 堂々巡りは見えているので、次回は本シリーズの最終回とし、残っている記事の内、
2.SOMPOケア、介護施設事業者を買収、数十億円規模(2022/1/21)
4.学研HD、介護施設1000拠点に倍増 IT化で大手先行(2022/1/17)
を用い、最後に、反面記事として読む
25.保育・介護で強まる公務員色 サービス向上、民の創意で(2021/11/24)
を用いてまとめとしたいと思います。

(参考)「2021年12月21日公的価格評価検討委員会・中間整理

1.はじめに
2.公的価格の制度について
(1)報酬・価格の決まり方
(2)処遇改善の仕組み
(3)費用負担
(4)各職種の賃金
3.経済対策における措置
4.今後の処遇改善について
(1)処遇改善の基本的考え方
(2)処遇改善の方向性

2.公的価格の制度について
(1)報酬・価格の決まり方

看護師等の賃金の原資は各分野の報酬・価格制度によるところが大きく、その報酬・価格の決まり方は後掲の表のとおりである。診療報酬及び介護・障害福祉サービス等報酬においては、単位数の設定に当たり人件費に係る具体的な基準は設けていない。他方、子ども・子育て支援新制度においては、公定価格は積上げ方式となっており、金額の設定において人件費が具体的に算定されている。
ただし、子ども・子育て支援新制度を含め、制度によって決まるのは各事業所への支払い額である。労働者への分配率や個別の労働者の賃金は当該事業所において決まることが基本であり、例外的に処遇改善加算等による加算分については労働者への分配等が制度上定められている。

(注記)
1 「公的価格」とは、診療報酬、介護報酬、子ども・子育て支援新制度の公定価格など公的に決定されるサービス等の対価をいうものであり、本委員会は、看護、介護・障害福祉、保育、幼児教育の分野における公的価格について評価・検討をするものである。
2 労働者の賃金は、一般的には、労使交渉を踏まえ就業規則や個別の労働契約により定められる。

