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デジタル庁に次いで子ども庁か。縦割り打破狙いの新庁設置は成功するか

菅首相、子ども庁新設検討を自民党に指示

新年度4月に入って初日の1日、一部自民党議員の「子ども庁」と専任閣僚の新設提言を受けて、二階幹事長に党内での議論・検討を要請したという。

その理由と目的は、自ずと知れた、子どもに関する諸課題が、縦割り組織の弊害により改善・改革が進まないことへの対策だ。

例えば、こんな状況が思い浮かぶ。
1.子育て施設の所管は、文部科学省が幼稚園、厚生労働省が保育園、内閣府が認定こども園、と所管が別々。
2.子育て支援策関連では、児童手当は内閣府、子育て世帯への給付金は厚労省、教育関連支援は文科省、とばらばらで、政策の効果が把握しにくく、申請手続きも分かりづらい。
3.少子化は、「少子化社会対策白書」及び「少子化社会対策大綱」に見るように、総合的・俯瞰的議論と取りまとめの繰り返しで、変化の兆しは見られず、出生数の減少が続いている。
4.母子家庭・父子家庭等の困窮世帯の貧困や教育格差問題なども改善は見られない。
5.子どものいじめや自殺問題も社会問題化したまま同様である。

申し上げておくが、これが全てではなく、ほんの一例である。
例えば、施設の土地や建設に関しては国土交通省が絡む。
多分、他にも絡むこと、絡むところがあるだろう。

では、仮に「子ども庁」ができたら、全て円滑にものごと、すなわち関連行政がうまく進むのか?
その「子ども庁」は、恐らく、内閣府直轄にするのだろうが、各省から選りすぐり官僚・国家公務員でメンバーは構成されるのだろうか。
そしてそのトップ及びスタッフは、関係する各省を意のままに動かすことができるのだろうか。

実は、子どもに関する行政に限らず、ほとんどすべての行政は、単一の省内で完結することはありえないだろう。
要するに、結局問題は、首相及び内閣府のガバナンスとマネジメントにかかっているのだ。
ガバナンス、すなわち「統治」。

政治・行政のガバナンス、マネジメントの意味と重要性


縦割り組織の弊害を新庁設置の理由にするということは、一見、権限の集中という効果をもたらすかのように錯覚するが、本質的には、トップマネジメントの在り方次第なのだ。
そして、そのマネジメントの対象は、恐らく政治家も官僚も「人と組織」と思っているだろうが、実は「仕事」の質と期間・期限と予算のマネジメント、すなわちプロジェクト・マネジメントである。

種々の白書や会議・委員会などの計画等のアウトプットを見ると、それらが欠落しているのである。

とりわけ、論功行賞型大臣などは、ある意味そういう分野の素人である。
国会議員あるいは大臣を先生と呼んでいるが、何のことはない、国家レベルの大きなプロジェクトマネジメントの経験など、恐らく誰一人としてあるまい。

官僚も自分が属する省庁内では、多少の規模・レベルのプロジェクトマネジメントの経験はある人もいるだろうが、複数の省にまたがるプロジェクトマネジメントの経験はあるまい。
そのための権限と責任を与えられて仕事をしたことはないだろうし、求められたこともないだろうから。

内閣府の考えるデジタル改革と新設されたデジタル庁

ついでだから、昨年菅首相肝いりで設定された「デジタル庁」を見てみよう。
「組織の縦割りを排し、国全体のデジタル化を主導します」と見栄を切って設置した新庁である。
先日、同法案等に誤字がやたらあったと話題になり、スタッフが忙しすぎて、とありえない言い訳をした例の大臣の庁だ。

