
労働人口減少が中小企業を締め付ける
中小企業改革が国運を左右する?(4)
『国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか』(デービッド・アトキンソン氏著・講談社α新書・2019/9/19刊)
を参考にしながら、事業継承問題を考えざるを得ない中小企業に共通の弱みとその策について考えています。
中小企業、小規模事業者とは
今回は第四回目。
デービッド・アトキンソン氏による、国運の分岐点となる「中小企業改革」。
中小企業の定義を確認すると
◆製造業:資本金3億円以下又は従業者数300人以下
◆卸売業:資本金1億円以下又は従業者数100人以下
◆小売業:資本金5千万円以下又は従業者数50人以下
◆サービス業:資本金5千万円以下又は従業者数100人以下
小規模企業の定義は
◆製造業・その他:従業員20人以下
◆商業・サービス業:従業員5人以下
とされています。
また、2016年の規模別中小企業の数は、以下のようになっています。(中小企業庁)

大企業数の変化はあまり見られませんが、中小企業とりわけそのうちの小規模事業者数の減少が顕著です。
確かに、上述したように、定義通りの従業員数で構成する中小企業では、人材の育成、とりわけ従業員のなかから日常業務を通じて後継経営者を選抜・育成することの難しさは想像できます。
やはり、家族・同族による事業継承ができるのが、ひとつの理想と言えそうです。
しかし、個人の生き方の自由や少子化などで継承できる親族・家族がいない事業所は、経営者の高齢化に伴って、やはり増え続けるでしょう。

人口減少・生産年齢人口減少で従業員を確保できない
経営者の高齢化は、当然、従業員の高齢化と同時進行です。
小規模事業者や中小企業に対する特例で、社会保険・労働保険などの負担適用基準がゆるくはなっていますが、それでも毎年上がり続ける法定福利費負担は、馬鹿になりません。
どうしてもアルバイトやパートなど非正規雇用で、賃金を含め負担を軽減しようとすればするほど、正規社員の比重・構成比が下がり、熟練度や技能技術も上がっていきません。
社員の賃金が上がらなければ、定着も難しく、人材・人員不足が慢性化するリスクも上がります。
それでなくても、既に人口減少社会に突入し、生産人口も減少するわけですから、新規の採用は、大企業に流れ、小規模事業・中小企業に回ってくることは今後本当に期待できなくなります。

すぐに取り組むべき経営体質転換への取り組み
たとえ現状苦しくても、もし事業を継続・継承したいと考えるなら、何とか事業を成長発展させたいと考えるなら、現状から経営体質の変革・転換に取り組まなければなりません。
家族・親族への継承を望むなら、その候補者・対象者との事業継承のための課題への取り組み計画・スケジュールをしっかりコミュニケーションをとって作成し、行動を起こす必要があります。
その候補者がいなければ、自前で、現状の組織・従業員の中から候補者を選抜し、やはりしっかりコミュニケーションをとって、取り組みを始めるべきです。
あるいは、以前紹介したように、M&Aや事業承継をビジネスとするところに、売却や人材受け入れなどの相談をするという方法もあります。
自社で取り組むならば、業務改善活動とそれに伴う人材・後継者の育成を並行して進めます。

めざすべき生産性向上と利益体質作り
これまでも申し上げていますが、業務改善活動の目的は、生産性向上による利益体質の強化、それに基づく賃金の引き上げ、それによる人材の技術と意欲・能力の向上が当初の目標です。
そして、真の目標である、設備や事業開発・技術開発、人材確保・人材開発への投資を可能にする利益創出、内部留保化に結びつけます。
「中小企業改革」。
随分大げさな表現ですが、結局は、目標を決めて、毎日の改善の積み重ねで取り組み、1年、2年と積み重ね・積み上げてこそ実現・達成できることです。
それならば、組織が小さくても、いや小さいからこそやりやすい、成果も意外に早く出る、軌道にのればスピードが加速する可能性が高いとも言えます。
小さいながらも良い会社、強い会社、社員・従業員がいきいきと働く会社に・・・。
あの会社で働きたいと思ってもらえる会社に・・・。
後継者も育成し、事業継承問題も乗り越え・・・。
そして事業規模の成長・拡大、そして中堅企業グループへの仲間入りも・・・。
そのロマンの実現と社会貢献への道筋作り。
小規模事業主・中小企業経営者のみなさんのご努力に、心からエールを贈りたいと思います。

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