非常に興味深い書を読み終えました。
三浦瑠麗氏著の『日本の分断 私たちの民主主義の未来について (文春新書)』(2021/2/20刊)
実は、今月7月から
・『枝野ビジョン 支え合う日本 (文春新書)』(枝野幸男氏著:2021/5/20刊)
・『左翼の逆襲 社会破壊に屈しないための経済学 (講談社現代新書)』(松尾匡氏著:2020/11/20刊)
・『「リベラル保守」宣言 (新潮文庫)』(中島岳志氏著:2016/1/4刊)の3冊を順次取り上げて、現状と今後の政治及び政党に関する考察を始めようと思っていました。
ただ心のどこかに、右寄り、保守思想についての書も1冊入手し流し読みしておくべきかという思いがあり、ふと目に入ったのが三浦瑠麗氏の書。
それが、『日本の分断 私たちの民主主義の未来について』。
右派の思想的書と想像していたのですが、意外や意外、左寄りの人や政党にとっても非常に有用な書でした。
そこでの主張の論拠が、同氏が主宰する山猫総合研究所が開発し公開している「日本人価値観調査」というアンケート結果とその分析。
ネットから、だれでも簡単に回答し、診断結果を即時みることができるアンケート調査です。

「価値観診断テスト」結果から
まず、私自身が、同研究所ホームページから利用回答したその診断結果をコピペしました。
あなたはリベラルです。
この象限に当てはまる人は、ライフスタイルに関する個人の選択の自由を尊重し、多様性と少数者の権利を信じています。
社会正義のための国家による介入には肯定的で、格差是正や少数者の権利保護のために積極的な国家の役割を期待します。
成長への関心は二次的で、資本主義の行き過ぎを是正する最適な政治経済体制を望む傾向にあります。
自由を信じている一方で、社会的な価値観は収斂すべきだとみなす傾向にあります。
また、外交安保ではリベラルです。
外交安保リベラルとは、憲法改正や日米同盟強化に反対し、自衛隊の役割の拡大にもくみしない立場で、限定された軍備を望む考え方です。
ん、確かにリベラルでしょうね。
その結果がプロットされたのが以下です。

もちろん、自民党は支持せず、リベラルという範疇に入るのでしょうが、現状の野党勢力に中に支持政党はありません。
なので、スッキリした気分で自称リベラルと呼ぶ気にはなりませんし、ある意味で「リベラル」の中(仲間)には入りたくないという思いの方がむしろ強いですね。
このあたりの心情が、当サイト運営と主張・提案の軸になっていると言えるでしょうか。

まあ、ネットアンケートは、ゲームみたいなもの。
皆さんも、この価値観診断テスト、ぜひこちらから試してみてください。
⇒ https://yamaneko.co.jp/diagnosis/
質問項目と、回答法・採点法は以下に参考のため、転記しました。
価値観診断テストのアンケート構成と回答項目・診断方法
<回答選択肢>
1.とてもそう思う
2.まあそう思う
3.あまりそう思わない
4.まったくそう思わない
5.どちらともいえない/わからない
<採点方法>
各設問で、1を選んだ場合は2点、2を選んだ場合は1点、3を選んだ場合はマイナス1点、4を選んだ場合はマイナス2点、5を選んだ場合は0点とし、すべての点を合計したものを設問数で割る。
◆外交及び安全保障について
・日米同盟をもっと強化すべきだ
・今後、日本の防衛予算はもっと増やすべきだ
・中国は領土的野心を持っていると思う
・日本は将来的に、核保有を目指すべきだ
・韓国に対しては歴史的問題で妥協すべきではない
・憲法九条一項二項は維持したうえで自衛隊を明記する憲法改正案に賛成だ
・集団的自衛権の行使が一部容認されたことに賛成だ
・国際社会での活動のために自衛隊を積極的に活用すべきだ
・テロ対策の強化のために国による監視を強めるべきだ
⇒ あなたの外交・安保に関する価値観は 点
◆ 経済問題について
・多少の格差を生んでも、経済成長は大事だ
・公共事業はもっと減らすべきだ
・株価が上がることはいいことだ
・民間にできることは民間に任せていくべきだ
・これ以上高額所得者の所得税の税率をあげるべきではない
・福祉をこれ以上充実させるなら増税すべきだ
・法人税をこれ以上上げるべきではない
・自由貿易には賛成だ
・生活保護等の貧困対策にこれ以上予算を使うべきでない
⇒ あなたの経済的価値観は 点
◆ 社会問題について
・夫婦別姓に反対だ
・同性愛者を特別扱いすべきではない
・日本の伝統行事をもっと大事にすべきだ
・外国人労働者の受け入れ拡大には反対だ
・外国人観光客はこれ以上増やすべきではない
・国会議員の一定割合を女性とする制度の導入には反対だ
・親のしつけの一環として多少の体罰はやむを得ない
⇒ あなたの社会的価値観は 点
この類の設問は、どう受け止めればいいのか、どこまでのことを言っているのか分からない、分かりにくいというものが多いですね。
それらの一つの設問項目自体が、複数の項目や要素から構成されていることが多く、その項目ごとに回答が違うこともあります。
そうした前提を理解した上で、本書の分析を読む必要がありますが、米国の価値観調査なども参考にしており、他の調査など事例も多々持っている研究所なので、納得度の高い、従い説得力のある内容と感じました。

2021年7月のサイト運営方針
さて、先述した3冊の中に、立民代表の枝野氏の近著があります。
次回から同書を用いて、枝野氏の理念や考え方、政策などを評価していきますが、恐らくいくつもの項目で、反論するに違いありません。
先述した設問項目に中の具体的な政策についての記述・提案も「枝野ビジョン」に当然あり、その批判も行うこともあると思います。
また自ら「保守本流」を名乗る「リベラル」(であるはずの)政党の党首の思想に対し、以前から気になっていた中島岳志氏が標榜する「リベラル保守」は何が同じで、何が異なるのか。
そして、バリバリの左派で反緊縮の論陣を張る松尾氏と枝野氏の政治思想は、交わることがあるのかないのか。
それぞれの特徴・特性を確認しつつ、それぞれが相容れない要素・要因は何か。
そして、日本人の価値観調査が示す日本人の特性が、それらとどういう関係を結び、あるいは交わることなく歴史を刻んでいくのか。
その『日本の分断 私たちの民主主義の未来について』を時には潤滑油とし、時には絶対的前提条件とし、当サイトの目的である、2050年の望ましい社会実現のための望ましい政治思想化、政治課題化、政治プロセス化について今月7月は取り組んでいくことにします。
お付き合い頂きたく存じます。
また、忌憚のないご意見も頂ければ幸いです。

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