
一院制導入で憲法第四章国会の改正を:憲法改正の新視点-2
「COVID-19」後、2050年の社会システム改革に臨む
前回、内閣及び国会と国会議員の劣化、機能不全が恒常化している。
そのため、自衛隊の国軍化を軸にして、戦前に逆行するかのような理念を基本とした憲法改正などよりも、憲法第四条に規定する「国会」自体の改革を、2050年の社会改革の前提として進めるべきと考えた。
その視点を提示したのが、前回の
◆ 憲法改正の最優先課題は、第四章国会:憲法改革の新視点-1
だ。
それを受けて、今回は、その第四条国会の各条文を流し読み、どう変えることになるかイメージしてみたい。

日本国憲法前文に明文化した国会・国政
各条文に入る前に、憲法前文に国会と国政について、非常に重要な宣言が記述されているので、確認しておきたい。
以下がその前文かつ全文である。
一応、前段と後段に分けてある。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」
「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」
前段では、
国会議員が、正当に選挙で選ばれた、国民の代表者であること。
現世代だけでなく、次世代にわたって自由と平和がもたらされるようその代表議員と一緒に、主権在民のもと決意・行動することを宣言している。
後段では、
国政すなわち国民の代表で行われる政治が、国民の信託により、議員が、その権限・権力を行使し、福利などの恩恵を国民が受けることを明記している。
しかし、真に国民の代表者と言うにふさわしい議員かどうか。
選挙で選出されたことは間違いないが、その適格性を欠くことが選挙後の活動で明らかになったときの措置が、治外法権のように機能不全に陥っているのである。
そうした弊害は、現行の憲法第四条自体にその要因・原因を含む故と考えるべきだろう。
選出方法、候補者の適性の評価、議員就任後の活動実績の公開・評価など、基本的人権の保障や平等の理念など、「憲法第三章国民の権利及び義務」規定との整合性の確認も含めて、改正を実現すべきであろう。
次から、第四条国会の各条文を見ていきたい。

日本国憲法第四章国会
第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第四十八条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
以上の規定は、一院制を導入することにより、すべて改訂されることになる。
一院は衆議院とし、議員の任期は、現状の4年間を6年に改定する。
議員定数と要件などについては、後述する。
第四十九条以降を見ていこう。
第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
世界で最も高額とされる、問題の国会議員の歳費と諸経費については、
「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」に規定されるが、ここでは論じない。」
ここで言えること、言うべきことは、とてもとても世界に誇るべき高い見識・資質を持ち備えた国会議員は、わが国にはいないということ。
そう思うが、いかがだろう。
そして、それは、私たち国民にその責任がブーメランのように戻ってくることを意味することも。
第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
第五十一条 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
この項についても今回省略する。
次は、国会開催規定。
第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
いわゆる通常国会と臨時国会の開会に関する規定だ。
通常国会の開催時期を四半期単位、年4回の開催とし、各期間を原則1ヶ月以上2ヶ月以内としてはどうだろう。
間を1ヶ月間は取り、その間、いろいろ調査研究・検証などに充ててもらおう。
この開催頻度ならば、臨時国会開催の必要はないのではと思うが、緊急時の対応などのために一応規定があってもよいだろう。
以下の第五十四条から第五十八条までについても列記するだけとしたい。
第五十四条
1 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。 3前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第五十六条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第五十七条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

優劣がある二院制の矛盾廃止のためにも一院制へ
第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
第六十条 ①予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。 ②予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
もともと、戦後のGHQ指揮下における憲法草案では、衆議院だけの一院制になっていたとのことだ。
それが、日本側の希望で、貴族院を改定して参議院とする二院制が採用された。
貴族院とは確かに似て非なるものではあるが、何かしらの既得権益者を守る意図があったと見てよい。
良識府と言われる参議院であるが、この第五十九条・六十条両規定を考えると、飾りに過ぎない。
大きなムダを垂れ流し続けてきていると言ってもよい。
一院制とする合理的根拠の一つである。
万に一つ、何らかの牽制機能があるとするなら、あるいは必要とするなら、議院ではない別の方式を設定すればよいだろう。
以下第六十一条から六十四条まで、弾劾裁判規定など重要事項もあるが、これも列記するにとどめたい。
第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。
一院制にすることで、この「国会」に関する条文の殆どが改定を必要とする。
国会議員に関する要件などを新たに盛り込むことも検討されて良い。

議員定数は、二院713人から、一院600人。113人削減へ
次からは、先に提起した
◆ 一院制移行・議員総定数削減と選出システム改革を:絶対不可欠の政治システム改革-2
を元にして、一院制のもとでの議員選出に関する改革案を見ておきたい。
別名「ざる方」とも言われている「公職選挙法」では、議員定数は、現在、衆議院議員465人、参議院議員248人とされている。
これを、前掲一院制私案では、113人削減の600人とした。
また同法では、被選挙権年齢が衆議院は満25年以上、参議院議員は満30年以上となっている。
当然これも一本化し、20歳以上としてはどうだろうか。
なお、任期は6年間とし、3年毎に半数を改選する、現在の参議院方式を転用した案である。

地方区枠、比例代表枠、エキスパート枠の3議員区分と男女・年代別クォーター制導入へ
前述した<政治システム改革-2>の再掲になるが、定数を手直ししている。
あくまでも私案・試案として、目を通して頂ければと・・・。
1.議員構成を、以下の、地方代表枠、比例代表枠、エキスパート代表枠の3区分構成及び定数とする。
(1)地方代表枠:中選挙区制による地方選出議員、定数300人
(2)比例代表枠:政党等必要要件を満たす組織への投票数に応じて比例配分された議員、定数200人
(3)エキスパート代表枠:各種政治・行政専門分野の見識等要件を満たす者が全国区で立候補し選出、定数100人
2.比例代表枠議員の性別・年齢別クォーター制導入
(1)各組織単位内でそれぞれ男女同数リスト化。当選者を交互に割当。総定数のうち男女各100人
(2)各男・女枠において、40歳未満、40歳以上50歳未満、50歳以上60歳未満、60歳以上の4年代区分の候補者をリスト化。当選者は各年代から一人ずつ割当、各世代25人に調整
3.エキスパート代表枠の男女クォーター制導入
(1)男女各50人で構成・配分
(2)立候補者の専門分野に偏りがあった場合、二次候補者受付などで調整
特に、選出規定やクォーター制など、民主主義を進化・進行させる具体的な規定を追加することは、非常に意義があると思う。
なお、前掲投稿記事でも触れたが、総理大臣の衆議院解散権や内閣改造に関する改正も合わせて考えるべきである。
従い、第四条国会の次の第五条内閣の改正・改革を次回のテーマとしたい。
戦後100年、2045年には、その他の改正も行われ、グローバル社会のモデルと言える、革新的な憲法が実現していることを期待したいものだ。

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