愛知県の県民割、「あいち旅eマネーキャンペーン」を利用してみた

生き方・働き方

今日2021年11月27日付日経に
「県民割」で観光支援 利用好調で売り切れも 地元客のみ、効果は未知数
と題した記事が載った。

県民割とは

 県民割とは、都道府県などが域内での旅行費用や飲食等消費購買費用等を住民に補助する制度。
 10月以降、コロナの新規感染者数がかなり減少し、このまま収束してくれないものかと期待もしているのだが、逆に感染者数がまたぞろ増加している国も増えてきており、南アフリカでの変異種発生報道もあり、予断を許さない状況下なのだが、今実施する自治体が急増している。
 苦境が続く旅行業界の救済や停滞する消費の活性化を目的とした、国によるGoTo トラベルの地域版といえるこの県民割。
 特徴は、当然、実施都道府県に住む住民だけが、その都道府県内の指定を受けた施設だけで利用できる制度。
 利用方法は、それぞれの地域によって多少の違いがあるが、「県民割」と総称されているわけだ。

 岸田政権下では初めてのGoToキャンペーンは、前回で起きた問題の対策を含め、すったもんだ議論されつつそろそろ詳細が決定され、来年2月から実施されるらしい。
 これに先んじての、地域経済活性化を目的とした地域単位での「県民割」キャンペーンである。

コロナ禍での我慢需要の喚起例

 日経記事では、以下の「県民割」事例が紹介されている。

・大阪府「大阪いらっしゃいキャンペーン2021」:11月24日開始、 1人当り1泊最大5000円割引。飲食店などで利用の最大3000円クーポン券。庶民向けと謳う
・神奈川県「地元かながわ再発見(かながわ県民割)」:12月1日再開。1人1泊6000円以上の宿泊旅行で横浜・鎌倉・箱根「定番エリア」3000円、他地域5000円割引。
・東京都「もっとTokyo」都民割:国の「Go Toトラベル」開始に合わせ、都民割再開へ。1泊当り5000円補助予定。
・兵庫県「ひょうごを旅しようキャンペーン」:10月中旬最大5000円補助キャンペーン開始。補正予算で10万泊分の事業費計上。1週間足らずで売り切れ
・広島県「やっぱ広島じゃ割」:宿泊代1人当り最大1万円、ツアー料金最大1万5000円割引。11月24日時点で12万5500人分予約。
・和歌山県「わかやまリフレッシュプラン3rd」。県民割で利用の電子チケットを先着順で4回発売。数時間で完売。追加分含む残り抽選販売に。
・北海道「どうみん割」:11月1日開始。最大離島12000円割引、利用以外1万円割引。
 札幌市「さぁ!サッポロ冬割」: 11月12日開始 全国からを対象とし、宿泊代1人当り5,000円割引+2,000円分クーポンプレゼント。札幌市と北海道の両方の制度の利用が可能。

 無論、このための財源は、自治体財政・自治体予算の中から充当されるもの。
 とすれば、自治体の財政事情により、当然キャンペーン実施の有無や導入内容に違いがでる。
 しかし、自分のところでやらなければ、地域事業者や住民から不満が出ることは当然で、頭の痛い問題だ。
 上記の例においても、実施開始時期や実施内容にバラツキがあるし、全都道府県の事情・状況の調査・集計にも至っていない。
 
 国が、当然のように再度実施するGoToトラベル。
 一時的な経済対策以外の目的と、実施結果の分析・活用などに関する計画・構想も実施に先駆けて公表すべきだが、どうなるだろうか。

愛知県民割「あいち旅eマネー」キャンペーンを利用してみた


 私が住む愛知県の県民割の開始は、どこよりも早く10月8日から。
「あいち旅eマネー」キャンペーンと名付けられた地域経済活性化策の内容は、次の画像のとおりです、


 但し、愛知県内の旅行・飲食サービス、小売業などのすべての事業所で利用することができるのではなく、受け入れ希望の事業所は予め、県に申請を行い承認を受ける必要があります。
 もちろん、キャンペーン利用県民も事前登録と承認が必要です。

「あいち旅eマネー」 利用手続き概要

 手続きは、ネットまたは書類で行いますが、ここではスマホを活用しての方法を概略で。
 以下の画面の<旅行者の方新規登録>から入り、必要事項を入力して送信。
 承認されると個人ごとにQRコードが発行されます。



