衛藤少子化担当相、第3子以降児童手当月6万円提起:コロナ不安で少子化加速に危機感

社会政策

先日投稿の
少子化社会対策と少子化担当相を糾弾する
と題した記事の中で、ほとんど成果を上げていない少子化社会対策と、それを推進する責任者である内閣府特命担当大臣・少子化担当相を批判した。

それが効いたからということはまったくありえないが、現任の衛藤晟一少子化担当相が、昨日8月21日に行った日本記者クラブでの会見で、意欲的と言うか、本気と言うべきか、注目すべき発言を行った。


少子化の最大の要因は、結婚・出産・子育て・教育にかかる費用負担

少子化要因の中で、最も影響度が高いとみなされているのが、現在及び将来における「経済的不安」にある。
これは、
既に結婚し、子どもを持つか、あるいは子どもを持ちたいと思っている夫婦について
加えて、
いずれ結婚したいが、まだ結婚してはいない男女について
どちらにも共通の要因とされている。

ならば、そのために最も効果があると予測されるのが、そうした経済的な不安を取り除くことだろう。
前者においては、現在の、中学生以下の子ども1人当たり月1万~1万5000円が支給されている児童手当が、そのために十分ではないことを示している。


児童手当、第3子以降は月6万円、第2子は月3万円に


こうした点に焦点を合わせて、衛藤少子化担当相は、記者クラブ会見で、思い切った児童手当額の改定を提起したわけだ。

実際には、提起というレベルではなく、彼の「思い」のレベルと受け止めるべきらしい。
「私がやりたいこと」のために3.5兆円必要、という言い回しを使っていることでそれはわかる。
その理由は、内閣で議論検討された上で、政策の方向性と合意を得たものではないからだ。
ある意味、こうした場で、担当相の思い・持論としての案が発表されること自体、不自然と考えるべきだろう。
根回しと見るべきなのかどうか、狙いが今ひとつわからないのが気になる。
まあそれはそれとして、内容はどういうものか。

かねてからの持論である、第3子の児童手当を6万円に、第2子は3万円、という構想を、大胆な経済的支援策として披露。
所得制限も検討課題としている。

それ以外に、取得前賃金の67%を支給する現行の育児休業給付金を、80%まで拡充することも提起した。

少子化担当相、少子化対策財源に相続税等構想

こうした場合、最も問題になるのが財源。
その財源として担当相は、固定資産税や相続税の増税、企業の内部留保などを例示した。
だが、それについても、まだ自民党内・政府内・関係官庁内で議論されてはいないようだ。
真っ先に財務省からケチが就くことが予想される。
過去の記録を見ると、たらい回しポストであることは明らか。

というわけで、どうにも実現する雰囲気さえ感じられないんだが、どうだろう。
早晩、内閣改造が行われれば、衛藤氏が担当相に再任される保証もない。

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前述した記事でも書いたが、今回のコロナは、間違いなく、仕事・収入などへの不安から、少子化を一層加速する。

その予測は、グローバル社会全般にも当然広がっている。
新型コロナウイルスの感染拡大で、各国において、若者が雇用や収入への不安から結婚と出産に慎重になり、出生数の減少をもたらすだろう。
深刻かつ長期に及ぶ不況は、出産を遅らせるのではなく、子どもの数を減らす影響をももたらす。
日本同様、アメリカでも2021年の出生数は1割減少すると予測されている。

また、コロナへの医療体制の重点シフトが、乳幼児の他の要因での医療体制の脆弱化をもたらすことでの死亡増などももたらすリスクもあるとされている。


日本の出生数減少予測


2019年に初めて90万人を大きく割り込み、86万ショックを招いた日本の出生数。
コロナ禍による、雇用不安・所得不安から、結婚および出産の減少は免れ得ないだろう。
来年2021年には、出生数80万人維持も困難と推測される。

衛藤少子化担当相は、同会見で、今年に入ってからの最新の統計によれば、「出生数が前年比マイナス2・4%、婚姻数はマイナス17・1%」と深刻な状況になりつつあることを示した。

厚労省によると、5月の婚姻数は3万2544件。
前年同月比では、「令和婚」に湧いて記録した9万件超の3分の1の水準であり、一昨年2018年5月比でも3割以上減少している。


