同性婚と選択的夫婦別姓制:「同性婚を共生婚に」提案のあと考えたことから

現役世代ライフ

昨日、2021年3月17日の札幌地裁での、同性婚を認めていない民法などの規定が法の下の平等を定めた憲法に違反するとの、同性婚をめぐる訴訟判決・初判断をうけて投稿したのが以下の記事。

同性婚認めないのは違憲判断から考える結婚と性:「共生婚」法制化提案

それを書きながら、もう1~2回、関連した記事を書くべきかと思い、ふと浮かんだのが以下のタイトル

同性婚夫婦は、夫婦別姓制、一つの姓制どちらを選ぶのか

読みようによっては、不謹慎に受け取れそうなテーマとは感じつつ、そう言えば、先日の国会、社民党の福島瑞穂氏が、夫婦別姓制導入問題で、丸川なんとか大臣と質疑応酬をやったことについて報じていたのを思い出した。
ネットで読んだのが、ハーバー・ビジネス・オンラインのこの記事。
丸川珠代は福島瑞穂議員の質疑の後、なぜ勝ち誇ったような笑みを浮かべたのか?<なんでこんなにアホなのかReturns>(2021/3/13)

何のことはない。
結婚していても旧姓で活動している丸川大臣(なんでこの人が大臣なのか、未だに分からないのだが)に対して、福島氏が選択的夫婦別姓制を主張するが、丸山氏は何度も答弁拒否。
こんな、劇画風コミカル委員会問答は、そのときには多少は話題になったが、数日すれば、忘却の彼方・・・。

でもなかった。
もうちょっと「夫婦別姓制」について調べてみようと昨晩就寝前に思いつき、今、この記事作成直前に、日経電子版で「夫婦別姓」と入力して検索してみた。
何のことはない、一昨日3月20日付同紙に、
<夫婦別姓、賛否踏まえ検討 自民、月内にも新チーム>
と題した記事と、関連しての複数の記事があった。
一応、日々同紙をチェックしているつもりだが、見落としていた。

ということで、その内容を要約すると以下のようになります。
やや長くなりますが。

選択的夫婦別姓制を導入する気がない自民党

その記事を端的にまとめると、こうなります。

自民党が月内に選択的夫婦別姓に関する「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム」を新設。
賛否両論があるのを踏まえ、期限を設けずに論点を整理する

面白い!というか、バカにしている!というか、ほとんど本気度を疑う!
期限がないということは、そういうこととしか受け止められない。
それから、「氏制度」という表現も間接表現で、直截的に意味を示さず、低い意欲を表している。
日常用語として「氏制度」という用語は、どうなのだろう、ほとんど使うことがないように思うのだが。

昨年2020年12月閣議決定の第5次男女共同参画基本計画で、政府は、当初あった「選択的夫婦別氏」の文言を削った。
もうこの時に、やる気が無いことを示していたわけです。

一応党内には25人が呼びかけ人となった「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」があり、3月25日に設立総会を開くという。
「夫婦同氏を強制する現行制度は多様性の包摂が求められている現代日本において個人の尊厳を確保する形での見直しが不可欠」と明記したとのことだが、果たして憲法違反かどうか。
そこまで深くは考えてはいないでしょう。

米国2人の女性研究者へのインタビュー(要約)

意外にも、米国に選択的夫婦別姓が導入されたのは、1970年代のことで、多くの州で既婚女性が夫の姓に変える必要がある時代が100年近く続いたという。
というか、女性の参政権を含む真の意味の男女同権、そして民主主義が米国に根付いたのも、そう新しくはないことを私たちは意外に知らない。

そうした問題を乗り越えてきた2人の米国の女性学者の意見を、同記事に関連させて載せている。
以下意見例を転記し、ひとこと私のコメントを添える形で。


硬直的な制度のために「家族」になるのを前向きに捉えられない若者がいる。結婚を遅らせたり断念したりせざるを得ない例もあり出生率の低下につながっているのではないか。
⇒ そこまでのことはないと思う。

