グリーントランスフォーメーション(GX)とカーボンゼロ・イノベーション

経済・経営・労働政策


菅内閣、唯一評価すべき政策

支持率急降下の菅内閣。
コロナ第3波への対応をめぐり、年明け早々バタバタしていますが、その付け焼刃内閣にも一つだけ評価してよい政策があると考えています。

それは、脱炭素政策を明確にしたこと。
7年間以上続いた前安倍詐欺師内閣が、グローバル社会における責任をまったく感じることなく無視し続けた環境問題・エネルギー問題の政策を、就任早々大転換したのですから、これは評価してよいと思うのです。

その号令下、日本の経済界・企業活動は、一気に活性化しつつあります。
環境に良いだけでなく、経済を活性化させることで非常に大きな効果をもたらすのです。

日経は、その尻馬に乗るがごとく、宣言後、政府と一体となってキャンペーンを仕掛けている感じがしています。

その辺りの事情・状況について、昨年年末に<脱炭素による環境と経済で社会はどう変わるか>と題して、以下のシリーズで整理してみました。

◆ 脱炭素大合唱、菅内閣の狙い:環境と経済で社会はどう変わっていくか-1(2020/12/23)
脱炭素宣言後の日経関連記事リストからイメージする:環境と経済で社会はどう変わっていくか-2(2020/12/24)
めざすべき水素社会とエネルギー自給自足社会:脱炭素による環境と経済で社会はどう変わるか-3(2020/12/25)

その動向・傾向をそこで私なりに整理したのが以下で、環境・エネルギー問題を考える上での課題項目と捉えています。

1.再生可能エネルギー化の加速
2.技術開発と企業経営展開
3.EV競争の激化とEV時代の到来
4.ESG、SDGs投資の拡大
5.関連税制の変革
6.エネルギー資源および関連資源の動向と今後
7.継続する原発問題と対策
8.環境エネルギー政策とグローバル社会における環境変化
9.水素社会への途、そして暮らしの変化



日経<第4の革命 カーボンゼロ>特集を読む

日経紙で元旦から始まった「第4の革命 カーボンゼロ」という1面にスペースを取ったシリーズ。
私はその内容や事例レポートを「カーボンゼロ・イノベーション」と捉えています。
昨日1月3日の特集対象は、NTT。
使用電力量が国内発電量のなんと1%を占めているというNTTが、脱炭素を契機に、発電・配電・電力企業に転換するという内容でした。
以下、できるだけ簡潔に紹介します。



NTT全国7300通信ビルが、再生可能エネルギー発電・蓄電施設に


転換への端緒は、昨年2020年11月の岩手県宮古市との電力業務提携。
当初、自社による太陽光発電等再生可能エネルギーで市内需要の約30%供給から2050年には100%をめざすという。

このモデルを全国展開する構想は、全国にある7300通信ビルと1500オフィスビルが実現可能にする。
そのビルで太陽光発電を行い、発電された電力をビルに蓄電する。
すなわち発電所と蓄電所、双方の機能を持つことになる。
蓄電所は、その地域地域の再生可能エネ発電を蓄積する役割も持つわけだ。

そして、1万台以上ある社有車をEV(電気自動車)に切り替え、災害時などには、病院など必要施設に電力をバックアップ供給することも可能になる。
言うならば、送配電機能も持つわけだ。
複合型エネルギー&通信企業NTTということになる。

これに加え、分散する再生エネ発電所をITの力でつなぐ次世代の電力インフラ、仮想発電所(VPP)事業を三菱商事などと提携して拡大展開。
2030年度までには大手電力規模の再生エネを開発し、企業や自治体に供給していく。

NTTのイノベーションが、どう企業を変え、私たちの生活をも変えるか。
スマホの利用料金の引き下げなどという身近すぎて、あまりにも生活臭がただようレベルの話ではない、夢のある話題をこれから提供してくれることを期待したいものです。


ESGが起点になり、グリーントランスフォーメーション(GX)が加速する


脱炭素宣言と並んでの菅内閣の「ウリ」がデジタル庁。
これも実のところグローバル社会からは周回遅れもいいところの後追い政策なのだ。
グローバル経済社会では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代へ突入済み。

同様環境エネルギー問題では、グローバル社会経済においては、当にESGというキーワードが拡散。
経済界・事業経営者にとっては、その理念・概念を掲げる投資家から投資要件欠落企業として排除されないようにすることが必須の段階に入っていた。

これが急加速して、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進化変異型と
言える、グリーントランスフォーメーション(GX)が展開されるに至ったわけだ。
日経平均銘柄(225社)中約40社2割近くが、温暖化ガス排出ゼロの目標を設定したという。

結局、経済の活性化は、投資家だけを喜ばせ、豊かにさせるだけ、などということがないようにと、思います。


もう一つ、NTTを取り上げた特集にあった記事を以下に紹介します。

デンマークの代表的「黒い企業」が、「黒から緑への転換」を果たす!