過去少子化対策に取り組んできた衛藤少子化担当相


担当相が、介護保険制度、少子化対策の一つであるエンゼルプランなどに関わってきた経験をもつことが、この会見で分かった。
しかし、自民党内の、少子化と少子化対策に対するこれまでの古い体質での認識、ある意味言い訳についての報告が、それなりの時間を占めている。

これを根本的に覆す意識・責任感が自民党内にあふれるようにならなければ、少子化担当相の独り相撲に終わってしまいそうに感じられたのだが。

果たして、コロナの影響での厳しい少子化加速予想をどこまで真剣に認識できるか。
それが期待はずれに終わりそうなことは、先日した
少子化社会対策と少子化担当相を糾弾する
の中で、メモした以下のことからも想像できよう。

今年7月17日に閣議決定された<経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)>。
その方針を検討する<経済財政諮問会議>において、少子化を主要テーマの一つとし、骨太の方針は少子化に特化する予定だった、
しかし、コロナ禍、直前にコロナに特化されることになり、少子化は「『新たな日常』の実現」という最終章の一部に追いやられてしまった。
事前に、「抜本的少子化対策の推進に向けて」と題した民間議員の提起を基に議論が行われる予定だったという。


この領域に問題意識を持つ数少ない国会議員、と言える衛藤担当相。
この会見で、やはり少子化対策は、自民党政治では、ムリだろうな、と思わせられたのだが、いい意味で期待を裏切ってくれるとよいのだが。


衛藤少子化担当相の記者クラブ会見から感じたこと

Youtubeで公開されているこの会見動画。
今日8月22日現在で再生回数が、なんと544回のみ。

前半は、衛藤担当相のこれまでの介護保険制度および少子化対策への取り組み経験と自民党のそれらに対する反対する認識などの報告。
後半は、7月31日に閣議決定された「少子化社会対策白書」及び2020年版の「少子化社会対策大綱」のPR。

こうした構成で進めてきた最後に、第3子児童手当6万円、第2子3万円への引き上げという、彼の思いが出てきたわけだ。

そのために必要な追加給付額は、3.5兆円。
その財源案として、相続税等を提起した。

少子化から、婚姻世帯の多子世帯形成を促す政策としての、今回の児童手当改定案である。

だが、会見後の質問で出たように、結局マスコミも、財源問題に立ち戻ることを強いるような会見の終わり方になってしまっている。
マイナスの印象で終わってしまう残念な会見という評価にせざるを得ないのだろうか、残念だが。

一応、平成の時代に尽力し、実現を見た介護保険制度は高齢者対策としての社会保障制度改革。
一方、少子化対策は、平成の時代に積み残し、令和に時代に実現すべき課題、
そう位置づけるのは、分かりやすく、正しい理解のように思わせる。
が、その政策自体が、世代間の不公平さを拡大した元凶であるという、厳しい自己評価は当然だが行っていない。
そこも納得し難い点である。

余談だが、動画再生は可能だが、記者クラブとして、会見内容を記録活字化して公開しても良さそうなものだが、(探せばあるのかもしれないが)、同クラブサイトでは見ることができなかった。
このスタンスにも疑問を感じてしまうのだが、いかがなものだろうか。

衛藤少子化担当相・日本記者クラブ会見動画(2020/8/21)


私のベーシックインカム導入シアンにおける児童基礎年金との違い

私は、究極の少子化対策は、ベーシックインカムの導入であり、子どもへのベーシックインカムは「児童基礎年金」と呼び、月額10万円を提起している。
成人は、「生活基礎年金」と呼び月額12万円。
基本的には、年齢は関係なく、当然同一額である。

但し、一気に導入することは種々困難が伴うので、導入方法を考えるべきだろう。
例えば、まず、第3子から導入するとか、第2子から導入するなど。
低い金額から始め、順次引き上げていく、など。

しかしここで額の多い少ないを論じても、ほとんど意味はない。
どういう方針のもとでの制度で進めるか。
衛藤氏の思いは分かるが、政治課題として、この大きな社会的問題にどのように取り組み、結果責任を持つ事ができるまで実現の道筋を付けるか。
児童手当増額だけで改善・解決できるものでないことは、重々承知していると思われる。

やはり、常に、起点・原点での方針の合意と、トータルでのシナリオと目標値と期間・期限の設定が不可欠である。
少子化社会対策大綱が、総花的で、責任の持ち方が不明なままのものであることを棚上げしての今回の思いの公開。
印象・インパクトが、瞬間のものになってしまわぬように、と切に思うのである。

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