
全世代型社会保障改革は、生涯型社会保障制度改革
全世代型社会保障改革のあり方:社会保障検討会議中間報告から考える政治と行政の貧困(2)

全世代型社会保障検討会議の中間報告の構成
昨年2019年12月19日に公表された政府「全世代型社会保障検討会議」の中間報告。
⇒ https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/jinsei100_5_s.pdf
以下の構成になっている。
第1章 基本的考え方
1 はじめに
2 経済社会の現状
・人生100年時代とライフスタイルの多様化
・少子高齢化の克服
3 今後の取組の基本的考え方
・一億総活躍社会による「成長と分配の好循環」
・全世代型社会保障への改革
・これまでの取組
4 今後の改革の視点
・生涯現役(エイジフリー)で活躍できる社会
・個人の自由で多様な選択を支える社会保障
・現役世代の負担上昇の抑制
・すべての世代が公平に支える社会保障
・国民の不安への寄り添い
第2章 各分野の具体的方向性
1 年金
(1)受給開始時期の選択肢の拡大
(2)厚生年金(被用者保険)適用範囲の拡大
(3)在職老齢年金制度の見直し等
(4)ねんきん定期便等の見直し
(5)私的年金の見直し
2 労働
(1)70歳までの就業機会の確保
(2)中途採用・経験者採用の促進
(3)兼業・副業の拡大
(4)フリーランスなど、雇用によらない働き方の保護の在り方
3 医療
(1)医療提供体制の改革
(2)大きなリスクをしっかり支えられる公的保険制度の在り方
①後期高齢者の自己負担割合の在り方
②大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るた
めの定額負担の拡大
4 予防・介護
(1)保険者努力支援制度の抜本強化
(2)介護インセンティブ交付金の抜本強化
(3)エビデンスに基づく政策の促進
(4)持続性の高い介護提供体制の構築
第3章 来年夏の最終報告に向けた検討の進め方
政府の現状認識と議論の甘さを指弾する、年間出生数90万人割れの急速な少子化
<第1章 基本的な考え方>の(2)経済社会の現状、において、
「人生100年時代の到来、ライフスタイルの多様化、技術の進展などの世の中の変化をチャンスと捉え、すべての人が個性を活かすことができる社会を創れば、少子高齢化という大きな壁も克服できる。」
としている。
昨年の出生数が、90万人を割って86万人に一気に減少し、少子化の歯止めは一向にかからず、加速する一方である現状をみると、なんとも能天気な認識だ。
一億総活躍、中でも女性活躍を掲げれば、ますます晩婚化・晩産化、あるいは未婚化が進み、高齢世代を支える現役世代の負担の増加は見込めても、その影響による少子化をも招くことは簡単に想像できる。
全世代には、高齢世代対現役世代という対比と受益・負担という対比の組み合わせによる課題に加え、妊娠・出産、乳幼児、教育対象児童・学生、障害者などの多様な構成が含まれる。

子育て支援のための消費税充当、介護休業・育児休業支援のための雇用保険も社会保障制度改革の要素
高齢者の負担の引き上げと現役世代の負担の抑制。
社会福祉財源対策のみを課題とした全世代議論は、部分的な手法・手段のみを対象としており、社会保障の全体像と望ましい制度・システムを新たに構築するためには、不毛とまでは言わなくても、話にならない。
年金保険や健康保険、介護保険という社会保険制度に限定せず、雇用保険などの労働保険、消費税など、真に全世代をカバーする社会保障の概念を統合して、財源を含む新たな改革の構図を描くべきだ。
そこでは、全世代に加えて、まさに人世100年時代社会を想定した、生涯型社会保障制度の望ましい改革・再構築を目指すことになる。
一気に結論じみた内容に走ってしまいましたが、次回は、社会保障検討会議中間報告に戻って、個々の内容と、主な問題点について検討する。