日本でも女性が20代からキャリアを確立するようになってきた。例えば結婚前に本を出版したような人が結婚後に姓を変えなければならないと大きな混乱をもたらす。
⇒ レケース過ぎるので、あまり説得力はないかな。

結婚の際に姓の変更を強いる日本の制度は非常に不便で、世界でもあまりみられない。名刺やパスポートも変えなければならない。
⇒ もちろん、そういう短所もあるが、それだけではないし、本質的な問題ではないように思える。

女性が男性より自分の姓に愛着が少ないとはいえない。男性の姓の方が優れているわけでもない。なぜ女性ばかりが望まない場合も姓を変えなければいけないのか。
⇒ 仰るとおりです。

選択的夫婦別姓に反対する人は家族を弱体化させると主張するが、婚姻制度で女性に平等を与えるのはむしろ家族の絆を強めることにつながる
⇒ ん~? 家族の絆を強めるために選択的夫婦別姓制を希求するわけではないでしょうし、それが家族の絆を弱めることに繋がるということでもないでしょう。

日本の女性は男性と平等に社会に貢献することが期待されており、選択的夫婦別姓に関する立法に取り組めば、日本がジェンダーの平等に向かって進んでいると世界に示すことができる。
⇒ ん~? 別にそのために認めろ、というわけでもないんですが・・・。

選択的夫婦別姓が日本の伝統を壊してしまうとの懸念は論理的ではなく、男女平等の戸籍制度を作るのは十分可能なはず。
⇒ 伝統そのものを論理的なものと捉えての主張とも言えるので、その領域での議論は、ある意味不毛でしょう。
やる気があれば、法制化できるに決まっています。


2人の女性国会議員の意見

次に日本の2人の女性国会議員の意見を。
1人は保守的、1人は積極派で、対象的な意見を、意図的に掲載しています

選択的夫婦別姓は1つの戸籍に2つの姓が入り戸籍法や民法の改正が生じる。姓が個人に属する性格となりファミリーネームの廃止につながる。
⇒ 必要な改正は行えばよいこと。姓が個人に属するのは、自然なことでしょう。核家族世帯・単身世帯社会を考えれば分かること。

家族の絆や一体感が不安定になる事態は望んでいない。別姓を進めないと結婚が減って少子化が進むといった指摘も明確な因果関係はない。
⇒ 不安定にすることを望んで選択的夫婦別姓制を求めている人はいないわわけです。少子化とは直接の関係はないでしょう。

旧姓の通称使用は、多くの職場で浸透しているが、今も旧姓を通称として使うのを認めていない一部の国家資格もある。旧姓の利用を認めるようさらなる対応を急ぎたい。
⇒ 旧姓利用を認めれば認めるほど、選択的別姓への要求が高まることは必定でしょう。

日本の夫婦同姓は国際社会で異例だといわれるが、戸籍制度はアジアを中心に数少ない国にしかない。制度がある国とない国を単純に比較しても意味がない。
⇒ 意味があることを求めているわけで、こういう意見でお茶を濁そうとすることそのものに意味がないのでは?

別姓を選べないことで不利益を受ける人に対応するため、課題を解消する道筋を柔軟に模索すべきだ
⇒ そのとおり!

自分の姓にアイデンティティーを持っている人は少なくない。結婚後に姓が変わることに喪失感を抱く人もいる。
働く女性にとって結婚後に姓が変わると、それまでの業績とのつながりがなくなると危惧する意見もある。
一人っ子同士の結婚が増え、実家の姓を残したいと希望する人も増えた。

⇒ そのとおり!