20年10月、デンマークの電力大手オーステッドが、「世界的な再生可能エネルギー企業への事業転換を完了した」と宣言した。
同社は、化石燃料による発電が主力で国内の温暖化ガスの3分の1を排出する「黒い企業」の代表だった。
しかし、2009年以降脱化石燃料戦略を推し進め、国内の電力・ガス小売部門などの売却を終え、今後は洋上風力を中心とした再生エネで収益を稼ぐ。
再生エネの総出力は30年までに原発30基分の3千万キロワット以上に。
CO2排出量は2006年から2025年の間に98%削減するという。

これにより、投資家の対象として人気を博し、時価総額は16年の上場時の約5倍約9兆1千億円となり、英石油・ガス大手のBPを追い抜いた。

まさに、グリーントランスフォーメーション(GX)時代の先行事例と言えよう。

ここでも結局投資家のために、という前提と帰結でとどまっては、身も蓋もありませんね。

NTTのDXとGX融合戦略


先のNTTの取り組みには、現状残念な点が一つある。
それは、やはり収益性を重んじるために、送配電は既存の電力会社のインフラをできるだけ活用するというものだ。
この制約があるうちは、真のDXとGXを実現したことにはならない。
電線配送電によらないシステムが稼働する社会をイメージし、NTTに期待したいのだが、どうだろうか。

なお、DXにおいて、グローバルレベルでの大きな課題として通信インフラの消費電力を圧倒的に下げる省エネルギー新技術が求められている。
そのための技術として、NTTは、データの伝送手段を電気信号から、エネルギー
効率が高く、熱を冷やすコストが不要の光半導体による光信号に変え、通信や情報処理にかかる消費電力を圧倒的に抑える次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」の研究を進めているという。

これなどは、DXとGXを当融合した技術開発と言えると思う。

また、長期スパンでは、太陽と同じ「核融合」と呼ばれる反応を地上で再現し、巨大なエネルギーを取り出す、日米欧ロ中印韓国が共同で進める革新的な技術「国際熱核融合実験(ITER)」の国際プロジェクトに参画している。

あれもこれも、それもどれも、社会と人の生活とに貢献できてこそのこと。
切に祈ります。


まあいずれにしても、カーボンゼロ・イノベーションのテーマは、私たちが知らないところで種々取り組まれているに違いないし、より多くの成果を期待したいものです。
但し、それらはすべて、私たちの健康で明るく生活を送ることができる社会に貢献できるもの、という条件が付きます。
決してそれが、投資家と一部の企業経営者だけに還元されるものであってはならないことは当然のことです。

その観点から、冒頭紹介した昨年末の投稿記事の最後に記した文を、ここに再掲しておきたいと思います。


示されるべき将来の社会、社会システム、生活・暮らし、国の在り方

カーボンフリー、二酸化炭素を排出せず、環境を守り、環境を育み、健康で安全な生活を送ることができる社会。

ここまでの脱炭素宣言とそこから想定され、期待される経済・事業・企業主体、主導型の政策では、私たちの生活、10年後、20年後、そして30年後の社会と暮らしがどのようになっているのか、あまり語られていません。

温暖化の速度が弱まるかもしれませんが、果たして、毎年繰り返している大規模自然災害がどの程度抑止、抑制されるのか、減るのか、正直分かりません。
科学的にシミュレーションすることは可能なのかもしれませんが、安心を保証してくれるものではないでしょう。

でも、それらを認識した上で、こうした社会が実現される、実現する。
その目標を設定し、国民すべてが、企業が、官庁が、その実現に取り組む。
一部実現したものは、すべてが享受できる。

そういう政策と目標設定と予算化を見える化して、10年、20年スパンと年次単位で進捗管理と評価を行っていく。
世代・年代を継承しつつ。

めざすべきは、そのために税金や労働などを負担してきた国民が、報われる、エネルギー自給自足社会、個人・世帯生活レベルのエネルギー利用料のうち一定の基本料金が無料となる社会です。
もちろん、すべての国民が、住む家を持ち、最低限度の生活が保証されているベーシック・ペンション、生活基礎年金を毎月、無条件で、受け取っている社会でもあります。

脱炭素は、そのための第一歩となると考えています。

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