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共働き世帯を基準とした少子化対策の限界:日経経済教室「少子化に打つ手はないか」から考える-番外編

少しずつ、よくなる社会に・・・

2022年6月3日に、出生率1.30、出生数81万人余という2021年人口動態統計結果が出た後の同月下旬、日経が、<経済教室>で「少子化に打つ手はないか」と題して以下の3人の小論を掲載。
<上>:少子化に打つ手はないか(上) 幅広い支援と現金給付充実 松田茂樹・中京大学教授(2022/6/20)
<中>:少子化に打つ手はないか(中) 出産・子育て リスクにするな 前田正子・甲南大学教授(2022/6/21)
<下>:少子化に打つ手はないか(下) 仕事・生活の両立策 総動員を 脇坂明・学習院大学教授 (2022/6/22)

それぞれを取り上げて、当サイトで以下をシリーズ化しました。
<第1回>:究極の少子化対策、総域的支援の意味と現金給付の適正額は?:日経経済教室「少子化に打つ手はないか」から考える-1(2022/7/14)
<第2回>:こどもは公共財か、社会の覚悟で少子化は改善できるか:日経経済教室「少子化に打つ手はないか」から考える-2(2022/7/17)
<第3回>:実らぬ少子化対策総動員。働き方改革策の限界は明らか:日経経済教室「少子化に打つ手はないか」から考える-3(2022/7/20)

そのシリーズの上記の第1回を投稿した日、7月14日の日経夕刊が、「増えぬ子ども 処方箋は」という類似したテーマでの以下の2人の著名学者へのインタビュー記事とミニ解説記事を掲載。
(生活)増えぬ子ども 処方箋は  男性の働き方変えよ 立命館大学教授・筒井淳也氏
ケアの「脱家族化」を 京都大学教授・落合恵美子氏
共働きしやすい社会へ

今回、シリーズ続編と位置付けて、そのポイントを確認することにしました。

影響度・貢献度は極めて限定的な男性の働き方変革:筒井淳也立命館大学教授へのインタビューから


<男性の働き方変えよ>とサブタイトルがついた、筒井氏へのインタビュー記事。
整理してみました。

続く出生率の低下

合計特殊出生率は2005年に1.26で底を打ち、2015年まで緩やかに回復していたが、どの世代がどれだけ出生したかを分析すると、人口が多い1970年代後半生まれの女性が30代で多く産んだことが理由に過ぎない。
2080年、90年代生まれの女性の出生率は、前の世代より下がっており、出産タイミングの問題で出生率が改善しただけで、少子化は一貫して進んでいる。

未婚率上昇も少子化に拍車

「未婚」は複合的な問題。
周囲のお膳立てや職場結婚が90年代から減り、カップルが形成されにくくなり、若者は恋愛に消極的になっている。
2022年男女共同参画白書でも、20代男性の約4割が『デートしたことがない』と回答。
経済的側面では、1990年代後半以降、雇用の不安定な男性が増え、経済的安定を求める女性とのミスマッチが広がっている。

子どもを増やす、結婚したい人ができるようにするための処方箋は

すぐ解決できる策はないが、今は、育休を取れるのかや教育費の問題など、みんな将来に不安があり、まずは、結婚しても共働きで、仕事と育児が両立できると確信できるようにする必要がある。
そのために一番改善すべきは働き方。
女性はもはや十分活躍しており、男性の職場の見直しの方が大事で、政府が強いメッセージを発信すべき。

男性の働き方を変えるために政府が強いメッセージを

例えば「転勤制度」の見直し。
10年間は転勤なしとし、どこでどう働くか明確にイメージできるようにする。
地元から離れると子育ては大変さが増し、生まれた場所で一生暮らしやすくするためには、「リモートワーク」で全国どこでも働けるという企業が増えていくのが望ましい。

