アフターコロナで新常態化すべきエネルギーシステム改革-3

経済・経営・労働政策


コロナ禍のエネルギー・環境問題の動静

コロナ禍における緊急事態宣言のからみで、環境問題やエネルギー問題が話題となることは、日本ではあまりなかった。

しかし、グローバルレベルで、コロナ禍における環境やエネルギーに関する興味深い情報や動向は、取り扱われた。

その中で注目すべき事項をいくつか挙げてみた。


1.事業活動・生活行動などの自粛で、エネルギー消費が抑えられ、温暖化ガスの排出量が著しく減少した。
2.アメリカのシェールガス事業に見られるように、エネルギー需要が激減し、市場価格が大幅に低下。
事業の継続を断念する事例や、原油産油国間で減産調整の動きが起きた。
3.一方、社会経済全体の抑制・停滞で、再生可能エネルギー事業自体への投資も、抑制せざるを得ない国・地域がでた。
4.だが総じて、再生エネルギーへの注目度、傾斜度は増しており、アフターコロナにおけるエネルギー動向の流れは加速するとみられる。


整理してみて、特別どうということもない気がする。
既定の路線を進むだけ、と思うのだが、肝心のわが国の動きが、グローバル社会では周回遅れであり、遅れた周回のままのスピードなので、まったく危機感も、改革ニーズを感じることもないかのような政治・行政が続いている。

実は、当サイトを4月上旬に開設する前に、他ブログ(閉鎖済み)で3月に投稿した以下の2つの【エネルギーシステム改革】提言を転載している。

電力行政改革によるエネルギーシステム改革-1【2030年の社会システム改革シリーズ5】
再生可能エネルギーと水素社会によるエネルギーシステム改革-2

言うならば、わが国の電力行政批判なのだが、それは、コロナとは関係なく、もう10年近く経過する根本的・本質的課題に関する認識であった。

そして、4月以降、各国のコロナ感染状況の逼迫とわが国における緊急事態宣言などの変化をみて、
食料・水・空気・エネルギーの自給自足国家創造へ
と題して、これもかねてからの持論である、エネルギーの自給自足改革に踏み出すべきことに触れた。

再生可能エネルギー関連でのわが国の最近の動向


コロナとは無関係に、細々ではあるが、自治体レベルや地域・企業レベルでのエネルギー自給自足の取り組みが広がりつつある。

例えば、
豊田通商、今年5月、国内全事業所使用エネルギーを100%再生エネルギー化した。
豊田通商、国内全事業所で「実質100%再エネ化」達成 J―クレジット活用

東京都は、2050年の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロ達成の「ゼロエミッション東京戦略」を掲げている。
今年12月から、一般家庭や発電事業者から太陽光や風力、地熱など再生エネ100%電力を買い取り、都有施設への供給事業を始める。

「エネルギーの地産地消」も各地に広がりを見せている。
岡山県津山市、長野県須坂市は、小水力発電の活用。
群馬県中之条町は木質バイオマス燃料。
佐賀県は地中熱エネルギー利用の拡大。
それぞれ規模は小さいが、地域特性である自然環境を生かした再生エネ事業で、地元企業の産業振興も目論む。


コロナ下、発電量を増やしたグローバル社会の再生可能エネルギー


新型コロナの感染拡大による社会経済活動の自粛・停止で、世界的に電力需要が落ち込んでいる。
しかし、太陽光や風力など再生可能エネルギーの発電量は増加している。
再生エネは多くの作業員は不要で、メンテンスコスト等ランニングコストも低く、感染症にも比較的強いとされる。
またこれまでの技術革新でコストも下がり、化石燃料エネとの競争力を高めている。
こうした要素は、アフターコロナにおいても、強み・特徴として進化し続けると考えられる。


コロナ禍で一層認識すべきエネルギー・環境システム改革の絶対性


2018年度のわが国の電源構成比率は、再生可能エネルギーが17%。
原子力を上回り、火力に次いで高い。

一方、CO2排出削減に向け、2030年度の再生エネ構成比22~24%程度の目標を掲げるが、その数値自体欧米諸国からはまったく評価されていない。

加えて、原発依存からの転換を期限を明示して宣言することはなく、多くの矛盾と批判を抱えて迷走を続けている状況は一向に改まらない。

国は再生可能エネの「固定価格買い取り制度(FIT)」を12年に開始。
今後は市場の需給に応じて再生エネルギーの価格に補助金を上乗せする「FIP」制度に切り替える。
しかしこれも、後手ばかり踏んでいるお粗末な電力行政の実態のほんの一例に過ぎない。

唯一の戦争に拠る被爆国であり、東日本大震災による福島第一原発問題を抱える国、日本。
本来、環境問題・エネルギー問題でグローバル社会のリーダーシップを取るにふさわしい国である。
自国経済優先の姿勢を守り続け、なんとかごまかし続けてきたが、信用・信頼を失い、尊敬に値しない国の烙印を押される危機的段階にある。
そう認識すべきだろう。

温暖化対策を含む環境保護への取り組みと再生可能エネルギー社会の構築。
そして、エネルギー自給自足国家および水素社会の構築。


もうそれが、わが国のアフターコロナのニューノーマル(新常態)と方針と方向を定め、国・行政は、エネルギー政策・環境政策をリセットし、エネルギーシステム改革の合意形成を図るべきである。
それは、すべての社会システム改革の内の、人と社会に必須のインフラであるからだ。

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