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「2020年少子化社会対策大綱」批判-1:批判の後に向けて

ちょうど1週間前に
出生率1.36、出生数90万人割れ、総人口減少率最大:少子化社会対策大綱は効き目なし
と題して投稿した。

これを受けて、「少子化社会対策大綱」の内容を再度しっかり見て、これからの少子化対策を考えることにしたい。

内閣府ホームページに、今回閣議決定された当大綱の資料のリンクが以下のように貼ってある。
今回は、これを重点的に参考にして考えていくことにする。

  1. 「少子化社会対策大綱」(概要)(PDF形式:392KB)
  2. 「少子化社会対策大綱」

この中で、一番上の(概要)が、前回も掲載した、以下の表である。


「少子化社会対策大綱」(概要)


前回の3枚の表に比べ1枚になっているので見やすい。
しかし、内容的には、前回分を以下に再掲したが、さほど代わり映えはしない。
3枚にわたっていたものを、同じような内容が多いだけに文字を小さくして1枚にまとめたレベルとみていいだろう。

果たして、「結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現をめざした」5年間はどうだっただろう。


前大綱の総括自己評価は


いきなり、今回の第4次に入るのではなく、その前の第3次大綱についての総括・反省も当然必要だ。

集中取組期間とした5年間で、設定した重点課題と効果的かつ集中的に投入したその政策は、実際成果に結びついただろうか。

それについて、一応は、ごくごく簡単だが、今次の<大綱の検討経緯>でごくわずか触れているので紹介したい。

2015 年の少子化社会対策大綱策定から5年目の 2019 年以降、 有識者で構成する「第4次少子化社会対策大綱策定のための検討会」を7回開催。
2019 年 12 月に「第4次少子化社会対策大綱の策定に向けた提言」を取りまとめた。

提言では、前大綱に基づく取組に加え、
「ニッポン一億総活躍プラン」
「子育て 安心プラン」
「新しい経済政策パッケージ」
「まち・ひと・しごと創生総合戦 略」
「第4次男女共同参画基本計画」
など、
少子化対策に関わる取組を不断に進めてきたにもかかわらず、依然として個々人の結婚や子供についての希望がかなえられていない状況があり、より一層の努力が必要であることなどについて指摘がなされた。

政府としては、この提言を真摯に受け止め、総合的な見地から検討・調整を図り、 本大綱を策定する。
(この後に、新型コロナウイルス感染症を受けての方針が続くが、省略した。)

まあ、大綱だけでも盛り沢山の内容なのに、それ以外にも例のキャッチフレーズ、スローガン付きの政策を関連付けてやってはみたが、(正しくは、やったふりをしたが)成果には結びつかなかった。

結論はそういうことだ。
だれも責任は取らずに。
そして、今回の閣議決定に至った。


第4次「少子化社会対策大綱」とりまとめの背景を読む

「新しい令和の時代にふさわしい少子化対策へ」というサブタイトルが付いた第4次、今回の「少子化社会対策大綱」。

上図のその<背景>としてまとめている項目は、参照した公開PDF資料では、「はじめに」とした以下である。

「はじめに」
1.深刻さを増す少子化
2.少子化の主な原因は、未婚化・晩婚化と、有配偶出生率の低下
3.長期的な展望に立って、総合的な少子化対策を大胆に進める
4.諸外国の取組に学び、長期的な少子化対策を実践する
5.大綱の検討経緯


そこで、同様本文から該当する項目ごとに、内容を全部または一部要約して紹介し、思うところを少し加えてみたい。
詳細は、こちらで見て頂ければと思う。
本文(PDF形式:424KB)


「深刻さを増す少子化」の「深刻度」を具体的に示すべき


1.深刻さを増す少子化

 我が国の少子化の進行、人口減少は深刻さを増している。
 第2次ベビーブーム世 代(いわゆる団塊ジュニア)が 40 代後半になる中、2019 年の出生数(推計)は 86 万 4,000 人と過去最少を記録し、いわば「86 万ショック」とも呼ぶべき状況となっ た。
 出生数の減少は予想を上回るペースで進んでおり、一旦は 1.45 まで回復した合計特殊出生率もここ数年微減傾向にある。
 出生数の減少と死亡数の増加を背景に、 我が国の総人口は、2008 年をピークに減少局面に入っている。

 少子化の進行は、人口(特に生産年齢人口)の減少と高齢化を通じて、労働供給の減少、将来の経済や市場規模の縮小、経済成長率の低下、地域・社会の担い手の減少、現役世代の負担の増加、行政サービスの水準の低下など、結婚しない人や子供を持たない人を含め、社会経済に多大な影響を及ぼす

