先日、少子化対策をめぐる当サイトでの上期でのシリーズに一旦区切りをつけるべく
◆ 望ましい2050年社会に向けての少子化対策への助走:自然な生き方として結婚し子どもを持つということ(2021/6/19)を投稿。
合わせて、少子化対策には、ベーシックインカム、ベーシック・ペンションが不可欠として、専門サイト
http://basicpension.jp で
◆ 少子化対策に必須のベーシック・ペンションと地方自治体の取り組み拡充:BP法の意義・背景を法前文から読む-3(2021/6/20)
を投稿しました。
ところが、今日2021/6/21付日経に、
「未婚者の5割「雇用安定を」 本社調査 コロナ下、4割超が結婚に意欲」
という見出しの記事が。
これは、6月上旬、日経がインターネット調査会社マイボイスコムにより行った、20~40代未婚男女1000人を対象として行った「結婚について」の調査レポート。
今月実施したばかりの鮮度の高い調査だけに、これは参考にすべき、ということで、舌の根も乾かぬうち、ペンのインクも乾かぬうちに、急遽、追加続編として取り上げることにしました。
(もちろん、舌もペンも使ってはいませんが・・・。)

子どもを持つ前にまずは結婚。
結婚に必要な支援は、「雇用の安定」と「新婚家庭への金銭的支援」
日本は結婚しないと子どもを持たない傾向があり、婚姻の減少や先送りは少子化の加速に響く。
コロナ禍の収束が見通せない中でも結婚する人が増えるには、どんな支援が必要か。
コロナの影響で、出生数・婚姻数が激減している状況を背景に、こんな観点から行ったインターネット調査。
必要と思われる支援項目を提示し、複数回答も可としたその回答結果の上位順は、
1)職業訓練の充実や正社員化の促進など「雇用を安定させるための支援」(54.4%)
2)新婚家庭への資金支援、住居補助など「金銭的な支援」(42%)
3)育休や時短勤務など「男女ともに家庭と仕事が両立できる職場の制度づくり」(34.9%)
4)長時間労働の是正や休みをとりやすくするなど「働き方改革」(32.8%)
充分理解でき、納得できる結果と思います。
なお、その数字は、男女平均値であり、特に「男女ともに家庭と仕事が両立できる職場の制度づくり」では女性の半数以上が必要と回答しています。
上記以外に提示しているその他の<コロナ禍でも婚姻や出産が増えるために必要な支援>項目に、ほぼ回答数順に、以下があります。
5)子育て世代への経済的支援
6)子育てに優しい社会の環境づくり
7)オンラインなどの出会いの場作り
8)不妊治療への費用補助など
9)待機児童の解消など保育制度の整備
10)自治体や企業主導の出会いの場作り
コロナ禍による(昨年から今年にかけての)結婚に対する意識の変化
次に、コロナで、結婚に対する意識が変わったかどうかを尋ねたところ、以下の結果が。
1)もともと結婚願望はなく、変化なし 50.3%
2)もともと結婚願望はあり、変化なし 36.5%
3)もともと結婚願望はなかったが、コロナ禍ででてきた(強まった) 7.4%
4)もともと結婚願望はあったが、コロナ禍でなくなった(弱まった) 5.6%
もともと結婚願望がある人と、願望が出てきた人を合計すると43.9%。
コロナの感染拡大という状況下でも、未婚者の4割超が、結婚への意欲を持っていることになりますね。
しかし、一方、もともと結婚願望なしで変化もなしが50.3%いることは、それが普通というべきか、残念というか、微妙です。
コロナでなくなってしまった人を加えると、ほぼ56%になることも。
その状況下で、願望に変化があった理由を問われて回答した結果が、以下。
結婚願望がでてきた(強まった)理由
1)健康に問題が生じた際に安心 48.6%
2)経済的に安心できる 43.2%
3)外出自粛で孤独を感じた 37.8%
結婚願望がなくなった(弱まった)理由
1)コロナの影響で収入が減り、経済的に不安に 39.3%
2)外出自粛等で出会いが減った 37.5%
3)外出自粛等で人との交流が面倒になった 35.7%
※ このうち男性の47.4%が経済的不安を挙げている
結婚の持つメリットが示される一方、結婚に必要な経済的要素や結婚のきっかけとなる機会の減少・喪失という不安も示されていることは、想定内のことと言えます。

