
介護事業大手SOMPOケアならではの動向:介護事業規模拡大の必要性・重要性
コロナ禍、介護スタッフに特別手当支給
先月、介護大手SOMPOケアが、緊急事態宣言発令期間中に、全都道府県の介護職員に1日3千円の特別手当を支給することが報じられた。
パート職員には時給換算で支給する。
全国の老人介護施設のクラスター化など、感染者と死者が発生・増加。
感染不安・リスクと戦いながらグループ事業所で働く約2万人の介護スタッフを思いやってのことだ。
同社は、全国各地で有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、居宅サービス事業等を展開している。
各地で休業や廃業する介護事業者が出て、同社のように営業を続ける事業者へ利用者がなだれ込む。
医療崩壊と同様に、介護崩壊と隣合わせのリスクもある。
コロナ禍は、介護業界においても、経営組織体制や経営財務体制が強固で安定していることの必要性を要求している。

介護事業の施設利用者データを外販。データ事業展開へ
また、同社の持株会社であるSOMPOホールディングスが、介護事業現場において蓄積したデータを外販するという。
提携したパラマウントベッドの「IoT」ベッドを、SOMPOケアの介護施設1万8000室に設置し、施設利用者の睡眠中の呼吸数や心拍数から睡眠効率や活動量などをデータ化。
そのデータを製薬や健康食品メーカー、フィットネスクラブ企業に販売し、各社は新製品やサービス開発に活用する。
同社は、この事業を「SOMPOケア リアルデータ経営」と名付けており、介護事業における種々の業務と情報を対象としたデータ化と活用により、より広範なデータ事業展開を想定している。
これは、SOMPOグループ全体として、データ事業を新たなビジネスモデル化する戦略の一環であり、損保という機関事業のデータ事業と連動・連携を前提とした動きである。
当然、介護事業そのものを展開するSOMPOケア自体にも収益がもたらされ、事業基盤が強化される。
それが、介護人材の採用・教育、労働条件・労働環境の向上に結びつくわけだ。
これは、やはり事業規模・企業規模が大きく、安定していることで可能になる。
直接的な介護労働自体において、労働生産性を高めることには自ずと限界がある。
特に、個宅を訪問しての訪問介護や送迎を要する通所介護(デイサービス)では一層困難になる。
しかし、SOMPOケアなど企業基盤が強固で、運営する施設の個々の事業規模が大く、また事業所間・業態間の協力・連携も推進することで、生産性向上の余地も高まる。
こうした介護大手は、当然だが利益率の高い介護事業形態を優先させる。
従って、利用者は、保険適用外のサービスに対してする費用を必要とすることとなり、誰もが利用できるものではない。
介護大手が特養を積極的に手掛けることはない。
現状では、入所型施設に関しては、要介護3以上が入所条件である特養の数はまったく足りず、他の形態の老人施設では費用がかかり過ぎる。
また、それらを介護保険で賄うことも、現状と今後の介護財政状況を考えれば、困難を極めることになる。
現在検討を進めている「介護行政システム改革」における、難問の一つである。介護大手が、特養レベルの費用で入所・利用できる事業モデル・介護施設の開発を進めるようにならないか。
改革提言に盛り込みたい一項であることを添えて、改革のまとめの検討を続けることにしたい。

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