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女性のいない民主主義社会の改革を:女性国会議員の一挙増員への途


先日、介護関連の新しい書『介護保険が危ない! 』を取り上げ、その流れで、女性の政治参加を切にお願いするメッセージとして
危ない介護保険をどうすべきか:上野さん、樋口さん、女性で政治を変えましょう!
と題した投稿をした。


そこで、今回は、以前関心を持って買い求めた
女性のいない民主主義 (前田健太郎氏著:2019年9月20日初版)』と、その投稿とを結びつけ、重ね合わせて考えてみることにした。


三分の一以上が女性議員の英国議会

結構、保守党と労働党間での政権の移動の頻度が多い英国。
それは、安定性の欠如の表れでもあるが、民主主義の最大の長所の具現化でもある。
もっとも英国自体が、多種多様な民族と領域とを包含・包摂した困難な課題を抱えた国であることに因があるのだが。

その英国では、例のブレグジットを争点とした2019年12月総選挙で、全体の3分の1程度を占める、保守党87人、労働党104人等合計220人の女性議員が誕生した。

英国では1990年代から、一定の割合の選挙区で女性が確実に候補者として指名されるクオータ制を導入。
17年の総選挙で女性議員比率が半数近くに達した。
労働党は、ジェンダーを含め議員のキャリアが多様化。
それが政治の多様化、民主主義の質の向上にもつながると認識されているという。

一方、日本の衆議院の女性議員は、定員の10分の1程度に過ぎず、列国議会同盟(IPU)が今年3月に発表した各国議会の女性比率に関する報告書では、日本はなんと165位にとどまっている。
グローバル社会において、こどもの貧困・教育費用の低さなどと並んで、ワースト項目に挙げられる恥ずかしい事態だ。

介護や保育など、こうした社会保障をめぐる制度・政策の日本の未熟さは、民主主義国家とは言いながら、現実的には民主主義が機能していない後進国であることを物語っている。

それらの背景や要因などについて、民主主義政治に女性が関わる度合いが極めて低いことを多面的に論じているのが、『女性のいない民主主義 』というわけだ。
非常に良い書と思うので、ご一読をお薦めしたい。


女性のいない民主主義 』から考える、女性国会議員少数の要因と課題


同書著者前田氏は、これからは、男性稼ぎ主モデルの福祉国家から個人モデルの福祉国家へという社会システムの変化が必要という。

その転換が行われると、介護・保育・母子家庭などの社会福祉領域での役割を旧来からの性別役割分業モデルにより強制されている女性が主体となった政策自体も転換が起きることになる。

とは言っても、政策に影響を与える市民活動を起こすまではできるが、現実に政策化され、法制化されるまでになるには、そのモデルチェンジを引き起こすための政治・行政体制の変化・改革が先行することが条件となる。

ということは、それらの市民団体、あるいは業界に働く人で組織化された団体自体が女性国会議員を一定数以上国会に送り出せば、良いわけだ。
それらの組織は、階級集団ではなく、利益集団の性格が強い。

女性の利益も確かに多様ではあるが、性別役割分業や性差別への抗議・反対を軸にすれば、相当比率で参画を得やすい利益集団を形成できるだろう。

歴史を振り返れば、欧米各国においても、女性の参政権が確立されたのは意外に最近のことだ。
しかしそのことが日本における女性の地位の向上が遅々として進まない理由として良いわけがない。

アベノミクスで「女性活躍」と喧伝されたのは、単純に、少子高齢化の進行により労働力人口の減少が加速化することの対策として、女性の労働参加を半ば強制・脅迫するためのこととされる。
母子家庭政策も、所得補償・補填よりも、初めに労働ありきでとにかく働かせて所得を増やさせようという、福祉ウェルフェアではなくワークフェアに基づくものであることも同根である。



日本におけるクオータ制と望ましい体制・組織作り


前田氏が、同書の最後で、日本のクオータ制について述べている。
以下に、一部を要約した

2018年5月に、候補者を男女同数に近づける努力を政党に求めるが、違反に対する罰則規定がない、いわゆる「日本版パリテ法」、「候補者男女均等法」が成立。
パリテは、女性枠を設定するクオータと違い、男女の候補者数を同数とすることをめざすもの。
日本でも、他国の歴史を見ると、より強力なクオータ制への発展で、女性議員数が増えるかもしれない。

より短期的には、政党クオータ制がその増加につながるだろう。
2019年の参院選で立憲民主党が、方針として比例代表候補の4割とし、45%が候補者に。
全候補者の女性比は過去最高の28%、当選者は23%となった。

もし、女性だけの政党を創ると、「候補者男女均等法」にその政党自体がそぐわないことになり、おかしなことになってしまうのだが・・・。

前田氏は、女性議員が3割を超えると政治も変わる可能性が高くなる、と述べている。
とすると、28%はもうすぐのように見えるが、これは参議院のことだ。
日本の二院制における参議院はお飾りみたいなもので、現実に政治を変える機能は持たない。

ゆえに、女性国会議員を増やす戦略では、衆議院に集中する必要がある。
今後衆院解散がないとすれば、次の改選期は2021年10月任期後。
それまでに準備が整うかどうか難しいが、リーダーシップを取る人と選挙参謀がいれば、20~50人くらいは当選できる組織は作れるのではないか。


女性学者・研究者・ジャーナリスト・経営者・社会活動家が、女性の政治参加のためのネットワーク作りを

夫婦共働き社会の常態化が形成されて、もう後戻り不可能になっている。
ならば、政治社会も両性共働き、そしてもう一歩進めてジェンダー多様働き型の組織形態に変えていく必要がある。

そのためには、女性自身が自ら行動を起こすべきであろう。

前田氏の言うように「政党中心の制度」でなく「候補者中心の制度」としての国会を機能させることになる。
これは、社会保障システム改革に直結する政治システム改革の起点となる。

なんとか、女性主体の政治組織を新たに創って頂きたい。
その思いは、先述した
危ない介護保険をどうすべきか:上野さん、樋口さん、女性で政治を変えましょう!
で述べた。

性別役割分業制社会から根本的に脱却するためには、それを強制している性別役割分業政治システムそのものを改革する必要がある。
それが、遠回りするように見えるが実は最も最短の道だ。

当サイトでは、もう3ヶ月以上前になるが、以下で、政治システム改革を提起した。
劣化する国会議員・国会・議院内閣制:絶対不可欠の政治システム改革-1
一院制移行・議員総定数削減と選出システム改革を:絶対不可欠の政治システム改革-2

後者では、ジェンダー・クオータ制にとどまらず、世代クオータについても述べている。
それらの政治システム改革も、既得権益者ではない女性議員がいなくては実現不可能だ。

2030年までは、最低2回の衆議院議員選挙がある。
現状の衆議院議員定数465人の内、30%で140人、40%で186人。
そこまでの人数に女性議員が増えれば、政治も社会も大きく変わるだろうし、変わっているだろう。
上記の分野で存在感を持っている女性の方々を思い描いてみると、決して不可能な数字ではないと思うのだが。

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