
新しい生活様式は、新しい仕事様式・新しい働き方様式と一体で
コロナが促す、ハンコ文化風土改革
前回、コロナ禍で在宅勤務を強いられた人々の中にコミュニケーション不足などからメンタルヘルス等のケアを必要とするケースが増えていることから
◆ 在宅勤務でも孤独感・疎外感を感じない働き方・生き方
と題したメモを記した。
在宅勤務、テレワークの採用により、他にも種々の問題が発生し、今後の課題とされていることは知るところだ。
ネット利用業務上のセキュリティが最も切実な問題だが、利用度が高まり集中すると回線に問題が生じることも同類に入る。
なあんだそんなことか、と思わされるのが、ハンコ、印鑑による決済システムと文化が根強く、テレワーク、リモートワーク上ネックになったということだ。
現実として、ハンコ承認システムが、未だに多くのと言うか、ほとんどなのか分からぬが、生き続けていること自体、情報システム社会の不思議の一つだ。
日本ならではの後進文化だ。
実際私個人としても、法人や個人の印鑑証明書を法務局に申請に行くことは、毎年数回はあるのが現実だ。
印鑑証明書が必要な行政手続きは100種類以上あり、法人の印鑑証明書の発行件数は年間約1300万件あるという。
個人分も加えると相当な数に上り、これをシステム改革すると、相当のコスト削減、テマヒマ削減が実現する。
確かに、今回の定額特別給付金のネット申請において必要だった、個人ナンバーカードの認証も、ICカードリーダーが必要で、一般の人たちには敷居が高かった。
ネットも、便利なようで、認証システムとなるとセキュリティを含め、そう簡単にはいかない。
◆ 10万円特別定額給付金をオンライン申請した
低い生産性を嘆いて民間企業に努力を強制する政府・官庁がまずは自らハンを示すべき改革課題の一つだ。
以前テーマとして以下で書いた、行政標準業務システム開発課題の一つとなる。
◆ 行政システム開発庁の設置を:行政標準業務システム開発による行政システム改革-2
コロナが、この旧弊というべきハンコ文化を、打ち破ってくれれば、少しは社会経済システム改革に寄与することになる。
皮肉なことだが、人間ではない生き物に改革を迫られていることになる。


新しい生活様式は、新しい仕事様式、新しい働き方様式と共に
緊急事態宣言下、三密を避ける生活行動様式や業務様式・作業方法などが相当検討され、導入され、継続されている。
そのいくつかは、いわゆる「新常態」として定着していくことになるのだろう。
一方から見るとそれは「新しい生活様式」であり、他方から見ると「新しい仕事様式」「新しい作業様式」でもある。
端的な例は、ここ1~2年でかなり進んだ、スーパーのセルフレジ化だが、スーパーはもちろん、他の業態店舗でも、コロナでこれから一気に進みそうだ。
買い物をする方からは、新しい生活様式、働く店舗の方では、新しい仕事様式・作業様式となる。
そこに付随するのは、レジ担当という主にパートタイマーやアルバイトの雇用が相当亡くなるということだ。
これは、働く人、仕事を求める人にとっては、生活様式と仕事様式、両方の変化をもたらすことになる。
直接顧客と接する仕事において、絶対にフェイス・トゥ・フェイス、ボディ・トゥ・ボディが必要なものと、他に代替・代用可能なものとで、仕事様式・働き方様式が大きく変わってくる。
いや、後者の仕事がなくなり、雇用が創出どころか喪失されるのだ。
物流もコロナで大きな影響を受けた業種だ。
置き配化や近い将来のドローン配送システム化が既定路線にように言われている。
しかし、一般家庭での置き配は、やはりセキュリティに問題があるし、ドローンが縦横無尽に空中を飛び交うことは、イメージこそ可能だが、制空権?や空中の交通整理なしでは現実化するのは難しい。
その新しい仕事様式で、配送を依頼し、荷物を受け取る私たちの生活様式にも影響を与える。
ということで、新しい生活様式は、新しい仕事様式や作業様式とセットで変化し、定着していくことになる。


裁量労働になじむ在宅勤務で可能になる育児と仕事、介護と仕事の両立、○○と仕事の並立
在宅勤務、テレワークを初めて経験した多くの人が、その継続や定着を希望しているという結果がある調査で出た。
当然のことと思う。
往復の通勤時間がなくなり、ラッシュアワーの混雑による肉体的精神的負担もなくなることだけを考えても、メリットは大きい。
企業サイドは通勤費を支払う必要がなくなる。
みなし時間コスト、直接コスト、関連しての削減コスト等見積もっても相当なものになる。
(参考)
◆ 新型コロナウイルス禍が引き起こす社会経済システム改革-1
◆ 新型コロナウイルス禍が引き起こす社会経済システム改革-2
そのことから、育児と仕事、介護と仕事などの両立が可能になる。
企業もそのための休業支援策を特に必要としなくなる。
もちろん、働く方は、それで新しい生活様式を確立することになる。
仕事自体は、特定した時間のみパソコンを使った仕事・作業例えばWEBミーティング等を行えばよく、他の企画や事務処理などは、自分の都合の良い時間に、必要な時間までに仕上げればよい。
新しい働き方様式は、裁量労働制やみなし労働時間制と相性が良い。
タイムカードの記録を必要としない方が、働く方には便利で、自分流の働き方を、自分流の生活様式の中に組み入れることになる。
就業規則や、時に労働契約そのものの改正・改訂が必要になる。
保育や介護などとの両立としたが、それも一つの例であり、○○と仕事の両立とその様式・方法は、働く方の考えでデザインできるわけだ。
両立としたが、並立と呼ぶこと、することも可能になる。
例えば、家業と(本業)仕事の両立・並立、副業と(本業)仕事の両並立、趣味と仕事の両並立、のように。
そしてそれが逆転することも、想定内のこととなる。


緊急事態宣言全面解除後の新常態、新しい生活様式、新しい仕事様式が、社会システム改革に繋がるように
段階を踏んで解除されてきた緊急事態宣言は、どうやら5月中には全国全面解除となりそうだ。
しかし、今回の経験を持ってすれば、規制解除したアメリカの州では、感染がぶり返していること、新興国においては収束どころか、まだまだ拡大を続けているからとの情報から、習慣化した手洗いや消毒などは、新しい生活様式としてかなりのレベルで常態化するだろう。
そうした身近な改善・変化にとどまることなく、国レベルでの感染症医療対策はもちろん、コロナ禍で明らかになった脆弱な社会インフラや弱者保護問題、財政問題、地方主権に拠る行政・自治問題など、問題を出し尽くして欲しい。
10年、20年、30年のスパンでの改革課題の抽出、方針・中長期計画の策定、そして取り組み。
それらは、政治改革があってこそ可能となるものだけに、2020年後半の政治と社会に、私たちは注目・注視していく必要がある。
次回は、コロナで広がった在宅勤務、テレワークが社会経済に及ぼす最も重要な課題、雇用改革に焦点を当てて考えてみたい。




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