コロナ禍で増す介護と仕事の両立課題

介護制度、高齢化社会

コロナと自然災害で影響を受けた介護施設・介護職・家族介護者



新型コロナウイルス感染症拡大で、多くの介護施設が事業停止を余儀なくされた。
倒産に追い込まれた事業所もある。
球磨川氾濫で特養が被災し、入所高齢者が多数犠牲になった。

介護サービスを利用する世帯とその家族の多くが、新型コロナの何らかの影響を受けた。
感染への不安や感染防止対策で、日々、心身をすり減らして働く介護職の方々がいる。
事業所の存続が不可能となり、解雇・失業にあった人もいる。
第二波で感染拡大が続いている現在、一層の不安感を煽られ、見通しは決して明るくない。

コロナ禍で介護離職は増えるか

働きながら介護をする人は約346万人。
政府は2016年「ニッポン一億総活躍プラン」で、2020年代初めまでの「介護離職ゼロ」を目標に。
2017年の改正育児・介護休業法施行で企業の一層の介護支援策を求めた。
が、厚生労働省の調査では2018年の介護・看護離職者は9万8400人、ほぼ10万人レベルだ。
うち女性が全体の8割7万9500人で、全体では40代以降の離職率が高い。

果たしてコロナは、介護離職者を増やすだろうか。
それとも、コロナと戦うべく、企業が従業員に一層配慮し、仕事と介護が両立するよう、多種多様な制度・体制の拡充に務めるだろうか。

しかし、そうした動きに関する報道は、やはり、大企業中心のものでしかない。
コロナによる介護離職は気になるが、コロナによる介護職の方々の解雇や失業や収入減少等による「介護職離職」の方が気になる、というのが、正直なところだ。

コロナで見直された家族介護者の在宅介護、テレワーク


実効が伴わなかった政府肝いりの「働き方改革」を、コロナが、企業が選択せざるを得なかった在宅勤務、テレワーク化で一気に進めた。
大手企業とIT企業中心のことだが、その影響は、今後中小企業を含めて大きく広がっていくだろう。
在宅勤務は、メリット・デメリット双方があるが、家族の介護を担う人にとっては、概ね理解され、歓迎されただろう。
ただそれは、自ら望んでではなく、施設側のサービス削減や一時停止、中止に拠るためという事情もある。

しかし、すべての人が在宅勤務できるわけではない。
当然、それが不可能な職種・職務があり、多くの働く女性が、そうした職業に就いている。

万一、デイサービス施設、ショートステイ施設等の事業が停止された場合、あるいは極端な場合、入所型の特養や他の老人施設そのものが休業を余儀なくされた場合などは、在宅勤務で対応できるとは限らない。
勤務どころではなくなる可能性さえあるからだ。
新たな、介護離職の危機に見舞われるリスクをも考えておく必要があるかもしれない。

しかし、何があっても、介護離職は防ぎたい。
そう考えると、利用可能な介護施設や、コロナによる営業状況等をすぐに調べて、有効な選択・判断・対応ができるよう、普段から心がけ、備えておきたい。


コロナで増える介護時間・介護負担への対応策


感染拡大で、家族介護の時間が増えるのは、当然だろう。
施設側の事情でそうなる場合が多いだろうが、デイサービス等の施設利用で感染するリスクを考えてということもありうる。
だが、過度な負担は、在宅勤務そのものに影響するし、心身ともに長引けば長引くほど負担と不安は大きくなる。

在宅勤務できない職業の場合は、改正育児・介護休業法の内容を十分理解し、利用できるようにしておきたい。(在宅勤務の場合も含むが。)
また企業独自の制度があれば、それも利用できるよう、上司や制度担当部署とも、コミュニケーションの機会をもっておきたい。

そしてこの間に、先に述べたように、利用できる施設を、できるだけ多く調べ、可能ならば利用し、評価・把握できるようにしておくことも必要だ。
ケアマネジャーや利用施設の担当者とのコミュニケーションを、こちらは一層密にしておくことも心がけたい。

コロナで、有給休暇取得増。厚労省、中小企業(従業員)に助成金



コロナの影響で家族介護目的で有給休暇を取得した従業員を抱える中小企業を対象に、特例助成金が支給される。

厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症への対応として、有給休暇を取得して介護を行えるような取組を行う中小企業事業主を支援するため、
・家族の介護を行う必要がある労働者が育児・介護休業法に基づく介護休業とは別に、
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)に「新型コロナウイルス感染症対応特例」を創設している。

