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日本は代表的農業保護国か、農業自由化モデル国か?:日本の農業、3つの嘘・虚構・誤解(2)

20年、30年後の社会を生きるあなたへ

日本の食料安保を考える上で、極めて重要な内容が盛りだくさんの、鈴木宣弘氏著世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか(2022/11/18刊:講談社+α新書)
同書にある「第5章 農業再興戦略」で指摘されている<日本の農業の「三つの虚構」>とは何か、どういうことか?

前回の一つめは、「日本の農業は、高関税で守られた閉鎖市場」は事実かフェイクか?
高関税で守られた閉鎖市場か、日本農業:日本の農業、3つの嘘・虚構・誤解(1)(2023/1/3)

今回、2つ目の命題は

「日本は世界から遅れた農業保護国であり、政府が農産物の価格を決めて買い取っている」は事実かフェイクか?


もし本当ならば・・・。
多分、食料自給率が37%ということにはなっていないだろうし、農家や農業従事者数の極端な減少、極端な高齢化を招くことはなかったはず・・・。
WTO加盟国の中で唯一、農業の価格維持政策を廃止した国、それが日本、というリアル。
言い換えれば、自由貿易推進モデル国家と称賛されるべきなのかもしれないが、結果、食料自給率が37%で、昨年来のロシアのウクライナ侵攻の影響を諸に受けて、食料輸入コストが高騰し、値上げが一気に行われ、家計に大きな影響を与えているリアル。
仮に農業保護国であり、農産物価格が政府のコントロール下にあれば、長期にわたって行われた異次元の金融緩和をもってしても叶わなかったインフレターゲット2%をいとも簡単に超えることにはならなかったはず・・・。

対して、他の国家の多くは、自由貿易の看板を掲げてはいても、内実は、農業のみならず、自国にとって重要な産業はなんとしても守る政策を工夫して維持している。
すなわち、自由貿易には大きな問題があること、その現状のあり方、現実にしっかり着目すべきというわけです。

食料自給率37%の感じ方、捉え方

前回の関税による保護や価格維持・価格統制政策が取られていれば、自給率37%という悲惨な数字は、フェイクと笑い流すことができるかもしてないが・・・。
ただ、確かに日常の食生活、スーパーでの買い物行動からは、自給率37%という数字が正しいものとは思えないし、仮にそうであっても、さほどというかほとんどというべきか、不自由を感じていない。
しかし、より現実を注視すべきは、37%という数字面だけでなく、その内容・意味を詳細に知っておくべきというのが、本書の狙い・主張である。

同様の主張は、農業専門家のみならず、経済学者や政治学者からも、急加速して高まっている。
昨日、http://ohnoharuo.com で以下の記事を投稿・紹介した。
1月課題新書。すべてがベーシック・ペンションに繋がるこの3冊:『年収443万円』『世界インフレと戦争』『未来の年表 業界大変化』(2023/1/4)
12月課題図書4冊から考えるさまざまな<安保>:『世界で最初に飢えるのは日本』『グローバリズム植民地 ニッポン』『天才たちの未来予測図』『80歳の壁』(2022/12/9)

その中の書、中野剛志氏著『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』(2022/12/15刊・幻冬舎新書)や・藤井聡氏著 『グローバリズム植民地 ニッポン – あなたの知らない「反成長」と「平和主義」の恐怖 』(2022/10/25刊:ワニブックスPLUS新書)などが、こうした問題提起を強く行っている。
今回買い求めていないが、堤未果氏等による食料・農業問題を取り上げた新刊もこのところ多々見受けられる。
鈴木氏の本書を含め、この3回のミニシリーズの後に、食料安保を掘り下げるべく参考にしていきたい。

本題に戻ると、こうした価格維持・価格統制政策とセットで各国がしっかりと採用しているのが「補助金」政策。
次回の課題は、農業をめぐるこの「補助金」に関する虚偽です。
今回の課題と重ね合わせて、確認してみたいと思います。

シリーズ第1回を確認
⇒  高関税で守られた閉鎖市場か、日本農業:日本の農業、3つの嘘・虚構・誤解(1)(2023/1/3)

(参考)
12月課題図書4冊から考えるさまざまな<安保>:『世界で最初に飢えるのは日本』『グローバリズム植民地 ニッポン』『天才たちの未来予測図』『80歳の壁』(2022/12/9)
体系的課題別「安心安全安定・保有保持確保」の安保政策の長期的政策合意形成と取り組みを:21世紀第2四半期の安保政策シリーズ-1(2022/12/2)

20年、30年後の社会を生きるあなたへ

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