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現在食料自給率38%、2035年の衝撃的予測と必要対策 :鈴木宣弘氏著『農業消滅』から-1


 今月初め、別サイトに投稿した以下の記事で紹介したように、今回から、鈴木宣弘氏著『農業消滅』(2021/7/15刊・平凡社新書)を取り上げ、3~4回シリーズで紹介と若干の検討考察を行うことにしました。
鈴木宣弘氏著『農業消滅 農政の失敗が招く国家存亡の危機』:勝手にしん・せん書-2(2021/12/1)

 初めに、同書の構成を。

鈴木宣弘氏著『農業消滅 農政の失敗が招く国家存亡の危機』 の構成

はじめに
序章 飢餓は他人事ではない
・2035年には食料自給率が大幅に低下する
・コメ農家は存続さえ危うい
・なぜ、人道支援のコメの買い入れさえしないのか
第1章 2008年の教訓は生かされない
・輸出規制は簡単に起こる
・2008年の食料危機の背景には
・節操なき貿易自由化を突き進む
・畳みかける貿易自由化の現在地
・誰にとってのウィン・ウィンなのか
<コラム1>「公」が「私」に「私物化」されるメカニズム
第2章 種を制するものは世界を制す
・日本はグローバル企業の餌食になる
・亡国の種子法廃止
・種苗法改定は海外流出の歯止めになるのか
・種に知的財産権は馴染まない
・歴史的事実を踏まえて大きな流れ・背景を読む
・農産物検査法の関連規則改定の経緯
・種子法廃止に先立った農水省の通知に注目
<コラム2>「家族農業の10年」や「国際協同組合年」をめぐる動き
第3章 自由化と買い叩きにあう日本の農業
・厳しい農村の実態
・貿易自由化の犠牲とされ続けてきた農業分野
・買い叩かれる農産物
・いっそうの買い叩きのための農協攻撃
・農協改革の目的は「農業所得の向上」ではない
・国家私物化の実態
<コラム3>IMF・世銀の引き換え条件にFAOは骨抜きにされた

第4章 危ない食料は日本向け
・安全性を犠牲にしてまで安さに飛びつく私たち
・危険な食品は日本に向かう
・もう一つの成長ホルモンの危険性
・疑惑のトライアングル
・恐れずに真実を語る研究者と人々の行動が事態を動かす
・輸入小麦から検出される除草剤成分
・GM表示厳格化の名目の「非表示」化
・アメリカのGM表示をめぐる動きとGM表示法
・国産の安全神話の崩壊
・世界で強まる農薬規制とタイの衝撃
・グローバル種子・農薬企業をめぐる裁判の波紋
・世界のトレンドをつくるのは消費者
・「わからない」のが正しい
・自由貿易がもたらす、もう一つの健康被害
・安さのもう一つの秘密
第5章 安全保障の要としての国家戦略の欠如
・農業禍保護論の虚構その① もっとも守られた閉鎖市場か
・虚構その② 政府が価格を決めて農産物を買い取る制度
・虚構その③  農業所得は補助金漬けか
・収入保険は「岩盤」ではない。
・政策は現場の声がつくる
・日本の農政は世界に逆行していないか
・人口が減っても輸出で稼げば農業はバラ色なのか
・GAP推進の意味を再検証する
・食料難の記憶を忘れさせない欧米の考え方
・消費者の購買力を高めるアメリカの政策
・世界、特にアジア諸国との共生が必要不可欠
・日米安保の幻想を根拠に犠牲になってはならない
・貿易交渉の障害は農産物ではない
・互恵的なアジア共通の農業政策がカギとなる
・アジア全体での食料安全保障を

終章 日本の未来は守れるか
・日本を守る食と農林漁業の未来を築くには
・自由化は農家ではなく国民の命と健康の問題
・カロリーベースと生産額ベースの自給率議論
・私たちの命と暮らしを守るネットワークづくり
・協同組合・互助組織の真の使命とは
・真意が問われる「復活の基本計画」
・欧米で進む農業のグリーン戦略を受けて
・地域循環型の経済が私たちの命を守る道となる
おわりに


今回は、<序章>と<第1章>を見てみます。

序章 飢餓は他人事ではない>から

1)2035年には食料自給率が大幅に低下する
2)コメ農家は存続さえ危うい
3)なぜ、人道支援のコメの買い入れさえしないのか

食料の自給率大幅激減の現状と予測、その根源的要因

本書著者の試算による2035年の日本の実質的食料自給率。
酪農は12%、コメ11%、青果物や畜産1%~4%。

飼料の海外依存度を考慮すると
牛肉、豚肉、鶏卵の現状の自給率は、11%、6%、12%。
2035年には、それぞれ4%、1%、2%という驚くべき低水準に。

酪農については、自給率が8割近い粗飼料の給餌割合が相対的に高いこともあり現状の自給率は25%。
2035年には12%に。
鶏のヒナはほぼ100%海外依存のため、実はすでに自給率は0%に近い。

