値下げ敢行ユニクロの今後に期待すること:国内生産拠点作りと天然素材開発を

経済・経営・労働政策


先日、3月4日に日経掲載のユニクロの全面広告を見て
ユニクロ日経全面広告、現状消費税別価格をそのままで税込価格に!実質値下げへ
という記事を投稿した。

昨日3月12日からの実質値下げを発表したのですが、その報道で、私は、10万円を付けたばかりの、業界一人勝ちのファストリの株価が、今後一層高くなると感じた。
しかし、発表があった当日以降の株価は、下のチャートのように下げ続けている。

この傾向を捉えた上で、経済評論家の鈴木貴博氏が
ユニクロとジーユー「9%値下げ」もたらす価値 顧客還元の一方でコスト増となる策は吉か凶か
というテーマでレポートを書いているのをみた。

この株式下落を投資家は、今回の実質値下げが収益低下・悪化をもたらすと見たためとする。
これは当然といえば当然のことだが、私は店舗とネット営業の現場でみれば、より人気・集客力が高まり、他社を圧倒する販売数量の増加をもたらすと考えている。
粗利益は減るかもしれないが、販売数量が増え、粗利益高と営業利益高は増加するだろう。
これは、チェーンストア経営の原則・鉄則でもある。

むしろ最近のユニクロは、単価の高い商品の構成も増えていることもあり、無論消費増税もあって、むしろ高いとさえ感じていた。
今回の戦略は、言うならば、ユニクロ(GU含む)だけが消費税をゼロにしたに等しい。
他社には絶対に真似ができない。
大手アパレルは衰退の一途をたどっているし、青山やAOKIも当然苦しい。
ユニクロの商品構成が、以前のカジュアル一辺倒ではなく、フルラインになってきていることと、継続的な新素材開発と商品開発の貢献が大きい。


株式分割か、購入単位の引き下げで、一般投資家にも買える株式に


そうした業界動向や消費動向などの予測も含めると、株価を一旦下げても再度上げに転じるt見ている。
それよりも、望みたいのは、ここまで高くなった株価では、一般投資家は買えない。
ので、株式分割をするか、購入単位を1株、せめて10株単位にまで下げて欲しいのだが、柳井さん、検討頂けませんか。

力を入れる、Re Uniqlo

ここにきて目につくのが、Re Uniqlo と称しての、リサイクル、エコ視点からの取り組みである。
ダウンのリサイクルは、昨年TV番組を利用して知られるとこととなったが、現在は、ダウンだけでなく、ヒートテック・インナーも回収に力を入れている。

新興国への、不要衣料の提供や、他への再利用も定着・拡大している。
いわゆる持続可能性、sustainability の実践・実現である。
それはそれで評価できることだが、それも今の時代には、行って当然の領域に入っている。
またその行動自体にイノベーションはない。

ユニバーサルグッズとも言える、前開きインナーの開発

一方、その他に、以下のような地味な取り組みも行っている。

すなわち、先述したダウン商品のリサイクルへの取り組み同様、TVでも放映されたものだが、前開きウエアの開発がある。
身体に障害があったり病気などで、日常生活において、かぶりの衣料に不便を感じている人々の声を反映させた、前開きのインナーやベビー衣料を開発し、販売にこぎ着けた。
一種のユニバーサル・デザインと言ってもよいだろう。
開発コストは、ダウン商品等のリサイクル同様掛かるだろうが、こうした取り組み経験やノウハウは、必ず他の開発や収益向上に活かすことができるだろう。

国内生産拠点整備への取り組みを

ただ、こうしたすでに取り組み、あるいは成果を上げている既定路線とは別に、私はファストリに今後取り組んでもらいたいことがある。

まずひとつ目は、コロナ禍を経験したことで強く感じさせられた、自給自足経済の整備・拡充である。
グローバル企業として中国・東南アジアを生産拠点としてサプライチェーンを拡充してきたが、安い賃金を求めて各地に生産基地を整備していくことにもちろん合理性はある。
しかし、コロナの経験から、国内にも生産拠点を持つことが、望ましいのではないかと思う。

国内を販売拠点の一つとしていることで、相当数の雇用を生み出し、限定勤務地正規社員化などでも国内経済に大きく貢献している。
これに生産部門の一部をも移転、もしくは新設することで、雇用創出はもちろん、全員正規雇用化して賃金も引き上げ、低迷する日本経済に一層貢献してほしいと思う。
グローバルカンパニーとしての世界戦略の中に、システム開発・商品開発拠点はもちろんだが、グローカル視点での販売拠点及び生産拠点として日本を位置付けて欲しいものだ。

天然素材の国内生産事業開発と化学製品原材料依存の低減へ:真のECO追求へ

もう一つは、これもコロナ禍と関連するが、石油を原料とする素材への依存度を下げる取り組みを進めて欲しい。
主力素材であるポリエステルは原油を原材料とした化学製品である。
もちろん回収して再利用することで、原油利用を低減することは可能だが、店舗数を増やし、売上を上げ続ける中では、自ずと限界がある。

これは本来の Ecology を追求する一環としての課題でもある。
そして日本の農業の振興と就労創出にも繋がる。
時間とコストと場所・土地、自然条件など、多種多様な課題を包含する困難な課題だが、長期的な視点で検討と研究に着手してもらいたいものだ。

なお、東洋経済記事執筆の鈴木貴博氏は、実質値下げで圧迫される収益をカバーするために、商品の品質を落として、買い替え頻度を高めさせることを、本気か冗談か分からぬが主張している。
それなどは、まさにエコと逆行するものであり、品質が良いことでタンスやクローゼットにユニクロ商品が溜まることとは関係ない。
不用品は、どんどんユニクロが回収しリサイクルするか、リサイクル店で、リユースサイクルに回ればよいのだから。


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