2021年3月末を期限として、1中小事業者あたり5人まで申請可能で、取得日数が合計5日以上10日未満は20万円、10日以上は35万円。

但し、
1)「介護のための有給の休暇」は、労働基準法に基づく年次有給休暇とは別に設ける必要がある。
2)法定の介護休業(対象家族1人につき合計93日)、介護休暇(年5日(対象家族2人以上の場合は年10日))は別途保障する必要がある。
3)令和2年4月1日から令和3年3月31日までの間に取得した休暇が対象。
4)新型コロナウイルス感染症への対応として、介護のための有給の休暇制度を設け、仕事と介護の両立支援制度の内容を含めて社内に周知する。

詳細は、以下のホームページと関連リンクで確認ください。
<資料>
両立支援等助成金 介護離職防止支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」のご案内(リーフレット)
<申請書の提出先・相談窓口>
※ 各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
<支給要領>
※ 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)「新型コロナウイルス感染症対応特例」
<申請様式>

様式名Excel/Word版記載例
【介】様式第5号①②ExcelPDF



ところで、この制度の説明の中にあった「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」。
この制度の一環として、特例的にコロナ介護有給休暇支援が行われるのだが、正
直、初めて知ったに等しい。
⇒ 「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」について
そこで、この制度について、知ることができたが、知らないのは当然で、予算は付けたが、ほとんど利用されていない状況が、その資料で示されていた。

どうということはない。
中小企業レベルで、普通に法定の有給休暇をきちんと取得消化できていないところの方が圧倒的に多いのだから、いろいろ条件がつく、厚労省が求める介護離職防止のための規程を整備することも、相当ハードルが高いのだ。

また、これらの助成金などを受け取る額よりも、実際に有給休暇を完全に取得してもらって支払う給料などのコストの方が、金額が大きい。
だったら、申請などしない方がいい、と経営者は考えて当然だ。

なので、この特例にも、法定有給休暇とは別に取得することが条件となっているので、やっぱり、利用企業は少ないだろうな、と予想が立ってしまう。
外れてくれればいいが・・・。

これよりも、中小企業も含めて、ニーズがあるのでは、と思われる発表があった。

「介護と仕事を両立する保険」東京海上日動火災保険が発売



東京海上日動火災保険は、介護による休業や時短勤務で生じる収入減少を補償し、仕事と介護の両立、介護離職の防止を支援する保険を発売する。

介護に伴う短時間勤務等による収入減少に対して保険金をお支払いする保険は、保険業界で初という。

育児・介護休業法による介護休業制度を利用した場合、通算 93 日までは介護休業給付金が支給される。
しかし、94 日目以降の休業や介護のための短時間勤務(=時短)等による収入減少を保障する制度等はない。
そのため、同社が、長期の介護休業や短時間勤務等をした場合の収入減少を補償する保険商品を、団体長期障害所得補償保険<特約>として開発した。
(発売開始は、2020年10月1日)

例えば、以下のように、企業が自社の就業規則などに合わせて、保険の支払額や支払い条件をあらかじめ設定できる。
(例)40歳の男性:月830円の保険料で90日の免責期間後、最大で月20万円を3年間補償する。介護対象は配偶者や配偶者の両親も含む。

保険の対象となる従業員と負担は以下の2種類。
1)全従業員を対象とし、企業が福利厚生に組み込んで保険料を負担する
2)保険を利用するかどうかを従業員それぞれが選び、利用する従業員が保険料を負担する。

雇用継続給付金

なお、不人気が予想される先述の特例とは別に、解雇や失業防止のために「雇用保険法」に規定されている<雇用継続給付金>が、コロナ禍で、注目され、適用枠が拡大されている。

これも、ある意味では「仕事と介護の両立」支援、介護離職の防止策と言うことができるかもしれないが、今回は触れずにおきたい。

「介護と仕事の両立」とすべきか「仕事と介護の両立」とするか。
そんなことよりも、両立云々と2つを並列させて、考えさせること自体、違和感がある。
どちらも日常の暮らしの場面、ライフステージ上のことで、何らかの形で、療法が必要ならば、両方ともこなしていかなければならない。
介護離職などせずに、だ。

明日も、介護に関する話題・課題を取り上げたい。

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