ベーシックインカム生活基礎年金、段階的導入の理由と方法

社会政策

ベーシックインカム(生活基礎年金制度)案再考察-8

基本的人権基盤としてのベーシックインカム制導入再考察と制度法案創り
ベーシックインカムの定義再考察:JBIとは(Japanese Basic Income)
財源問題、所得再分配論から脱却すべき日本型ベーシックインカム
日本型ベーシックインカム実現をめざすカウンター・デモクラシー・ミーティングを開設!
BIは、日本国内のみ利用可、使途・期間限定日銀発行デジタル通貨に
ベーシックインカム生活基礎年金月額15万円、児童基礎年金8万円案
ベーシックインカム生活基礎年金15万円で社会保障制度改革・行政改革
と続いた<再考察シリーズ>。

今回は、前々回に提案した、ベーシックインカム生活基礎年金制度を、年数をかけて段階的に導入する案について考えます。

準備進むデジタル通貨発行検討とデジタル庁設置もタイムリー

主要国間での中央銀行によるデジタル通貨発行に関する研究・調整の動きが増すなか、10月9日、日銀が、2021年度にその実証実験を実施すると発表しました。

加えて、菅内閣ではデジタル庁が置かれました。
この二つの要素を考えると、別にベーシックインカム用のデジタル通貨を発行する基盤中の基盤にも目処が立ちそうだと言えるでしょう。


日銀発行(検討)デジタル通貨とベーシックインカム生活基礎年金専用デジタル通貨との違い

もちろん、日銀発表のデジタル通貨実証実験は、ベーシックインカム用専用デジタル通貨の実証実験ではありません。
CBDC(Central Bank Digital Currency)と呼ばれる中銀の発行するデジタル通貨であり、現状の貨幣に替わるものです。

CBDC、3つの実験段階

日銀によると、この実証実験は、以下の3段階で行われるといいます。

第1段階:発行や流通など通貨に必要な基本機能の検証。システム上で実験環境をつくり電子上でのお金のやり取りでの不具合等をチェック。発行残高や取引履歴記録方法なども検討。
第2段階:金利付与、保有金額の上限設定など通貨に求められる機能を試す。
第3段階:「パイロット実験」を必要に応じて実施。民間事業者や消費者参加の形を検討。


CBDCに関する3原則

また、先進国中銀グループ等で取り決めた以下のCBCCの3原則というのがありました。

1.物価や金融システムの安定という役割の遂行を妨げない。
2.現金や銀行口座などの既存の決済システムと共存する。
3.決済のイノベーションや効率性を高める。

こうした意を受けて、このCBDCは、個人が日銀に口座を持つと民間金融機関から預金が流出し、金融システム不安を招きかねないため、現在の現金と同様に金融機関を介して発行される形式になるとみられています。

私の提案による、日銀発行デジタル通貨は、ベーシックインカム生活基礎年金・児童基礎年金用の日本国内でしか利用できない専用通貨です。
このCBDCとは別に、もう一つ別管理システムによるデジタル通貨です。
仮にJLPDCとしておきましょうか。JはJapan、LはLife、PはPensionです。

このJLPDCは、本人名義で、個人番号(カード)と紐付けされ、日銀のみに専用口座を開設し、市中金融機関への送金はできません。
保管・決済専用口座として機能します。
利子は付かず、譲渡も相続もできません。
CBDCと現金は、市中金融機関に預け入れられるため、上記原則2.に沿っています。
そしてもちろん、発行総額自体に上限があり、消却により残高も常に調整されるため原則1.にも適合し、3.は言うまでもありません。

日本型ベーシックインカム段階的導入案


その案とは以下のとおりでした。

第1次:2025年4月 ⇒ 学齢6歳以下(現金給付:消費税等財源)
第2次:2030年4月 ⇒ 1)学齢15歳以下 
              (現金給付:所得税・消費税等財源)
            2)母子・父子世帯、生活保護世帯 
                 (日銀発行デジタル通貨給付)
第3次:2035年4月 ⇒ 40歳以下 (日銀発行デジタル通貨給付)
第4次:2040年4月 ⇒ 60歳以下 (日銀発行デジタル通貨給付)
第5次:2045年4月 ⇒ 80歳以下 (日銀発行デジタル通貨給付)
第6次:2050年4月 ⇒ 86歳以上 (日銀発行デジタル通貨給付)

