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BIノート

厚生労働白書(黒書)から考える2040年の高齢化社会と介護保険制度

厚生労働白書(黒書)から考える社会保障制度改革とベーシックインカム-2


先月10月23日厚生労働省が公開した「令和2年度厚生労働白書」を題材として、◆ 厚生労働白書から考える社会保障制度改革とベーシックインカム-1
というシリーズを始めました。

社会保障制度改革と一体化したJBI日本型ベーシックインカムを提案しているため、ちょうどこのタイミングでの同白書の公開は、BI論を深める上で非常に意義のあることと考えたわけです。

今回は、同白書の中から、高齢化問題とそれと密着に繋がっている介護制度及び介護職に関する課題を抽出して、考えてみます。


高齢者数の伸びは、2040年には鈍化するというが


2008年をピークに減少に転じている日本の人口。
だが、2020年以降5年ごとの人口増減率を年齢階級別に見ると、65歳以上の増加率の幅よりも20~64歳の減少率の方が大きくなっていく。

すなわち、高齢者数の伸びが鈍化するとともに、64歳までの人口減少が加速するというわけです。
平成時代は、急激な高齢化が進行した30年間であった平成時代だが、20年もすればそのリスク?は軽減されると言いたいのでしょうか。

2040年の人口ピラミッドは高齢期に膨らみをもった縦に細長い形となる。こうした人口構成となった社会において、年齢のみで支える側・支えられる側を区別し続けることは、社会の持続可能性の観点から厳しい面がある。

こういう論点から、高齢者の自己負担を引き上げていこうというのは、無策の極みと言えます。
このことを全世代型社会保障政策の一端としているわけで、本末転倒です。

この無策を一気に解消するのが、私が提案しているJBI日本型ベーシックインカム生活基礎年金制です。
ベーシックインカム生活基礎年金月額15万円、児童基礎年金8万円案(2020/10/8)

2019年と2040年の人口グラフ比較。
その時代の現役世代が高齢世代を支える、という視点で考えるのと、高齢世代自身の生活状況に視点を当てるのとでは、まったく考えるべき政策・施策が違ってきます。
このところの厚労省と政府の視点は、前者を意識し、その対策を打つかのようにしていることで、真の問題解決を先送りにしているだけなのです。
偏向的総合的・俯瞰的政策なのです。

高齢者構成比と世帯構成の2040年予測


上のグラフで、白書は、高齢者増加率が低下し、落ち着きを取り戻す可能性をイメージ化したかったのでしょうが、私から見ると、少子化の進行の方に気持ちが向かってしまいます。

次に、以下に、65歳以上高齢者数と構成比に関する白書の資料を引用しました。

まず、世帯主年齢65歳以上の世帯では単独世帯が増えており、2040年には4割に達し約900万世帯となるとしています。
夫婦のみの世帯はその予備軍ということになり、加えると、なんと7割です。
現在、2020年の今でも、ご近所の状況を考えると、そんな感覚のような気がします。

その高齢単独世帯の中では、今後、85歳以上の人や男性の割合が高まり、それは、介護度の重度化も並行して進むことになるでしょう。

2040年の予測では、60%~73%が女性で、その時期における介護事情はどうなっているでしょうか?
多くの高齢者が希望する自宅で介護サービスを受けることができるか?
私は極めて困難ではないかと思っています。
高齢者自身の意識を変える必要性があるとも以前から考えています。

もう一つ注意が必要なのは、高齢単独世帯では未婚の男女が増加すると見込まれることです。
8050問題の延長線上の課題でもあり、2040年前後の一層厳しい状況が想像できます。


老齢年金生活者の増加と、必要な介護不安・生活不安対策

そして、公的年金のみに依存して生活を送る高齢者が現状でも65%近くを占めており、2040年には、一層増すと予想しています。

いずれにしても、介護を必要とする高齢者数が、当面減少するわけもありません。
加えて、その介護に携わる家族もいなくなり、介護職も慢性的な不足を解消する目処はたたない。
そこから導き出すのが、
・できるだけ元気でいることで介護を受ける必要がない期間を伸ばすよう健康寿命を伸ばす活動を奨励すること
労働人口の減少対策も兼ねて
・できるだけ高齢者も働けるだけ働いてもらうことで、介護保険料負担、要介護期間の短縮に貢献すること
になるわけです。