ごくごく限られた時間内でのインタビューであり、紙面なので、全く物足りないですし、提案した内容が仮に実現しても、その恩恵を受けて、結婚や子どもを持つことに繋がる可能性は、ゼロではないとしても、その対象・候補となる男性・女性は、ごくごく少数と思われます。

筒井氏は、
・『仕事と家族 – 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(2015/5/25刊・中公新書)
・『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(2016/6/20刊・光文社新書)
等を書き表しており、家族社会学と労働社会学を融合したようなテーマに定評があります。
今回の内容も、その延長線上のもので、いろいろある少子化対策のうちの一つの例に過ぎません。


(参考)2016年8月:日経経済教室<少子化対策に何が必要か>から考えるシリーズ

筒井氏の著書を取り上げた記事が以前あったかと思い、調べてみましたが、両書の発刊時期を考えると、当サイトであるわけがなく、現在休眠中(アクセスはできますが)のWEBサイト http://huma-net.com にあるのではとチェック。
すると以下の記事がありました。
少子化の複合要因を真因化することは学者にできるのか?:日経<少子化対策に何が必要か>(2)(2016/8/21)

なんと今から6年前の投稿であり、やはり日経<経済教室>でテーマ化された「少子化対策に何が必要か」で、筒井氏の考えるところを示したものでした。
マスコミも学者も、同じテーマで何度も繰り返しやってきているのですが、結局成果が上がっていないことを再確認させられてしまいます。

第1回:少子化対策の本気度は、子ども関連社会支出政策で示せ:日経<少子化対策に何が必要か>(2016/8/20)
    ・駒村康平慶応義塾大学教授「思い切った財源投入急げ、保育士賃金や教育費支援」から
第2回:少子化の複合要因を真因化することは学者にできるのか?:日経<少子化対策に何が必要か>(2016/8/21)
    ・筒井淳也立命館大学教授「長時間労働是正こそ王道、米・北欧型の解決策は困難」から
第3回:待機児童が増えても人口増と出生率向上の世田谷区モデルを考える:日経<少子化対策に何が必要か>(2016/8/22)
    ・森田明美東洋大学教授「枠拡大と質確保重要。子育て、地域全体で支援を」から

共働き支援と脱家族化サポートが決め手になるか?:落合恵美子京都大学教授へのインタビューから

次にもう一つの落合恵美子氏への<ケアの「脱家族化」を>と題されたインタビュー。
整理してみました。


出生率が一段と低下

コロナウイルス禍での密を避ける動き、経済的不安を抱く人の増加等で、出生率低下は予測の範囲で驚きはない。

共働き化の当り前化で、育児・家事等ケアを誰が担うか

基本的な問題として、子育てにはお金がかかる。
結婚して子どもができても共働きできる社会にし、1本ではなく、2本の細い大黒柱で家庭を支えるように変えていく必要がある。

欧米で進んだ子育ての脱家族化と日本の逆行

欧米は70年代以降、ケアの『脱家族化』が進んだ。
・1970年代以降、北欧・フランス等で、保育園整備や家で子どもをみてくれる認定保育ママ制度など国が進めた政策で分担が進んだ。
・米国では家事をしてくれる人を雇うといった市場による分担が進んだ。

ケア支援で出生率は回復するか。人を育むための幅広い仕組み作りを

しかし、日本は80年代以降、専業主婦優遇政策に転じ、ケアの脱家族化が進まなくなり、その仕組みが今なお残っている。
シンガポールや韓国では脱家族化が進んでいるが、両国とも出生率は改善していない。
教育費・住宅費などの自己負担の重さ、ワークライフバランスの悪さ等共通する問題がネックに。
ケアを育児や家事と狭く捉えず、人を育むのに必要な幅広い仕組みと捉えての改善が必要。
奨学金の充実なども含むことになり、また自然増には限界があるため、人口を維持を目標とするなら、移民の議論も必要になる。

