
米中露共通の強みと日本の安保の脆弱性
20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ
初回と第2回のみ、当サイトで記事投稿した、中野剛志氏著『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』(2022/12/15刊・幻冬舎新書)を参考にしての【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズ。
◆【『世界インフレと戦争』から考える2050年安保とベーシック・ペンション】シリーズー11、最終回終了!(2023/2/6)
全11回を終えたことを上記記事で紹介。

その書を読み、シリーズを続けるうちに、財政・税制問題やグローバロゼーション下におけるサプライチェーン、貿易問題に関する動向に対する関心度が高まってきたとこを実感している。
それはもちろん経済安保を初めとする多様な<安心安全安定・保有保持確保>の「安保」を視点の基盤としてのことでもある。
上記の中野氏の著書では、グローバリゼーションの終焉と地政学上のリスクの拡大と一体化しての持続的なインフレ懸念に警鐘を鳴らし、種々の安全保障のための恒久的な戦時経済体制の整備拡充を必要としていることを強調している。
グローバリゼーションの多様化
グローバリゼーションがもたらした種々の問題が同時に論じられたわけだが、グローバリゼーションが忽然とその姿・様相を地球上から消滅してしまうことは言うまでもないだろう。
二極化や分極化は、ある意味グロ-バリデーションの一つ、一時代の形態といえるわけだ。
そして、二極や分極も文字面のようにそう単純に規定できるものでもない。
複雑であり多様な様相を呈して、つど変化を遂げつつ、時代とともに進行していくわけだ。
それが進歩といえるものか、後退と評価すべきものか。
それも、見方・考え方、当事者ごとに異なるものとなるに違いない。
中国のロシアからの2022年原油輸入額、前年比44増約7兆5300億円という現実
1月20日の共同通信発の報道によると、天然ガス等も加えると、昨年の中国のロシア産エネルギー輸入額は9兆円に上ったという。
仮に武器のロシアへの輸出がないとしても、間接的にロシアを支援していることは明らかだ。
二極化は、反米・反民主主義国家グループ内でのグローバリゼーションを、従来とは別の強さを形成する新たな形で時計の針を進めている。

2022年米中貿易額、最高額記録という怪
ロシアの強力な制裁措置を取る欧米民主主義国家グループの思いと相反する中国の動向。
簡単にこう見ることができる。
そして二極化がもたらしている、敵対する反ロシア、反覇権国家グループに対する「軍事防衛安保」と関連する「経済安保」政策の強化が日々報じられている一方・・・。
今日の日経では、米中間の2022年の貿易額が、4年ぶりに過去最高益を更新したと報じた。
輸出入合計額は6905億ドル(約91兆円)という膨大な額である。
2月7日の米商務省の発表だから、フェイクでもなんでもない、リアルだろう。
先述したロシア産エネルギー輸入額などはかわいいものである。
米中両政府による2018年夏から2019年の制裁関税の応酬。
昨年2022年10月にはバイデン政権が、先端半導体の事実上の輸出禁止措置等ハイテク分野の取引規制を強化。
こうした情報とはどうも結びつかない気がするのだが、これも分断の裏面というべきか表面というべきか、現実である。
内容をみると、米国の中国からの輸入額は5367億ドルで、玩具やゲーム、プラスチック製など日用品が多くを占める。
トランプ政権下の制裁関税の多くが解除されていないが、それでも中国製品原価の安さのメリットが大きいという。
一方米国の対中輸出は1538億ドルで過去最高を更新。
その中で多くを占めるのが、大豆やトウモロコシなどを含む穀物類で、食用にとどまらず飼料用の需要が拡大している。
最重要政策課題である経済安保に属する「エネルギー安保」と「食料安保」問題のグローバル社会における現実の一端がここに示されているわけだ。
食料とエネルギーの供給不足問題が急速なインフレをもたらしている日本。
こういう現実を、政府や農水省はどう感じるだろうか。
先行きは不透明としながらも、米国内での以下の声を紹介している。
米中関係は、政治的緊張を抱えながらも、経済面での相互依存はなお高く、双方の巨大市場でビジネスチャンスを逃すことなく、安全保障に関係のない95%の貿易産業は関係は継続する。
米国による中国封じ込めは失敗するだろうし、機能的なデカップリング=分断戦略を模索しながらも、世界経済は米中が引っ張っていくべき、と。