まあ、一方は旧姓でもやり方がある、他方は課題を選択別姓制で解消すべき、という両論併記。
時間の経過とともに、自民党内の意見が、はっきりと2分化すると思われ、法制化も行われるでしょう。
早いか、時間がかかるかの違いですが、現状不利益・不都合を被っている人々の声が大きくなればばるほど、実現の時期が早くなると思います。

いずれ選択的夫婦別姓制は認められるべき

基本的には、不満を持つ立場、不都合を感じる人の立場に立って考え、極力その人々の希望に沿って法律を策定するだけのことです。
戸籍がどうこう、手続きがどうこう、などの問題は、改善すればよいだけのこと。
その機会に、一緒に改善・改革すべき課題が現状あるでしょうから、これを好機と捉えて、行政改革を推進すればより大きな成果・効果をもたらすでしょう・

いずれ、などと言わずに、可及的速やかに、改革に取り組むべきですが、自公民政権・内閣には期待できそうにありません。

私事ですが、私の長男の奥さんは、ネット上では、大野◎◎○子さんと、旧姓を真ん中に挟んで用いています。
大賛成です。
旧姓の方を先にしたいと思っているかもしれませんが、それはそれで良いのではないでしょうか。

これは半分冗談ですが、二つの姓に同じ文字が一つずつ入っていたら、合体して一つにするのも面白いかも。
(面白がってはいけませんが。)
例えば、森山さんと山田さんが結婚したら森山田さん、山田さんの田村さんなら、山田村さんとか。
(冗談が過ぎますか?)

選択的別姓制における問題点

ところで、選択的夫婦別姓制が認められない場合、すなわち、今そうである場合、人はどうするでしょうか。

1.子どもの姓をどうするか
2.離婚時の親権問題にどう対処するか
3.婚姻関係時及び離婚時の財産管理問題にどう対処するか

2と3の問題は、異性婚の場合でもあるわけで、平等に処理されるよう法制化するだけのことです。
1は、夫婦間の話し合いと、生まれた後の家族間のコミュニケーションの在り方が最も大切な課題になりますね。

細かい点については、別の機会に論じたいと思います。

同性婚における夫婦の姓選択問題


ということで、冒頭のテーマに戻って、同性婚が法律で認められることになった場合、姓はどうするのでしょうか。
選択的夫婦別姓問題を議論するにあたって、パートナー間の姓をどうするか、という課題をどうするか、について、あまり話を聞いたことがありません。

推測すると、異性婚の場合の悩み・問題と共通するのではないかと思います。
ただ、結婚として認めることを希求するということは、当然、周囲の人々にその事実を知ってもらい、認めてもらうことが目標にあるわけですから、どちらか一方の姓を名乗る方の希望が上回るのかな、と思います。
しかし、一方、法的な承認を求めても、実際に自分の周囲にそれを伝え、知ってもらうことは「望まない」。
そう考える人も一定数以上はいるのでは、と思ったりもします。

まあその比率がどうこうと考えることは、左程重要なことではありません。
どちらを望んでも、対応できるような法律があればいいということ。

ただ、前回の記事で触れたように、同性婚におけるパートナー間の関係が、男女のカップルを役割分業的に区分するものなのか、気になったという程度のことであります。

2003年7月10日、戸籍上の性別変更認める「性同一性障害特例法」成立


なお、本稿と多少関係するものとして、心と体の性が一致しない人に対して戸籍上性別の変更を認める法律は、比較的早く、2003年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」「性同一性障害特例法」が成立し、施行されています。
埼玉医科大学が「性転換手術は正当な医療行為だ」と学内に倫理委員会を設け、1998年に性転換手術を行ったことで、医学的な対応が先行していたものが、この法律の施行で、性別に違和感を持つ人を尊重する社会へ一歩前進したとされています。

(性別の取扱いの変更の審判)
第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
 二十歳以上であること。
 現に婚姻をしていないこと。
 現に未成年の子がいないこと。
 生殖せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない。

しかし、上記の第3条の規定により
1)生殖機能をなくす手術が必要
2)その手術による体への負担の大きさ
3)既婚者は対象外
など、戸籍変更に付随する要件が、当初から人権侵害にあたると指摘されてきたが、最高裁は合憲と判断。

この法律により、確かに、性的マイノリティー(LGBT)への社会的認知は法成立時より高まったとは言えるが、やはりその附帯条件には、人権を侵害すると解釈すべき内容が残っていると考えます。
当法律も、選択的夫婦別姓制の導入と併せて、検討・改正すべきとでしょう。

次回は、LGBTQについて再度戻って、その先進的・先端的海外事情について、少し触れることにします。

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