現状80%国産率の野菜も、実は種の海外依存度が90%であることを考慮すると、現状の自給率は8%。
2035年には4%。

食料の自給率に関するこうした信じられない現状と予測。
その根幹となる要因は、
「種は命の源」のはずが、政府によって「種は企業の儲けの源」と捉えられ、種の海外依存度の上昇に繋がる
<種子法廃止> ⇒ <農業競争力強化支援法> ⇒ <種苗法改定> ⇒ <農産物検査法改定>
という一連の制度変更が行われてきたことにある。
そして同様の影響が、コメや果樹にも波及するリスクを孕んでいる。


この序章部分においては、1)に関しての以上の整理にとどめ、2)3)の関係は、第3章以降の関係記述で見ることにして省略します。


第1章 2008年の教訓は生かされない>から

1)輸出規制は簡単に起こる
2)2008年の食料危機の背景には
3)節操なき貿易自由化を突き進む
4)畳みかける貿易自由化の現在地
5)誰にとってのウィン・ウィンなのか
<コラム1>「公」が「私」に「私物化」されるメカニズム

上記の構成の第1章は、以下のようにテーマを集約して整理確認し、考えるところを加えてみます。

コロナ禍で明らかになったグローバル・サプライチェーンに依存する食料経済の脆弱性

 コロナ禍で、人と物の流れが遮断され、日常生活や事業活動に支障をきたす食料や原油などの輸入が滞り、輸入価格の高騰なども招いた。
 コロナに限らず、異常気象や政変などさまざまな要因でのこうしたリスクは輸出規制をもたらす。
ある意味いつ起きても不思議ではない。
 普段意識することがないのだが、さまざまな原材料・部品製品・商品等の経済システムにおけるサプライチェーンは、意外に脆弱なのだ。

原材料の50%以上が自国産でないと国産と認めない「原産国ルール」を用いれば、日本人の体はすでに「国産」ではないとさえいえる。
食料の確保は、軍事、エネルギーと並んで、国家存立の重要な3本柱の一つである。


 こうした認識が、本書の基本となっているわけで、軍事問題に関しては議論も必要だろうが、食料とエネルギーに関しては、異論はない。


食料危機発生時の共通要因・背景と必要な対策

 第1章ではこのあと、<2008年の食糧危機>に焦点を当てるが、その年だけに当てはまるものというよりも、現状こういう状態にあることを認識する上での記述と理解し、その要点をメモしてみたい。

アメリカは、自国の農業保護(輸出補助金)制度は撤廃せずに、都合よく活用し、他国に「安く売るから非効率な農業はやめたほうがよい」として、世界の農産物貿易の自由化と農業保護の削減を求めてきた。
そして、安価な輸出を行うことで他国の農業を縮小させてきた。
それによって、基礎食料(穀物類)をつくる生産国が減り、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの少数の農業大国に依存する市場構造になってしまった。
その結果、需給にショックが生じると価格が上がり、投機マネーも入りやすくなる。
さらに不安心理が煽られ、輸出規制が起きやすくなり、価格高騰が起き、入手も困難になってしまう。

こうした事態に今後対処するには、貿易の自由化に歯止めをかけ、各国が食料自給率を向上させる政策を強化するしかない。

貿易自由化の本質と求めるべきウィン・ウィンの在り方とは

 先述したアメリカの目論見に、貿易自由化の本質を垣間見ることができる。
 ここで、本章におけるこのあとの貿易自由化をめぐる記述を簡単に整理してみたい。

コロナ禍で輸出規制が多発する中、FAO(世界食料機関)・WHO・WTOが、輸出規制解除と一層の貿易自由化を求める共同声明を発表した。
各国の輸出規制の元々の原因が、貿易自由化推進にあったわけで、矛盾した要求である。
同様のロジックは、世界銀行やIMFの言動にも見られ、貿易自由化を含めて徹底した規制緩和を強要して、途上国の貧困を増幅させてきた。
このような一部の利益のために農民、市民、国民が食い物にされる経済・社会構造から脱却する必要がある。
食料の自由貿易を見直して、食料自給率の低下に歯止めをかけなければならない。