こうした状況と今後の予測から、当然、高齢者の年金制度を改定する必要があるわけですが、厚労省の向かう先は、反対方向です。


「若者も高齢者も安心できる年金制度の確立」の向かう先


「若者も高齢者も安心できる年金制度の確立」と題して、年金制度についての方針・方向性に触れています。
基本は、年金財政の持続性すなわち<持続可能で安定的な公的年金制度の確立>にありますから、賦課方式による年金制がもたらす現役世代の不満を解消すべく、高齢者に払う年金は抑制し、高齢者からの保険料収入は増やす方向に向かいます。
5年毎に行う財政検証はそのためのルーティーン作業になるわけです。
また、<働き方の多様化や高齢期の長期化・就労拡大に伴う年金制度の見直し>が象徴的な施策です。

上のグラフは、2018年までの高齢者世帯所得の構成割合推移です。
生計費を公的年金に依存している高齢者の多さが目に付きますが、2040年に向けて、この傾向はよる強まると推察できます。

その中でも、老齢基礎年金しか頼れない高齢者の増加が著しいのではと懸念されます。
昨年、月額5千円を上乗せすることとした、「年金生活者支援給付金」制度が導入されたとのことですが、消費増税対策としてのものであり、取り上げうるレベルには程遠い政策です。
しかもその財源が、消費増税分から、というのですから、笑い話になってしまいます。

20年間は、介護ニーズは増加し続ける現実

白書では、2040年をなんとなく引き合いに出して、楽観的な見通しにつなげたかったのか、そうではないのか、微妙な20年後を想定しました。
2020年には、団塊の世代が全員90歳代になっています。
しかし、団塊世代に限れば、平均余命はかなりの年齢になっているでしょうから、介護士不足も介護施設不足も、介護保険制度の破綻リスクも、現状予測される状況が継続している可能性が払拭されません。
現在のような弥縫策が繰り返されている限りは、です。

何にしたって、介護保険利用者数の増加に、2040年にピリオドが打たれるわけではありません。
しかし、手をこまねいて、改革に手つかずでいいのか。
この5年から遅くとも10年位の間に手を打つ必要があると考えています。

その対策の1番手が、JBI日本型ベーシックインカム生活基礎年金制の導入です。
これは、高齢者の生活不安・介護不安、介護職の生活不安・仕事不安の多くを解消・改善するものだからです。
もちろん、これと一体化させて、並行して介護保険制度そのものの改正が不可欠であることは言うまでもありません。

介護職の皆さんに関心を持って頂きたい日本型ベーシックインカム(2020/10/25)


厚労省の総合的介護職不足対策は、2040年にも解消されていない

当白書では、<福祉・介護人材の確保対策>として、以下報告しています。

必要な介護人材の確保については、就業促進、職場環境の改善による離職の防止、人材育成への支援などに総合的に取り組んでいくこととしている。
このため、処遇改善に加えて、
1)介護分野への高齢者など介護の未経験者の参入を促すための「入門的研修」の普及や、介護福祉士資格の取得を目指す留学生など外国人材の受入環境の整備等による多様な人材の活用
2)ICTや介護ロボットを活用した生産性向上の推進による業務負担の軽減や職場環境の改善などによる働きやすい環境の整備
3)介護の仕事の魅力発信など介護人材確保に総合的に取り組んでいる。

いつでも、どこでも「総合的」な取り組みです。
これは、成果に結びつくことはないことを示す表現です。

コロナ禍で、老人施設でクラスターが発生する事例が、全国各地で多発。
そのため、常態化した介護職不足、それによる労働負担・労働環境の悪化、賃金等労働条件の低さ、等介護現場は、複合的・重層的な危機にあると思われます。
そして、その改善・解消は当分期待できないでしょう。
中小零細事業所においては、極めて厳しい状況にあるはずです。

