21世紀日本社会構築論(破)ー コロナ禍を政治・社会・社会経済システム改革の契機に

社会政策

先日、
「21世紀日本社会構築論(序)ー グローバルスタンダード国家モデル創造をめざして」(2021/4/3)
と題した記事を投稿した。

・2045年、戦後100年
・3つの「政治改革の時代」と1990年代の政治改革
・2000年、主な政治・行政事象
・1990年代初頭からの失われた20年、そして21世紀初頭の失われた20年
・21世紀初頭の20年間の内閣の変遷と不幸からの脱却の必要性
・21世紀、2000年以降の主な地震発生と大規模自然災害発生の常態化
・2019年~2021年 新型コロナウィルスCOVID-19 感染パンデミック継続中
・戦後50年と戦後100年の狭間としての21世紀前半
・21世紀後半の望ましい日本社会構築のための準備期間、前半残り30年

以上のような構成で考えてみたのだが、3番目の
3つの「政治改革の時代」と1990年代の政治改革
と題した項目の中で、以下のように述べた。

日本には、これまで、3つの「政治改革の時代」があったという。
一つは言うまでもなく、「明治維新」であり、もう一つは、これも言うまでもなく「戦後改革」
そして1990年代の諸改革、とされている。
しかし、1990年代のそれは、多くの国民にとって認識外であろう。
まあ一歩譲って、それが実際に行われ、成功していたとするならば、現在の社会問題の何割かは、議論・検討の必要はなかったであろう。
1990年代の政治改革とは、規制緩和、地方分権改革、省庁再編などの大規模統治改革、とされている。
しかし、国民の日常生活においてはっきりと改革と認識できる政策・施策には程遠いものであった。
そして、それは、20世紀から21世紀への餞別、贈り物にもなり得なかった。

要するに、政治学者や当時の改革(と一応呼んでおこう)推進者にとっては明治維新・戦後に続く、極めて意義深い改革だったのかもしれないが、その後の政治をみれば、真に政治改革が行われたとは、とてもとても評価できまい。
単に、行政の容れ物を変えた程度に過ぎなかったのだ。

真の政治改革は、実は社会システムや社会経済システムの改善や改革をもたらしてこそ、評価できるものだろう。
そういう意味で、前回の記事を投稿し、当サイトで掲げる諸問題の改革をもたらす、政治システム改革の必要性を、従来に重ねて提起したかったわけだ。

例えば、政治改革の対象でもある行政について、最近の容れ物を増やすという観点からの問題を取り上げたのが、
デジタル庁に次いで子ども庁か。縦割り打破狙いの新庁設置は成功するか(2021/4/5)
である。

そこで提起したのが、縦割り組織の問題を打破するために本来必要なのは、統合を目的とする新しい容れ物、新省庁を作ることでは決してない。
必要なのは、当事者の意識と能力を含めた内閣のガバナンス(統治)であると。

政治の限界が求める政治システム改革


そう考えを及ぼしていたところ、今日2021年4月7日の日経に以下のテーマでの記事が1面に掲載された。
⇒ コロナ 統治の弱点露呈 政治主導/デジタル化/国と地方 緊急事態1年

今日で、昨年初めてコロナ禍による緊急事態宣言が発令されて、ちょうど1年。
その特集ということで、いくつかの関連記事も掲載された。
その記事の中で記者が提示したのが、「統治」という言葉である。
コロナ禍で露呈した政府の統治機構の弱点。
以下の3点を挙げている。

1)政治の限界:緊急事態に対応できる法整備に欠く
2)デジタル化の遅れ:HER-SYS(ハーシス)の活用進まず
3)国・地方の限界
:病床確保する県、保健所運営の市区との円滑な連携不十分

しかし、これらの課題は、実は、コロナ禍だからこそいきなり浮上した課題ではない。
日常的に問題視され続けてきたはずの課題である。
緊急事態ゆえ、その対応・対策が迅速かつ適切にできなかったことから、指摘されたわけだ。
また、2)3)とも政治の限界に起因する問題である。
そして、2)3)とも社会システムの領域に入ると言えよう。


社会システム、社会経済システムとは何か?


それぞれの具体的な内容は、同記事によるとして省略し、コロナ禍で露呈し、今後取り組むべき大枠での課題を私なりに抽出してみた。

1)機動的に判断し、実行できない意思決定システム、国家財政システム等の政治システム
2)適切に機能しない医療システム、情報システム、困窮者・弱者救済システム等の社会システム
3)的確に対応できない、雇用システム、事業維持システム、財政システム等の社会経済システム

社会システムに経済が組み込まれた社会経済システム。
それは、社会が機能する上で必要な、経済的要素、経済活動自体、政治と繋がる財政と税制などがシステムとして組み込まれた社会機能を意味する。