次に宿泊する施設を、登録されているリストから検索して選び、予約を入れ、その内容をアプリから登録します。
以下の画面の<対象店舗を探す>から示された<加盟宿泊施設>で検索。


渥美半島伊良湖への1泊小旅行。
第一希望のホテルはこのキャンペーンに登録・参加しておらず、他の登録施設のなかから、初めての「休暇村伊良湖」を選択し、私たち夫婦と二男家族(子ども3人の5人家族)で2部屋をホテルで直接ネット予約。
その内容のうち利用者名・性別・年齢・住所などの必要事項を下の画面の<新規旅行登録>から登録。
1泊5,000円以上の宿泊利用者全員を登録する必要あり。
(当初、申込者1人だけの登録でよいと勘違いしており、チェックイン時に指摘されて、急遽大人4人全員分を登録)

利用当日の手続きと事後処理


宿泊利用施設に着き、チェックイン時にQRコードを提示し、1泊5,000円以上利用者の本人確認のため、一人ひとり免許証提示と署名。
これで、利用者数に応じた、宿泊分の1人当り上限5,000円分と利用購買分1人当り上限2,000円分のポイント還元数が決定される。

翌日11月24日休暇村伊良湖をチェックアウトした後、同じ田原市内にある、よく立ち寄る<道の駅あかばねロコステーション>で2世帯それぞれ野菜などを購入。
QRコードを提示し、8,000円分のポイントの内、2件合計3100ポイント分の利用の確認を得る。
但し、すぐに値引きされる方式ではなく、通常通り支払い、精算後に、県に自動的に承認申請が行われ、数日後にポイントに交換が可能になる。

残高分は、岡崎市内にある<ステーキ宮>が利用可能加盟店になっていることを検索で調べ、昼食代金の一部に充当。

上記で、宿泊ポイント5000ポイント4人分の合計20000ポイントと購入ポイント2000ポイント4人分の合計8000ポイントが自動申請され、承認を待っている状態を示しています。


承認されると結果連絡メールもあり、<ポイント交換可>になり、その手続をするとのこと。
旅行後3日目になっていますが、現状<申請中>のままのため、ポイントへの交換は済んでいません。

あいち県民割「あいち旅eマネーキャンペーン」を利用して

昨年GoToトラベルを、やはり二男家族との小旅行に利用したが、このときは給付額を差し引いて決済する方式。
今回のあいち県民割は、通常決済後、電子マネーで還元される方式。
価値は同じだが、正直、補助金額を差し引いて支払う方式の方が面倒がなくてよい。
利用施設サイドの利便性を考えると、全額利用者から受け取った方がよいのは明らかだが。

また、他自治体のやり方は分からないが、愛知県方式では、受け入れ希望事業者が申請しなければならず、最も支援されるべき地域の中小零細事業者のかなりが、このキャンペーンを利用しないのではないかと考える。
その実情・結果は、キャンペーン終了後、県が調査し、公表すべきと思う。

特定業種支援をめぐる課題

来年2月以降再開されるという国によるGoToトラベルについては、前回実施において問題となった事項への対策が講じられたものになるという。
しかし、旅行業等対象・適用業種の不平等性・不公平性について是正されるという話は聞かない。
不思議に業種間の公平性の欠如が問題視されることが少ないのは、やはり業界団体の有無・規模の大小に因があるのだろう。

GoToキャンペーンに限らず、適用上何かしらの線引・基準を設ける場合の公平性・平等性の維持・実現は、すべての事業の法人化と法人番号の取得など、データベース化とそれによる捕捉率の向上が鍵となる。
有事においてその必要性が一層認識されるわけで、そのための基盤創り・システム開発は、平時に行なっておくべきである。
実は、今回のような「県民割」の実施も、そうした基盤創りの一環と認識して、参加・不参加双方を含む種々の実態・実績の把握も課題として実施されることが望ましい。
まあ、そのような発想・構想は恐らくないであろうが。
問題となっている種々の交付金・補助金と同類の、一過性のバラマキ政策の発想の域を出ない政策に過ぎないからである。

どうせ金を使うなら、その政策を通じて、何を予想し、何を期待し、次の何に活かすかを事前に考え、目的を明確にした取り組みであるべきなのだが・・・。

各種支援政策の効果・評価の分析・公開を

日経記事では、事業者の懸念として、この県民割利用者が果たしてリピーターになるかどうかということが書かれていた。
また全体的に、どの程度の経済対策としての効果が上げられるかも未知数だと。