少子化対策早期着手における、重点3政策
想定された調査結果と、昨日投稿した記事
◆ 少子化対策に必須のベーシック・ペンションと地方自治体の取り組み拡充:BP法の意義・背景を法前文から読む-3(2021/6/20)
において、
「少子化社会対策の抜本的見直し、ベーシックペンション前倒し導入と地方自治体行政拡充強化」
と題して提起した内容を、一部簡略化して、以下に転載しました。
行政面でも、個人個人の意識と生活部面においても、なかなか克服することが困難な少子化対策。
コロナ禍で、加速化・深刻化した出生数の減少、婚姻数の減少に歯止めをかけることは、一層困難になったことは明らか。
そのため、10年計画でと提案している「ベーシック・ペンション」は、現状では非現実的な提案。
そこで、現状で考える早期の少子化対策を以下のように整理した。
1.ベーシック・ペンション、ベーシックインカムの一部早期導入
1)児童基礎年金の前倒し導入:月額1人5万円~8万円(現状の児童手当増額も可)
2)現金、一部地域通貨(電子マネー・デジタル通貨)等支給方法・手段検討
3)段階的導入案:金額漸次増額、支給対象年齢(開始誕生年設定)検討
4)2030年までにベーシック・ペンションの完全導入
5)上記関連法制整備
2.地方行政における少子化対策取り組み拡充
1)子育て地域支援センター(地方自治体主管)の拡充
・孤育防止サポート
・産前産後ケア
2)学童保育体制整備拡充
3)婚活支援サービス拡充(オンライン、オフライン婚活共)
4)各種支援制度拡充(※地方自治体導入事例参照)
5)関連行政地方財源へ国費の投入(地方税法改正、他税地方配分改正等)
3.労働政策、労働法改正
1)非正規雇用制度・法制改正
2)解雇規制強化(労働基準法、雇用保険法改正)
3)最低賃金法改正
<経済的支援>は、<1.ベーシック・ペンション、ベーシックインカムの一部早期導入>がそれに当ります。
子どもに対するベーシック・ペンションは、児童基礎年金として、子ども個人個人に支給されるものです。
種々の<支援サービス>のいくつかは、<2.地方行政における少子化対策取り組み拡充>に掲げた内容でカバーできるでしょう。
残りは、<3.労働政策、労働法改正>の括りのなかで、企業サイドへの取り組みを国が求める政策として強化されるでしょう。
そして、<雇用を安定させるための支援>は、<3.労働政策、労働法改正>に掲げた取り組みに当ります。
なお、<地方自治体導入事例>とは、以下の例です。
1)<沖縄県金武町>(2.47)
・子ども1人につき激励金10万円を支給
・5歳から中学卒業までの給食費、高校卒業までの医療費を無料化
2)<愛知県大府市>(0.46ポイント上昇1.93):
・小3以上の2人に1台タブレット端末を配布
・電子黒板を整備
3)<奈良県奈義町>(0.32ポイント上昇1.84):子育て応援宣言
・出産祝い金(1人10万円)
・進学困難学生への奨学金(最大年60万円)無利子貸与
・育児合間の仕事を紹介する「しごとコンビニ」整備
・子育て期の孤立を防ぐ狙いで親同士が子どもをケアし合う仕組みを整備
4)<東京都日の出町>(0.57ポイント上昇1.59)
・給食費などに充当できるクーポンを中学卒業時まで1人月1万円分支給
・高校生に支援金月1万円を給付
5)<埼玉県志木市>(0.39ポイント上昇)
・子どもを保護者宅の最寄り駅で預かりバスで郊外の保育施設に送迎する「保育ステーション」事業化
6)<千葉県流山市>(0.32ポイント上昇)
・「母になるなら、流山市。」広告展開
・保育所整備も進め、4月に待機児童ゼロ達成
7)<山梨県忍野村>(出生率2.06、上昇幅0.41)
・村独自に教員や支援員を増員
・住宅新築への補助金制度
・8歳までの医療費無償化
・小中学生の給食費無償化
・高校生の修学助成金創設
8)<神奈川県逗子市>(0.23ポイント上昇)
・子育て情報を一元化専用ポータルサイト設置
→子どもの年齢別に子育て支援の催しや検診日程案内メルマガ、妊婦への訪問支援など取り組み

少子化対策、婚姻率向上・婚姻数増加対策を、政治課題にできるか
このように、ある意味で、アンケート調査に拠ることなく、必要な、求められる政策は明確であり、あとはどうそれらを政治イシュー、政治・立法の場に持ち込むか、持ち込めるかになります。
それは、まず政権政党の意志・やる気、あるいは対抗としての野党の世論を喚起する活動、そして次の衆議院議員選の帰趨に左右されます。
そして、その課題において論点となるのが、財源問題。
日経がいくら、こうした調査結果を提示しても、こうした政治レベルに明確な影響を与えることなど期待できないのも明らかです。
問題も、解決のために取り組むべき課題もほぼ出揃っているにもかかわらず、前にちっとも進めない、進めようとしない、政治不在のニッポン、モラトリアム社会ニッポン。

