
女性主体政党はジェンダー平等時代に逆行しているか:三浦まり氏著『さらば、男性政治』から考える(序)
先月初め、
◆ 4月5月課題新書:『さらば、男性政治』『国費解剖』『日本銀行 我が国に迫る危機』プラスα(2023/4/9)
というブログで、三浦まり氏著『さらば、男性政治』(2023/1/20刊・岩波新書)を紹介した。
その時の記述を以下に要約する。
6月に、当サイトで、国政を変える、国政を変革するためにどうすべきかを、考察・提案するシリーズをと考えている。
その軸は、まったく新しい女性主体の政治グループ・政党を創設・組織化し、中長期的計画で多数の女性国会議員を誕生させ、活動基盤を確立すること。
ほぼ3年前に、前田健太郎氏著『女性のいない民主主義』(2019/9/20刊・岩波新書)を参考にして
◆ 女性のいない民主主義社会の改革を:女性国会議員の一挙増員への途(2020/6/16)
という記事を投稿した。
今回の考察・提案では、その記事内容と同様・同列のものには、少しでもならないようにしたい。
本書は女性の執筆であり、従来にはない視点での論述や提案を期待して手に取った。
ジェンダー論に傾斜しないように、6月のシリーズの方向性を考える上で、本書が有用であることを願って、残りを読み進めたい。
同書をもちろん読み終えてのシリーズ着手になるわけだが、まず、全体構成を転記しておきたい。