(2)処遇改善の仕組み
介護・障害福祉分野及び保育・幼児教育分野においては、慢性的な人手不足の状態が続いており、その要因として、業務上の負担などとともに賃金水準の低さが指摘されてきた。このため、介護・障害福祉分野では平成 21 年以降、保育・幼児教育分野では平成 25 年以降、賃金水準の改善に向けた取組が進められてきた。
介護分野では、介護職員全般の処遇改善を図る「介護職員処遇改善加算」と、介護現場におけるキャリア・ラダーの構築に向けて経験・技能のある介護職員(勤続年数 10 年以上の介護福祉士を基本)の処遇改善に重点化した「介護職員等特定処遇改善加算」が設けられており、障害福祉分野でも同様である。また、保育・幼児教育分野でも、全職種の処遇改善を図る「処遇改善等加算Ⅰ」と、保育・幼児教育の現場におけるキャリア・ラダーの構築に向けて経験・技能のある保育士、幼稚園教諭、保育教諭等(副主任保育士・中核リーダー等)の処遇改善を図る「処遇改善等加算Ⅱ」が設けられている。
いずれの加算についても、個別の労働者への分配の点では柔軟な運用を認めつつ、加算による増収分以上を対象者の賃金の改善に充てることを要件としており、処遇改善に係る計画書と実績報告書の提出を求めることで、処遇改善のための加算額が確実に職員の処遇改善に使われることが担保されている。
また、「介護職員処遇改善加算」や「介護職員等特定処遇改善加算」については、職務内容等に応じた賃金体系等の整備や資質向上のための研修の実施などキャリアパスの整備に関する要件と、ICTの活用等による業務効率の改善や両立支援・多様な働き方の推進に関する取組の実施など職場環境等の改善に関する要件を設け、各要件の適合状況に応じて加算率を決定する仕組みとなっており、賃金の引上げとあわせて、職場としての魅力の向上や就労継続の促進が図られてきたところである。これらの点は障害福祉、保育・幼児教育分野においても概ね同様である。
こうした取組を通じて、介護職員については平成 21 年度から月額 7.5 万円(実績)、保育士については、人事院勧告に準拠した改善分も含めると、平成 25年度から月額約 4.4 万円(+最大約4万円)の改善が図られてきたところである。
(3)費用負担
公的価格制度に係る費用負担について、各分野で費用負担の割合は異なるが、いずれも患者負担・利用者負担と給付費に分かれる。その中で、給付費については、診療報酬では保険料6割・公費4割、介護報酬では保険料5割・公費5割、障害福祉サービス等報酬では公費 10 割、子ども・子育て支援新制度では原則 10割公費(一部事業主拠出金あり)となっている。
(4)各職種の賃金
各職種の賃金(以下「役職者含む」としたもの以外は役職者を除く。賞与等を含めて月収換算したもの。)の現状をみると、看護師は 39.4 万円であり、全職種の平均の 35.2 万円を上回っている。他方、介護分野の職員は 29.3 万円、保育士は 30.3 万円、幼稚園教諭は 29.8 万円であり、対人サービス産業の平均の 26.6万円は上回っているものの、全職種の平均は下回っている。(障害福祉人材については、29.5 万円)
ただし、介護分野の職員や保育士・幼稚園教諭については、上述のとおり、これまで処遇改善に取り組んできたところである。この結果、介護分野の職員と全産業平均との差は 5.9 万円(令和2年)になっている。保育士・幼稚園教諭については、これまでは、保育士・幼稚園教諭の太宗を女性が占めていることを踏まえ、当面の対応として女性の全産業平均を目指してきたことにより、女性の保育士(役職者含む)と女性の全産業平均(役職者含む)との賃金の差は 0.8 万円(令和2年)に、女性の幼稚園教諭(役職者含む)と女性の全産業平均(役職者含む)との賃金の差は 0.7 万円(令和2年)になっているが、今後の目標としては適切ではなく、他産業や全産業の男女計の賃金との乖離について議論すべきものと考える。

3.経済対策における措置
こうした現状を踏まえ、政府は、今般の経済対策及び補正予算において、保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を3%程度(月額 9,000 円)引き上げるための措置を、令和4年2月から実施することとした。この際、他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めることとしている。
看護については、まずは、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、段階的に収入を3%程度引き上げていくこととし、収入を1%程度(月額 4,000 円)引き上げるための措置を、令和4年2月から実施した上で、
来年 10 月以降の更なる対応について、令和4年度予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずることとした。この地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関とは、一定の救急医療を担う医療機関(救急医療管理加算を算定する救急搬送件数 200 台/年以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関)であり、また、この際、看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めることとしている。
また、今般の経済対策においては、看護、介護、保育、幼児教育など、新型コロナウイルス感染症への対応と少子高齢化への対応が重なる最前線において働く方々の収入の引上げを含め、全ての職員を対象に公的価格のあり方を抜本的に見直すこととしている。
本委員会としては、今回の措置は速やかな処遇改善の観点から一定の評価ができるものであり、一日も早く現場で働く方々に着実に行き渡るよう必要な対応を進めることを求めるとともに、今回の措置が、診療報酬、介護報酬等のそれぞれの制度に反映され、確実な賃上げにつながる仕組みとすべきであり、これらが一時的なものにとどまらないことを求めるものである。その際、処遇改善に向けた措置の実効性を担保しつつ、処遇改善に係る事業主の事務負担が過剰なものにならないように留意すべきであるとともに、施策の実施を担う地方の意見を十分に踏まえて施策を進めるべきである。

(6 保育所、幼稚園、認定こども園、地域型保育事業の公定価格の対象の事業所で働く方々や、放課後児童クラブの職員、児童養護施設、乳児院、児童自立支援施設、児童心理治療施設、母子生活支援施設、自立援助ホーム、ファミリーホームの職員、及び公定価格の対象でない私学助成を受ける幼稚園の教諭等が含まれる。)