それらの状況については、
介護職の皆さんに関心を持って頂きたい日本型ベーシックインカム(2020/10/25)
において、
・コロナで一層厳しさを増す介護職の労働環境と人材不足
・現在の介護職員数
・介護職賃金の実態
・介護職人材不足の現状と必要人材数の見通し
・厚労省による人材確保対策と改善の可能性
・ベーシックインカムのみが、経済的側面からの仕事不安・生活不安を解消できる

という手順で、介護職の今後の見通しと厚労省の無策ぶりを提起しました。

しかし、厚労省には、こうした実態・現実は、ほとんど気にならないのでしょう。
白書は、他人事かのような記述に留まるとともに、弥縫策・小手先・小出しの政策さえも、自分たちの功績・実績と自画自賛のスタンスを変えません。


高齢者社会保障政策自画自賛のまやかしのロジック

老齢基礎年金制度、介護保険制度は、社会保障制度の体系の中に位置付けられるものです。
同白書は、社会保障制度改革について語ることがを目的としています。

これまで述べてきたように、大きな問題を抱える両制度なのですが、白書によれば、自画自賛のオンパレードです。

2 社会保障の給付と負担の動向(1)社会保障給付費の動向」の中での各項目ごとのコンパクトな説明を拾ってみました。

・27年間で社会保障の給付規模は2倍強に増加
・2040年にかけて、社会保障の給付規模は1.1倍に増加の見込み
・平成の時代、社会保険料も公費負担も上昇。近年、公費負担の伸びが大きい
・2040年に向けて、社会保険料の負担規模は約1割、公費負担は2割強の増加の見込み
・我が国の社会保障は高齢期を中心とした給付構造、家族関係支出等の若い世代向け支出は相対的に低い水準
・我が国の国民負担率はOECD加盟国の平均を下回っている
・我が国の社会保障負担はOECD加盟国の平均を上回っている一方、租税負担は下回っている

これは全部、自画自賛、仕事やってる感アピールの内容そのものです。
見方、読み方を変えれば、すべて政府・厚労省の誇るべき成果・実績となってしまう、恐ろしく、おぞましい仕業です。

その結果、多くの高齢者と要介護者と、介護家族と、介護職の皆さんの生活と安心・安全が脅かされているのに、です。
この無神経さには、呆れるばかりです。

が、そうばかり言ってはおれない状況にあるのです。


「地域における医療・介護の総合的な確保の推進」の意味する俯瞰的行政

日常的に耳にし、目にする機会が普通になった「地域包括ケア」、介護予防、健康寿命を伸ばす活動 etc.
要するに、住民に近いところで医療と介護を木目細かく連携して、ニーズに応えるということですが、本質的には、国から地方自治体への医療・介護行政の丸投げです。
そして、その取り組みの中からうまく行っている事例を引き合いに出して、他の自治体にプレッシャーをかける、常套手段を用いるわけです。
自治体ごとのそれらの行政資源の事情には配慮せず、できない、やっていない自治体が悪者にされる厚労省にとって高みの見物、まさに俯瞰的に、やっている感一杯の、一番ラクな方法をとっているのです。


介護保険制度改定方針の「持続可能性」の正体


白書での決め語の一つが「持続可能性」。
これはグローバル社会における標準語になりつつある「SDGs」における「サステーナビリティ」の意味合いとはまったく異なる意味で使われていることに注意が必要です。

政府の「持続可能性」のほとんどは、財政的赤字を増やさず、国の行政を行うことだけを意味し、その結果が、開発ではなく、改悪されることを想定・想像した上での持続性です。
その結果、国民・市民の生命や安全が持続できなくなることは、関心の対象から除外されているのです。
とんでもない「持続可能性」です。



「厚生労働黒書」批判へ

とまあ、批判の循環に入ってしまいました。
白書ではなく、完全に「黒書」なのです。

野党が体たらくゆえの、政治・行政事情でもあります。
この閉塞状況をどう打開するか、何をもって打開するか。
結局は、政治イシュー、政治マターに持ち込むしかないのですが、そこまでのプロセスも描く必要があります。
その武器として、やはりJBI日本型ベーシックインカム生活基礎年金制度の導入が良いのではないか。
もちろん、BIで、より望ましい内容のものがあれば、それが良いでしょう。

そのきっかけにすべき年、それは2021年。
そうしたいものです。



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