明治維新・戦後に続く真の3つ目の政治改革は、コロナ禍を契機として

コロナ禍が政治の限界をわれわれの社会に露呈したからには、その限界の要因を把握し、これを打破する取り組みにかかる必要がある。

日経紙は、記事中でこう言う。

官僚は既存の法や制度にとらわれる。
危機時にそれを突破するのが政治の役割といえるが、その政治も既得権の壁を越えようとしない。
既存の法でまかなえないなら抜本改正を検討する必要がある。
省庁再編から20年新型コロナが明らかにした統治機構と政治主導の死角を検証し、見直す時期が来た

第3の政治改革と言われた1990年代の省庁再編が奇しくもここに出てきている。
それが機能していないか、問題を提起しているわけだ。
ならば、このコロナ禍こそ、第3の政治改革の契機・好機とするのが望ましい。
日経氏が提起する以外に、長期にわたって改善されず、むしろ問題が拡大する多種多様な社会問題が存在していることは、誰もが知るところだ。
その多くが、コロナ禍で、一層深刻化させられているのである。

例えば、2)の社会システムとの関係でみると、
婚姻は激減、自殺11年ぶり増 教育、急速にICT化
と題した日経記事にその課題例を見ることができる。

すなわち、
・新型コロナウイルスが広がり始めた2020年4月以降、婚姻数が大きく減少。
 同年2月には7万4147件、4月には半減の3万7913件、5月には3万2544件に。
・次いで、出生数も減少。 
 21年1月は6万3742人で前年同月14.6%減。
 宣言中2020年5月の妊娠届は前年同月比17.6%減と大幅減少。
・経済的苦境や孤立から、2020年の自殺者数は2万1081人で11年振りの増加。
という現状がある。
社会システムの欠落である。
そしてその社会システムを手繰っていくと、必ず、経済と関係した問題、すなわち社会経済システムの範疇での課題が存在する。

社会経済システムの関連記事としては
企業の休廃業・解散は最多 同じ業種でも明暗
がある。
・2020年倒産は7773件、19年比7%減 だが
・自主的事業休廃業・解散は同15%増の4万9698件、2000年の調査開始以降最多を更新。
など。

政府は何のため、政治は何のためにあるのか。
こんな基本的な問いと、要請に応えられない政治が、時間だけを費消し、小手先の手立ても打てず、抜本的な対策、中長期的視点での対策など発想にさえ浮かばないように思えて仕方がない。
政治の限界は、政治家、内閣の限界である。

すなわち政治の限界を打破するには、政治家・内閣を変える必要があり、望ましい政治・社会・社会経済システムをデザインし、実現する意志・意欲・能力を、継続して持ち続けうる政治グループ、政党を必要とするわけだ。

序破急

前回、「21世紀日本社会構築論(序)」と題した記事を書いた時は、序の次をどう展開するか具体的に考えてはいなかった。
しかし、(序)があるからには、その2と続けるか、<序破急>とするか。

このテーマではまず総論で留めるのが望ましいと考え、<序破急>とすることに。
前回の<序>は、時代・年代という時間軸を用いて、新たな社会構築の必要性を提起した。
今回の<破>は、政治・社会・社会経済システムという改革ニーズのフェーズ、段階を軸にして、新たな社会構築への取り組みが必要であることを整理してみたわけだ。

そして、この<破>において、政治システム改革が<序>と位置づけられ、<社会システム改革>と<社会経済システム改革>が、実現された<政治システム改革>の下で進められることになる。


政治・社会・社会経済システム改革の主命題と課題例


序としての<政治システム改革>は、新しい政権政党の創出が課題となり、その政権による「ガバナンス改革」の<準備ステージ>と位置づけられる。
2030年頃までをその目安としたい。

破としての<社会システム改革>及び<社会経済システム改革>は、
前者は、社会保障制度改革、ジェンダー問題改革、ベーシック・ペンション(ベーシックインカム)導入等
後者は、エネルギー・食料等自給自足システム構築、民間銀行の信用創造廃止、財政改革、税制改革等。 
その必要性と方法・内容等の合意形成と実際の取組みという<変革・改革ステージ>となる。

10年~20年スパンの中長期ビジョンと中長期推進計画を策定し、順次取り組み。
2050年までを目処にした、ガバナンスとマネジメントの軌道化に基づき、社会と社会経済の変革が進められていく状況をイメージしたい。 

<急>は急ならず、<堅>で


で、序破急の<急>はどうなるか、どうするか。
課題が課題だけに、<破>の後は、急いで実行できるものではない。
ここまでくれば、後は堅実に、手堅くやっていくだけである。
<破>で取り組み始めた改革、一応具体化できた改革などを、軌道に乗せることと、日常的に運営すること、緊急時には必要に応じて適切な対応を行うこと。

その時代に移行していくことになる。
2050年以降、それまでの真摯な取り組みが実現され、望ましいガバナンスに基づく政治が行われ、望ましい社会システムと社会経済システムが機能してることをめざしたいものだ。

とこうまとめてはみたが、現実の政治・行政の場、そしてその当事者で、このような視点、問題意識をもって仕事に望んでいる政治家や官僚が果たしているものか。
まあいないであろうという前提で、こうした考察・投稿を行っているのだが、それも正直、寂しいものである。

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