コロナ感染拡大・長期化で妊娠届数大幅減少、出生数80万人割れ、少子化・人口減少加速

現役世代ライフ


2021年5月26日日経朝夕刊に、以下の見出しの記事が掲載されました。
「少子化、コロナで加速 昨年度出生数4.7%減、婚姻・出産控え響く」
「妊娠届、昨年4.8%減 87万件、1月は7.1%マイナス コロナ響く」

これは、同じく2021年4月10日に掲載された以下の記事の続報にあたるものと言えます。
⇒ 「出生数、世界で急減、コロナ禍日米欧1~2割減、1月
この後者の記事を受けて、同日当サイトで
コロナ禍1月出生数世界で急減、2021年日本の出生数80万人割れ
と題した記事を投稿しています。

今回は、上記の2つの日経記事を参考にしつつ、厚生労働省の公開資料を用いて、少子化の現状を確認したいと思います。

2021年第1四半期人口動態統計で、出生数前年同期比9.2%減少。


厚労省が5月25日発表した人口動態統計によると1~3月期の出生数(外国人含)は19万2977人と前年同期比9.2%減。2020年度年間では前年度比4.7%減の85万3214人。

同期で都道府県別にみると、当然のことだが、感染者数の多い大都市圏ほど減少率は高い。
東京都前年同期比14.1%減、埼玉11.9%減、兵庫0.5%減で、大阪府・京都府とも9%超の減少。

妊娠を控えた人が多かった原因は、コロナの妊婦や胎児への不透明な影響、出産時に立ち会いができない等推測可。
また、感染拡大と長期化で、第2子以降を希望していた母親のうち、約3割が妊娠を延期したり諦める等の調査結果がある。
2020年度の婚姻数は2019年度比で16.1%減少し、当然出生数の減少と繋がる。

2021年出生数80万人割れ、現実的に

4月以降も出生数は減少が続いていると思われ、2021年はついに、というか、一気に年80万人を下回る可能性が出てきた。
厚労省によると20年8~10月の妊娠届数は前年同期比4.6%減の21万5417件。
(この後の2020年11月~2021年1月の実績は後述。)
妊娠届は多くが妊娠11週までに出されるため、7~8カ月後の出生数の目安となる。

あるエコノミストの試算では、76万9千人まで落ちこむという結果が出ている。
2017年に国立社会保障・人口問題研究所が2021年推計86万9000人としていたが、80万人割れは、ほぼ10年前倒しとなる。

では、コロナ収束後は出生数の回復が望めるのか。
コロナ前の傾向自体、減少傾向にあったため、急激なリバウンドは期待できない。
コロナ禍で増えた在宅勤務などで男性の家事や育児の参加が増え「今後、出生数の回復に寄与する可能性はある」という意見もある。
しかし、非正規雇用者の解雇・失業、小規模零細事業者所の廃業等による所得機会の喪失なども多く発生し、経済的側面から、将来への希望・期待が喪失・縮小している。
こうした社会構造問題を考えると、一気に回復を見ることは不可能に近いと言えるだろう。

下図の<出生数>では、今年3月に回復傾向が見られる。
しかし、後述する<妊娠届数>をみると、昨年5月以降一気に減少しており、その数に準じた出生数になることは間違いない。
4月以降は、下のグラフの4月以降の線が下降するわけだ。

2020年月別人口動態動向(下の表と合わせて参照を)

出生減は労働力人口減少に、という経済紙特有の指摘

そして日経の言を引用すると
出生数の減少に歯止めをかけるには子育てしやすい環境づくりなどが欠かせない。
持続的な成長の維持へ技術革新による経済効率を高める必要もある。
人口減が進めば将来の経済の担い手となる労働力も縮小が避けられない。
少子高齢化が進めば社会保障の担い手となる現役世代が減り、医療や介護、年金制度の持続可能性にも疑問符が付く。
新型コロナウイルスの感染拡大などを背景にした出生数の減少が日本の成長率に暗い影を落としている。
ともっともらしいコメント。
経済紙とはいえ、こういう子どもの出生数云々は、人を労働力としてしか見ていないことを示すもの。
子どもを持ちたいと思う大人は、そんなことを考えているわけではないのは当たり前のこと。
こうした、無味乾燥で紋切り型の意見しか言えないマスコミには、幻滅させられるばかりだ。


2020年妊娠届、前年比4.8%減 87万件

5月25日公表の人口動態統計に続いて翌26日、厚労省は2020年の妊娠届数を発表。
これによると、前年比4.8%減の87万2227件。
新型コロナウイルスの感染拡大と長期化で、妊婦や胎児への影響に対する不安、失業、所得喪失・減少等からの将来の生活への不安等から、妊娠・出産を控える人が増加。
この減少傾向は当分続くとみられ、2021年の出生数は80万人を割り込む可能性が高まったと、先日の予測に繋がる。

妊娠届件数は厚労省が全国の自治体への届け出を集計し、新型コロナの影響を明らかにするため特別に公表している。
届け出は9割以上の妊婦が妊娠11週までに自治体に提出。
2020年後半から2021年初めに妊娠した人は2021年中に出産を迎える。
今回公表分は、以下にあるように、2020年11月から2021年1月分。


続いている月別妊娠届出数の減少、出生数の減少


傾向としては、元々、以下のグラフにあるように、平成30年から平成31年(令和元年)へと減少。
それが、昨年初めからのコロナ感染拡大で、昨年5月以降、妊娠届出数は際立って減少している。
年末12月には戻る兆候を見せたが、今年1月には、また大きく減少する兆しを見せている。

当然それが、先述した今年2021年の出生数80万人割れ予測に結びつくわけだ。
昨年1月比では、7.1%減だが、3年前平成30年2018年1月比では、11.38%減と、減少率が大きいことも確認しておきたい。

コロナで、人口減少の加速化も。人口1億人社会構築ビジョンを

こうした、出生数、妊娠届数のここ2~3年の推移からも、新型コロナ感染パンデミックが、人口減少にも拍車をかけることが予想されます。

下表は、先述の公表で公開された、人口動態すなわち、出生・死亡・婚姻等の前年比での変化を示すものです。

赤い○と線で示したのが、昨年4月から今年3月迄、1年間の合計値。
1年後の数字では、婚姻数も、出生数も一層減り、コロナでの死亡者数の増加と高齢化の進展で死亡数が増加する。
すなわち、人口の自然減少数も、相当増えることが予想されます。
どうでしょう、次の1年間で、70万人近く減少するのではと予想します。

人口減少にも歯止めは効きません。
人口1億人国家のあるべき、望ましい社会を想定した、社会システム、社会経済システム、社会経済政治システムの創造・開発ビジョンを、コロナ対策と並行して創り上げていくべきと考えます。
そのシステムの一つの軸として考え、提案しているのが、日本独自のベーシックインカム「ベーシック・ペンション」生活基礎年金です。

今回は、先日発表された、コロナの拡大・長期化が及ぼす出生数・妊娠届数の減少についてのみ取り上げました。
この後は、少子化対策に焦点を当て、関連する結婚や家族問題問題も取り上げつつ、再度その対策としてのベーシック・ペンション実現の方策と、間接的に、結婚・出産・子育て・教育等に対する考え方、マインドの転換について考えていきたいと思います。

※記事中の資料は、厚労省HPから引用転載


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