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営農型太陽光発電が促す農業・食料政策、電力エネルギー政策の統融合

2021/11/4付日経<私見卓見>コラムの、「営農発電で農業・再エネ両立を」と題した、吉田好邦東京大学大学院工学系研究科教授の投稿を興味深く読んだ。

先月10月22日に閣議決定された、第6次エネルギー基本計画による2030年度の再生可能エネルギーの電源構成目標値は36~38%。
もちろん、それは、2050年の温暖化ガス排出ゼロに向けての取り組みでもある。

当然その中で主力とされる太陽光発電への依存度は高いが、今後設置場所が不足する可能性も指摘されている。
また、自然災害への弱さや、森林伐採等を必要とすることによる環境や景観上の問題、設備・部品自体の耐用年数、そして何よりコスト面での問題など、さまざまな課題を抱えたままでの目標値の上方修正が行われた。

こうした現状を踏まえて、同氏は、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を推奨している。


営農型太陽光発電とは

営農型太陽光発電とは、農地に支柱を立てその上に太陽光パネルを設置して発電し、固定価格買い取り制度(FIT)などでの売電収入を得、同時にパネルの下で農業を営み、収入を得る。
すなわち営農と発電の副業・兼業システムと言えよう。

台風などにも耐える強度を持つ設備で稼働し、農機も稼働させるわけだが、太陽光パネルで日陰ができることによる作物への影響をクリアする課題もある。
その日陰問題については、農水省規制で、平均的な農地比で最低80%の作物収量の確保を条件付けられているが、農地に占める太陽光パネルの割合を調整すれば規制はクリアできるとされる。

営農型太陽光発電の潜在的可能性


またその潜在的可能性として、総作付面積400万haのうち僅か3%で営農発電に取り組めば、2020年時点の太陽光発電の累積導入量に匹敵する6千万kw分の導入が可能であり、その売電収入によって農業経営の安定化と農業振興に寄与するとしている。

営農型発電の現状と課題。2030年には原発4基分相当に

営農発電を始める場合、支柱とそれに接する農地を一時的に転用する必要がある。
農地の累計の転用許可数は2013年度の96件から2018年度には1992件に拡大し、農地の面積は、19.4haから560haになったが、地方の建設・サービス会社などが手がけるにとどまった。

また、そこでの作付けは、日陰に強いとされるミョウガや観賞用植物のサカキなどに偏り、その傾向が続くと受給バランスから値崩れにつながる恐れもある。
まあこの心配は、後述する栽培品種の多種化で払拭されそうだが。

加えて、発電収入に依存して営農をやめてしまう可能性もあり、現状、耕作放棄地などの遊休地の利用による太陽光発電が進められてはいるが、それは営農ではないことになる。

また農業保護政策は農水省、再生エネ買い取り制度等電力エネルギー政策は経産省と、例によって縦割り行政による政策推進を妨げる要素が厳としてあり、営農型発電事業の拡大には、統合化と加速化が必要になる。

営農発電はSDGsの点からも官民の関心は高く、営農発電の累積導入量(直流ベース)は、2019年度約50万kwが2030年度原発4基分相当の約398万5千kwになるという見通しがある。

ENEOS等大手企業による営農発電事業参画

上記の課題を持つ営農発電だが、一応大手企業による事業化も進みつつある。
以下、昨年12月に日経で取り上げた事例の概要を整理してメモ書きしてみた。

1.ENEOSHDグループ:子会社ENEOSイノベーションパートナーズによる事業化
・2020年10月、宮崎県新富町と低炭素・循環型のまちづくりで提携。
 2019年出資の営農発電スタートアップのアグリツリー等と発電設備を設置し作物の選定開始。
・2018年設立のアグリツリー=長崎県ハウステンボスなど4カ所で、合計約200kwの営農発電事業化。
 別出資の農業機械スタートアップ、アグリストの技術を用い、発電とピーマン・キュウリ等の自動収穫システムを組み合わせる計画。
・パネルで発電した電力を収穫機械に使い農業の効率化も目指す。
・山口県下関市で営農発電を手掛ける有機の里とも実証中。

2.太陽光発電施工大手ウエストHD
・2019年、農林中央金庫と営農発電促進に向け業務提携。
 各地のJAからの紹介を受け、営農発電を検討する農家と工事契約を締結。
 現在約30のJAと契約し、約130の農家から受注。
・2020年11月から広島大学と共同で、営農発電に適した作物の研究開発を開始
 パネルで光が遮られる中でも育てられる大麦や薬草などを対象とし、ナスや白菜なども研究中。

3.営農発電コンサルティングの千葉エコ・エネルギー
・農地のパネルで発電した電力を蓄電池にため草刈り機などに使う実証を開始。
 今後、畑の上を走行できる電動トラクターなどにも活用し、CO2の排出量が多い農業の低炭素化を目指す。
・自然災害発生時に電気自動車(EV)への電力供給することも検討。

4.新電力のみんな電力
・2021年度をメドに、農家や発電事業者に対する営農発電ノウハウ提供コンサル事業を開始。
 発電事業者や農家に対し、提携先発電所発電設備を見せ、効率的な発電・栽培方法を紹介。
 事業地が決まっている場合、現地で設備の設置方法などを助言。
 栽培する作物に小麦などを想定し、発電した電力を買い取り。
 発電事業者栽培野菜のネット通販も検討。

国土・資源政策長期ビジョンに基づく政策展開と深化のために

第6次エネルギー基本計画という大命題も、こうした多用な個々の取り組みの積み重ね、積み上げにより一歩一歩実現されていくわけで、政府・官庁・行政の役割は、いかにその取り組みを適切に支援するかにある。
その基盤としての、送配電網とそのコストに関する統制・統括、FIT等電力料金の設定管理など、電力・エネルギーの自給自足体制の確立に向けての総合的な政策、加えて営農及び食料に関する自給自足・地産地消政策などの総合的政策、その関係する政策の統合など、長期的視点での計画立案、管理運営力が問われるわけだ。
しかし、すべての政党・政治家にも、それぞれの官庁・官僚にも、そうした深い議論・提言が行われる気配・機運が欠落している現状である。

当サイトでは、「国土・資源政策2050年ビジョン」掲げている。
その中で、<2050年国土・資源政策長期重点政治行政戦略課題>として提起した以下の6領域の政策と今回の「営農発電」は、関わっている。
1.国土安全保障・維持総合管理
2.電力・エネルギー安全保障・維持開発管理
3.食料、農・畜産・水産業安全保障安全保障・維持開発管理
4.自然環境保全・持続可能性管理
5.社会的インフラ安全保障・整備維持管理
6.産業資源安全保障基盤・維持開発管理


このように、当サイトで取り上げる大半のテーマは、 「国土・資源政策2050年ビジョン」 を初めとする4つの大命題政策の内容を補填・補完し、必要があれば、その内容を修正していくことを目的としています。
ぜひ今回のテーマについては、リンクしている 「国土・資源政策2050年ビジョン」 をチラッと見て頂けるとありがたく存じます。

なお、今回の課題と関連した、太陽光発電の適地の不足とその開発の現状について、近々確認する予定です。

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