 時間的な猶予はない。
 今こそ結婚、妊娠・出産、子育ての問題の重要性を社会全体として認識し少子化という国民共通の困難に真正面から立ち向かう時期に来ている。

「深刻さを増す少子化」は、文字通り、「少子化社会対策」を必要とする背景・要因である。
その深刻度は、「時間的な余裕はない」という表現に示されているかのようだ。
しかし、これほどいい加減な言い回しもない。

もし本当にそう思うなら、社会全体という曖昧に委ねずに、まずは政治・行政が真正面から、即刻効果を期待できる施策に取り組むべきである。
国民の共通の困難克服のために。
社会経済に多大な影響を及ぼすと認識しているなら、一層のことだ。


「少子化の主因は、未婚化・晩婚化と有配偶出生率の低下」だがそこに真因あり

2.少子化の主な原因は、未婚化・晩婚化と、有配偶出生率の低下

少子化の主な原因は、未婚化・晩婚化と、有配偶出生率の低下であり、
特に未婚化・晩婚化(若い世代での未婚率の上昇や、初婚年齢の上昇)の影響が大きいと言われている。

若い世代の結婚をめぐる状況を見ると、
男女共に多くの人が「いずれ結婚する」 ことを希望しながら、
「適当な相手にめぐり会わない」、
「資金が足りない」
などの理由でその希望がかなえられていない状況にある。

また、「一生結婚するつもりは ない」という未婚者の微増傾向が続いている。

子供についての考え方を見ると、未婚者・既婚者のいずれにおいても、平均して 2人程度の子供を持ちたいとの希望を持っているが、
「子育てや教育にお金がかか りすぎる」、
「これ以上、育児の負担に耐えられない」、
「仕事に差し支える」
といっ た理由で、希望がかなわない状況がある。

また、夫婦の平均理想子ども数、平均予定子ども数は低下傾向が続いている。

このように、少子化の背景には、
・経済的な不安定さ
・出会いの機会の減少
・男女の仕事と子育ての両立の難しさ
・家事・育児の負担が依然として女性に偏っている状況
・子育て中の孤立感や負担感
・子育てや教育にかかる費用負担の重さ
・年齢や 健康上の理由など
個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っている。

こうした状況を受け、幼児教育・保育の無償化や高等教育の修学支援など、子育て支援を拡充してきた
引き続き今行っている施策の効果を検証しつつ、こうした希望の実現を阻む 隘路の打破に強力に取り組み、個々人の希望の実現を後押しするとともに、結婚、妊娠・出産、子育てに希望を持つことができる環境づくりに取り組む。
こうして、多くの人が、家族を持つことや、子供を生み育てることの喜びや楽しさを実感できる社会をつくる必要がある。

結局何なんだ?
と聞きたいのだが、結論など出せるわけがない。
いろいろな要因が複雑に絡み合って、一つに絞れない。
絞れるわけがないのだ。
ただ、言えることは、自分が望むように生きることができない閉塞感がある時代に生きていると感じている人が多いということだろう。
これも極めて情緒的な表現であって、合理的ではない。

ならば、もう少し真因に迫れないか。
結婚すること、子どもを産み育てることに社会的・経済的な不安を多くの人が感じている。
しかし、ここで「社会的」というとまた抽象に戻ってしまいそうだ。
だから「経済的な不安」に絞ろうと思う。
これが真因に近いのではないか。
但し、絶対に結婚したくない人、絶対に子どもを持ちたくない、という生き方を決めている人を除いてのことだ。

その真因を相当の確率で取り除くことができると思われる政策を、とことん議論検討すべきではないか。


長期的展望による、総合的少子化対策の大胆な促進」は望めず

3.長期的な展望に立って、総合的な少子化対策を大胆に進める

少子化は今この瞬間も進行し続けており、少子化への対応は遅くなればなるほど、 将来への影響が大きくなる。
したがって、早急に取組を進めることが必要である。
一方で、少子化対策は、その効果が表れるまでに一定の時間を要する。
少子化の進展に歯止めをかけるため、長期的な展望に立って、必要な安定財源を確保しながら、 総合的な少子化対策を大胆に進めていくことが必要である。

もう初めから腰を引いて、言い訳を先にしているとしか思えない内容だ。
矛盾を矛盾と感じることなく、できもしないこと、腹をくくってやろうと思ってもいないことを、大胆に、先出し言い訳しているのだ。



諸外国の取組みに学んだ後に、それを上回るわが国独自の対策を


4.諸外国の取組に学び、長期的な少子化対策を実践する
として、ここでは、ヨーロッパのいくつかの国の成功モデルを簡単に紹介している。
しかしその要因として挙げている事項は、日本でもやっている、みたいな論法になっている。
それを継続すれば、日本もいずれそうなる、という感覚か。
そしてこう結ぶ。

