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介護士・保育士賃金に支給の交付金の委託費問題改善の決め手、給与明細への公務手当明記

 先日
岸田政権による介護士・保育士の賃金引上げをめぐる課題(2021/11/10)
という記事を投稿しました。
 その記事は、以下の項目に従って、岸田政権の下、早くから取り組まれている介護士や保育士、幼稚園教師、看護師などエッセンシャルワーク、福祉的職務に携わる人々の低賃金を是正する政策について述べたものです。

・岸田新政権が優先課題として取り組む、経済対策としての介護職・保育職の賃上げ
・政府構想の賃上げ方法
・公定価格システムとしての介護報酬制自体の低賃金構造
・賃金構造、厳しい労働環境が、介護職・保育職人材不足を常態化している
・総論賛成だが、難問山積の賃上げ課題
・労働生産性の向上を求めることが困難な仕事の性質
・本質的に公的サービス事業である介護と保育
・介護職・保育職は公務員に準じる公的資格職であり、准公務員制度化が望ましい
・現状の介護・保育事業における介護・保育職の公的支援による賃上げ処理方法
・介護職・保育職に支給の交付金・補助金は、公的職務手当(公務手当)の性質。給与明細に明記すべき
・小手先の対策ではなく、制度根本からの見直しと改革に取り組むべき

 その記事中で、ツッコミが足りなかったことに、国(自治体含む)から支給される賃金引き上げのための交付金・補助金の類が、しっかり直接的に従事する人々に手渡されていない現状があります。
 それは政府・自治体から事業者・事業所に支給される「委託費」に関する問題です。

 今回、その問題について、昨日2021/11/13のネット情報で見た、以下のAERE.com で詳しくレポートされている一部を参考にさせてもらい、付け加えておきたいと思います。
⇒ 岸田首相の「保育士賃上げ」で給与は本当に上がる? 現場から「儲かるのは経営者だけでは」の声も(1/3)〈dot.〉 | AERA dot. (アエラドット) (asahi.com)


 経済対策に盛り込むまれるエセンシャルワーカーへの賃上げだが、現場で働く保育士のあいだには「本当にお金が自分たちに回ってくるのか」という不信感が存在すること、そして現実にあってはならない事業者・経営者サイドの行動・対応をそこで示しています。

守られていない、2015年制定「処遇改善等加算Ⅰ」、2017年制定「同Ⅱ」

 まず2015年と2017年に制定された「処遇改善等加算」方式。
 これは、勤続年数や、国が新たに設けたリーダー的な役職になることで、給与が加算される制度だが、規定どおりに運用されない事例が報告されており、また相談案件も多いとされている。

保育事業所へ支給の「委託費」の弾力的運用規定がブラック運用、グレー運用を可能にし、保育士低賃金温床化に繋がった

 次に、問題の「委託費」。
 認可保育所に、その運営のために市区町村から毎月支給されるものが「委託費」。
 本来それは、「人件費」、「事業費(保育材料費や給食材料費など)」 、 「管理費(福利厚生費や業務委託費、土地・建物の賃借料など)」の3科目に充当されるべき費用で、国が定める「公定価格」に基づいて決められた金額が 「積み上げ方式」で計算され、交付されている。

 その委託費、2000年までは、全体の8割が人件費、 事業費と管理費はそれぞれ約1割 と決められていたのだが、同年待機児童解消を理由に、株式会社の保育参入を解禁した折り、弾力的運用を認めることにした。
 積み立てや施設整備費、同一法人が展開する他の保育施設や介護施設、保育事業などにも、年間収入の25%まで流用ができるようになったことで人件費が他に回されることにもなる。
 これが、以降の本来保育士の賃金レベル引き上げのための財政からの公的資金支出が、ブラックボックス化を進めさせることになった。
 すなわち、事業主・経営者は、委託費を自由に使うお墨付きを手にし、実際保育士の賃金に充当せず、他に流用する事業所がその後多く出現する。
 無論、自分の事業所が他の費用に用いていますと経営者が明らかにするはずはない。

人件費以外の事業費等も流用する例も

 子どもの玩具を買う事業費まで流用されている実態も報告されている。
 内閣府は公定価格のなかの給食材料費と保育材料費を合計した「一般生活費」の金額を毎年通知。
 「幼児教育・保育の無償化」によって国は給食材料費を7500円とし、2020年度の保育材料費は、3歳児未満児が2978円、3歳児以上児が1809円となる。
 にもかかわらず、手作りを命じられたり、自腹を切ったり、低額予算で、ティッシュやトイレットペーパー、ペーパータオル、洗剤などの保健衛生用品、0歳児のミルク、アレルギー用のミルクやおやつ、その他、絵本、折り紙、画用紙や絵の具などの保育材料、クリスマスやハロウィン、入園式、卒園式の行事費まで購入するよう経営者から求められていたという訴えも。
 これらも「委託費の弾力運用」が背景にあるわけだ。


岸田新政権政策における保育士・介護士賃上げの方法は変わらず

 今回話しが進んでいる岸田政権による「(保育の)公的価格」の引き上げによる保育士・介護士らの賃上げが、従来の委託費増額で単純に処理されるならば、当然直接スタッフの所得増をもたらさない可能性があるわけだ。
 こうした問題は、既に何度も取り上げられており、政府・所管官庁が承知していて当然のことのはず。

 以下のジャーナリスト小林美希氏による2020年7月のAERA.dot のレポートで、委託費に関する詳細と経営サイドのひどい運用管理事例が紹介されており、是非チェックして頂きたいと思います。
⇒  犠牲になるのは保育士と園児たち 保育園の「委託費の弾力運用」問題(1/4)〈dot.〉 | AERA dot. (アエラドット) (asahi.com)

