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小麦自給率向上のための現状と今後-1

    20年、30年後の社会を生きるあなたへ

    世界の小麦輸出国構成比率。トップはロシアの16.5%、ウクライナは5位9.4%。2国で約26%

    ロシアによるウクライナ侵攻の影響で小麦価格が高騰している。
    上記の構成比は、昨年夏のデータを元に農水省が作成した数値とのことだが、ウクライナの小麦生産が侵攻で大打撃を受けており、その比率は低下することは間違いない。
    対してロシア産小麦は、経済制裁で西側諸国の同国からの輸入は劇的に低下するだろうが、食料不足に悩む国々は多く、需要は旺盛で、ロシアが受ける打撃は限定的であり、むしろ構成比を高める可能性があるかもしれない。

    ところで日本の小麦の主な輸入国は、アメリカ、カナダ、オーストラリア。
    当面の影響はないように考えられるが、インドが自国産小麦禁輸措置を取るなどもあり、ロシア・ウクライナから輸入していた国々の今後の動向で、従来の輸出入バランスや価格に影響が及びことは十分考慮しておくべきだろう。


    現状の小麦自給率は17%、2021年国産小麦収穫量は109万トン

    食卓及び外食業の主要食品である麺類、パン類などの主原料は小麦。
    うどん、素麺・ひやむぎ、きしめんなど純粋な和食の主食原料でもあるのだが、小麦のわが国の自給率は、17%と極めて低い。
    2021年の国産小麦の収穫量は109万トンで、うち72万トンを北海道産が占める。
    一方、輸入量は512万トン。
    北海道以外の産地は収穫量が限られ、かつ収穫量や品質にばらつき等で安定を欠くという実態がある。

    国産小麦使用比率を高める敷島製パン

    最近、「国内産小麦○○を使用」と記したパンや麺が販売されているのを目にする機会が増えつつある。
    わが家でも時々手にし、口にする敷島製パンの「Pasco」が、国産小麦の使用をアピールしている。
    同社は、2030年までにパンに使う原料の小麦の20%を国産にする方針を掲げている。
    同社の国産小麦使用比率向上への取り組み開始のきっかけは2008年であり、2012年から国産小麦入り食パンの販売を開始している。
    2008年のオーストラリアの干ばつなどで小麦生産量減少で、政府輸入小麦の製粉会社等への売り渡し価格がその年10月に最高値をつけた。
    今年のロシアのウクライナ侵攻とは背景は異なるが、地政学的要因という点では共通である。

    2008年当時、パン向けの小麦の国内栽培は皆無に近く、北米からの輸入に依存していた。
    そこで同社は、パンに適した品種「ゆめちから」の栽培を北海道の農家に依頼。
    一昨年2020年度、その流通量は約6万トンになっているという。
    以降、同社は生産者・研究機関と共同しての収穫量の多い品種の開発、国産100%商品の開発・販売、輸入小麦使用商品への国産ブレンド化で国内産比率を高める取り組みを進めている。
    国に依存しない、食品製造業による国内産小麦供給システム作りのモデルといえるだろう。

    わが国の小麦流通及び取引の特殊性

    わが国では、輸入小麦は、一旦国が全量を購入し、食品製造業など求める事業者に国が設定する価格で引き取らせるという特殊な方法をとっている。
    国家の統制管理下にある食料である。
    従い、先のパン用の小麦だが、主力品種・北海道産「春よ恋」の2023年産価格は1トンあたり8万6000円程度。
    一方、政府に拠る輸入小麦の売り渡し価格は、平均7万2530円と、前者のほうが高値で取引されており、原価が輸入小麦よりも高い。
    すなわち、今後国内産には品質を維持しつつ原価低減に取り組むことが課題になるわけだ。
    次に、その国内小麦生産に関する課題をみておきたい。

    食料自給率38%、小麦自給率17%改善に必要な小麦畑作振興策

    現状の日本の食料全体の自給率は38%(2021年度カロリーベース)にとどまり、主要国では異例の低水準。
    一応は自給率向上を掲げてはきたが、実現できずじまいの農政の誤りといわれても致し方ない。
    そしてウクライナ侵攻を契機としての「食料安全保障」の視点からの農業政策の抜本的な見直しの必要性が叫ばれている。
    とりわけカロリーベースで低い食料自給率にとどまっている大きな要因としての穀物類の低自給率、水田偏重の農政を変えられなかったことが大きな要因という主張がある。
    コメ余りを解消しようと、田んぼに水を入れずに小麦や大豆などをつくった農家に補助金を出してきたというのだ。
    これまで単純に、コメの減反政策というのは、過去耳にタコができる聞いてきたが、それに合わせて小麦や大豆の生産に取り組ませたという話は知らなかった。
    素人ゆえにわかには信じられないのだが、「小麦は畑の作物であり、畑作物は湿気に弱く、水田でつくるのに適していない。ゆえに、畑作振興に正面から取り組むべきだった」というのだ。
    加えて曰く「日本の農業はコメ以外は不向きという固定観念を変えるべき」と。
    (参考)
    ⇒ (社説)食料自給率の向上へ農政の転換を  :日本経済新聞 (nikkei.com)

    これまで日経では、農業問題・農政問題に関して書かれたことがなかった記述だったため、驚かされたと同時に、知らなかった面を教えられたこともあり、付け加えるべきと思い紹介しました。

    小麦の自給率を果たして、いつ頃までにどの程度に引き上げることができるか。
    そのために取るべき政策は何か。
    そうした課題に取り組むため、という思いから、今回、小麦に関するミニ情報、気になる情報を取り上げてメモしました。

    なお今回は、今後予定している<安心安全安定・保有保持確保>の「食料安保」政策への取り組みとは別に、個別の話題や情報を取り上げてスポットで投稿する形でのものでもありました。
    今後も、食料問題に限らず、他の「安保」政策課題についても、同様に取り上げて行く予定です。
    もちろん、小麦に関する投稿も機会があれば継続していきます。

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