「税と社会保障の一体改革」の欺瞞が求める政治改革と財政システム改革

社会政策


前回
菅総理「生活保護がある」、麻生財務相「定額給付金再給付なし」発言が求める政治改革と財政システム改革(2021/1/29)
と題して、自民党政治、自民党内閣の生活保護制度や特別定額給付金を巡る社会保障制度やそれと結びつけての財政健全化に対する認識の薄っぺらさを批判しました。
それはコロナという異常な状態における冷静さを欠いた発言、発想というものでは決してなく、本質的に、政治家としては当然のこと、人としてのあり方をも問われる認識であり、絶対に変わらない、変わることを期待できない、想定できないものです。

まあ、個人としてどうこう、というのはそこそこにして、前回を受けて「政治改革と財政システム改革」という視点で、現在を再考し、これからのあり方を考えることにします。

その課題は、前回触れた自民政権がこだわる「財政規律」と密接に関連する「税と社会保障の一体改革」という方針です。

「税と社会保障の一体改革」の意味するもの


若い世代の人口がどんどん減少していく少子化社会と一体となって進んでいく超高齢化社会。
そこで問題になっているのは、現役世代の負担の大きさと彼らが高齢者になった時に受けることができると予想される給付やメリットの低さ・不透明さ等による不安と不満。

これを解消する方策と政府と官僚が考えたのが「税と社会保障の一体改革」です。

そのために採用する政策は、
・極力高齢者にできるだけ長く働いてもらう。
・年金受給開始時期を遅くする。
・健康保険、後期高齢者保険、介護保険等の自己負担額を引き上げる。

これを目標とし、現実にその路線を、名が通った御用学者も起用して、着々と走っているのです。



低成長経済社会における「税と社会保障の一体化」とは



高齢者をターゲットにした上記の政策は、経済成長が持続していれば、所得が上がり、税収が増えることで、取る必要はありません。
しかし、長引く低成長経済のもとでは、増えない税収を前提として財政支出を抑える方向に導かざるを得ないことに、一般的にはなります。

その固定観念からは、「税と社会保障の一体改革」というもっともらしい理由付けが、当たり前、これしかない、的に方針として示されます。

これが政治家や官僚にとって、仕事をせずに楽ができる方策です。
財政規律を守るためには、税収と年金や医療保険費用、預かり保険料などの支出との均衡が取れているようにします。

要するに、入が少なければ、出も絞る。
自動制御装置化するわけです。
ついでに、減る入り分の一部でも取り戻すように、高齢者の負担を増やそうというわけです。
高齢者にもっと働くことを要求するのと同様、同時に、女性非正規雇用も増やし、税収や保険料の維持を図ろうともしています。

簡単すぎて、ミエミエなのですが、あたかもこれが正義・公平公正なことと素知らぬ顔をして制度化します。

政治・行政の仕事は、自分たちの収入を減らすことなく、こういう仕掛け・悪巧みを生み出し、法律にしていくこと。

その方策として、「税と社会保障の一体改革」や「財政健全化」という用語を、すべての国民に刷り込んで、あたかも国のために仕事をしているように見せかけているのです。

前安倍内閣時の「全世代型社会保障制度改革」も同根

これは、安倍内閣当時に用いた「全世代型社会保障制度改革」も同じ意味・意図を持つものでした。

・高齢者により長く働くことを求め、社会保険料負担を求める
・高齢者の医療・介護自己負担分を引き上げる
・高齢者の年金受給額を、手を変え品を変え、抑制する方策を組み入れる
・それにより現役世代の負担を抑制し、公平感を印象付けようとする

こんな小手先の方法を取るだけで、とてもとても「改革」などと呼べるような仕事はしていないのです。


大転換すべき国家財政システムとそのために必須の政治改革

そして前回同様、財政システムの大転換必須という結論と、その実施・実現のやめの現状の政治システムと政治体制の改革が不可欠という結論に導かれます。

財政システム転換は、税収や保険料収入だけに頼らない国家財政システムを構築することで。
政治改革は、現状の自民党政治を打破することが前提となりますが、仮にそうなったとしても、財政システム大転換がなされる保証はありません。
税収や保険料収入だけに頼らない国家財政システムをリアルに考察・構築できる政党が政権を取ることが条件となります。

税や保険料収入に頼らないシステムのモデルは、日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金制で提案しています。
まずこの財源フリーで、年間100数十兆円を全国民に無条件で、平等に、デジタル通貨で支給するシステムを構築できれば、これまで金科玉条的に掲げてきた「税と社会保障の一体改革」も「財政規律」を守る課題も、まったく装いを新たにし、一段高い次元での、異質な課題に格上げされることになるでしょう。

もちろんその時の社会は、貧困を始めとしたさまざまな社会問題の改善・解決が、順調に進められていることが想像できます。
その一部の工程をも組み入れているのがベーシック・ペンションでもあります。

現状の野党に、それだけの革新的な政策と国民に確信をもたせることができる政策提案と説明ができるか。
現状では、期待できないことも、前回述べました。

そうした認識・前提で、2050年に向けての最初の10年間をいかに使うか。
変わらぬ社会をどう変えるか。
政治の役割なのですが、コロナ禍にある今、われわれすべてが、今と明日が繰り返されていく日々に、考え、可能な行動を、と思います。

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文中にある「ベーシック・ペンション」については、当サイトでも間接的に触れていきますが、専用のWEBサイトがありますので、こちらをご覧ください。
https://basicpension.jp

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「ベーシック・ペンション、日本独自のBI実現をめざすクラウド・ミーティング」


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