初めに、菅首相・菅内閣が考えるデジタル改革とは何か、
◆ 首相官邸HP:菅内閣政策集「デジタル改革」で俯瞰してみた。

1.デジタル庁創設
  デジタル庁創設により、組織の縦割りを排し、国全体のデジタル化を主導
2.行政のデジタル化
  全国規模のクラウド移行に向け、今後5年間で自治体のシステムも統一、標準化を進め、業務の効率化と住民サービスの向上を促進
3.規制改革
  書面・押印・対面の抜本的見直しや資格保持者の専任・常駐義務等の見直しなどの規制改革を推進(内閣府)
4.公務員のデジタル職採用
  公務員の採用枠にデジタル職の創設を検討し、高度なスキルを持つ民間人材を迎え、自治体、民間とも行き来させ、官民のデジタル化をダイナミックに進めます。
5.マイナンバーカード
  マイナンバーカードの普及のため、マイナポイントの期限を9月まで延長。
  3月には健康保険証との一体化をスタートし、4年後には運転免許証との一体化を開始する。(総務省)
6.教育のデジタル化
  子供たちの希望や発達段階に応じて遠隔・オンライン教育が活用できるよう、ICT環境整備をはじめとした取組を迅速に進める。
  小中学生に一人一台のIT端末を揃え、9,000人のデジタル専門家がサポート。(文部科学省)
7.テレワーク
  テレワークを活用した新しい働き方を後押し。
  中小企業等を対象としたセミナー・相談会の開催など全国的なテレワーク導入支援体制の構築、労務管理やセキュリティに関する相談事業、テレワーク導入に要した経費の助成等を実施し、地方に暮らしていても都会と同じ仕事ができる社会を実現。(総務省)(厚生労働省)
8.携帯電話の料金の引下げ
  携帯電話料金が安く、分かりやすく、納得感のあるものとなるよう、事業者間で競争が働く仕組みを更に整備。      
  利用者が自分のニーズに合った料金やサービスをスムーズに選択できるよう、事業者乗換えやプラン変更の円滑化。

これらのいくつかの項目自体、デジタル庁所管の業務になるが、1.のデジタル庁創設に関して、基本方針をまとめたPDFがあったので、以下に転載した。

デジタル庁関連法が、先日国会で承認されたばかりなので、今批判するのは当たらないが、上の文言・内容をみれば、やはり不安・不信の方が強い。

なぜなら、デジタル化の前に「一人ひとりのニーズに合ったサービス」を用意すること自体が大きすぎるハードルだからだ。
そのサービスの内容と行政手続等も包括してデジタル庁が決めるわけではないはずだから。

「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」。
得意のスローガン攻めだ。
中身は、まだ、無い。
10個ある、デジタル社会形成の基本原則とやらも、すべて抽象的概念で、総合的俯瞰的の域をでない。

こうした概念をベースとして、民間からも有意の人材を集めるというが、問題は、先に示したガバナンスでありマネジメントである。
どうだろう、控えめに、というか、頑張って、というか、考えてみても、この基本方針にそった、プロジェクト計画をまとめるだけでも、来年度いっぱいくらいかかるのではないだろうか。
もちろん、予算も、5年、10年レベルでの中長期実行スケジュールも含めるプランである。
恐らく、実現可能とイメージできるプランのまとめ上げができる人材は、民間からでしか求められないのではなかろうか。
そうであるならば一層、官僚の抵抗は大きくなるであろうことが予想される。

子ども庁では解決できない社会問題としての子ども関連行政

元に戻って、「子ども」関連政治・行政だ。
当然だが、直接の対象は子どもだが、その子どもと関係している大人は、非常に多く、かつ多岐にわたっている。

保育ならば、保育士さん不足や労働環境・労働条件問題があり、保育事業上の課題があり、当然親がいる。
障害児保育も含む。
保育所建設に反対する地域住民との関係もある。
教育なら教師・教員、教育委員会、そして保護者。
教育システム・学習要領も課題になるし、放課後教室や家庭環境問題も関係してくる。
少子化社会を業務対象とすると、結婚したくてもできない人、子どもを持ちたくても経済的理由などから持てない人・持たない人も関係してくる。
いじめや子どもの自殺問題も悩ましい問題だ。

これらもほんの一例である。
際限なく課題は広がり、大規模プロジェクトの様相を呈する。

本来ならば、厚生労働省に権限を集中すべき課題と思うのだが、厚労省に限らず、どの省庁も、縦割り方式が楽だから、みずから手を上げて、すべて任せてくれ、とは言わない。
文句は言うし、できない理由は、例えば権限がないなどとするが、では権限を与えるからやれ、となるとどうだろう。
そもそも、内閣がころころ変われば、政策も変わるだろうから、中長期プロジェクト型業務にじっくりと取り組む文化も風土も、そして責任組織体制もない。

絶望的な話に聞こえるかもしれないが、そうではない。
問題は、政権を取ることを目的・目標とする政党と政治家の意識と資質・能力にかかっているのだ。
しかし、今の政治の現場には、悲しいかな、そして本来怒りを覚えるべきでもあるのだが、そこまで考えて職務を果たそうとしている政治家は、恐らく皆無であろう。
政治家、とりわけ国会議員とはなにか、なにを求められるか。
その問いかけと答えを見出し、その意欲と適性と目標をもつ政治家志望者が出てくる社会にしていく必要がある。
これが、21世紀第2四半期の日本社会の課題の一つである。

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