これも、従来から指摘・提案されてきている範疇の内容です。
しかし、最後に「人を育みための幅広い仕組み作り」と総合性に、蓋然性・抽象性を加えたことで、少子化対策も、共働き支援政策もぼやけてしまった感じがします。
移民も最後に付け加えたことで、「脱家族化」に加え「脱日本化」にまで政策が及びそうな感じにもなりました。

「脱家族化」を前面に押し出すならば、本来ならば、公的ケアサービスの拡充や創造、市場サービスの利用を可能にする所得を得るための労働政策など、具体的な議論と提案に持ち込むべきです。
しかし、短いインタビューからそこまで求める、期待することはムリ。
ならば突っ込んだ議論・提案を今後も継続して深めていくと共に、日経もその目的をもってこれらの課題に自らも取り組んで、独自の主張・提案を行ってほしい。
そう願います。

記者総括:共働きしやすい社会へ

このインタビューを行い記事を書いた記者の簡単なまとめを紹介します。

少子化に即効薬はないが、2人の識者に共通していたのは「共働きしやすい社会をつくる」ということ。
共働き家庭数が専業主婦家庭の数を抜いて久しいが、パートなど非正規の女性と正社員の男性の夫婦という構成が多く、先進国中でも女性に家事や育児の負担が偏っている。
(略)
筒井教授、落合教授提示の政策を含め、国には総合的な政策が求められる。

少子化対策、出生率向上対策。今まで手を付けられていない究極の打ち手を創る

子育て・家庭と仕事の両立を支援するさまざまな施策が、すべて少子化対策として機能するとは限らないことは明らかです。
結局、確固たる少子化対策は決め手に欠け、結局できることはなんでもやるという括り・前提の中で、関連すると思われる様々な施策・政策を、総合的に充実・拡大・継続させていくしかない。
日経がいくらこの問題に警鐘を鳴らし、喫緊の課題と激を飛ばしても、喫緊の課題は、自動的に継続していきます。

国が主導しても、企業の義務・責任を課しても、結婚や出産についての意志決定と行動は、個人の問題。
個々人のや恋愛への関心度の低下や諦めなどを、前向きな関心、行動に切り替えるために最も有効な打ち手は何か、そもそもそれはあるのか。

現状の学者・研究者もマスコミが、従来と同じことしか言えないことも明らかです。
欧米の成功モデルを研究し、その文化的・社会的・経済的背景と要素・要因の良いとこ取りをしても、出生率が高まることは保証されませんし、いきなり個人個人が、婚姻数・出生数が増加に繋がる前向きな行動に切り替えることも保証されるわけではありません。

しかし、唯一、今まで実施していない政策があります。
用語や政策・制度としての「児童手当」「こども手当」は、現状存在していますが、その金額が、結婚や出産のモティベートするものではないことは明らかです。
加えて、個々の一方又は両方が、失業状態あるいは非正規雇用の夫婦世帯や、未婚・非婚の男女、母子・父子家庭の片親(未婚の片親を含む)などにおいては、本人の低所得・不安定所得問題も厳然としてあります。

日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンッション生活基礎年金の全国民への無拠出・無条件での支給。
その在り方にのみ、究極の少子化対策の決め手となる可能性がある。
その実現を可能とする方法・規定・基準を掘り下げて検討・研究を進めていく。
税と社会保障の一体改革、財政規律主義、全世代型社会保障制度・・・。
これらの呪縛から解放する政策が待たれるのです。

【日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金2022年案】

ベーシック・ペンション法(生活基礎年金法)2022年版法案:2022年ベーシック・ペンション案-1(2022/2/16)
少子化・高齢化社会対策優先でベーシック・ペンション実現へ:2022年ベーシック・ペンション案-2(2022/2/17)
マイナポイントでベーシック・ペンション暫定支給時の管理運用方法と発行額:2022年ベーシック・ペンション案-3(2022/2/18)
困窮者生活保護制度から全国民生活保障制度ベーシック・ペンションへ:2022年ベーシック・ペンション案-4(2022/2/19)

少しずつ、よくなる社会に・・・

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