2021年の出生数約84万人、死亡数約145万人、人口減少数初の60万人超:2021年人口動態統計速報値

社会政策

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2021年人口動態統計速報値:2022年2月25日厚生労働省発表


2022年2月25日に厚労省が発表した2021年1年間の人口動態統計速報値。
出生数から死亡数を差し引いた人口の増減数は、以下のとおりでした。
出生数、死亡数とも新型コロナウィルス感染症の影響が大きいとしています。

1.出生数84万2897人。2020年比2万9786人(3.4%)減、6年連続過去最少更新
2.死亡数145万2289人。同6万7745人(4.9%)増、戦後最多
3.人口自然増減数(出生-死亡):60万9392人減、初の60万人超減
4.婚姻件数51万4242組。同2万3341組(4.3%)減、戦後最少

戦後最多の死亡増加はコロナの影響も

年間死亡数は、145万2289人と戦後最多を記録しましたが、コロナ感染が確認された死亡数は約1万5千人と2020年の5倍近くで、合計死亡増加数6万7745人増は、東日本大震災年の増加数(約5万5千人)を上回ります。
新型コロナウイルスを死因とするだけでなく、それに伴っての運動不足などによる心不全など、コロナが影響しての死亡増もあるとしています。
しかし、コロナの影響を度外視しても、2025年には団塊世代が全員後期高齢者となる超高齢化の進行で、死亡数の増加は、今後も長期化します。
従い、人口減少数の増加も当面更新し続けると予想されます。

出生数の減少の一因としてのコロナ禍による婚姻数減少

出生数の減少は、6年連続で最少数を更新しており、少子化社会の進行と想定内のことです。
ただ、2021年の減少には、コロナの影響への不安から妊娠・出産をためらったことに加え、婚姻数が、年間で前年から2万組以上減少したことも影響しています。
これは、昨年度にとどまらず、第6波が続く今年度2022年にも同様、あるいはより大きな影響を与える可能性もあります。

経済的不安を要因とする婚姻数減少

婚姻数の減少は、結婚を望まない生き方を選択する人が増えている、いわゆる多様化と括られることはあるが、基本的には、現在と将来においての経済的不安という要素・要因が多く占めることは、これまでの調査で明らかになっています。
非正規雇用による低賃金、コロナ禍による休業や解雇による就労・所得機会の激減、失業による所得源の喪失。
結婚をためらわせるにあまりにも大きな負の要因といえます。
それは、既婚夫婦、もちろんひとり親が抱く、子どもの長期間にわたる養育・教育費負担という経済的不安もまったく同じものです。
少子化社会対策として喧伝される働き方改革や仕事と育児との両立という次元からのアプローチとは、まったく異なる性質のものであり、故に異なる対策が必要と考えられるのです。
しかし、政治と行政では、そのための対策への想像力もリアリティも欠落しているといってよいでしょう。

変わらぬ少子化対策の視点

この記事を書くきっかけになったのが、日経記事。
そこでは、不妊治療の保険適用への改正が、少子化対策の一助になることに加え、経済的不安からの出生数減、婚姻数減に対する対策として、あるエコノミストの意見として、共働き支援のための住宅費支援策の必要性を取り上げています。
しかし、それは極めて部分的で、影響というレベルの効果はほとんど期待できないものでしょう。
そして、同紙は、例によってこう言うのです。

少子化に伴う人口減は社会保障の支え手不足につながり、経済成長を制約する。少子化対策の一段のテコ入れが欠かせない。
少子化進行を和らげる政策を進めなければ、社会保障制度の持続性に危うさが増す。ただでさえ伸び悩む成長力の足かせにもなりかねない。

なんのために、誰のために結婚し、子どもをもつのか:日経氏の歪んだ視点

人口動態統計による、出生数・婚姻数の減少問題、そこから問題となる少子化対策は、日経にかかると、社会保障制度の支え手不足・持続性懸念、成長力低下懸念上必要なことになってしまうのです。
だれがそんなことを考えて結婚したいと思い、子どもを持ちたいと思うのか。
歪んだ心、精神構造をした組織であり、文章にする人というべきでしょう。

経済的不安が結婚や出産をためらわせる。
それを改善・解決するために必要なのが経済対策としての、働き方改革であったり、仕事と子育てや介護との並立のための法律の拡充。
故に、それは労働人口減少対策としてのものであり、財政規律を維持するために必要な税や社会保険料・労働保険料を確保するためのものである。
そんな無理筋のロジックを、いけしゃあしゃあとのたまうのです。

社会保障制度、社会政策としての少子化対策、出産・婚姻支援対策を

厚生労働省が管掌する<人口動態統計>は、経済産業省に成り代わって実施・公開しているものではないはずです。
社会保障制度、社会政策の在り方と関連付けて、これを集計し、分析し、活用すべきもの。
結婚も出産も、生き方の選択肢としてあるものです。
その選択から世帯や家族での生活が発生し、就労による所得が発生し、消費が行われ、人生を送る。
社会政策が結果的に経済活動と結びつくわけで、この関係・循環が社会経済システムを形成するのです。

しかしながら日経の歪みはマスコミだけの特性ではなく、政治家も、経済学者も、左派の社会保障強化主張者も、経済や成長、時に反緊縮といったキーワードを用いて、社会政策課題へアプローチし、解決手段とする傾向が強いのです。
その視点を変えるべきとする学者・政治家が出てこないかと常々思っているのですが・・・。

批判してばかりいる日経紙の<経済教室>欄で、昨日2022年3月2日から、3日連続で「社会保障 次のビジョン」というテーマで3人の学者さんの小論が掲載されています。
本稿を受ける形で、次回から、その3回の小論を、順次一つずつ取り上げ、望ましい社会保障の在り方を考えてみることにします。

                       少しずつ、よくなる社会に・・・

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