
国の予算・執行管理と財政健全化スローガンのいい加減さ
少しずつ、よくなる社会に・・・

2021年度税収67兆円、過去最高を更新
7月1日付日経及び中日、両紙で目にした、「2021年度国の税収、過去最高の67兆円」という見出し。
提案している、ベーシック・ペンションとの関係で、こうした財政に関する動向には、興味関心が高く、同日付と1日空けての7月3日付の以下の日経の2記事を並列的に見て、今回整理してみました。
◆ 国の税収が過去最高、21年度は67兆円程度 法人税伸びる: 日本経済新聞 (nikkei.com)
◆〈国費解剖〉「必要なくなった予算」最大の6.3兆円 前年度 繰越額、2年連続20兆円超

法人税増収における偏り
法人税は2兆円以上の増収。
新型コロナウイルス禍からの企業業績の回復で伸びたとされているが、円安進行による輸出企業の業績押し上げも寄与している。
なお続伸する円安は、今期2022年もエネルギー・食糧等資源高が物価高をなおも進めるリスクがある反面、輸出産業には同様の恩恵をもたらすことが予想される。
他方、飲食宿泊業など一部の業種は低迷が続いているが、事業規模の大きくない企業には、赤字で法人税を納めていない事業者も多く、税収減には直結しない要素がもともとある。
雇用環境改善で伸びた所得税
所得税も2兆円以上の増収で、日経記事では雇用環境の改善などで伸びたとしているが、大企業やIT系企業等一部の好調業種就労者の所得増の影響が大きく、業種や企業規模全体的な広がりではないだろう。
すなわち、所得格差が拡大しているわけだ。
物価上昇も消費税上振れの要因
消費税も堅調で、個人消費の持ち直しのほか、年度後半の物価上昇で購入額が増えたことも税収を上振れさせたとみられる。

当初予算の見込額と実際値との乖離にみる予算のいい加減さ
年度当初予算では、税収を57兆4480億円と見込んでいたが、12月末の上方修正をさらに上回り、10兆円に近い上乗せとなった。
無論、税収・歳入は控えめにみるのが普通の感覚だろうが、それにしてもその違い、ブレは大きい。
予算策定上に問題ありといえなくもないが、もう一つの課題は、こうして生じた誤差、とりわけ、予算を超える税収・歳入増の場合の対応方法・使い道・使い方だろう。
不用額、繰越額が際立つ一般会計決算にみる国家財政運用管理のいい加減さ
この税収過去最高67兆円の発表後、当年度の一般会計の決算の概要について、2022/7/3付け日経で
◆〈国費解剖〉「必要なくなった予算」最大の6.3兆円 前年度 繰越額、2年連続20兆円超
と題したレポートが掲載された。
結果的に使う必要のなくなった「不用額」が、税収同様過去最大の6.3兆円に。
他に、翌年度への執行繰り越し額が、22.4兆円。(2020年度は30兆円規模)
その合計額は28.7兆円で、歳出総額142兆円強に占める割合が20%、5分の1に上る。
多額の不正補助金支出が問題となった新型コロナウイルス対策予算も、こうした問題の背景にもあり、同時に同根の問題ということもいえる。
年度内に使い切るという政府予算原則がコロナ感染拡大以降、守られにくくなっているのが実態。
税収増にもかかわらず増える一方の財政赤字:歳入歳出の実態にみる国家財政問題
56.5兆円の発行を予定した赤字国債のうち8兆円をとりやめたというが、赤字国債発行自体不用になったわけではなく、後述するように、当然大幅に増加している。
先述のように年度当初予算に補正予算を加えた合計歳出規模は140兆円超。
しかし、過去最高の税収67兆円すべてを充当しても半分以下。
「財政健全化には歳出の見直しも欠かせない。」というのが日経の常套文句。
当初一般会計予算の22.6%を占める国債費
国の借金である国債の償還や利子の返済のために充てる費用である国債費。
2022年度の国の一般会計当初予算107兆5964億円のうち、国債費は24兆3393億円。
年度当初予算比約5800億円増で、これも過去最大。
一般会計のうち22.6%を国債費が占める。

