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小口広太氏著「『日本の食と農の未来』から考える」シリーズ、始めます

 昨年12月後半にシリーズとして投稿した、鈴木宣弘氏著『農業消滅 農政の失敗が招く国家存亡の危機』(2021/7/15刊・平凡社新書)を参考にした農業政策考察シリーズが、リンクして紹介したTwitterでリツイートされるなど、想像以上に多くの方々にお読み頂きました。
 同シリーズを紹介した記事を以下で確認頂けます。
(参考)
⇒ 鈴木宣弘氏著『農業消滅』から:2021年発刊新書考察シリーズ振り返り-5 (2021/12/31)



そこで、同書と並んで取り上げる予定だった、小口広太氏著『日本の食と農の未来 「持続可能な食卓」を考える』(2021/9/30刊・光文社新書)を、2022年年初の1月にシリーズ化してその内容の確認と考察を行うことにしました。
 同書は、ほのぼのとしたレポートを多用した、装丁の帯にあるように「等身大の自給を目指すには」とか、サブタイトルに<「持続可能な食卓」を考える>を用いるなど、元農水省官僚でもある鈴木氏のやや過激な『農業消滅 』とはまったく趣が異なる書です。


 今回は、同書の本論には入らずに、その構成とシリーズ化の基本的な考え・方針をメモするにとどめます。
 まず、目次に当たる構成は、以下のとおりです。

『日本の食と農の未来 「持続可能な食卓」を考える』構成

第1章 日本の食と農のいま
1.食の海外依存というリスク
・広がる食と農の距離
・食と農のグローバル化
・脆弱化する農業構造
・すぐそこに迫る食料危機
・コロナ禍の教訓
・外国人労働者の移動規制
・気候変動が与える農業への影響
・私たちの食卓が抱える「二重の脆弱性」
2.食の海外依存が生み出す「犠牲」
・フードシステムの「工業化」と地球温暖化の促進
・「構造的暴力」への加担
・土壌の劣化
・食料の収奪
3.SDGs時代の食と農
・人類共通の目標としてのSDGs
・食と農がSDGsに大きく貢献

第2章 この時代に農業を仕事にするということ
1.変わる農業への「まなざし」
・「ネガティブ」に語られる農業
・農業に向けられる「ポジティブ」なまなざし
2.新しく農業を始める人たち
・農業の始め方
・非農家出身、農家出身の就農の形
・存在感を増す「雇用就農」と「新規参入」
・非農家出身の若い世代から期待される農業
3.独立就農したい若い世代の姿
・日本農業経営大学校を卒業後、有機農家へ:荒木健太郎さん
・地域おこし協力隊を経て、ぶどう農家へ:鈴木寛太さん
・「段階的」かつ「戦略的」な就農
・就農ルートの多様化
・地域おこし協力隊と就農の親和性
4.独立就農者の姿
・独立就農者の経営タイプ
・多層的に広がる独立就農サポート
・柔軟なサポートと受け皿づくりの重要性

第3章 持続可能な農業としての「有機農業」を地域に広げる
1.農業の近代化と有機農業の「誕生」
・近代農業への「対抗」としての有機農業
・生産者と消費者の「関係性」の創造
・「有機農業推進法」の成立という画期
・「自然共生型農業」としての有機農業
2.独立就農者から支持される有機農業
・ 有機農業から見える「希望」
・独立就農者が「選択」する有機農業
・有機農業を「選択」する理由
・有機農業というさらなる「障壁」
・有機農業への参入ルートの広がり
3.独立就農者がつくる有機農業の地域的広がり
・先駆者としての霜里農場
・研修生の受け入れと就農サポート
・有機農業と地域をつなぐローカル・フードシステム
・地域資源を活用した循環型の有機農業
・有機農業が地域を変える
4.農協による有機農業の組織的展開:茨城県石岡市八郷地区
・農協が設立した有機栽培部会
・若い独立就農者を育てる研修制度の開始
・独立就農を見据えた「実践的な研修」
・ 有機栽培部会の中心を担う独立就農者
5.有機農業を実践する独立就農者が育つ
・独立就農者が定着できる「仕組みづくり」
・独立就農者の広がりが 独立就農者を呼び込む

第4章 食と農のつなぎ方
1.生産者と消費者がつくるオルタナティブ・フードシステム
・市場流通と市場外流通
・都市化と産業化の中で生まれた「オルタナティブ・フードシステム 」
・多彩に広がるオルタナティブ・フードシステム
・IT化とSNSの発展
・生産者とつながり、食材にこだわる飲食店
・自給農業と贈与のネットワーク
2.ローカルな食と農
・ローカル・フードシステムの広がり
・農産物直売所の多彩な工夫
・生産者と消費者が交流できるファーマーズマーケット
・有機農業と地域をつなぐ
・「オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村」:愛知県名古屋市
・未来世代を育てる学校給食
・行政と農協が広げる学校給食の地産地消:東京都小平市
・地域のつながりがつくる「6次産業化」
・伝統的な食文化を継承する「株式会社小川の庄」:長野県上水内郡小川村
3.ローカル・フードシステムがつくる持続可能な地域
・ 生産者と消費者の暮らしを守り、育む
・環境・経済・社会の循環をつくり、地域を再生する
・コロナ禍で私たちの食卓は変わるのか