4.今後の処遇改善について
(1)処遇改善の基本的考え方

現在、世界各国において、持続可能性や「人」を重視し、新たな成長と分配の好循環につなげる、新たな資本主義モデルの模索が始まっている。我が国としても、成長も分配も実現する、新しい資本主義の具体化を進める必要がある。
新しい資本主義において、人への分配は、「コスト」ではなく、未来への「投資」である。官と民が共に役割を果たすことで、成長の果実をしっかりと分配し、消費を喚起することで、次の成長につなげる。これこそが、持続可能な経済、そして、成長と分配の好循環による新しい資本主義を実現するための要である。
こうした考え方の下、今回の経済対策では、国が率先して、看護、介護、保育、幼児教育などの分野において、収入の引上げを行うこととした。また、政府調達の在り方の見直しも行うこととした。その上で、民間企業の賃上げを支援するための環境整備に全力で取り組んでいる。
新たな資本主義を実現するためには、今後も、看護、介護、保育、幼児教育などの分野において、その仕事に見合った適切な処遇が行われるよう、収入の引上げが持続的に行われる環境を整備する必要がある。
(2)処遇改善の方向性
今般の経済対策の措置を前提としても、介護・障害福祉職員、保育士等・幼稚園教諭の賃金は全産業平均から乖離があり、仕事の内容に比しても未だ低く抑えられている状況である。引き続き人手不足の解消等に向けて、今回の措置の結果も踏まえつつ、更なる処遇の改善に取り組むべきである。
処遇改善の最終的な目標は、職種毎に仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されていることである。その際、他産業との乖離や有効求人倍率などの労働市場における関連指標の状況を参照するほか、各産業における他の職種との比較や対象とする産業内での各職種間の均衡、仕事の内容、労働時間の長短、経験年数や勤続年数なども考慮すべきである。今後、医療・福祉分野のマンパワーのニーズが大きく増加すると見込まれることも踏まえ、特に 2020 年代にこうした取組に注力すべきである。
また、経験年数や勤続年数に応じた処遇改善の取組は、キャリア・ラダーの形成や職員を大切にすることへのインセンティブとなり、職場への定着や経験・技能の高度化等につながる。先に述べたマンパワーのニーズの見通しも踏まえ、経験・技能のある職員に重点化した処遇改善のあり方について検討し、次なる目標として、経験・技能のある職員について、仕事の内容と比して適正な水準であるかという点も考慮しつつ、他産業(適切な他産業がなければ全産業平均)と遜色ない水準とすることを目指すべきである。
他方、従前より全産業平均を上回る賃金水準である看護師については、今般の経済対策を踏まえ、まずは、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員について、収入を3%程度引き上げていくべきである。
あわせて、管理的立場にある看護師の賃金が相対的に低いこと、民間の医療機関であっても国家公務員の医療職の俸給表を参考としている場合が多いことも指摘されており、今回の措置の結果も踏まえつつ、すべての職場における看護師のキャリアアップに伴う処遇改善のあり方について検討すべきである。
また、介護・障害福祉、保育、幼児教育分野も含め、経験・技術に応じた処遇ルールの明確化(賃金体系の整備)やタスクシフト・タスクシェアによる業務の高度化・効率化、各職種の養成課程のあり方、職員配置も含めた勤務環境の改善についても検討すべきである。
看護師のキャリアアップの観点からは、ライフステージに対応した働き方により継続的に就労できることが重要である。これまでも、仮眠室の拡張・新設等による働きやすい職場づくりや、看護補助者の配置やICTシステムの導入による業務負担の軽減、院内保育所の整備、短時間正規雇用など多様な勤務環境の導入による就業しやすい環境の整備など、地域医療介護総合確保基金も活用して様々な取組を推進してきたところであり、引き続きこうした勤務環境の改善に積極的に取り組むべきである。
今後の処遇改善を行うに当たっては、これまでの措置の実効性を検証するとともに、これまでの措置で明らかになった課題や対象外となった職種も含め、検証を行うべきである。
また、看護師の処遇改善に関して、今回の処遇改善の取組が確実に賃上げにつながることを担保することを、令和4年度診療報酬改定の中で検討すべきである。その際、今回の経済対策において柔軟な運用を認めていることとの整合性を図るべきである。
こうした処遇改善を行うに当たっては、全てを国民の負担に回すのではなく、既存予算の見直しや高齢化に伴って増加する医療・介護費の中での分配のあり方などを含め、幅広く検討を行うべきである。従来は、前述のとおり、主に財政措置等を財源として処遇改善を進めてきた。今後は、更なる財政措置を講じる前に、医療や介護、保育・幼児教育などの分野において、国民の保険料や税金が効率的に使用され、一部の職種や事業者だけでなく、現場で働く方々に広く行き渡るようになっているかどうか、費用の使途の見える化を通じた透明性の向上が必要である。また、デジタルやICT技術、ロボットの活用により、現場で働く方々の負担軽減と業務の効率化を進めていくことも必要である。
本委員会は、こうした処遇改善に向けた政策手法を実現する観点から、それぞれの分野における費用の見える化やデジタル等の活用に向けた課題等につい検討し、来夏までに方向性を整理することとする。