一方、一段とロシアの財政は悪化
同じく今日の日経では、「ロシア、財政悪化一段と」と題しての記事も掲載していた。
詳細は省略するが、主に今年の1月度単月の財政赤字を扱っているが、2022年度年間では、約3.3兆ルーブルの赤字。
原油価格の下落と欧米の経済制裁の効果によって財政悪化が加速し、長期化するウクライナ侵攻の戦費を捻出することが難しくなってきている。
その対策の結果の一部が、冒頭の中国のロシアからの大幅な輸入増。
他の新興国への輸出先移管も進めているわけだ。
赤字の大きな要因は、当然戦費拡大に伴う支出。
イラン製ドローンや北朝鮮からの武器弾薬輸入などは、日々の戦況を伝えるニュースで見聞きするところである。
一般の政府予算とは別に、石油・ガス部門の余剰利益を積み立てた福祉基金の残高が約1550億ドル(約20兆円)あることも添えられている。
英国や米国の防衛機関や民間戦争関連調査会社などが、盛んにロシアの軍事・軍備基盤の弱体化のニュースを頻繁に開示している。
しかし、そんなことには関係なく、日々ウクライナ各所に対するミサイル等攻撃や受ける被害も報じられており、そのギャップにはなんとも表現できない感情を抱かせられる。
そうした情報など、ウクライナの人々には何の慰めにもならず、不安と絶望感が解消されることはまったくないだろう。

米国事情に戻ると、2022年米国の貿易赤字は最大
そして米国に話を戻すと。
2022年の米国のモノの貿易赤字は1兆1818億ドル(約156兆円)で過去最大を更新し前年比約10%増。
同年前半に個人消費が伸び、輸入品の需要が高まったという。
輸入は3兆2466億ドルで14.7%増、輸出はロシア産から米国産への原油・天然ガス調達切り替えが進み、2兆647億ドルで17.7%増。
そして、これもまた日々報じられるように、ウクライナへの軍備など支援額が、際限なく増えている現実がある。
エネルギー・希少資源保有国の揺るがぬ優位性と比しての日本
米国・中国・ロシア。
共通するのは、広い国土とエネルギー資源や希少資源、食料資源等を有する国家であること。
中国の食料事情は異なるが、このところの国内食料増産政策とその結果には目を見張るものがある。
それ故に、グローバリゼーションの変容や地政学的リスクの現実化においても、エネルギー資源・希少資源・食料資源を保有するアドバンテージ、優位性は、簡単に揺るぐことはない。
一方日本。
防衛費増額、経済安保、半導体安保、経済制裁追随・・・。
なんとか、欧米が主導する政治・政策に追随しようと懸命であるが、未だに失言はレベルの低い意識・行動などを追及され、追及することが国政の日常である景色は、この重要事態にあっても変わることがない。
エネルギー資源も食料資源も不安この上もない国にあっての、こうした目先ばかりの政治。
変革は、既成のものには望むべきもないだろう。
若い世代のリーダーの輩出を強く望みたい。

このあと、当サイトでは
・今週日経<経済教室>欄で3回シリーズで掲載された「財政政策と国債増発の行方」と題した小論
・http://basicpension.jp で取り上げようか迷い、先送りにしていた、昨年12月下旬日経辛同欄に3回掲載された「あるべき社会保障改革」小論
・食料安保と農業政策をテーマとした山下一仁氏著『日本が飢える! 世界食糧危機の真実』を主に用いての<食料安保政策>考察シリーズ
・ずーっと気にはしてはいても、優先順位が常に後回しになっている川上高志氏著『検証 政治改革 なぜ劣化を招いたのか』(2022/2/18刊・岩波新書)を参考にしての政治改革問題
など、関心を持つテーマが控えています。
加えて、2020年1月に開設して丸3年を経過している当サイト。
そろそろリニューアルをもと考えているのですが、あまり気張らずに、少々気軽に投稿したいな、という思いも一方であります。
今回も、特段何について、ということでもなく、気軽にと思ったのですが、結構時間がかかってしまいました。
今後の方針・方向性を考えるためのブログ。
そんな位置づけになるかと思います。
次回は、恐らく、上記の初めの日経<経済教室>欄「財政政策と国債増発の行方」を取り上げることになると思います。

20年、30年後の社会を生きるすべての世代へ
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