『さらば、男性政治』構成
第1章 男性ばかりの政治
1)女性はどこにいるのか?
2)権力の座に女性はいない
3)ジェンダーギャップ指数121位(2020年)の衝撃
4)女性の政治参画はどこまで進んだか? ー 世界の動向
5)停滞する日本
6)世界の保守政党と自民党
7)中断された「左からの伝染」
8)なぜ女性議員は衆議院よりも参議院に多いのか?
9)地方議会における地域格差
第2章 20年の停滞がもたらしたもの ー ジェンダー平等後進国が作り出した生きづらさ -
1)ジェンダーとは
2)世銀「女性・ビジネス・法律」レポートに見る立法の停滞
3)「賃金」と「職場」における低いスコア
4)SIGI指数とは
5)女性差別撤廃委員会からの勧告
6)女性の地位と階層、教義的装争点
7)ジェンダー平等政策の進展度を比較する
8)なぜ選択的夫婦別姓とセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツは進まないのか?
9)男性稼ぎ主モデルからの脱却?
10)ジェンダー化された共稼ぎ型へ
11)進む子育て支援策とセカンド・シフト
12)深刻化する女性の貧困
13)日本人は何を選択してきたのか?
14)社会民主主義という選択肢の不在
第3章 女性を排除する日本の政治風土と選挙文化
1)男性政治と地元活動
2)政治家はなぜ夏祭りに来るのか?
3)選挙と対面主義
4)世界で増える政治家の地元活動
5)地元活動とジェンダーの影響
6)#飲み会を断らない女
7)男性化された政治家モデル
8)地元が政治家に求めるもの
9)ガラスの下駄を履く男性
10)議場から追い出された赤ちゃん
11)政治は男性のもの? ー 変わる意識
12)女性の政治参加は低調?
13)隠れたカリキュラム
14)女性を排除する政治はなぜ続くか?
15)地域単位の政治からの脱却
第4章 女性に待ち受ける困難 ー 障壁を乗り越える ー
1)政治家になるための障壁
2)「応募してくださらない限りは選びようがない」
3)自ら手を挙げる男性、声をかけられる女性
4)自信の壁とインポスター症候群
5)資源のジェンダー格差 ー 家族・時間・人脈・資金
6)議員報酬と供託金
7)ステレオタイプとダブル・バインド
8)ステレオタイプは選挙に不利か?
9)女性性が資源になる時
10)女性という切り札
11)ステレオタイプの効用
12)コロナ禍は女性リーダーのイメージを変えるか?
13)優れたリーダーとジェンダー規範
第5章 ミソジニーとどう闘うか
1)女性政治家へのハラスメント
2)政治分野における女性への暴力
3)女性を排除する動機
4)なぜ性的な形態を取るのか?
5)ミソジニー ー 女性を罰する
6)「からかい」という暴力
7)オンラインハラスメント
8)票ハラ
9)ハラスメントを法的に規制するには
10)海外のセクシュアル・ハラスメントの法理
11)政治におけるハラスメントの特殊性
12)地方議会におけるいじめ
13)バックラッシュの波
14)ジェンダーという言葉が使える時代へ
15)家族への介入
16)男性問題
17)新しい男性性に向けて
18)好意的性差別態度と悪意的性差別態度
19)現代的性差別態度
第6章 なぜクオータが必要か
1)世界に広がるクオータ
2)クオータの効果
3)クオータ反対論への反論
4)クオータか環境整備か
5)なぜ数にこだわるのか?
6)誰がクオータを支持するのか
7)候補者均等法の意義と課題
8)政党がすべきこと① ー 数値目標
9)政党がすべきこと② ー 候補者選定過程の改善・人材育成・ハラスメント防止
10)国の責務
11)地方議会の責務① ー ハラスメント対策
12)地方議会の責務② ー 環境整備と人材育成
13)積み残された課題① ー 数値目標の義務化
14)積み残された課題② ー 地方議会
15)根本的な見直しを
第7章 ジェンダー平等で多様性のある政治に向けて
1)女性議員が増えることのメリット?
2)男女で異なる政策への関心
3)女性議員の増加とジェンダー平等政策の進展
4)女性議員が切り拓いた政策
5)クリティカル・アクター
6)クリティカル・マス
7)女性議員の増加と民主主義の強化
8)女性リーダーは何を変えるか?
9)ロールモデルが存在する意義
10)生活者としての女性
11)「女であること」の意味
12)「生活政治」の転換と新自由主義の台頭
13)格差社会と生活
14)リーンイン・フェミニズム批判は日本の現状に妥当するか?
15)フェモナショナリズムの批判とは
16)左右イデオロギーとジェンダー
17)声を上げ始めた女性たち ー MeeToo時代の政治参加
18)当事者という政治主体
19)声を聴くのは誰か?
20)政党政治の刷新に向けて
2022年2月提案「WANを精神的基盤とする新しい女性主体政党・政治会派創設提案」
実は、結論を先に述べることになるが、WAN(認定NPO法人Women’s Action Network)を精神的基盤とする新しい女性主体政党・政治会派の創設と女性国会議員の多数輩出による政治・行政改革を提案するシリーズ、として、昨年2月に、以下の4回にわたって展開した。
<第1回>:女性主体政党・政治会派、2025年創設提案(2022/2/24)
<第2回>:女性主体政党・政治会派の理念・方針・政策の普遍性と独自性(2022/2/25)
<第3回>:女性主体政党・政治会派組織の整備・構築提案(2022/2/26)
<第4回>:政策も組織も世代を繋ぐ女性主体政党・政治会派の活動で、望ましい社会の構築へ
今回のシリーズは、いわばその二番煎じと言ってもよい。
3年前から、このWANの会員になっており、昨年に続いて、今年も5月20日に、そのWEBでの年次総会に参加を終えたところでの本稿となっている。
これも結論先行になってしまうが、昨年には、WANに期待することはほぼムリと結論を出している。
しかし、取り立てて別案があるはずもなく、観念的に同じ思いを時折りブログで繰り返すのみであったが、そこに、冒頭の三浦まり氏による『さらば、男性政治』(2023/1/20刊・岩波新書)が現れ、この書を参考にして、再度女性政党創設について、考えてみようとしたわけだ。
一応、三浦氏も、WANの主要メンバーの一人であることも好都合というわけだ。

<三浦まり氏著『さらば、男性政治』から考える>シリーズ
ただ、肩ひじ張らずというか、ダメもとで、としておくべきか、2週間ほど前には、以下の記事を当サイトに投稿している。
◆ 女子会のノリで女性主体政治グループ、女性政党創設・活動はムリですか(2023/5/11)
しかし、今回は、極力三浦氏の論述に沿って、考察提案を行っていきたいと考えている。
一応、同書を用いての考察後、WANについて、そして一般論としての政治改革について、付け加えたい。
今回を序論とし、次回第1回は、<第1章 男性ばかりの政治>を取り上げ、概要紹介と思うところを述べるスタイルで始めていくことにする。
但し、全体を通じての基本認識であり、問題提起の視点として、本稿テーマとした「女性主体政党はジェンダー平等時代に逆行しているか」を掲げていることをお知りおき頂きたいと考えている。

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