Ⅱ 社会政策 2050年長期ビジョン及び長期重点戦略課題

5.高齢化社会政策・介護政策

(基本方針)
 団塊の世代を形成するすべての高齢者が100歳を超えている2050年には、現状の高齢化社会は、総人口の減少及び年齢構成の大きな変化を伴って新たな状況を迎えます。
 それに伴って、社会保障制度の体系と実際の制度・法律も、その状況にふさわしいものに整備され、確立されていることが求められます。
 今後進行する、世代継承・世代交代を念頭に、それまで続く高齢者の医療・年金問題、現役世代が抱く高齢世代への不満等の改善・解消に、<社会政策>長期ビジョンに基づき連携して取り組み、現役高齢者が安心・安全な暮らしを送ることができるよう、長期政治・行政政策課題化して取り組みます。
(個別重点政策)
5-1 高齢者年金制度
1)ベーシック・ペンション導入に伴う高齢者年金制度改革:国民年金制度廃止、生活基礎年金支給、厚生年金制度改正(第一次~2030年、第二次~2040年)
2)厚生年金保険制度の賦課方式から積立方式への転換、遺族年金制度改定(第一次2031年~、第二次2036年~)
3)全賃金所得者の厚生年金保険加入制度化(2031年~)
4)企業年金制度等付加的年金制度体系再編成(2031年~)
5-2 健康保険制度・介護保険制度改革、介護行政改革
1)後期高齢者医療保険・介護保険制度統合による高齢者医療介護制度改革、介護保険制度改正 (第一次~2030年、第二次~2040年、第三次~2050年)
2)医療保険制度改革(国民健康保険、組合健保)、全給与職者の健康保険加入制へ (第一次2031年~、第二次2036年~)、私的医療保険制度整備
3)介護関連職者の労働条件・環境改善、キャリア開発システム整備(第一次~2030年、第二次~2040年)
4)関連行政組織再編及び業務改革 (第一次~2030年、第二次~2040年、第三次~2050年)
5-3 高齢者生活、高齢者就労支援政策
1)地域包括高齢者支援センター拡充(高齢者夫婦世帯支援、単身高齢者世帯支援、高齢者施設等入所支援) (第一次~2030年、第二次~2040年)
2)高齢者生涯設計支援制度拡充(公的後見人制度、相続問題支援等)(~2030年)、健康寿命、認知症対策等支援 (第一次~2030年、第二次~2040年)、高齢者就労支援システム拡充 (第一次~2030年、第二次~2040年)
3)高齢者住宅供給・空き家等総合管理政策(第一次~2030年、第二次~2040年)
4)老人施設事業者改革 (第一次~2030年、第二次~2040年)

                         (少しずつ、よくなる社会に・・・)

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