コロナ禍で明らかになった経営サイドの許されるべきでない搾取

 こうした保育業界、一部の経営者の体質問題が、新型コロナウイルス禍での保育士の不当な給与カットとして露呈したという。
 新型コロナ感染拡大による2020年4月の緊急事態宣言発令。
 保育園は「臨時休園」や「利用の自粛要請」が行われ、登園する園児が1~3割程度に減少。
 伴って、園児に見合う保育士数での保育が実施され、自宅待機命令を受け休業する保育士も。
 その際、認可保育園などに、国が運営費用を通常通り支給する特別措置を図っていたが、事業者側は「ノーワーク・ノーペイ」として、休業補償を十分にせず、無給、あるいは労働基準法違反にならない6割補償とする事例が多発した。
 公費で人件費が満額支給される一方で休業補償を抑えれば、その分が利益になる「休園ビジネス」を実践した事業所があったわけだ。
 委託費ブラック運用と同質・同根である。

「人件費」充当を目的とした「委託費」増額分は、給与明細で分かる会計処理・賃金処理方法にすべき


 またまた同じことが繰り返されることがあってはならないが、そのためには、運用管理方法を改善・改革して、グレーな取り扱いが絶対に行われない方法、システムを導入すべきだろう。
 その委託費の裁量運用規定は、速やかに法改正すべきであることは言うまでもない。
 その対策例を、冒頭紹介の記事中でも述べたが、以下で再度確認しておきたい。
 
 現状、委託費に包含して保育・介護事業所に国庫から交付金・補助金を支給しているならば、それも今後、給与明細に国庫からの支給分として別の賃金項目を設定するように規定すべきだ。
 冒頭の記事でも述べているが、理想は、保育・介護・障害者ケアサービス事業は、本質的に公的・公共サービス事業とし、そこで働く人々は(地方)公務員に準じる人々とみなすことである。
 (准)公務員試験を受験し、合格することを条件とすることが望ましい。
 それ故に、賃金として国庫(実務的には自治体)から支給された金額は、給与明細上で、例えば「公務手当」という明細を設け、いくら支給されているか、受け取っているか分かるようにするのだ。

 そのため、自治体から受け取った「委託費」における「人件費」充当部分は、委託費からではなく、公務手当交付金等の科目では、まず「預り金」または「仮受金」として受取り経理処理し、給与として支給する際に、給与の補助科目として設定した「公務手当」に仕訳処理するわけだ。
 確認になるが、今回施行されるであろう給付だけでなく、既に現在受け取っている給与の中に、自治体(国)から支給されている委託費から人件費に振り分けている金額も、そこに加算することになる。

 当然、賃金総額と所定内賃金・所定外賃金、基本給と諸手当、そして公務手当など、給与項目ごとの集計額と総額は、所轄官庁に届ける義務があるわけだ。

 介護保険制度運用における介護報酬給付の引き上げを賃上げの原資とする方法は、賃上げに充当する介護サービス報酬の金額や利用回数に基づくその額の算定は、複雑で難しい。
 かつ事業者・経営者の恣意性や賃金制度の有無、金額設定のための基準作りの難しさなどが課題となる。
 従い、今後明確に介護職の賃金引上げを国や自治体が行う場合は、交付金や補助金により行うことが分かりやすく、追跡しやすいため、この方法を用いるべきと思う。

自治体の管理責任に委ねる国の無策・無責任が諸悪の根源

 内閣府のスタンスは「補助金適正化法によって、通知で示された使途範囲は守らなければならないのだが、補助金適正化法は補助金(この場合は委託費)の使途を制限しているもので、使途の範囲内でより狭く使う分には何の問題もない」というにとどまる。
 また、「通知は、あくまで委託費の運用に関するもので、国が出す通知は、地方自治法で定められる『技術的な助言』に位置付けられるもので、法的拘束力はない。そのため、自治体が自らより厳しく縛りをかけることは可能なのだが、自治体は普通に『通知に従わなければならない』と思い込まされていた面があった」という意見がある。
 つまり、自治体は自らの判断によって、厳しい運用を行えるわけで、国に責任はないということになるのだが、それは無責任・無策というべきだろう。   

 少し話を端折り、今回の締めの言葉として、先述の小林美希氏の記事中の以下の言葉をお借りします。

 保育園とは、あくまで児童福祉法に基づいて設置される福祉施設であり、そこで利益をあげるものではないはずだ。委託費の弾力運用は、経営の自由度を図るため、適正に使っても余るようなら流用してもいい、という建前がある。事業者が利益を追求するための制度ではないが、弾力運用という穴があるため、すり抜けられるのだ。


 ここで小林氏は、まだ経営サイドの意識を信じる余地があり、それに期待すべきとしているかのようです。
 しかし民営化、民間事業化するとしたコト自体が、利潤追求目的の、すなわち儲かるから保育事業・介護事業に進出する最大、人によっては唯一の理由となることを想定すべきです。
 従い、問題提起・問題レポートに添えて、具体的な改善・改革案を提示する必要があることを確認しておくべきと考えます。

 従いこうした点からも、当サイトの「社会政策2050年長期ビジョン」に重要政策課題として組み入れ、継続的に問題提起と具体的な政策考察と提案を行なっていきます。

 なお今回の記述では、保育士・介護士双方の実態・実情について明確に区分けせずに論じた部分があります。
 異なる制度に基づく事業形態であるため、本来別々にその事情・法律・制度などを切り分けて論じるべきですが、少々曖昧なまま処理してしまっていることをお許し頂きたいと思います。
 ただし両職への賃金補助政策においては、同質の就労環境・就労条件、そして賃金問題があり、ほぼ共通の課題としてご理解頂くことに大きな問題はないと考えています。
 今後の記事展開の中で、留意してまいります。

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