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コロナ禍の政府債務膨張とIMF方針転換はベーシックインカムへの追い風

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と、回を重ねること16回の<再考察シリーズ>。

少し寄り道しましたが、今日は復帰して、17回目を数えます。


コロナで積み上がる各国政府債務

IMF国際通貨基金の10月14日のレポートでは、今年2020年の世界全体の政府債務が、世界の国内総生産GDP約90兆ドルと同レベルの規模になるとされています。
これはもちろん、新型コロナウイルス対策として財政出動された債務の積み上げ結果です。

また、コロナ禍の長期化により、財政出動がさらに膨らむに違いなく、膨らむこの政府債務は、金融緩和の低金利下、国債を大量購入する中央銀行が支えます。
この債務膨張が続けば、長期的には金利上昇を招き、財政持続が困難になるはずで、その後の対応が懸念されるところです。
特に日本では、今年2020年にはGDP比266%、2021年は264%と他の諸国に比べ断トツの債務拡大の状態になると見られています。

実は、この状態は、ベーシックインカムが導入された場合にも起きうる状況であり、財政健全化を主張する導入反対論者の理由付けに繋がっているわけです。

IMFの方針転換とMMT論者の勢い

このところ、IMFは従来のコンセンサスを覆すことに正当性を与えてきた。例えば資本規制を基本的によしとはしていなかったが、一定条件下で容認するようになり、財政出動の効果もより評価するようになった。公的債務が大きい場合の弊害についても、かつてほど警鐘を鳴らさなくなった。
と言われています。

その証左として、IMFの上記の同日の財政報告では、
新型コロナウイルスへの対応で「積極的に財政を活用すべき」とし「低金利の恩恵で高水準の債務残高は当面はリスクにならない」と明言しています。

従来のIMFならば、こうした場合、早急な緊縮と財政の健全化を強調したのですが、やむを得ない財務拡大として理解を示したわけです。
言い換えれば、お墨付きを与えたわけで、これは、世界経済の指針・教科書的存在であるIMFが、MMT(現代貨幣理論)を信任したかのように受け止めうることを意味します。

ベーシックインカムをMMTにより主張する立場にとっては、非常に大きなフォローの風が起きたわけです。


MMT論者の勢いとこの先のリスク不安



MMTでは、「自国通貨建ての国債は債務不履行のリスクはなく、インフレが脅威になるまでは財政支出を拡大すべき」としています。

コロナ禍により各国は、中央銀行と協調・協力し、巨額の財政支出を賄わざるをえなくなりましたが、これを「強制MMT」に追い込まれた状態と表現する人がいます。
MMT論者は、こうした状態は当然のことであり、「国債の金利は常に政策判断で決まる」と言い切ります。

しかし、その影響は当然金融・資本市場にも及びます。
政策判断に委ね、市場からダイナミズムを奪えば、金利動向から物価や景気の先行きや財政リスクを読み取るのは困難になるという主張もあります。
また、すでにバブルの域に入っているが、疑似MMTと金融社会主義的な政策で、今の構図は崩れそうもない、とする人もいます。
カネ余り主導で進む株高にも同様の危うさが潜んでいるとも言えるでしょう。

理論の正当性を主張するのは構いませんが、正直、理論の何割かは、後理屈型・事後検証型であり、未来予測型もあり、絶対的結論として固定化・ルール化され安定化した完全成功型のものはありません。
なにしろ、人間がやっていることなのですから。

経済が、人と社会を動かしているのではなく、人と社会が経済という概念を作り上げ、多種多様な理論を創り上げ、自分が生きる時代に議論を戦わせていると言えるでしょう。
その主張する理論は、現実的な方法・規定として提示され、立法化され、施行されてこそ、ようやく実験・実践の権利を得ることになります。
そして、責任が問われます。

それゆえ、そのシナリオを立案し、当事者としてその実践に直接関わるか、代理者を立てて行わせるか、選択が必要になります。
それを持ち合わせているかどうかの、自己認識が不可欠でしょう。
果たして、現状そこまでの準備があるかどうか。


MMT的現象が、ベーシックインカム導入を強力に後押しするか

今の危機を乗り切るにはMMTに近い政策しか選択肢はない。
しかしそれが昂じることで、資源配分とマネーの流れがゆがみ、成長の鈍化や局所的なバブルを招く懸念も高まるリスクを抱え込む。

想定しておくべき課題です。

MMT論と一部共通し、一部反意を示す、中央銀行によるベーシックインカム通貨発行論者においても、同様のリスクはつきまといます。

いずれにしても、この先にあるかもしれないバブル等の経済動向の大きな変化の有無や度合いについて、確たる見通しを示すことができるわけではありません。
そのことがもたらすやもしれぬ多様・多大な影響に対して主体的に誰が責任を持つのかも、政府はもちろん、市場であったり、中銀であったり、法律であったり、と実は曖昧なままです。

不思議なことに、そこには「人」がいないのです。
ある「人」は、「人」に任せるからいけないと言います。
「政府」になぞ金輪際任せられない、とも言います。

もちろん、それぞれの論者自身が、「私がすべての責任を負う」などという気はまったくありませんし、責任を取れるはずもありません。
あくまでも論者、第三者であり続けるわけで、なにかしらの問題が発生した時には、他の要因を必ず探し出し、理屈を分析に転換して、ストーリーテラーに変身するに違いないわけです。

それゆえに、一層の、そして新たな智慧と協調と寛容とを必要としています。
新しい社会的基準、ルールが求められます。


コロナは、生きる上で常にありうるリスクへの備えの必要性を教えてくれた

しかし、そうした問題・課題はあるにしても、コロナ禍が、政府債務の増加と一体化した種々の給付の妥当性を国や国民に認識させたと言えるでしょう。
そして、コロナ禍に因らずしても、日常的に生活していく上での経済的不安を、貧困や格差として、あるいは社会経済活動上の矛盾や課題などとして抱えている数多くの人々が存在します。

それゆえに、その生活が一定レベル以上で維持できるよう、すべての国民に、一律に紙幣・通貨を支給することの合理性・必要性についての理解・合意は、得やすい時代・状況にある。
そう言えるのではないでしょうか。
ベーシックインカムの必要性・必然性への認識・同意が得られる状態にあるのです。

先述した大きな問題はあるとしても、ベーシックインカムの必要性への認識は同じです。
その方法、ルールなどについて、さまざまな論者が同じ舞台で、具体的・現実的に議論し、調整し、組み立て、法案・導入スケジュールとしてまとめ上げ、必要な承認手続きを経て、施行する。

2020年が、そのための実質的な起点の年となればと願う者です。
コロナという厄災が、人間に、その社会に、ベーシックインカムの導入の道筋をしっかりとつけてくれた。
そうなれば、コロナ禍がもたらした多くの不幸や犠牲や困難も、ベーシックインカムが、すべての人々に、将来に向けての希望と安心をもたらしてくれることで、大きな意味・意義があったことになる。
そう思えるようになれば、とも。

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