 このところのグローバリズム批判の軸にある行き過ぎた資本主義がもたらすさまざまな格差と分断。
 いわゆる新自由主義の考え方と行動と一致する農業問題であるが、これが人の生活の基礎である食料と直結しているが故に、こうした弊害と切り離して長期的な視点で食と農の在り方の変革を、正しくは原点回帰というべきなのかもしれないが、必要としている。
 この認識は、私も強く持っている。

 当サイトを起点とし、その後専門サイト http://basicpension.jp で提案してきている日本独自のベーシックインカム、ベーシック・ペンション生活基礎年金の導入・実現は、基本的人権と生活保障という基軸に加え、その維持実現のために、自国内の自給自足社会経済システムの整備を目標としての政策であることが特徴である。

 しかし、そこで完結する課題としているわけではなく、自由貿易の自由度を一端抑制しつつ、食の(それ以外も含むが)自給自足を一国が達成して終わりではない。
 自国における食料の自給自足実現と繋がる望ましいグローバリズムの在り方を構想し、構築することで、ウィン・ウィンの実現をも図ろうというものだ。

 それは、ベーシック・ペンションの実現の成果を、一つのモデルとしてアジア諸国や他の新興国にそのシステムを移行することをめざすことと同様、食と農の自給自足社会経済システムの移行・移管も支援することを目標としていることを意味する。

 

 次回は、低下・悪化する食料自給率を決めることになる、意外に知られていない、農作物の種子に関する問題を<第2章 種を制するものは世界を制す>を参考に確認します。


 ところで、冒頭紹介した記事中に示しましたが、このシリーズでは、以下の視点での3つの安全保障を考え、既に提起済みの<2050年食料・農業安全保障長期ビジョン及び重点政策>(下記参照)の内容の一部を必要に応じて修正することも目的としています。
 当該記事からの転載にもなりますが、ご参考までに、以下に再掲します。

『農業消滅』から読み取る3つの安全保障と2050長期ビジョンへの反映

1)食料の自給自足システム構築による国民生活と国家の安全保障
2)食料の安全安心生産・供給・管理システム構築による国民生活の健康安全保障
3)上記の食料の2領域での安全保障を実現する、産業としての農業とその資源としての農地及び農家・農業人の安全保障

<2050年食料・農業安全保障長期ビジョン及び重点政策>(現状)

基本方針)
さまざまなリスクに対応できる食料自給自足国家とその持続可能な社会システムを2050年までに構築し、その基盤の下にグローバル社会に貢献できる食料のサプライチェーンモデルも構築する。
(個別重点政策)
3-1 食料自給自足国家社会の拡充:農地実態調査、未耕作地集約、自治体別強化農産品目決定
1)食料品種別自給率調査及び長期自給率目標策定 (~2025年)
2)農地生産地実態調査、未耕作地等未利用地実態調査 (~2025年)
3)目標自給率実現品種・生産地域計画立案 (~2030年) 、都道府県別農産政策立案 (~2030年)、
  取り組み進捗・評価管理(2031年~)
  ※最重点品目:小麦
4)食料品危機管理システム整備構築(~2030年)
3-2 農・畜産・水産業の長期総合政策策定と持続的取り組み
1)畜産部門自給自足長期計画、振興支援計画策定、都道府県別計画策定 (~2030年) 、各進捗・評価管理
2)水産部門、遠洋・近海漁業保全計画策定、養殖分野長期計画策定 (~2030年)
3)グローバルサプライチェーン長期方針及び計画立案 (~2030年)
4)畜産物・水産物危機管理システム整備構築 (~2030年)
3-3 食品・飲料製造産業の水平・垂直統合
1)食品・飲料製造産業原材料調達・内外依存度等実態調査及び長期方針 (~2030年)
2)基礎食品・飲料指定化と自給自足可能度評価、対策立案 (~2030年)
3)都道府県別受給可能度調査及び緊急時国内サプライチェーン構築計画 (~2030年)
4)グローバルサプライチェーン長期方針及び計画立案(~2030年)

参考:ベーシック・ペンションについて知っておきたい基礎知識としての5つの記事

日本独自のベーシック・インカム、ベーシック・ペンションとは(2021/1/17)
諸説入り乱れるBI論の「財源の罠」から解き放つベーシック・ペンション:ベーシック・ペンション10のなぜ?-4、5(2021/1/23)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)前文(案)(2021/5/20)
生活基礎年金法(ベーシック・ペンション法)2021年第一次法案・試案(2021/3/2)
ベーシック・ペンションの年間給付額203兆1200億円:インフレリスク対策検討へ(2021/4/11)

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