ベーシックインカム、段階的導入の意義・目的


段階的に導入する理由。
むしろ段階的にせざるを得ないという事情があります。
先ず何よりも、制度内容のとりまとめに時間と労力がかかります。
そしてこの制度の導入が国会で審議され、法律が可決成立し、施行日程が決まるまでに、また時間を要します。
その法律案自体に、段階的導入計画も盛り込まれる必要もあります。
その上での、意義・理由の主なものを以下取り上げました。

1.生活基礎年金を日銀発行の専用デジタル通貨で配付するためのシステム開発と運用実験および利用・受け入れシステムの準備に相当の時間を要するため。
2.財源問題、給付主体等に異なる方法を用いる(可能性がある)ため、比較的簡易かつ有効な方法から順次導入するため。
3.種々の制度導入目的・背景において、必要性・緊急性・公平性等を勘案して、問題改善・解決の優先順位を設定し、その順に従って導入するため。
4.段階的に進めることで、制度及びシステムの検証・確認が可能になり、修正が必要になれば対応できるため。
5.但し、技術的、財源的に予定よりも前倒しして導入できると判断した場合は、各段階の時期を早めることができる。

その1.については、CBDCとは別のJLPDCの実証実験などが必要であり、利用事業所の審査登録、新システム対応のマイナンバーカードの作成・配付、利用時受け入れ・決済端末処理システムなど、相当の準備期間を必要であることで理解できると思います。

複数財源方式による段階的導入


次に、2.についてです。

私が現状考えている生活基礎年金・児童基礎年金の支給主体及び財源は、複数の方法によるものです。
2階建てになるか、3階建てになるか、それとも上乗せ型ではなく、特定の世代や対象の方に特定の方式で、他の方は他の方式で、といった具合にです。
野口智洋氏の提案が参考になっています。
同氏の提案では、固定BIと変動BIの2階建て方式ですが。

例えば、すでに提案しているのは、少子化対策として最優先で導入すべきと2025年からの導入を提案している<児童基礎年金>は、財源を<消費税>とし、専用デジタル通貨システムが間に合わなければ、現金で給付する、という案です。
専用デジタル通貨システムが稼働可能になり次第、そちらに移行となります。

また、1階部分は、所得税・相続税など税財源とし、2階部分は、日銀が発行給付する方式です。どちらも専用デジタル通貨です。
場合によっては、別財源から3階建て部分を投入、ということもありうるかもしれません。

これをもう少し時間をかけて、実現しやすい方法・組み合わせを設定すればよいのではと考えています。
決まった内容で法制化するか、考え方・枠組み・選択肢を示し、実際の方法は最終決定に委ねることを記述する方法もあります。

これらのうち、どれを優先とするか、どの財源を充てるか、給付主体はどこか等、他の要素の判断と重ね合わせて段階を設定することになります。

支給優先順位付けの意義と基準


次に、3.の「種々の制度導入目的・背景において、必要性・緊急性・公平性等を勘案して、問題改善・解決の優先順位を設定し、その順に従って導入する」
ことについてです。

海外でのベーシックインカム導入は、初めはほとんど、人数や金額を限定しての社会的実験と位置付けて行なっています。
少額から行うのは分かりますが、希望者を募集し、抽選などで対象者を決定するのは、ある意味平等性・公平性を欠くと思われます。

それよりも、必要性・緊急性などをできるだけ客観的に評価検討し、優先順位を合意形成して段階的に導入していく方法を取ることが望ましいと考えました。
その際に参考にすべき要素・事項を以下、いくつか選んで、簡単に説明したいと思います。

少子化の最重要要因、経済的不安払拭へ

まず、速ければ速いほど良いのが、少子化対策目的の児童基礎年金制導入です。
そこでは、これから生まれる子どもから先に支給し、既に生まれて生活している子どもは、その後になります。
上記の段階での
第1次:2025年4月 ⇒ 学齢6歳以下(現金給付:消費税等財源)
第2次:2030年4月 ⇒ 1)学齢15歳以下 
              (現金給付:所得税・消費税等財源)

に当たります。
それまでに、JLPDC専用デジタル通貨システムの準備が確立されていないだろうという想定で、現金給付方式を想定しました。


貧困・格差問題への対応として


次に、貧困・格差対策としての導入計画です。
その代表的な対象とすべきなのが、生活保護世代への支給と、母子世帯・父子世帯への支給です。
上記の段階では
第2次:2030年4月 ⇒ 2)母子・父子世帯、生活保護世帯 
                   (JLPDC日銀発行デジタル通貨給付)

としました。
ただ、専用デジタル通貨による給付方式としたのは、対象人数が比較的少ないので、実験的に先行して導入することも目的としています。
この2030年からの生活保護世帯への導入により、同制度行政は不要になり、行政改革が実現することになります。