当記事に対する有識者のコメント例
1日付日経記事を受けて数人の有識者がコメントを寄せていましたが、参考までに以下、絞り込んで転記してみました。
・円安が輸出企業の利益をかなり押し上げ、日本経済にプラスに働いている。
マスコミは相変わらず、円安の被害を訴える中小企業や輸入業者の声ばかり拾って騒ぎ立てるが、声を出さずに静かに得をしている者がきちんといる。
このようなエビデンスを元に、全体としての損得を論じなければならない。
予想外の税収が上がると、すぐに補正予算を組んでバラマキ還元するという悪しき習慣が近年、すっかり定着をしてしまった。
景気が悪いときも、良いときもバラマキをするのでは、永遠に財政再建ができない。
当初予算で計画していなかった予想外の税収は、国の借金返済に回すようにしてはどうか。
・こんなに税金を集めていると聞くと、政府はそれを何に使うのかという疑問が浮かびます。
日本の税負担はかなり高く、何のために使われているのか、国民はもっと関心を持つべきであり、政府は明確な説明をする必要がある。
「お金があるからこうしましょう」といった政府プロジェクトが多いようでありながら、必要とされているものには「お金がない」とも言っている。
集められる税金が増えた分、何故消費税を引き下げられないのかとも思います。
・経済の低成長下で、税収が過去最高になったのは、それだけ国民の税負担率が増えたということ。歳出の見直しを論じる際には、成長に資する使い道が不可欠。

財政健全化ポーズの継続・定着、そして変質へ?
こういう状況の継続・繰り返しで、財政健全化の議論が、建前と本音の境目が次第に曖昧になってきている感じがする。
「もうそれは無理じゃない?」「増え続けても、そんなに大きな問題も起きていないし、仕方ないんじゃないか?」
こういうニュアンスに、最近では、保守サイドからは、「増えても構わないんだ!」という声も次第に大きくなってきている気もする。
財政健全化ポーズ、とでも言おうか。
考えると、ポーズでとどまっていればまだいいが、いずれ、何かしらの理屈を「理論」と称して、財政健全化の必要のない特殊ルールを作る可能性もありうるわけだ。
政権を取るということは、そういう利権を手にすることと同義ということで。
何を隠そう。
実は、当サイトや関連サイトで提案している、日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金制度の導入・構築の方法も、財政健全化を無視した非常識な理屈を振り回したやり方、と誤解を受ける可能性があるのです。
そうあっては絶対行けないと、こうした国の財政の在り方、問題点をしっかり把握・認識し、望ましい在り方を検討・考察することが不可欠と考えているわけです。
で、今回の結論は?
現在、関連サイト http://basicpension.jp で展開している、<公共貨幣論から考える>シリーズで、その方策や法制化のヒントを見出し、設定できないか、取り組んでいることをお伝えしていきたいと思います。
参考:<公共貨幣論から考える>シリーズ
<第1回>:<「公共貨幣」論から考えるベーシック・ペンションと社会経済システム>シリーズ開始にあたって(2022/6/15)
<第2回>:4つの機能を持つ貨幣、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」「日本銀行法」:公共貨幣論から考える-2(2022/6/17)
<第3回>:政府55%出資の民間特殊法人・日本銀行が抱える不明朗性と存在意義:公共貨幣論から考える-3(2022/6/19)
<第4回>:廃すべき信用創造という民間銀行の利権と不平等:「公共貨幣」論から考える-4(2022/6/21)
<第5回>:権力の支配手段としてのお金の正体:公共貨幣論から考える-5(2022/6/23)
<第6回>:減らすことができない財政赤字・政府債務。これからどうなる、どうする?:公共貨幣論から考える-6(2022/6/25)
<第7回>:現状の債務貨幣システムの欠陥と宿命をどのように理解してもらうか:公共貨幣論から考える-7(2022/6/28)
<第8回>:債務貨幣システムはなぜ生まれたかを復習する:公共貨幣論から考える-8(2022/7/1)
<第9回>:失われた30年から、何を変革すべきと考えるか:公共貨幣論から考える-9(2022/7/3)
これらのテーマと繋がるものとして、昨日でしたか、日銀保有の国債が、全体の5割を超えたという記事見出しをみました。
これも、非常に興味深い話題で、本稿と関連していますが、近々当サイトか http://basicpension.jp で取り上げたいと思います。


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