第5章 食と農をつなぐCSAの可能性
1. CSAは食と農をつなぐ切り札になるか

・世界的に広がるCSA
・CSAの「コミュニティ」は何を指すのか
・「食べる通信」がつくる CSAの形
・「関係人口」を育てる
・ 「鳴子の米プロジェクト」がつくるCSAの形
・消費者から「食の当事者」へ
・「コミュニケーションが支える農業」としてのCSA
2.有機の里づくり:埼玉県小川町下里一区
・農業の戦後史
・有機農業への転換を促した「地域の6次産業化」ネットワーク
・集落ぐるみの有機農業
・有機農業を軸にした地域づくり
3.企業版CSA「こめまめプロジェクト」
・NPO法法人生活工房つばさ・游の概要
・こめまめプロジェクトの開始
・買い支えの仕組みづくり
・交流の仕組みづくり
・「こめまめプロジェクト」がつくるCSA
4.食と農をつなぐコーディネーターの役割
・コーディネーターの条件
・持続可能な社会に向けて、みんなでつくる CSA

第6章 都市を耕す
1.都市農家の新たなステージ

・「肥大化」する都市
・減少する農地と「2022年問題」
・再評価される都市農業
・「地産地消」と「市民参加」を軸にした農のあるまちづくり
2.「耕す市民」を育てる
・耕す市民という「選択肢」
・農業体験農園と市民農園
・生協と組合員がつくる農園
・神奈川県横浜市泉区・「生活クラブ・みんなの農園」
・都市農業の発展を担う「援農ボランティア」
・援農ボランティアという「経営パートナー」
・神奈川県横浜市都筑区・「都筑農業ボランティアの会」
・耕すことで変わる食と農へのまなざし
3.コロナ禍で見直される「農」の力
・耕し続けた人たち、耕し始めた人たち
・なぜ、耕す市民は増えたのか
・やぼ耕作団が実践した耕す市民
・「自給」と「つながり」を大切にする「住み続けられる都市」へ

次に、本書の執筆者、小口氏のプロフィールを同書から引用しました。

著者・小口広太氏プロフィール

1983年長野県塩尻市生、千葉商科大学人間社会学部准教授
明治学院大学国際学部卒、明治大学大学院農学研究科博士後期課程単位取得満期退学、博士(農学)
日本農業経営大学校専任講師等を経て、2021年より現職
専門:地域社会学、食と農の社会学。有機農業や都市農業の動向に着目し、フィールドワークに取り組む。
日本有機農業学会事務局長、農林水産省農林水産政策研究所客員研究員、NPO法人アジア太平洋資料センター()PARKC)理事。
著書:『生命(いのち)を紡ぐ農の技術(わざ)』『有機農業大全』(ともに共著・コモンズ)など

「 『日本の食と農の未来』から考える」シリーズ、基本方針


 農業関連書を取り上げる場合、『農業消滅』がそうであったように、当サイトの2050年の望ましい日本社会を創造することを目標・目的としている中、<国土・資源政策2050年ビジョン>における以下に示した<3.食料、農・畜産・水産業安全保障安全保障・維持開発管理>の内容の再考察・修正などに用いることを想定しています。

 本書『日本の食と農の未来』も同様の目的をもって臨みますが、前書のような影響力はあまりないのではと想像しています。
 また、具体的事例が多数紹介されていますが、それらをこのシリーズで紹介することが一義的な目的でもありません。
 むしろ事例よりもその本質・根源的な要素に焦点を当て、中長期的な課題として考えてみたいと思っています。
 しかし、そのための基本は、前書同様に、農と食の安心・安全保障とそのための自給自足システム構築を目標とすることは言うまでもありません。
 その具体化のための、一つ一つの事例紹介と方向性の確認作業を進めることになるかと思います。
 なお、本シリーズは、4回程度に集約したいと考えています。
 またこのシリーズの間に、他のテーマでの種々の記事を投稿していきます。
 宜しくお願いします。

 第1回は、起承転結の「起」、序論として、<第1章 日本の食と農のいま>を用い、本論の前提ともいえる筆者の日本の農と食の問題認識を確認します。

(参考)

3.食料、農・畜産・水産業安全保障・維持開発管理 (2021/12/28一部修正)

基本方針)
さまざまなリスクに対応できる食料自給自足国家とその持続可能な社会システムを2050年までに構築し、その基盤の下にグローバル社会に貢献できる食料のサプライチェーンモデルも構築する。
(個別重点政策)
3-1 食料自給自足国家社会の拡充:農地実態調査、未耕作地集約、自治体別強化農産品目決定
1)食料品種別自給率調査及び長期自給率目標策定 (~2025年)
2)農地生産地実態調査、未耕作地等未利用地実態調査 (~2025年)
3)目標自給率実現品種・生産地域計画立案 (~2030年) 、都道府県別農産政策立案 (~2030年)、
  取り組み進捗・評価管理、食料品危機管理システム整備構築(2031年~)
  ※最重点品目:小麦
4)農家・農村・農業従事者・農業法人、地域農業等保護・育成・開発計画策定、運用管理(~2030年)
3-2 農・畜産・水産業の長期総合政策策定と持続的取り組み
1)畜産部門自給自足長期計画、振興支援計画策定、都道府県別計画、危機管理システム策定 (~2030年) 、各進捗・評価管理
2)水産部門、遠洋・近海漁業保全計画策定、養殖分野長期計画、危機管理システム策定 (~2030年)
3)食の安全性確保・持続性総合管理政策策定と運用管理(5年サイクルでの取り組み)
 ※種苗法・種子法等改定、遺伝子組み換え・ゲノム編集・農薬等問題
4)グローバルサプライチェーン長期方針及び計画立案 (~2030年)
3-3 食品・飲料製造産業の水平・垂直統合
1)食品・飲料製造産業原材料調達・内外依存度等実態調査及び長期方針 (~2030年)
2)基礎食品・飲料指定化と自給自足可能度評価、対策立案 (~2030年)
3)都道府県別受給可能度調査及び緊急時国内サプライチェーン構築計画 (~2030年)
4)グローバルサプライチェーン長期方針及び計画立案(~2030年)






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