社会保障制度における世代間の不公平感への対応

次に配慮したのが、現在の年金制度や健康保険・介護保険制度における現役世代が感じている世代間の不公平感・不満への対応です。

前安倍内閣が掲げた全世代型社会保障では、単に、高齢世代の負担を引き上げることしか考えられていませんでした。
そうではなく、現役世代も全世代型社会保障を受けることができるのが、生活基礎年金の受給です。
ただ、高齢世代も同時に受給を開始できるのではなく、現状受けている恩恵を継続できればよいわけで、導入は後順位としています。

その考えで、
第3次:2035年4月 ⇒ 40歳以下 (JLPDC日銀発行デジタル通貨給付)
第4次:2040年4月 ⇒ 60歳以下 (      〃        
第5次:2045年4月 ⇒ 80歳以下 (      〃        
第6次:2050年4月 ⇒ 86歳以上 (      〃        

としたわけです。

実は、私は団塊世代最終学年の高齢者なので、この日程でいくと、生活基礎年金を受給することなくこの世から消えている可能性がかなり高いのです。
要するに、逃げ切り世代から、逃げ切れない世代に変わることになります。
(残念!)

ざっと主な要因を取り上げましたが、長い年数をかけて、そのプロセスで必要な修正を加えたり、新たな創意工夫を加えてより望ましいJLPDCに高めていくべく、ソフトに制度を導入・定着させて行ってはどうでしょうか。

全世代型・生涯型社会保障制度の基盤としてのベーシックインカム生活基礎年金・児童基礎年金制度です。
永続可能な仕組みとなるように、着実に、堅実に、取り組んでいきたいものです。

コロナ危機における経済財政政策と通じるベーシックインカム論

コロナ危機における経済政策について、門間一夫 みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストが語った内容が、ベーシックインカム導入の意義や方法と同じ脈絡で捉えることができ、非常に参考になったので、少し長くなるが、引用させて頂いた。
コロナショックは従来通りのマクロ経済政策では対応できず、一律増税より所得再分配すべきという論調」で以下提起していました。

1.コロナショックから受ける打撃は経済活動の中身によって著しく異なる。
所得面でも収入源を失う人々もいれば、消費の自粛からかえって貯蓄が増える人々もいる。これほど偏在的な打撃を和らげる方法は、所得や富の再分配しか原理的にありえない。
ただ、どのような再分配が妥当なのかすぐには結論が出せないので、まずは目の前の被害者への十分な財政支援を先行させざるをえない。
所得や資産の状況がリアルタイムで把握できないため、困窮度に応じたきめ細かな支援が難しいという問題もある。
ならば、支援不足となるケースを大量に出してしまうよりは、寛容過ぎるケースが生じうることも覚悟のうえで、広め大きめの支援を重層的に張り巡らせる方がよい。

2.必要な財源が50兆、100兆円に膨らんだとしても、国債の発行環境は問題ない。この点で低インフレは結果的に幸運だった。低インフレが継続しているからこそ、日銀は国債をゼロ金利で無制限に買う、と宣言できているのである。
これでしばらくの間、国債をいくら発行しても政府の金利負担は増加しない。大型の2次、3次補正予算をためらう理由はない。

3.コロナ収束後は、政府債務の持続性を巡るリスクに改めて向き合う必要がある。ただし、「国の借金は将来世代へのツケ」というよくある言い回しには惑わされないようにしたい。国内金融資産としての国債も増えるのだから、債務だけを残すわけではない。それより、現在対将来という捉え方をすることによって、「世代内」の不均一性から目をそらし、逆進性の強い一律的な増税まで正当化することの方が問題である。

4.今の危機に財政が果たすべき本質的な役割は、コロナショックと共に生きた世代内において、やや時間差はあっても所得・富の再分配を実現することにある。
国難なのだから国民が一致団結して戦うべきだと政府は言う。ならば今はその戦いで傷つく人々を全力で支援し、最後はその費用を負担能力に応じて分かち合う、という形にすることが、社会正義にもかなうし、マクロ経済に対する打撃の最小化にもつながるはずだ。

いかがでしょうか。

コロナ禍に限らず、今そこにある格差や貧困に悩む人々の支援策として、また常にそこにあり得る、起こりうるさまざまなリスクへの備えとして、ベーシックインカム生活基礎年金制度を導入する。
そう読み替え、意義・意味を強く確認することができるのではと思い、今回の締めとして紹介しました。

次回は、基本戻って、ベーシックインカム導入におけるメリットや障害要因などについて再考察を加えます。

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