利用される事業者の参加率や、利用者の支持率などデータ化し公開すれば、経営や行政上のコストパフォーマンスや今後の経営政策・戦略、マーケティングなどでの活用に有用となるが、自治体にそんな発想があるだろうか。

利用者としての率直な感想

利用者の私としては、こうした制度を利用すると、やはり通常価格の価値評価に影響を受けることになる。
リピーターには単純にはならないだろう。
実質的なキャンペーン価格において、コストパフォーマンスがどうかを考え、通常価格で評価すると、どうしても割高感を感じてしまう。
今回の場合、いつも利用しているホテルがこのキャンペーンに不参加だったため、利用したことがないホテルを利用した。
幸い、食事内容が先の従来の施設よりも良かったので、次回利用可能性もあるだろうという評価になったが、通常価格でどうかとなれば、施設からの景色や建物・部屋などの造りや雰囲気などを考慮すると、絶対的に優位というわけではない。
こうした評価・感覚は、人さまざまであり、それが旅行業等のサービス業の難しさでもあろう。

年明け、GoToトラベルが行われれば、また二男家族と利用することを考えている。
利用者のメリットはそれで完結するが、すべての利用結果データは、事前の予測と結果との差異分析を含め、非常に価値のあるものである。
投入された予算・実額とは別の、利用価値があるデータと分析、アウトプットが集約・公開され、他の次の政策・施策に有効に活用されれば、実経済へのプラス効果とは別の価値創出となる。
ぜひ期待したいのだが・・・。



関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


年間記事ランキング

  1. 1

    2020年人口動態調査に見る、少子高齢化・人口減少社会:日本の人口1億2427万1318人

  2. 2

    水素利用の燃料電池トラクター、クボタ2025年世界初導入へ

  3. 3

    ローカル・フードシステム、オルタナティブ・フードシステム、CSA実践・実現のための課題:『日本の食と農の未来』から考える-3

  4. 4

    日本在住移民・外国人へのベーシックインカムをどうするか:BI導入シアン-19

  5. 5

    みずほ銀行岡崎支店が名古屋駅前支店内に移転?

2023年6月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930 
おすすめ記事1 おすすめ記事2 特集記事
  1. 「男性ばかりの政治」の実態と要因を確認する:三浦まり氏著『さらば、男性政治』から考える-1

  2. 女性主体政党はジェンダー平等時代に逆行しているか:三浦まり氏著『さらば、男性政治』から考える(序)

  3. 女子会のノリで女性主体政治グループ、女性政党創設・活動はムリですか

  1. 有事を支えるのは平時の農業生産。逆行する米の減反政策:『日本が飢える!』から考える食料安保と農業政策-2

  2. 元農水省官僚山下一仁氏の農政トライアングル批判の思いを知る:『日本が飢える!』から考える食料安保と農業政策-1

  3. 山下一仁氏著『日本が飢える!』から考える食料安保と農業政策(序)

  1. 有事を支えるのは平時の農業生産。逆行する米の減反政策:『日本が飢える!』から考える食料安保と農業政策-2

  2. 「男性ばかりの政治」の実態と要因を確認する:三浦まり氏著『さらば、男性政治』から考える-1

  3. 女性主体政党はジェンダー平等時代に逆行しているか:三浦まり氏著『さらば、男性政治』から考える(序)

記事アーカイブ

過去記事ランキング

  1. 1

    グリーントランスフォーメーション(GX)とカーボンゼロ・イノベーション

  2. 2

    2020年人口動態調査に見る、少子高齢化・人口減少社会:日本の人口1億2427万1318人

  3. 3

    日本在住移民・外国人へのベーシックインカムをどうするか:BI導入シアン-19

  4. 4

    帝国的生活様式、グリーン・ニューディール、気候ケインズとは:『人新世の「資本論」 』が描く気候変動・環境危機と政治と経済-1

  5. 5

    みずほ銀行岡崎支店が名古屋駅前支店内に移転?

  6. 6

    ベーシックインカム導入で健康保険・介護保険統合、健保財政改善へ

  7. 7

    高校教育の多様化を教育の水平的多様性実現の起点に:『教育は何を評価してきたのか』から考える

  8. 8

    同一労働同一賃金制の本質-2:総合職・一般職コース制復活と専門・専任職制との統合

  9. 9

    ベーシックインカム生活基礎年金15万円で社会保障制度改革・行政改革

  10. 10

    明治安田生命、契約社員の7割女性1900人を正社員に。その背景と目的

TOP