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介護制度、高齢化社会

エセンシャルワーカー介護職、コロナ禍でも変わらぬ人材不足

コロナで増す介護スタッフ求人と、拡大する介護現場の人材不足


収束が見通せないコロナ下、介護関連の求人件数は数カ月連続で増え続けている。
ある人材サービス大手によると「看護・介護」のアルバイト・パート求人は6月が前月比7.1%増、7月が同9.3%増で、前年同月比2倍を超えているという。
時給も上昇し、介護スタッフのアルバイト募集における平均時給は7月が1104円と前年同月比で2.3%、25円高かった。
しかし、採用サイドの苦戦は続いている。

介護施設や病院が、コロナ感染のクラスターの起点となることは、当然予想されたところだった。
未だに、その問題が払拭されることなく、それぞれの現場の緊張感が続き、多くのスタッフの心身の疲弊状況は、推して知るべしである。
本当に感謝するしかない。

中小零細の介護事業所の倒産・廃業も増える中、他の業種・職種でも、事業所の廃業・倒産や、非正規社員の雇止・解雇等で失業者が増え続けている。
こうした場合、求人意欲が旺盛な業種・事業所に人が集まるのが一般的だが、医療や介護の職種では、そう簡単に充足されることはない。

社会に不可欠な職種ということで、エセンシャルワーカーとかキーワーカーとか言われるが、言葉上での綺麗事では、状況は変わらない。
看護職は当然、看護師資格・准看資格が必要で、誰でもいいというわけではない。

もちろん介護職も一定の資格が必要だったが、現在は、補助的な仕事を担う人材として、介護資格を持っていない人も募集しており、介護現場では貴重な戦力になっている。

介護現場、人手不足の根本要因と抜本的解決の行方

だが、厳しい労働条件・環境での介護という仕事の大変さは、だれもが知るところとなっている。
当然、こういう仕事への向き不向き、適性もある。

ちょっと試しに、という軽い気持ちで就き、言われた仕事を言われたとおりこなし、職場と自宅を往復していれば、なんとか毎日が過ぎていく、という定例的作業主体の仕事ではまったくない。
生活介助・入浴介助・食事介助など、日常生活を自分で送ることができないさまざまな心身の状態にある要介護高齢者を介護する仕事を、相手に応じて、我慢強くやらなけらばいけない。

本来、慢性的に人手不足で、集まりにくい職種の賃金は上がるのが普通だが、介護職や保育職は、そうはならない。
相手が人であり、相対する顧客・利用者の数には限界がある。
その上、認可事業なので、施設の利用者・定員数等に応じて、必要なスタッフ数を揃えなければいけない。

それに、介護事業の場合は、介護保険制度に基づいて介護サービスを提供しており、上げることができる売上・収益は、自ずと決まっている。
従い、一定の時間で上げることができる売上・収益は決まっていて、それに準じて賃金も決まる。
こういうビジネスなので、歩合制や成功報酬型の賃金制度などを持ち込むことができない。

構造的に、低賃金がある程度固定化されている職種と言えるのだ。
それを打破する方法として、保険外のサービスを組み入れ、提供し、収益にすることが上げられるが、どの事業所でも簡単にできることではない。
中小零細・家業的な介護事業所では、とてもムリな話と言える。

そういう仕事・職種だけに、実は採用する方も従業員の将来に自信が持てないし、今働いている多くの人の多くが、現状にも将来にも生活上の不安を抱えている。

この難問を突破できるのは、最終的には、一部の大手企業だけになるのではないかと私は考えている。
今後は、より業界の再編が進み、大手の寡占化が進むのではないかと思っている。
働く人々にとっても業界にとっても、それが望ましいと、私は思っている。

事務管理等間接業務のIT化が、人手不足解消に繋がるか

先日、ある介護事業経営者により、介護人材の離職や採用難は、賃金だけの問題ではない、という投稿を、日経紙で見た。
そこそこの賃金を支払ってるからこその投書なのだが、そこで指摘しているのは、複数の自治体に届ける申請書等の書式やその審査確認基準の違いの不合理性である。

要するに、そのことで発生する事務作業の多さと事務管理コストの大きさを問題視し、これらを標準化・共通化することで、直接の介護業務により注力できる、ということだ。

その文を読むと介護行政事務手続きの相当の酷さが分かる。
まさに、菅内閣が重要課題とする、行政改革、デジタル強靭化の対象とすべき課題の一つと言える。

前回、
介護IT化による介護現場の生産性向上への疑わしい貢献度
で介護現場におけるIT化の課題について述べた。
そのIT化の4つの領域の内、前回触れなかったのが、その事務管理システムのIT化、標準化だ。

上記のある経営者の指摘を待つまでもなく、介護行政が真っ先にやるべきことが、こうした介護事業者が行うべき各種公的手続き・申請のデジタル化、IT化だ。
こうした間接業務の標準システムを、行政が、無償で提供し、無償で利用できるようにすべきである。
要は、介護サービスという直接業務に専念できるようサポートするのが、介護行政の責務の一つだ。

この点については、3月に
行政システム開発庁の設置を:行政標準業務システム開発による行政システム改革-2
と題した投稿の中で
「介護保険管理運用システムの標準システム開発とソフト無償提供」と提案しているので、見て頂ければと思う。
(当時別サイトでアップした記事だが、同サイトを閉鎖し、本サイトに転載したもの。)


デジタル庁として実現した、当サイト提案の「行政システム開発庁」設置提案:
実態は、新たな縦割り組織の創出だ!

なお、菅内閣の鳴り物入りの一つデジタル庁だが、この「行政システム開発庁」設置提案が、まさにそれである。
コロナ禍を契機として菅氏が思い立ったデジタル化のわが国の遅れ対策。

まあ、経緯は違え、実現したわけだが、単独でこの庁を設置するのではなく、河野太郎が担当する行革・規制改革担当相が、デジタル戦略も包含して担当すればよいだけのことだ。

要するに、ここでも実は、一つの新しい縦割り行政を創出したことになる。
そこまで指摘するマスコミは、現状はもちろん、ない。

なお、介護行政システム改革という視点で、当サイトでは、
◆ 自立・人権・尊厳、労働生産性:介護行政システム改革の視点-1
◆ 介護士不足、介護離職、重い家族負担、中小介護事業倒産:介護行政システム改革の視点-2
介護の本質を冷静に考え、世代継承可能な制度改革へ:介護行政システム改革の視点-3
で、問題提起済みである。

また、その記事内で整理している介護行政改革の方針・方向性として、以下の5つをその時点で掲げている。

1.介護保険制度は、総合・統合社会保障保険制度の導入・確立の上で改革
2.総合・統合社会保障保険制度の根幹は、全国民・全世代型生活基礎年金、ベーシック・インカム制の導入

3.一定要件に該当する要介護高齢者の一部私権の抑止・抑制
4.介護職者の准公務員制導入と社会保障職体系に基づくキャリア開発システムの導入
5.未利用・利用不能遊休地・建築物などの公的利用法制化による介護など社会保障施設化の促進

これらも踏まえ、新たな中期介護行政改革5年計画の提起に持ち込みたいと考えている。

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