止まらない日本の少子化、妻が前向きになる環境築く
同じ今日、2021/6/21付日経<ダイバーシティ進化論>欄で、先述したネット調査結果記事とセットで掲載したかのように、同記事の横に配置してあったのが、山口慎太郎東大教授に拠る
「止まらない日本の少子化 妻が前向きになる環境築く」 と題した小文。
同氏は、『「家族の幸せ」の経済学~データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実~ (光文社新書)』(2019/7/30刊)の著者であり、これまで当サイトの以下の記事で取り上げている研究者。
◆ 幼保無償化後の現実的課題:抜本的な保育行政システム改革への途(2020/5/29)
◆ 5歳児幼児義務教育化と0~2歳乳幼児への幼児教育化を:「子ども庁、何を優先すべきか」より-2(2021/6/14)
ちょうどそれらの中で紹介した論述と重なりますが、よい機会ですので、以下に要約しました。
日本の少子化は止まらない2つの理由は、以下。
1)子育て支援政策が不十分
2)子育て負担が女性に集中しすぎているから
OECD平均では女性は男性の1.9倍の家事・育児などの無償労働をしているが、日本ではこの格差が5.5倍にも上り、先進国最大。
家事・育児負担が女性に偏っていることは、出生率に悪影響を及ぼす。
夫は子どもを持ちたいと思っても、妻に育児負担が集中し、新たに子どもを持つとさらに自分に負担がかかることを見越して妻が同意しないため、新たに子どもをもうけない夫婦が多いという調査がある。
これまでの少子化対策の議論では、夫婦間でどう負担が分担されているのかが欠落。
効果的な少子化対策のためには、妻が前向きになれる環境を築くことに狙いを定めるべき。
そのために、待機児童の解消、学童保育の充実や、夫が育児・家事に参加する機会を増やすための施策としての
、男性の育休、育児のための時短勤務、テレワークなどのワークライフバランス改善策などにより、男性を家庭に返すことを提案しています。
まあ、どちらかというと、行儀の良い提案で、多くが雇用環境における労使間の取り組みに委ねられる政策が主です。
残念ながら、国や地方自治体に拠る経済的支援や、種々の公的サービスには踏み込んでいない、ある意味偏った提案にとどまっているのが、同氏の特徴であり、限界でもあります。

ベーシック・ペンションは、少子化対策、婚姻率・数向上対策と多くの社会問題対策と関連し包摂する強力な政策
なお、ベーシック・ペンションについては、法制化を前提として起案している以下の記事を確認頂きたいと思います。
必見、ベーシック・ペンション法とは
◆ 生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
◆ 生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
そして、その前文に組み入れている、以下の制度の背景と目的の各項目(特に太字の項目)を見ていただくと、コロナ禍で発生した多くの問題が、少子化や非婚・未婚・晩婚化、そして出生数の減少と共通の要因によるものであることが確認できます。
そして、そうした多様化・深層化・複層化した社会問題の解決に、ベーシック・ペンションが共通の解決方法として有効であることも確認できると思われます。
もちろん、そのためにクリアすべき課題の大きさ、重さを認識してのことです。
ベーシック・ペンション生活基礎年金制度の背景と目的(同法前文より)
1)憲法に規定する基本的人権及び生存権等の実現
2)生活保護の運用と実態
3)少子化社会の要因としての結婚・出産・育児等における経済的不安
4)子どもの貧困と幸福度を巡る評価と課題
5)母子世帯・父子世帯の困窮支援の必要性
6)非正規労働者の増加と雇用及び経済的不安の拡大及び格差拡大
7)保育職・介護職等社会保障分野の労働条件等を要因とする慢性的人材不足
8)共働き夫婦世帯の増加と仕事と育児・介護等両立のための生活基盤への不安
9)国民年金受給高齢者の生活基盤の不安・脆弱性及び世代間年金制度問題
10)高齢単身世帯、高齢夫婦世帯、中高齢家族世帯の増加と生活基盤への不安
11)コロナウイルス禍による就労・所得機会の減少・喪失による生活基盤の脆弱化
12)自然災害被災リスクと生活基盤の脆弱化・喪失対策
13)日常における不測・不慮の事故、ケガ、失業等による就労不能、所得減少・喪失リスク
14)IT社会・AI社会進展による雇用・職業職種構造の変化と所得格差拡大と脱労働社会への対応
15)能力・適性・希望に応じた多様な生き方選択による就労・事業機会、自己実現・社会貢献機会創出と付加価値創造
16)貧富の格差をもたらす雇用・結婚・教育格差等の抑制・解消のための社会保障制度改革、所得再分配政策再考
17)世代間負担の不公平対策と全世代型社会保障制度改革の必要性
18)コロナ禍で深刻さ・必要度を増した、安心安全な生活を送るための安全弁としての経済的社会保障制度
19)基本的人権に基づく全世代型・生涯型・全国民社会保障制度としての、生活基礎年金制(ベーシック・ペンション制)導入へ
20)副次的に経済政策として機能する、社会経済システムとしてのベーシック・ペンション
21)生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)導入に必要な種々の課題への取り組み
困難をもとより承知のこと。
粘り強く、しかし、少しでも早く、少子化や結婚を躊躇させる、断念させる要因の解消・改善に結びつく提案を、と繰り返し、繰り返し再認識し、取り組んでいきます。

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