長期的な少子化対策を実践していく際には、こうした諸外国の取組を研究し、社会経済や国民負担の在り方の差異に留意しつつ、どのような施策が効果的で優先されるべきかという観点から、我が国の少子化対策を検討し、できることから速やかに着手することも重要である。


果たして、何が効果的で優先すべきか、十二分に検討されての施策か。
そうは言っても、できることから速やかに着手するということは、効果よりもやりやすさ優先と、言い訳をもうそこでやっているわけだ。

で、実際のところ、これだという我が国の少子化対策の決め手と確信をもって、核心に迫る、革新的な施策は提起できたのか。

否だ。
むしろ実現から遠ざかる。
その証拠は、大綱の中で設定している<数値目標>に示されている。
別添2 施策に関する数値目標(PDF形式:144KB)

施設を増設すれば、なんとか数字が変わる。
そういう項目が大半で、その結果として、いつまでに出生率をどこまで改善する、という肝心の数値目標がないのだ。
いろいろやる結果、このくらいにはなる、と期待できる数値くらいあげてはどうかと思うのだが。
もちろん推測としての効果反映度も添えて。

もう考えつくだけの数値項目が挙げられているが、そのベースは、以下に述べる<基本的な目標>から来ている。


「少子化対策における基本的な目標」の抽象性


一人でも多くの若い世代の結婚や出産の希望をかなえる「希望出生率 1.8」の 実現 に向け、
令和の時代にふさわしい環境 を整備し、
◆ 国民が結婚、妊娠・出産、子育てに希望を見出せる
◆ 男女が互いの生き方を尊重しつつ、主体的な選択により、希望する時期に結婚できる
◆ 希望するタイミングで希望する数の子供を持てる社会をつくる

ことを、少子化対策における基本的な目標とする。


これが、「希望出生率1.8」実現のために行う大項目というわけだ。

「令和の時代にふさわしい環境」
いきなり、クイズみたいな表現がくる。

そしてこれに続く以下が、概要の中段以降にある<基本的な考え方>の命題を示す項目になる。

このため、若い世代が将来に展望を持てるような
◆ 雇用環境の整備
◆ 結婚支援
◆ 男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備
◆ 地域・社会による子育て支援
◆ 多子世帯の負担軽減

など、「希望出生率 1.8」の実現を阻む隘路 の打破に取り組む。

もとより、結婚、妊娠・出産、子育ては個人の自由な意思決定に基づくものであ り、個々人の決定に特定の価値観を押し付けたり、プレッシャーを与えたりするこ とがあってはならないことに十分留意する。

ここで最も気になるのは、「環境」と言う表現である。

基本的には、環境という非常に曖昧な用語を用いることは、責任を担う主体を明確にしていない、卑怯なやり方だ。
これは、「地域・社会による子育て支援」にある「地域・社会」でも同じことが言える。

「少子化社会」を形成している、招いたのは「社会」だから、環境や地域・社会が変われば、少子化社会も変わるだろう。
その程度の感覚でしか取り組んでいないのだ。

そもそも「令和の時代にふさわしい環境」と端から唱っているのだから、いい加減さが分かろうというものだ。
では「平成の時代にふさわしい環境」は、どういうもので、これまでの「少子化社会大綱」で、どうなったのか、どうだったのか。

その環境や地域・社会は、基本的には種々の施策が政治により法制化・法令化され、行政により具体的に推し進められることで、整備され、改善され、望ましいものに変化していくのだ。

少子化「施策の推進体制等」における「責任」の不明確性


で、結局やんなきゃいけないので、こんな感じで進めます、というのが、少子化「施策の推進体制等」という以下の内容。

・有識者の意見を聞きつつ、施策の進捗状況等を検証・評価する体制を構築し、PDCAサイクルを適切に回す。
・施策について数値目標を設定するとともに、その進捗を定期的にフォローアップ
・更に強力に少子化対策を推し進めるために必要な安定財源の確保について、国民各層の理解を得ながら社会全体での費用負担の在り方を含め、幅広く検討

なんか、民間企業における企画書・計画書に見られるような記述だ。
しかし、今時の企業では、トップに突き返されるような、中身のない薄っぺらなものだ。
競争社会では通用しない、一般論的な内容で、使命感も責任感もないものだ。

国民各層も、社会全体も、実は、政府・行政・官庁・官僚がそのすべての当事者であり、決定権者なんだよ。
そういう自作自演の、自己満足型の、責任回避型の「少子化社会対策大綱」なのだ。
笑止!

さて、批判ばかりでは意味がない。
笑われない、無視されない、少子化対策真剣に考え、提案しなければ。

次回に続きます。

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